エルドラド考〜4つのEL・DO・RA・DOと作者


「EL・DO・RA・DO」という曲があります。
ラストステージのトリを飾った、まさに聖飢魔IIを代表する作品といえるでしょう。
信者(ファン)はこの曲によってEL・DO・RA・DO(黄金郷)へ導かれ、ラストステージでは今後各々がみつけなければならない<さらなる黄金郷>を探すべく道筋を作ってくれた曲かなって思ってます。
この曲は3枚目のアルバムで発表された後、3回のリメイクが行われ、4つのヴァージョンをもつ(ビデオ盤、ライヴ盤を除く)という珍しい作品です。
エルドラドが、なぜそのような道をたどったのか、その魅力とあわせて考えてみたいと思います。


■ 1つめのエルドラド ■
86年11月発売の「地獄より愛をこめて」というアルバムで初めて聴いたとき、なんてキャッチーで、引き込まれるメロディーなんだろと思いました。
アルバム自体、それまでのへヴィメタ色の強い聖飢魔IIから一変して、ギターのカッティングが効いたちょっとライトな感じのナンバーだったり、ダンサブルだったりで、これがジェイル大橋さんの世界なのかな、新しい聖飢魔IIの誕生だなと思ったものです。
その大橋さんとも、1,2枚目のアルバムで聴けるダミアン浜田さんの曲とも違う、歌謡曲育ちの私にもわかりやすい起承転結のあるメロディーがエルドラドでした。
アレンジもシンプルで、それでいてテンション系の分散和音使ったコーダなど<黄金郷にきた〜>って感じのする展開が私にとって新鮮で、たちまち虜になりました。
作曲者:デーモン小暮・紫馬肥。
<紫馬肥>?誰?この謎が解けたのは、それから半年以上たってからのことです。


■ いきなりエルドラド外伝? ■
EL・DO・RA・DOには個人的な思い入れがいっぱいあって、そのエピソード数はスターウォーズにも負けません(笑)。
実は4つのヴァージョンの他に、私は2つのエルドラドを持ってます。
その名も<れいヴァージョン1><れいヴァージョン2>(笑)。
この曲にはまったころ、キーボードのデモンストレーターをしていました。
シングルにもなっていない、1アルバムの1曲を狂ったようにデパートや量販店で弾いていたのは私です(笑)。
さらに、シーケンサー付きの新機種がでたときに演奏テストがあったのですが、その1曲に選んだのもエルドラド
伴奏パターンを打ち込んで、ギターソロのチョーキングはピッチベンダー使って・・・他の人たちが歌謡曲やフュージョンを弾く中で、かなり異色の試験曲でした。
それでも気がすまず、家でも多重録音。歌までいれてしまいました(笑)
その曲をもって、バンド募集の相手に会いに行ったのですが、無事合格。
ちなみにその相手は今のダンナです。はい。


■ 2つめのエルドラド ■
大橋さんの脱退した後、87年の3月に3枚目のシングルとして発売されました。
新しい下手(しもて)ギタリストとして加入したのが、その後の聖飢魔IIの音楽に大きな影響を与えることになった、ルーク篁さん。
実はこのルーク篁さんこそ、エルドラドの作曲者<紫馬肥>だったのです。
まさに出るべくして出たシングルだったと思います。
ギターソロは、先のアルバム同様エース清水さんがとっていますが、ソロ後半がツインになっています。
篁さんのアームの効いた早弾きフレーズも随所にちりばめられていて、テレビでの演奏も多いシングルとして、2人のギタリストを前面にだすというビジュアル面を考えてのことなのでしょうか。キーも一音さがっており、こちらも無理のない演奏を考えた?と当時思いました。
全体的には、アルバムのものより重く深いです。ヴォーカルもダブらせてるのかエフェクターなのか厚みがあって、ドラムの音もずしっと響きます。聖飢魔IIっぽいといえばこちらかもしれません。


■ 3つめのエルドラド ■
89年9月のベスト盤「WORST」で発表されました。
第一印象は<ずいぶん楽しげなエルドラド>。キーはさらに下がっているものの、テンポアップし、ポップではじけた感じ?シンセも多用されています。
正直なところはここまでやらなくても・・・が個人的な意見でしたが、ベスト盤として3回目のテイクだからできるのかなという意味では実におもしろく、遊びを楽しむ聖飢魔IIらしいヴァージョンだなと思います。
あっ大事なこと忘れてた。ギターソロは篁さんに代わっています。3年の時を経て、落ち着くべくところに落ち着いたという感じでしょうか。


■ 4つめのエルドラド ■
99年の5月に発売されたベスト盤「1999 Black List」で聴けます。
さすがに10年以上演奏されてきただけあって、<自然体のエルドラド>だと思います。
ベースになっているのは3つめのエルドラドだと思いますが、あそこまではじけることなく、大人っぽいエルドラド。音色も落ち着いてます。
それまでの3作品はどちらかというとキーになるようなフレーズや音色があって、それぞれの特徴にもなっていたように思いますが、ここでは目立ちすぎるものがなく、かといって単純なものではなく、各パートの相互作用で自然な曲の流れと勢いを作ってる気がします。
後半でリピートされる「早くいけ」の歌メロは、バックのソロフレーズを逆にささえる洒落た演出になっていると思いますが、あわせてこの繰り返しは「もう99年は(聖飢魔IIは)おわってしまうんだぞ」ということを示唆しているのかなと思ってしまいました。
少し崩した歌い方はライブ感があって、曲に導かれたいきいきした演奏だと思います。
キーはシングルの調(Dm)に戻っています。一番しっくりくる音域なのでは。
完成度の高いこなれたヴァージョンです。


■ エルドラド作者の使命 ■
アルバムに<紫馬肥>という1アマチュアの曲をのせることには周囲の反対があったと聞きます。それを強引に推し進めたのが小暮氏。
たぶん、ルーク篁(紫馬肥)さんがメンバーになっていなくても、あるいは抜けたとしても、おそらく名曲エルドラドは残る作品になっていたと思いますが、ラストを飾る作品だったかどうか、これだけのリメイクもなかったかも知れません。
87年、篁さんが加入直後にでたアルバムの中に「1999 SECRET OBJECT」(作詞:デーモン小暮 作曲:ルーク篁)という作品があります。
デビュー時から1999年の解散を宣言していた聖飢魔IIですが、当時の私にとって12年後の1999年は漠然としたものでした。
聖飢魔IIに参加したばかりの作者、篁さんはどうだったのでしょうか。(デーモンさんは確固たるミッションとヴィジョンがあったようです・・・)
奇しくもその篁さんのいる聖飢魔Uが1999年を終わらせ、最後を飾ったのが「EL・DO・RA・DO」だったのは偶然だったのでしょうか。
それとも作品を世にだしてしまったときから背負った<作者と作品の運命>、いや<使命>だったのでしょうか・・・。

(2000年8月27日)

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