光の帝国
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恩田陸著、集英社

 サブタイトルに「常野物語」とついているこの小説は、不思議な力を持つ、「常野」という一族の物語短編集です。
 読むと穏やかな気持ちになれます。近頃はぎすぎすした物語が多すぎる気がしている人にお勧め。
 不思議な力、いわゆる超能力のようなもの……例えば、歴史の全てを覚え込んでしまう一家や、時間を遡らせることのできる娘、足が速いこと、長生きできること……そんな特別な能力を持った一族が、ひっそりと暮らしている様子をかいています。
 「常野」という名の由来は、「権力を持たず、群れず、常に在野の存在であれ」という意味だと本文に書かれています。けれども常野一族は、そうして野に散っていったにもかかわらず、いろいろな因果で収束の方向に動いていきます。それになにか意味があるのだろうか? と登場人物たちは考えているのですが、なにか新しい時代がくるという予感が漂うばかりで、とりあえず、この本は終わっています。あとがきをみると続きが書かれる予定ではあるようですので、続きが楽しみですね。
 まだ読んだことのない人のために、概要をおおまかに書くにとどめましたが、この物語の根底は悲しみと悲しみを包み込むぬくもりがあります。
 久々に、暖かな気持ちになった本です。