明け方の夢にしがみつかれ
暗くて
語れない頭はさらに暗い
こちらを向いている花瓶の花々
ゆっくりと睡りの池を漕いで回るように
こうべをめぐらす
血の袋をたずさえ
私は私のからだの外円を生涯をかけて
めまぐるしく回るだけなのか
建物までが背広を着てくたびれているが
外へ出ると
まず空気から異様に澄んできて
服が凍る
霞む山頂に暗雲がやどるように
木々の枝先はろう斗状に光をあつめ
いのちを噴きだす
大きなランドセルを背負い
カタカタと歩く小学生のために
凍った地が裂けて
道があらわれる
井坂 洋子「日のこうべ」