空気が冷えてくるぶん、月は青く白く輝きを増す。冷たい季節は月を磨きたてるようだ。色彩のない夜にも、冬の足早な足跡はみてとれる。裸になった木々が、群青の夜空に幾何学模様を描く。月がその迷路に彷徨うと、体が細かに分断され、切れ切れの月が申し訳なさそうにのぞいている。
風がびゅうと吹き荒れた。
凍てつく寒気が世界を冬に仕立てあげる。こうしていると肌に寒さが忍び寄るのが感じられる。もう薄着では出歩けなくなり始めたな、とわたしは思った。
そういえば、虫たちや動物たちの声が聞かれなくなって久しい。
彼らは冬をどうしているのだろうか?
昼間わたしを楽しませてくれる小鳥たちは、どこで寒さをしのいでいるのだろう?
考えているうちに、見晴らしのいい高台へ来ていた。下は黒い畑が横たわっている。その真ん中に細い路が、畑の向こう側と高台とをつないでいる。
わたしは細い道を辿り始めた。
ここでは全天の星空が眺められるのだ。空では冬の星座が配置を終えようとしていた。夏の大三角は南天の夜空に消え始めている。ここでも冬の訪れは感知できた。
体のしんに寒さがとどこうというくらい長い間突っ立っていたが、寒さに負けて帰路についた。
帰路につきながら、明日からはセーターを羽織らねばならないと思った。