社会福祉原論

 

運動療法機能訓練技能講習会での講義資料です (。^_^。)

2003.9.7 宇田 辰彦

ud@olive.plala.or.jp

http://www1.plala.or.jp/ud/

 

(1)史的展開

 

(2)改革期の動向

 

(3)「8法改正」と社会福祉事業法・社会福祉法

 

(4)欧米における社会福祉の史的展開

 

(5)終わりに


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(1)   史的展開

0 戦前の社会福祉制度

        明治7 恤救規則(社会福祉の萌芽)

               ・1874 恤救規則の前文には、「貧困者を哀れみ救済することは、
                人々の間のお互いのどう上新いよって行いなさい」ということが書かれてあり、
                貧困は個人の責任でと考えられ、国家の責任は明記していない。
                また、救済の対象は、極貧者で、体や精神に著しい障害のある者、
                70才以上の重病患者または老衰者、13才以下の幼弱者に限定され、
                だれかに依存しない限り生存できない労働無能者に限られていた。

     家族、隣人等による私的救済が中心。

「無告の窮民」(他に寄る辺のない者)にも公が救済

                     昭和4 救護法(公的扶助の原型)

     初めて救護を国の義務としたが、財政難のため実施を延期

(昭和7年施行)。権利性はない。

     貧困者のうち、怠惰・素行不良の者は対象外

昭和13 社会事業法(社会福祉事業法の前身)

     救貧事業、養老院、育児院など私設社会事業に助成

(優遇税制、補助金支出)

     施設の濫立や不良施設防止のため、規制

 

1 戦後社会福祉制度の確立期

☆ 福祉三法体制(戦後急増した貧困者対策)

昭和21 (旧)生活保護法(引揚者貧困者対策)

昭和22  児童福祉法(浮浪児、孤児対策)

昭和23  身体障害者福祉法(戦争による身体障害者対策)

昭和25  生活保護法(貧困者全般を対象、生存権保障を明確化)

昭和26  社会福祉事業法(社会福祉事業の範囲、社会福祉法人、

福祉事務所などの基盤制度を規定)

 

        2 拡充期

     福祉六法体制

(低所得者から一般的なハンディキャップを有する者に対象を拡大)

                      昭和35  精神薄弱者福祉法

昭和38  老人福祉法

昭和39  母子福祉法

昭和46  児童手当法

昭和48  老人医療無料化(福祉元年)

 

        3 見直し期

     第2臨調に基づく福祉の見直し

昭和55  第二次臨時行政調査会設置、社会福祉を含む行政改革を提言

昭和57  老人保健法

 

        4 改革期

                平成元  福祉関係三審議会合同企画分科会意見具申

     社会福祉事業見直し

     福祉サービスの供給主体のあり方

     在宅福祉の充実と施設福祉との連携強化

     市町村の役割重視

         ゴールドプラン策定

                      平成2  福祉八法改正

     在宅福祉サービスの積極的推進

     福祉サービスを市町村に一元化

平成6  エンゼルプラン策定

平成7  障害者プラン策定

平成9  児童福祉法改正法成立

         介護保険法成立

               

         社会福祉基礎構造改革

 

(資料出典:厚生社会・援護局企画課監修「社会福祉基礎構造改革の実現に向けて〜中央社会福祉審議会福祉基礎構造改革分科会中間まとめ・資料集〜」中央法規)




(2)      改革期の動向

 

 平成元年3月 福祉関係三審議会合同企画分科会「今後の社会福祉のあり方について」(意見具申)

@              社会福祉事業見直し

A              福祉サービスの供給主体のあり方

B              在宅福祉の充実と施設福祉との連携強化

C              市町村の役割重視

 平成元年12月 「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」(ゴールドプラン)の策定

                        西暦2000年までに整備すべき公共サービスの目標を整備

 平成2年6月  福祉8法改正

@          在宅福祉サービスの積極的推進(社会福祉事業として位置づけ)

A          福祉サービスを住民にもっとも身近な市町村に一元化

B          市町村及び都道府県老人福祉計画の策定

C          障害者関係施設の範囲の拡大等

 

平成4年6月  福祉人材確保法成立

 

 平成6年3月  高齢社会福祉ビジョン懇談会

                        「21世紀福祉ビジョン−少子・高齢社会に向けて」

@          公正・公平・効率性の確保

A          年金・医療・福祉のバランスの取れた社会保障の給付構造の実現

B          雇用政策、住宅政策、教育政策等関連施策の充実・連携強化

C          自助、共助、公助の重層的な地域福祉システムの構築

D          社会保障の安定財源の確保

 平成6年12月  「今後の子育ての支援のための施策の基本的方向性について」

(エンゼルプラン)の策定

                  「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略の見直し」(新ゴールドプラン)の策定

 平成7年12月  「障害者プラン〜ノーマライゼーション7ヶ年戦略〜」の策定

 

 平成9年6月  児童福祉法の一部を改正する法律成立

                   保護者が保育園を選択できる仕組みを導入

 平成9年12月  介護保険法成立

 平成10年3月  特定非営利活動促進法成立

 平成10年6月  社会福祉基礎構造改革について(中間まとめ)

平成10年9月  精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律

平成10年12月  社会福祉基礎構造改革を進めるにあたって(追加意見)

平成11年7月  「地方分権一括法」成立

平成11年10月  地域福祉権利擁護事業実施

平成11年12月  成年後見制度等関係四法成立

         ゴールドプラン21発表

         新エンゼルプラン発表

 平成12年4月  介護保険法施行

 平成12年5月  「交通バリアフリー法」成立

                 高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律

         5月  児童虐待の防止等に関する法律成立

         6月  社会福祉事業法改正 → 社会福祉法成立

 平成12年12月  「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書

 平成13年4月  「DV防止法」成立

                 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律


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(3)      「8法改正」と社会福祉事業法・社会福祉法

 

@「8法改正」

  1990年の8法改正

         (福祉6法−生活保護法)+老人保健法+社会福祉・医療事業団法+社会福祉事業法

 

  2000年の8法改正

         (福祉6法−老人福祉法−母子及び寡婦福祉法)+民生委員法+

社会福祉施設職員等退職手当共済法

 

                 社会福祉事業法を社会福祉法に題名改正

                 公益質屋法を廃止

 

          福祉六法…生活保護法(S21→S25)・児童福祉法(S22)・身体障害者福祉法(S24)

   精神薄弱者福祉法(S35)・老人福祉法(S38)・母子福祉法(S39)

 

 

 

A社会福祉事業法・社会福祉法の改正

  1951年 社会福祉事業法第3条(社会福祉事業の趣旨)

社会福祉事業は、援護、育成又は更正の措置を要するものに対し、その独立心をそこなうことなく、正常な社会人として生活することができるように援助することを趣旨として経営されなければならない。

 

             1990年の8法改正において

国、地方公共団体、社会福祉法人その他社会福祉事業を経営する者は、福祉サービスを必要とするものが、心身ともに健やかに育成され、又は社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるとともに、その環境、年齢及び津々の状況に応じ、地域において必要な福祉サービスを総合的に提供されるように、社会福祉事業その他の社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施に努めなければならない。

 

2000年の社会福祉法において

社会福祉法第3条(福祉サービスの基本理念)

 福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその能力に応じ自立した生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない。

 

      社会福祉法第4条(地域福祉の推進)

         地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営するもの及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない。

 

(補足)

1986年(昭和61年)

          社会福祉法人の設立認可権限が厚生大臣から都道府県知事に委譲された。

          厚生医療機関の指定権限が厚生大臣から都道府県知事に委譲された。

          日本赤十字社が臨時の寄付金募集をする場合、許可が厚生大臣への事前の届出に改められた。

 




(4)   欧米における社会福祉の史的展開

 

 

 1601年 イギリス エリザベス救貧法

1722年 イギリスで成立した ワークハウステスト法

1798年 イギリス マルサスの「人口の原理」

1834年 イギリス 新救貧法成立 @救済水準を全国均一 A居宅保護廃止→ワークハウス収容 

B劣等処遇の原則による

1852年 ドイツ  エルバーフェルト制度実施(1区に一人ボランティア委員を配置する)

1869年 イギリス ロンドンに慈善組織協会(Charity Organisation Society)

1870年      COS運動…個別処遇方法はケースワークに発展

                              慈善組織化の方法はコミュニティオーガニゼーションに発展

1880年 ドイツ  世界初の社会保障制度が実施される。

1883年 ドイツ  疾病保険

1884年 ドイツ  災害保険

 イギリス セツルメント…ロンドンでバーネット夫妻を中心に開始された

「トインビーホール」

     ソーシャルセツルメント運動

     隣愛運動…チャルマーズは友愛訪問の重要性を説いた

 1886年 アメリカ ネイバーフットギルド(アメリカのセツルメント運動の始まり)

 1889年 ドイツ  養老及び廃疾保険

 アメリカ シカゴ ハルハウス(セツルメント運動)がアダムスによって始められた

1909年 アメリカ 児童福祉白亜会議(ルーズベルト大統領)

1935年 アメリカ 連邦社会保障法 … 世界で始めて社会保障という言葉を使用

1942年 イギリス 「ベバリッジ報告」(社会保険および関連サービス)では、 「窮乏」「怠惰」「疾病」「無知」「不潔」を人間社会を脅かす「五巨人悪」であるとした。

 1950年 スウェーデン それまでの救貧制度をすべて公的扶助制度に切り替えた

1968年 イギリス 「シーボーム報告」

 1980年 スウェーデン 社会サービス法

1983年 スウェーデン 保健・医療改正

1988年 イギリス 「グリフィス報告」

 1990年 イギリス コミュニティケア改革(法)

                        @ケアマネジメントシステムの導入

                        A自治体によるコミュニティ計画の策定

                        Bサービス購入者と提供者の分離

                        C苦情処理システムの整備・監査システム強化

 1992年 スウェーデン エーデル改革

 1993年 スウェーデン LSS法(身体障害者に対する援助とサービス法)

1994年 ドイツ  介護保険法成立


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(4)の補足

     1722 ワークハウステスト法(ナッチブル法)。院外救済の抑制。教区に労役場を作り救済を求める者を収容したが、老幼、障害、疾病を問わない混合収容施設で、貧民から嫌われた。拒む者は救済しない。

 

     アメリカの社会保障法(1935)は、疾病保険が欠如しており、公的扶助も社会事業的色彩が強かった。現在でも、市場における自由競争と自助の原則が優先され、民間保険の役割が大きい。また、自助の困難な低所得の要介護者はメディケイドの対象となっている。

 

     1884年以降 セツルメント(Settlement)は英語本来の意味は<定着><移住>等だが、通常は、知識人や学生がスラム街等に定住して、労働者や貧困者と人格的接触を通して援助を与え、自力による生活の向上、社会的活動への参加を促すための運動・活動、またはそのための施設(診療所・宿泊施設・保育所等)・団体のことを言う。
1880年代、イギリスのロンドンのスラム街に、オックスフォード大学のA・トインビー教授等の提唱で、オックスフォード・ケンブリッジ両大学の学生が住み着いたのが始まりと言われ、日本でも1890年代からこの運動がはじまったとされるが、1920年代東大の学生が東京本所に開いたセツルメントが有名。

 

     1968年 「シーボーム報告」(Seebohm Report)は一般的に障害者のための地域を基盤にしたサービスの発展における転機と考えられる。主な結論は、自治体は障害に関連した問題の性質と規模についてのデータを蓄積すべきであるという勧告。また、保健サービスと民間セクターによってすでに提供されているサービスとともに、よりサービスを発展させ拡大させるべきであるということだった。

 

     「社会サービス法」(1980年:スウェーデン)

(1) 全体論的観点

個々人の全体的状況、つまり個々人の職業、家庭、娯楽、諸関係等を理解すること。
(2) ノーマライゼイション

社会諸サービスは、諸個人ができるだけ通常の生活をすることを支援するべきと期待されている。その達成のために、各自治体が、運送、ホームヘルプおよび訪問サービス等の施設・便宜を提供することが求められる。

(3) 持続性

クライアントとの日常的な接触が可能なところではどこでも、同じサービス提供者によって遂行されるべきである。これは、特に家族とか一人暮らしの人へのサービスとか施設ケアに適用される。

(4) 柔軟性

サービスと施設は常に、クライアントの環境と必要に適用しなければならない。

 

     「グリフィス報告」(コミュニティケア行動計画の為の指針)…福祉の多元化にお墨付きを与えた。さらに大規模施設でのケアから、自宅、小規模な地域施設、デイケア・センターでのケアなどコミュニティを基礎とするケアに変えることを勧告した。これが1991年のコミュニティ・ケア法(実施は1993年4月)につながっていった。

 

     1993年以来、在宅福祉の対策の重視、効率的な福祉サービスの提供の観点からコミュニティケア改革を実施しており、何らかの理由で介護が必要になっても、出来る限り地域または家庭的な環境で生活を続けることが出来るように本格的に進められている。ホームヘルプサービス等の個々のサービスについて別々に需要を判定し、サービス実施の決定を行い、サービス供給団体を地方自治体が直接行う方式から、地方公共団体のケアマネージャーが総合的に対象者の需要を判定し、ケアプランを作成し、民間事業者、非営利団体等による外部サービスを購入する方式へと転換しつつある。

     エーデル改革(1992年1月)は、それまで県が医療を担当し自治体が福祉を担当していたものを、連携を合理的、効率的にするために、高齢者などの長期療養型医療と福祉を統一して県から自治体に移し、高齢者の医療・福祉を統一したサービス体系にした。(今まで県が運営していたナーシングホームなどが市に移った。この結果、医師をのぞく他の看護職員5万人も市の職員になった。また社会的入院者の費用を市が県に払う制度ができたため、社会的入院者は激減した。)

 

     LSS法(身体障害者に対する援助とサービス法)約47,100人が、LSS法によって、何らかの援助やサービスを一回または数回受けた。これは総人口の0.5%に当たる。前年2000年に比較して、1,500人の約3%の増加である。LSS法の援助サービスを受けた多くの者は知的障害者であり、82,500人で、全体の85%を示す。

     ADA法1990年…この法律は合衆国司法省が管轄しており、米国民が傷害の有無にかかわらず等しい権利(公民権)を有していることを確認したもの。

米国司法省ADAホームページ http://www.usdoj.gov/crt/ada/adahom1.thm

     バリアフリーを規定した法律というより障害を持っている人を保護される弱い立場にとどめておかないこと目的とした法律

 

     504条 … 連邦政府の資金を受給している組織が行う事業の上での障害を理由にした差別を禁じたもので、公民権法を反映した内容になっている。



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(5)終わりに

 

(A)多元的に福祉をみる

 

        @地域で展開される「権利擁護」

 

     成年後見制度

弁護士会・司法書士会・社会福祉士会等の組織で成年後見等を担う動きが活発化

     福祉サービス利用援助事業

 基幹的社会福祉協議会を中心にして、生活支援を組み立てる活動が全国的に広がっている

 

        A「住まいの保障」と「住まい方」

     阪神大震災・鳥取西部地震以後、住宅支援の取り組みを通して、住み続けられることを目指す、居住保障の視点が現れた。

     「居住福祉論」としての切り口

  日本居住福祉学会(早川一男会長)

 

        B社会福祉施設の変化

                作業所やグループホームの増加

                個室化やユニットケアの方向

                施設の小規模・多機能化の動き

 

 

 

 

 (B)社会福祉援助の価値と倫理

 

        @社会福祉援助のとらえ方

         援助する側・される側 → 非援助者はニーズを抱えた主体的な生活者

                                  援助する者は、生活者が自ら自立して生きることを

                                  側面的にサポートする

 

         利用者主体、権利擁護、エンパワメント、ストレングス

                (ネガティブな利用者観からの脱却)

 

 

        A社会福祉における価値と倫理

         社会福祉向上とクライエントの自己実現を目指す専門職

         その専門職としての職責

                個人の尊厳、自己実現、クライエントの利益の優先、個別性の尊重…