それは、一辺が6cm程の正立方体で、白と黒の市松模様が描いてあった。程良い重さだが、手のひらに少し小さい感じがする。そして、端から2cm程の白と黒の四つ角に、これみよがしなスウィッチがひとつ……。
しばらく男はふらふらしなりながらも立ちつくし、そのスウィッチを焦点の定まらぬ眼でじっと睨んでいたが、いきなりそれを押した。
ボムッ!!
小箱は小型爆弾が仕掛けられており、存外小さな爆発音を発して爆発した。男は呆然と立ちつくす。前髪が少し縮れていたし、頬に軽い火傷を負ったのか少しヒリヒリする。
すっかり、いい気分はどこかへ吹き飛んでしまった。
男は酔いの醒めた目で、手の中に残った小箱の残骸を地面に叩きつけ、キッと中天に浮かぶ月を振り仰いだ。
月は素知らぬ風で世界を淡く冷たく照らしつづけた。