注意書きの詳細

ここでは、原文と邦訳を併記しました。(細かな言い回しや修飾を省略している場合があります。)

A.ヴュルテンベルクの例

ヴュルテンベルク葉書の注意書き

(原文と邦訳)
Zur gefälligen Beachtung beim Gebrauch der Correspondenz-Karte
郵便葉書を利用するに当たっての注意について

1) Formulare können bei allen Poststellen und Landpostboten gegen Entrichtung des Stempelwerthes bezogen werden.
1) 用紙は、すべての郵便局および集配員から、印面に書かれた金額で購入のこと。
註)印面付き葉書が用紙代込みであることと、どこで購入すべきかを記述しています。ここではLandespostboten を単に集配員と訳しましたが、直訳では地方の集配員のことです。郵便局のない地方では、集配人が売ったのでしょう。もともと Poststellen も田舎の郵便局といったニュアンスもあるのですが、地方のことだけをここで記述しているとは思えません。

2) Der obige Vordruck für die Adresse ist deutlich und vollständig auszufüllen.
2) この上の宛名を書く欄には、はっきりと正しく記入のこと。
註)注意書きの上に一番太い線が見えると思いますが、その右上の2行について説明します。上から Bestimmungsort (目的地=町の名前)を書く欄、その下が住所(当時は通りの名前と番地)を書く欄です。どう見ても住所欄としては小さいのですが、左横を見ると、小さく Wohnung des Empfängers, wenn sie mit Sicherheit angegeben werden kann. (確信が持てる場合は受取人住所)、と書かれています。目的地以外は曖昧ならむしろ書かないでほしい、という気持ちから、あえて小さくして積極的に書かせないようにしたのではないでしょうか。

3) Die Rückseite des Formulars kann in ihrer ganzen Ausdehnung zu Mittheilungen jeder Art benutzt werden, welche, sowie die Adresse, mit Tinte, Bleifeder oder farbigem Stifte geschrieben sein können.
3) この用紙の裏面は、広く使って、通信文をどのような書き方で書いても良い。(表の)宛名も、インク、鉛筆、色鉛筆のどれを使って書いても良い。
註)裏面の書き方ですが、今の感覚から言うと当たり前なことです。しかし、オーストリーで発行された世界最初の葉書は、裏面に書く通信文は20語までという制約がありました。実際はそれを越えて書かれることがあったため、(守れないような無駄な?)制約はありません、とわざわざ書く必要があったようです。書き放題、という印象がありますが、そう言っておきながら一方で裏面にしっかりと11行の罫線を(しめて12行分の通信欄になるように)印刷してあるところが面白いのですが。

4) Die Entnahme von Postvorschuß ist bei Correspondenz-Karten nicht zulässig; dagegen ist das Verfahren der Recommandation, sowie der Expreßbestellung gestattet.
4) 郵便葉書を代金引換に使用できないが、書留および速達には使用できる。
註)ここでは、特殊扱いの規定について述べています。Postvorschuß は、正確には現在の Nachnahme (代金引換)の前身に当たるサービスを指します。最初の代金引換は、先に差出人に徴収金額を渡すやり方をとっていたのですが、受取人が支払いを拒否し、さらに差出人が返済を断るケースが増えたため、1856年にプロイセン王国で現在のサービスの形に直し、それが後に広まったようです。
 当初はこのように利用できなかったのですが、後に代金引換にも葉書が利用されるようになりました。

5) Die Correspondenz-Karte kann zu schriftlichen Mittheilungen sowohl innerhalb Württembergs, als auch für den Verkehr nach Norddeutschland, Oesterreich, Bayern, Baden und Luxemburg benutzt werden.
5) 郵便葉書は、ヴュルテンベルク領内だけではなく、北ドイツ(連邦)、オーストリー、バイエルン、バーデンおよびルクセンブルク宛の通信に使用できる。
註)これが後に1Kr.葉書(市内用)で問題になる一文です。郵政局側から見れば、不足料金分の切手を貼り足すことは当然ですからあえて書くまでもない、そうではなく葉書がどこまで配達され得るかの「配達可能地域」を規定しているのであるから正しいはず、と思ったのでしょう。しかし利用者側から見れば、1Kr.葉書と3Kr.葉書の両方にこれが書かれているのですから、どちらもそのまま外国に出せると誤解されても仕方ないでしょう。(普通はそれを誤解と言わず、都合の良い解釈と言うようですが)

6) Der Absender ist nicht verpflichtet, sich namhaft zu machen.
6) 差出人は氏名を記入する義務はない。
註)一番表現に困った文章です。直訳では「名前を挙げる義務はない」ですが、現代に通じるところがないので、適訳が見つかりません。当時の差出人は、裏面に差し立て地(市町村の名前のみ)、日付、本人のサインを書くくらいです。(個人の住所を書く例は、まずありません。)おそらく、(表に)差出人氏名を明記しなくて良い、という内容だったのではないでしょうか。


(往復葉書の返信部の例)

返信部の注意書き

(原文と邦訳)
Zur gefälligen Beachtung beim Gebrauch der Correspondenz-Karte
郵便葉書を利用するに当たっての注意について

Die Rückseite ist für die brieflichen Mittheilung bestimmt. Diese können, gleich der Adresse, mit Tinte, Bleifeder oder farbigem Stifte geschrieben werden. Der Absender braucht sich nicht zu nennen.
裏面に通信文を書くこと。そこには、宛名同様に、インク、鉛筆、色鉛筆を使って書くこと。差出人は氏名を記入する必要はない。
註)上記の3)と6)の抜粋で、若干表現を変えていますが、基本的には変わりません。ただ、もう少し往復葉書としての注意書きがあってもよさそうなのですが、その点を曖昧にしている理由がよくわかりません。


ここでは、原文と邦訳を併記しました。(細かな言い回しや修飾を省略している場合があります。)

B.バイエルンの例

バイエルン

(原文と邦訳)

1) Gestempelte Formulare werden von allen Postanstalten, Briefträgern und Landpostboten gegen Zahlung des Rennwerthes verabfolgt. Ungestempelte Formulare sind bei den Postanstalten zu 1 kr. für je 5 Stück käuflich.
1) 料額印面のある用紙は、すべての郵便局と配達員および集配員から、額面を支払うことによって引き渡される。料額印面のない用紙は、郵便局にて5枚につき1Kr.で購入できる。
註) バイエルン最初の印面付き葉書以外に、当時まだ残っていた印面なし葉書の購入の仕方まで書かれています。印面なしの葉書は、発行当初50枚9Kr.であったことを考えると、若干割高です。

2) Die Rüchseite ist für die brieflichen Mitheilungen bestimmt. Diese können, gleich der Adresse, mit Tinte, Bleifeder oder farbigem Stifte geschieben werden. Der Absender braucht sich nicht zu nennen.
2) 裏面に通信文を書くこと。そこには、宛名同様に、インク、鉛筆、色鉛筆を使って書くこと。差出人は氏名を記入する必要はない。
註) ヴュルテンベルクの往復葉書の返信部の場合と全く同じ表現です。

3) Postkarten werden nur frankirt befördert. Recommandation und Expreßbestellung sind zulässig. Die Formulare können auch zu Begleitadressen und Signaturen für Packete sowie zu Postvorschußsendungen verwndet werden.
3) 郵便葉書は、郵税全納の場合に限り配達される。書留と速達が利用できる。この用紙は小包送付票の代わりにも使え、代金引換郵便にも使える。
註) 葉書の使い方の応用としていくつか挙げられていますが、ヴュルテンベルクでは禁止されていた葉書による代金引換が、バイエルンでは可能であると明記されている点が注目されます。ただ、この当時の特殊扱いの使用例は大変少なく、なかなか見ることができません。

4) Postkarten sind sowohl im innern Deutschlands, als auch nach fremden Staaten, mit Ausnahme Rußlands zulässig.
4) 郵便葉書はドイツ国内はもちろんのこと、ロシアを除いた諸外国宛に利用できる。
註) ヴュルテンベルクではすでに削除されていた配達可能区域の記述が、バイエルンではまだ載せられています。ロシア(とその属領)を除いて、とありますが、それではいったいどの国へ送ることができたのかは、これではよく判りません。(実例を見ると、スイスやオーストリーなど近隣諸国がほとんどです。)


ここでは、原文と邦訳を併記しました。(細かな言い回しや修飾を省略している場合があります。)

C.バーデンの例

バーデン

(原文と邦訳)
Zur gefälligen Beachtung beim Gebrauch der Correspondenz-Karte.
郵便葉書を利用するに当たっての注意について

1) Die Correspondenz-Karte kann zu brieflichen Mittheilungen jeder Art sowohl innerhalb des Großherzogthums Baden, als auch für den Verkehr nach dem Norddeutschland Postgebiete, nach Bayern, Württemberg, Oesterreich und Luxemburg, sowie nach den in der Folge zu veroüffentlichenden fremden Staaten benützt werden.
1) 郵便葉書は、バーデン大公国領内で手紙が配達される地域だけではなく、北ドイツ(連邦)の郵便所轄地区、バイエルン、ヴュルテンベルク、オーストリーおよびルクセンブルク、告知されている他国宛の通信に使用できる。
註) 宛先として国名が記載されていない「他国」について曖昧さが残るものの、基本的には他の記載と変わりません。

2) Auf die Vorderseite darf nur die Adresse zu stehen kommen; zur Niederschrift der Mittheilung selbst dient die Rückseite. Außer der Tinte ist die Anwendung von Blei- und farbigem Stifte gestattet.
2) 表面は宛先の住所のみ許可する。通信文の執筆には、必然的に裏面が使用される。インク以外に鉛筆、色鉛筆の使用を許可する。
註) 言い回しは違いますが、結果的に、他国の葉書と同様、「表は住所、裏は通信文、筆記用具にはインク、鉛筆、色鉛筆が使用できる」ということには変わりません。

3) Die Beförderung erfolgt nur bei Vorauszahlung des Briefportos; unfrankirte oder ungenügend frankirte Karten werden nicht abgesandt.
3) 郵便料金を前納している場合に配達する。未納または料金不足の葉書は配達しない。
註) 後年、料金が不足している場合は受取人が不足料金+手数料を払うことになりますが、ここでは明確に、配達しないことを宣言しています。

4) Die Formulare werden von der Großh. Postverwaltung zu dem an den Postschaltern veröffentlichen Selbstkostenpreise abgegeben.
4) 用紙は(バーデン)大公国郵政局の郵便窓口に掲げられている料金で販売される。
註) 用紙、すなわち、切手の貼られていない葉書の値段は窓口で分かるということを、わざわざ葉書に書いてあります。料金を明示しているバイエルンの例よりは、やや不親切です。

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