真夜中に散歩に出て、林の間の道をつ、つ、つ、と歩いた。
青い光沢を放つ月は半分かけて、群青の天幕の上を滑るように下降している。夏のこんな夜には小さな狩猟者達が懐中電灯を掲げて樹の間を目を光らせて歩いている。
光線が樹の間を抜けて空に上がるのが目にはいる。緩やかに大円をかいて、光線は樹の中に沈んでいった。なにかの合図なのだろうか。
林の間の道をつ、つ、つ、と歩いていたら、道端に甲虫がひっくり返っていた。じいっとして微動だにしない。これは死んでいるのだな、と思ってこんと蹴っぽったら細い鉤針のある足がわさわさと動いた。
生きている! 私はそっと手を差しのべて甲虫を起こしてやった。……ありがとうございます、体に似合わぬか細い声で礼を言うと、甲虫は飛んでいった。
いつ、いたずらな狩猟者に捕らわれないともかぎらぬ身だ。気をつけろよ、私は飛んでいく羽音を聞きながら呟いた。