「ある一点から始まり、無限に成長していくことのできるかたち」、螺旋は、古来、生命現象を象徴するかたち、あるいは宇宙、神を象徴するかたちと考えられてきました。
 ミクロの結晶から天空にかかる壮大な銀河まで、あらゆる自然現象のなかに螺旋は見られます。螺旋は、自然の深遠な普遍性を表しているのです。

 数学的には、螺旋は様々な形態をとることができます。 「アルキメデス螺旋」では、隣り合う曲線の間の距離が一定です。 これに対して「対数螺旋」は、隣り合う曲線の間の距離が指数関数的に広がっていきます。 またこの螺旋は、2つの弧が相似形(大きさは異なりますがかたちは同じです)の唯一の螺旋でもあります。
 3次元の空間においては、螺旋は「円錐螺旋」として現れます。 それは、螺旋を描きながら平行移動していく点によって描くことができます。

 螺旋はしばしば成長や生命の過程と結びつくので、イギリスの科学者T・クックはこれらを「生命の曲線」と呼びました。

 また、螺旋というシンボルは、世界のほとんどの神話、伝説、呪術のなかに見出すことができます。
 ウロボロスのヘビや世界蛇ヨルムンガンド、ナバホ族の砂絵(そーいえば螺旋の一形態、渦巻きというかたちは、よくヘビに象徴されて出てきますね)、太極の図 ── 。
 そして、その意味するところもまた共通するところが多いようです。すなわち、無限・生成・生命力などです。

 古墳の壁画にしばしばこのモチーフが選ばれるのは、死者の再生を願ってのことでしょうか。 それとも、死後の世界における永遠の命を表しているのでしょうか。
 宮城の魔除け儀礼につかわれた「隼人の盾」にも螺旋形が見られますが、これは魂を引っかけるための鉤を示しているといわれます。  祭具や宗教建築の装置に使われる唐草や卍も一種の螺旋ということができるでしょう。
 これらにも、魔を祓う力が期待されました。

 興味深いのは、宇宙の構造を象徴的に示すとされる密教の曼陀羅です。 たとえば、金剛界曼陀羅は中心から右回りに外へ向かって拡大していく運動(降下門という)と、右下から中心へと求心していく運動(向上門という)の、二つの螺旋を構造として内包しています。


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