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海の記憶 2



 けだるい夏の午後に、窓をほんの少し開けて、僕はお気に入りのロッキングチェアに腰を据え、昼寝をする。
 細く開いた窓から入る風がやわらかく頬に当たり、すこぶる気分がいい。庭の芝生は、海の香りにも似て、僕の想像力を刺激する。書斎から持ってきた読みかけのミステリをサイドボードに伏せて、目をつむった。


 夢の中の海は、美しいエメラルドグリーンの穏やかな海だった。ただ、ぼろぼろに崩れた鉄筋コンクリートのビル群が波に打たれている。もう永い時を経ているために、ざらりとしたコンクリ面には、珊瑚や貝や海藻がこびりついている。……それを僕は、断崖絶壁から、眺めている。いつもの夢──。
 やわらかな風が吹いている。
 ここへくると、とても気持ちが穏やかになる気がする……。


 あの、崩れたビルは、未来なのだろうか? ただの僕の幻想なのだろうか?



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