時間になっても月が出てこないというので、町中で雲隠れしたお月さんを捜しまわった。
わたしもシビレ花粉を手に参加した。中にはナイフや拳銃を持ち出した者もいたという。
やがて、居酒屋でとぐろを巻いているお月さんが発見された。
いろいろあった後、やっとお月さんが天に昇ると、今晩は満月であるのに、端がボロリと欠けている。しかし、やっと月が出たと皆酒を飲みに居酒屋へ入ってしまったので、それに気付いた者は少ないようだった。わたしもそれほど気にかかりもせず、うちに帰るとすぐに寝てしまった。
次の日の朝刊に、「お月さんがあまりに抵抗したので、鉄砲で撃ったところ、端っこを欠けさせてしまった」と警察の談話が載っていた。わたしは少しばかりお月さんに同情したが、すぐに自業自得だと思い直した。