メロー

 アイルランドの海の妖精。海を意味する「ムイール」と娘を意味する「オーイ」の合成語「モルーハ」が転じて「メロー」になったそうです。海の下にある乾いた陸地に住んでいます。海をくぐって地上に出るにはコホリン・ドリューと呼ばれる赤い羽の三角帽子を使いますが、地上にいる時にその帽子を盗まれると海へ帰れなくなってしまいます。人間がその帽子をかぶるとメローの住処に行けるようになります。
 男のメローは非常に醜く、顔も体も緑色をして赤くとがった鼻と豚のような目を持ち、手はヒレになっています。しかし、性格は温厚で人間に対しても好意的です。地上に上がってからは小さな牛の姿をしている時もあります。女のメローは美しく、流れるような髪に真っ白な腕、黒い瞳、魚のような尾と指の間に小さな水かきを持っていて、しばしば人間の男性を夫にします。マーメイドと違い、彼を捨てることはありません。生まれてくる子供は体が鱗で覆われ、指の間に水かきがあります。
 時々、角のない小さな牛の姿で陸に上がる事があります。また、嵐の前にもしばしば姿を見せます。メローが人間に害をなす事はほとんどありませんが、溺死した人間の魂を蒐集するという悪癖を持っています。彼らは嵐の夜に小枝細工の籠を波間に浮かべ、魂を捕獲しては海底の自分の家に置いておきます。


参考文献


関連