<ロックギタリスト=ジェイル大橋>


<挑発的でちょっとシャイなギター小僧>、それが14年前ジェイル大橋さんに出会った頃の印象です。

まだ二十歳そこそこの華奢な少年らしさを残した大橋さんは、当時から紳士然としていて、でもちょっとコケティッシュ(表現がふるいなぁ…)なエース清水さんとは対象的で、ギターテクニックや少々攻撃的なパフォーマンスでファンを引き付ける、聖飢魔IIのギタリストでした。



初めて彼のステージをみたのは、86年の暮れ、新宿コマ劇場での年越しライブ。
ステージの上を、まさにそのメイクのごとく猫のようにしなやかに走り回り、なによりもギターを弾く姿があまりにかっこよくて、エースファンの私でも目を奪われました。
ライブの選曲は、その年の11月に発売されたアルバム「地獄より愛をこめて」からがほとんどで、その中心的存在でもあった大橋さんがこれからの聖飢魔IIの音楽を引っ張っていくのだろうと私は思っていました。
同じ頃でた聖飢魔IIをモデルにしたファミコンの音楽も確か大橋さんが担当していて、彼の音楽活動は保障されているように見えました。

しかし、その気持ちは聖飢魔IIとは別のところに向いてしまったのか、年が明けたとき、彼は聖飢魔IIを抜け、アメリカへと渡ってしまったのです。
「なんで今・・・?」が正直な気持ちでした。

「Cats in Boots」というバンドを作ったことは当時雑誌のインタビューで読みましたが、その活動については私はよくわかりません。現在、音は「Last Works」※1というアルバムで聴くことができます。

しばらくして聖飢魔IIも聴かなくなってしまった私ですが、ギタリストとしての大橋さんは忘れられない存在で、「なにされているんだろう。」と時々思っていました。



再会は13年後のやはり暮れ、聖飢魔IIの解散が明日にと迫った99年の12月30日。 東京ベイNKホールの広いステージと、そして巨大スクリーンの中でした。
歴代のメンバーが勢ぞろいしたそのステージで、スクリーンに映し出された大橋さんは、少しはにかんだような少年らしさは昔のまま。でも、挑発的でとんがったところが抜けて、ホントに純粋に音楽を楽しんでいる様に見えました。
正直、聖飢魔IIのメンバーだった頃には、彼のこんな姿がみれるとは思わなかった。年月の重みを感じました。

そして解散の時を迎え、<ジェイル大橋><聖飢魔II>とともに私の中で伝説となっていったのです。



現在、大橋さんは「THE OUTSIDERS」というバンドでギタリスト兼ボーカリストとして活動されています。
「FANTSIA」※2というアルバムを聴きましたが、ギターやベースのリフ中心のロックンロール。 低めでけだるい彼の声がアメリカンなロックにぴったりで、バンドのカラーによくあっていると思いました。コーラスやちりばめられた小物の感じと、乾きめのギターもかっこいい。

三度(みたび)、大橋さんのライブを観る機会が訪れました。<ジェイル大橋>ではなく、初めての<大橋隆志>さん。
9月3日、高田馬場AREAで行われた「THE OUTSIDERS」のライブです。

ステージは大橋さんの弾く、静かな1本のレスポールから始まりました。
・・・そう、その一瞬ということでいえば、そこにかつてのギター小僧の姿はみいだせませんでした。
その後、ハイテンションで盛り上がったことはいうまでもありませんが、 メンバーの<卒業>という場面も手伝ってか、会場はとてもファミリーな空気に包まれて、大橋さんが気持ちよく<大橋さんでいられる>空間ができていると思いました。
実は、あまりバンドの知識がないままいったのですが、アルバムから想像した職人気質のライブ?とは程遠く、 <音楽を楽しんでるな…>
年末に大橋さん対して感じた同じ思いがここでもしたのです。



・・・考えてみると私のみた三度のライブで、大橋さんはどれも違うポジションにいました。

一度めは聖飢魔IIという、もしかしたら巨大組織の一員として、二度めはそのゲストとして(古巣にもどってきた家出少年?)、そして三度目は自らが率いるバンドのリーダー?として。
それぞれに違う表情や側面をみせてくださったように思います。(別に悪魔だったとかそーゆーことじゃなくて(^^; )
しかしそのすべてに共通していえることがあり、それは常に彼のギターは<主役>であり、彼が<ロックギタリスト>であるということ。
簡単なようで難しいことなんだと思います。
それを得るために、常に自分が自分でいられる場所を求めているのかもしれない。
ルーク篁さんがいっていた「大橋は、どこにいても大橋なのよ。」という言葉を思い出しました。

そして思うことは、自分であり続けることを追求しながらも、私の記憶に刻まれていた<ちょっと挑発的なギター小僧>は、いつのまにか違う手段でファンも仲間もひきつける、 <大人のロックギタリスト>になったな。そして私は、またまんまとハマってしまったな。ってこと。
「THE OUTSIDERS」、ぜひライブにいってみてください。メンバーの卒業でいったんトリオになるそうですが、新生「THE OUTSIDERS」も聴いてみたいと思います。

(2000年9月14日)


※1 1989年にワールドデビューを果たした「Cats in Boots」の1993〜5年までの未発表曲を集めたアルバム。4トラックでの録音もあり、 結構マニアなもの。
※2 1999年の12月にでたアルバム。7曲めの「LITTLE FLAME」の哀愁を帯びたアコースティックな感じがいいです。ラストの「夢と共に歩こう」も心に染み渡ります。




Live List 


2000年12月25日 吉祥寺Planet-K

「なんか今日は帰れるみたい。」時計をみたら6時でした。いつもだったら9時だったりするのに。クリスマスプレゼントですかね。
っというわけで、12月25日、思いがけず、THE OUTSIDERSのライブにいくことができました。
私にとってはトリオになっての初めてのOUT。(ただし、ドラムの広瀬さんは今年いっぱいで抜けられるようです。)
相変わらず不勉強のままライブに望んでいるので、曲名は怪しいんですが・・・(^^; (違ってたらどなたかご指摘ください。)

場所は吉祥寺の「Planet k」 1999年にできた新しいライブハウスです。
暗転のステージ、メンバーが立ち位置につくと、ゆったりとした1曲め「CRY」。
「My Friend」というフレーズが優しく心に響きました。前回のライブでファミリーな空気を感じた私は、メンバーが抜ける今この曲なのかな?などと深読みしながら聴いちゃいました。
つづいて「MAMA SAID,GOOD BOY」? 激しい曲でステージ前の人たちは飛んでます(笑)。
ピタッとしたシャツに身をつつんだ大橋さんの、大きく開いた胸元に2つのペンダントが揺れて超セクシー。(^^;

12月8日(ジョンレノンの命日ですね)発売の新しいマキシシングルからも2曲。ギターはレスポールからテレキャスターに(だったな。多分)。
あいかわらず、耳に残るリフでかっこいいですね。ギターもベースも。トリオになって余計際立った気がしました。ジミーさんのファンキーなベースもかっこよい。
押さえたり盛り上げたりとよいバランスでライブは進んでいきます。
前回4人のときの記憶があいまいなのですが、今回は打ち込み物もありました。この辺で音の広がりもでて、トリオといいながらもメリハリの利いたライブなんだと思いました。
終盤の「NON―STOP」ではもうノリは最高潮! それまで静かに見てるなぁと思っていた隣のお姉さんも、この時ばかりはノッてました。(笑)
「心も体も開放してノレ」といわれても、こむずかしくてノレナイ音楽があるとすれば、 なにもいわれなくても、頭がカラッポになって、体が勝手に動いてしまう
それがR&R(OUTの解釈だとR&P?・・・Rhythm&Psycho)のスゴイところ、OUTSIDERSライブのもつ魔力だと実感しました。
・・・突然、クリスマスプレゼントが客席に投げ込まれ、「メリークリスマス!」という言葉を残してメンバーはステージを後に。

ライブの余韻が残る中流れ始めた、ジョン&ヨーコの「HAPPY XMAS」が印象的でした。
(2000年12月30日)

聖飢魔IIの音