まだ本格的な夏の到来前の涼しさと蒸し暑さが交互に迫ってくる曖昧な気候の中で、ここ数日続いていた熱帯夜が、昼間に降った雨のせいかうってかわって涼しい夜になった晩のこと。
わたしは、布団の上に仰臥して、少し開いた障子の隙間から、月を見ていた。
夏が苦手なので、この涼しさにほっとしながら、なのになかなか寝付かれない。暑い間はなにもする気が起きないと思いながら、望み通りに寒くなってもなにもできないでいるときのように。
こんな夜は不安になる。自分が曖昧に揺らいでいる。
……子供の頃、この星が大変な偶然に恵まれて、命をはぐくんだことを知ったとき、その偶然の深さにおののいた夜を思い出す。宇宙の広大さ、地球という環境の、さらには自分の存在の、なんとちっぽけなことか。
子供の時分に限らず、そんなことに思いを馳せれば、今でもわたしは畏怖するしかない。
月は氷菓子のように冷たい光なのに、熱に潤んだような輝き。見ていて飽きない。
魅入られたように月を見つめているうちに、ふとアイスクリームが食べたくなった。