以津真天

 夜間に現れて人の死体を喰い漁る怪鳥です。戦乱や飢えで死んだ人の死体をいつまでも放置しておくと、いつまで死体をこのままにしておくのか、という呪詛を込めて「イツマデ、イツマデ」と鳴きます。戦乱などで、自分が見捨てた仲間を思って心を痛めたとき、その心の隙間を狙って現れるともいわれます。その姿は『百鬼夜行』によると、頭が鬼、体は龍の様で、翼を広げると5メートルを超えるといわれます。

例1 『太平記』巻十二広有射怪鳥事
 建武元年の秋、紫宸殿の屋根に夜な夜な怪鳥が現れた。稲光を従え、炎を吐きながら「いつまでも、いつまでも」という不吉な声で鳴くこの怪鳥を退治するため、頼政や義家の故事にならって弓の名手である隠岐次郎左衛門広有を指名した。義家は鏑矢だけで狙い定めて射ると大音響と共に怪鳥が落ちてきた。この鳥をよく見ると、頭は人間のようで、体は蛇、曲がった嘴に歯が食い違って生えており、剣のように鋭く尖った足の毛爪、という姿であった。翼を広げると5メートルを超えたという。


出典


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