国際疾病分類第10版:ICD-10(世界保健機構(WHO)作成)
疫病分類学上の妥当性がまだ不明な障害であり、関心と活動の範囲が限定的で常同的反復的であるとともに、自閉症と同様のタイプの相互的な社会的関係の質的障害によって特徴づけられる。この障害は言語あるいは認知的発達において遅延や遅滞がみられないという点で自閉症とは異なる。
多くのものは全体的知能は正常であるが、著しく不器用であることがふつうである;この病態は男児に多く出現する(約8:1の割合で男児に多い)。
少なくとも一部の症例は自閉症の軽症例である可能性が高いと考えられるが、すべてがそうであるかは不明である。青年期から成人期へと異常が持続する傾向が強く、それは環境から大きくは影響されない個人的な特性を示しているように思われる。
精神病エピソードが成人期早期に時に出現することがある。
【診断ガイドライン】
診断は、言語あるいは認知的発達において臨床的に明らかな全般的な遅延がみられないことと、自閉症の場合と同様に相互的な社会関係の質的障害と、行動、関心、活動の限局的で反復的常同的なパターンとの組み合わせに基づいて行われる。自閉症の場合と類似のコミュニケーションの問題は、あることもないこともあるが、明らかな言語遅滞が存在するときはこの診断は除外される。
A.表出性・受容性言語や認知能力の発達において、臨床的に明らかな全般的遅延はないこと。診断のあたっては、2歳までに単語の使用ができており、また3歳までに意志の伝達のための二語文(フレーズ)を使えていることが必要である。身辺処理や適応行動および周囲に向ける好奇心は、生後3年間は正常な知的発達に見合うレベルでなければならない。しかし、運動面での発達は多少遅延することがあり、運動の不器用さはよくある(ただし、診断に必須ではない)。突出した特殊技能が、しばしば異常な没頭にともなってみられるが、診断に必須ではない。
B.社会的相互関係における質的異常があること(自閉症と同様の診断基準)。
(a) 視線・表情・姿勢・身振りなどを、社会的相互関係を調整するための手段として適切に使用できない。
(b)(機会は豊富にあっても精神年齢に相応した)友人関係を、興味・活動・情緒を相互に分かち合いながら十分に発展させることができない。
(c)社会的・情緒的な相互関係が欠除して、他人の情動に対する反応が障害されたり歪んだりする。または、行動を社会的状況に見合ったものとして調整できない。あるいは社会的、情緒的、意志伝達的な行動の統合が弱い。
(d) 喜び、興味、達成感を他人と分かち合おうとすることがない。(つまり、自分が関心をもっている物を、他の人に見せたり、持ってきたり、指し示すことがない)
C.度外れた限定された興味、もしくは、限定的・反復的・常同的な行動・関心・活動性のパターン(自閉症と同様の診断基準。しかし、奇妙な運動、および遊具の一部分や本質的でない要素へのこだわりをともなうことは稀である)。
次に上げる領域のうち少なくとも1項が存在すること。
(a) 単一あるいは複数の、常同的で限定された興味のパターンにとらわれており、かつその内容や対象が異常であること。または、単一あるいは複数の興味が、その内容や対象は正常であっても、その強さや限定された性質の点で異常であること。
(b) 特定の無意味な手順や儀式的行為に対する明らかに強迫的な執着。
(c)手や指を羽ばたかせたり絡ませたり、または身体全体を使って複雑な動作をするなどといった、常同的・反復的な奇異な行動。
(d) 遊具の一部や機能とは関わりのない要素(たとえば、それらが出す匂い・感触・雑音・振動)へのこだわり。
D.障害は、広汎性発達障害の他の亜型、単純型分裂病、分裂病型障害、強迫性障害、強迫性人格障害、小児期の反応性・脱抑制性愛着障害などによるものではない。
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