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デーモン小暮の邦楽維新 Collaboration 青山夏場所 
「怪談 贋作・牡丹灯篭」 @青山劇場 2004年8月18日 15:00〜


今回で、10回目を数えるらしいシリーズの二日目、ワタクシ遅ればせながら、初参戦と相成りました。
邦楽・・・音楽学校出身でありながら、まったくスルーして卒業できてしまうという、日本の音楽教育の歪みの影響を受け・・・?、
ま、そんな大げさな話でもないですが(笑)、邦楽器にはとても疎い私。
なので、へぇぇぇっと思うことが山ほどありました。今回のレポはさらっと流すのではなく、自分の理解もかみしめながら、ポイントで書いております。あしからず。。。
そもそも、前日と違って「昼間だし、駐車場のしまる心配もしなくていい。」というステージは、同プログラムにもかかわらず、前日より1時間オーバーだったらしく、ほぼ4時間でした;。
ので手短に(これでも・笑)

●4本の尺八(尺八ゾリスデン)
400年前の能管も登場するなど、今回の楽器と演奏家をいつもの閣下節(?笑)で紹介する前説が終わると、・・・静まり返った客席に突如響き渡る尺八の音色。
ん?一本ではなさそう・・・、原音と、スピーカーから流れる音とあいまって、会場を包み込む。
前から5番目でみていたため、姿は見えないのだが、どうも会場の後ろの方から、忍び寄ってくる様子(笑)。
フレーズは、割と単調・・・、というより同じフレーズを、輪唱のように追いかけている感じ?そこに、オクターブ低いものが混ざったりしてるんだけど。
音楽的かといわれるとちょっと違う感じもした。
やがて、ステージ前にたどりついた袴に袈裟姿?の2人の男性が、尺八を吹きながら左右の階段をステージにあがって行く。
追うように、もう2人。4人の尺八奏者がステージ前方に並ぶ。

●5面の筝(グループ昴)
暗転幕(紗幕?)のあがったステージ上は、お琴(筝)の前に黒い和服の5人の女性。4面の二十絃筝と、ベースに位置するという十七絃筝。の5面。
曲が、私の中の古典的な筝のイメージを一掃するもので、なんというか、アコースティックギターっちっく?、イメージは”アルハンブラの想い出”とか、あのような感じ。
なんでも二十絃筝というのは、69年?に出来た新しい筝だそうで、なるほど納得、曲も現代曲で「カシオペア21」(「←21は、実際は21絃あるのでそこからではないか。」リーダー吉村七重氏談)という曲だそうです。

●楽器紹介
このステージのプロディーサーでもある、尺八奏者の三橋貴風氏より、尺八についての説明がある。
名前の由来は、長さが一尺八寸あることだが、実際は色々な長さがあって、一寸で半音違うらしいです。
そもそも江戸時代は、虚無僧がお経を読む代わりに吹いたり、武器として使ったり(「今は、そんなこと勿体なくてできませんけど。」と笑われてた。)だそうで、
最初の曲は、(たぶん;)「呼び竹、受け竹」という古典本曲(=後で調べたら虚無僧が生み出した独奏曲をそう呼ぶようです。)で、虚無僧同志が相手を確認するように吹きあう(?)ような、そんなお話でした。

●雷電&閣下登場
筝と尺八が並ぶステージ、後ろに運ばれたのは大きな和太鼓。
「世界にその名もとどろく、和太鼓奏者、雷電湯澤〜♪」と三橋氏により紹介され、現れたのは、大きなバチを持った上半身裸(笑)の湯澤氏。大歓声。
始まった曲は、なんと聖飢魔IIがSEにしてた・・・・、は;、あれはなんていう曲なんだろ、ゴジラのテーマでいいんですかね;。構成員(メンバー)が登場するときに流れる曲です。
(↑「三大怪獣の戦い」というのだそうです。2004/8/23追記
それを、和太鼓と筝5本に尺八4本で。そして、青山劇場では何かが!といってたデーモン小暮閣下。せりがあがり、豪華にご登場。
「やっほ〜」から始まる観客とのお約束のやりとり、「牡丹!」「この豚!」と牡丹灯篭と「薔薇と牡丹」をひっかけたらしい時事ネタ(?)ももりこみ。
そして笑い声とともに(たぶん)「邦楽維新・・・・(中略)場所へようこそ。」大拍手〜。
湯澤さんをみてふと、「なんで最初から裸なんだ?(笑)、ま、この雰囲気にあう衣装を彼が持ってるとも思えないし、いっか(^^;。」という閣下は、独創的な和装(笑)。「またのちほど」といわれ湯澤氏去る。

●閣下、劇場と出演者をいじる・・・
装置が自慢の青山劇場。だが、なかなか使用されないのがホールの悩みらしい。「我輩わかった。こ〜ゆ〜大きなホールでやるヤツは、ここだけってことはなく、他でも同じようなことを普通やるぢゃない。でも、ここではできるけど、他ではできないってことはやらないから、だから使われないんだよ。」というようなことを(笑)。今回は青山劇場(こどもの城?)の主催だからできたらしい。
「もうさっき説明あったからいいよね。」といいながら、ちょろっと出演者に。「一度聞いてみたいと思っていつも忘れてしまうんだが、三橋氏はなぜ尺八を?」なんでも、もともとバイオリンやトランペットをやられてたらしい。大学でもトランペットを続けてた三橋氏は「向かいの部室が、”尺八、琴同好会”(?だっけかな)で、そのころは、尺八や琴が盛り上がってる時代で、部員が100名ぐらいいたんですよ。」
尺八が盛り上がってた???そんな時代があったのかと驚く閣下と我々(^^;。自分に向いてると思って最終的にはトランペットをやめて、尺八にしぼったそうです。そこにいるメンバーは(同じような時代?で)すべて大学から尺八をはじめたらしいです。
互いにあいまみえない邦楽器のカテゴリーや流派の垣根をとっぱらいたい、それまでユニゾンしかなかった邦楽(尺八?)にハーモニーをとりいれて、邦楽オーケストラのようなものにも力をいれてきたメンバー(尺八ドリステン)というようなことでした。

筝のメンバー(グループ昴)については、「裏で黒い着物の女性たちが、うろうろしてると、これから結婚式にいくんだか、お線香あげにいくんだか;。で、我輩がいったんぢゃないぞ、誰かこのメンバーのいった、ことばを借りると”未亡人シスターズ”?(爆)。」あははは、確かに。リーダーの吉村さん以外は20代〜30代前半ぐらいの女性のグループ。
筝は基本的には、「お母さんがお琴をやってたとか、近所のおせっかいなおばさんがおしえてくれたとか、小さいときからやってる人が多いですね。」と吉村さん。そのメンバーも全員そうだということでした。
「どんな曲を聴いてきたのか」の閣下の質問には、「ビートルズとか、ローリングストーンズとか」と吉村さん。「ほぉぉ、(若い女性に)何を?」「聖飢魔IIです。」爆笑。「えっ、聖飢魔IIなの?ホントに?知ってれば、オチにつかったのにぃぃぃ。先にいってくれなくっちゃぁ。」・・・でも結局皆さん、聖飢魔IIっておっしゃってました(笑)。

●朗読「怪談 贋作・牡丹灯篭」<前半>
椅子とテーブル、赤い漆塗りっぽい片口にはいったお水と杯が運ばれてくる。
そして、再び和太鼓奏者(笑)の湯澤さんも呼び込まれる。
中央の椅子に腰掛け、足を組み、本を手にする閣下「今日の題材は、”薔薇と牡丹”」違うってば(^^;。「牡丹!」「この豚!」(わかりましたって・・・笑)
何枚も垂れ下がった細長い幕には、牡丹などの絵が投影され、一番前の幕に「贋作・牡丹灯篭」の文字が映し出される。装置・・・確かにきれいです(^^;。
「今回の朗読は長い。間に15分間の休憩はさんで行なわれるので。」等々の説明のあと、感情たっぷり、声色を使い分けての閣下の朗読が始まる。
流れるのは話にあわせた、尺八、筝、太鼓の演奏。主人公の少女、お露のこまげたの音を十七絃筝で表現したり、メロディで朗読を盛り上げます。
それでも、途中、ちゃちゃをいれたり、雷電さんの太鼓とふざけたり(?)の閣下は、閣下でした(笑)。


------15分休憩------

●能管と大鼓
舞台前方、下手側に横笛を吹く男性、上手側につづみをたたきながら、「おぉっ」「いやぁ〜。」と声をあげる男性。
どちらも真剣勝負といった形相で、身体中の空気を全て笛に吹きあてているのではないかという力強い演奏の奏者。この人こそ、今月「重要無形文化財団体指定」されたと閣下がHPで書いてらした能楽師、一噌流笛方の一噌幸弘氏に違いない。まだ比較的お若そうな青年。この笛が能管?
対するつづみは、前説にもでてきたのだが、大鼓(通称?おおかわとも呼ばれているらしい)というものらしく、その馬皮は火であぶりあぶり乾燥させながら使用し、4、5回しか使えないんだとか。こちらも、まさに腹から声を出し、大鼓を打つ打楽器奏者。長唄系、歌舞伎系出身の望月太喜之丞氏。
音程・・・はあるんだけど、メロディというものではなく、声も含めた楽器の激しさがぶつかりあうような演奏でした。

●黒船バンド
後ろにあらわれたのは、キーボーディストの松崎雄一氏率いる、「黒船バンド」・・・といっても本日のメンバーはドラム雷電湯澤氏、ベース石川俊介氏のRX状態。
始まった曲も、なんとRXの「S.T.F」ではないですか。おぉぉ。笛、大鼓との競演。
なんというか、大鼓の高く乾いた音が、カウベルのようでもあり、ウッドブロックのようでもあり、アクセントを刻みます。
ところどころはいる、唄(っていうのでしょうか?;)もわびさびがあってよいわぁ。
そして、なんの笛なんでしょ。篠笛???、まるでフルートのようにかろやか。松崎さんの鍵盤ハーモニカもとびだして、かっこいいSTFでした。
音は意外と和楽器が洋楽器に溶け込んだ風の現代っぽい響きだったかな。それでいてソロとかに特徴もでて・・・。しっくりと耳にきました。

●閣下、出演者をいじる<その2>
どこで登場だったか、よく憶えていないんだけど・・・;。シンフォニアの衣装にお召し換え、「チャールズ王子を知りませんか?(笑)」と会場から現れた閣下は(そういえば、去年の今頃は青山劇場でそのような舞台を・笑)、客席の子供に「楽しい?あきてない?」と声をかけられる。素直に楽しいと返事する子供たちに「無理やりいわせてたりして;」(笑)。

一噌氏と望月氏だけになったステージにあがると、まず一噌氏の横にある笛のセットに目をつける。
十数本あるらしい笛に「こんなに(置いてあって)使うの?」「12本ぐらいは使いますよ?」「え?今日?」「え、はい。」「へぇぇぇぇ。」
とにかくいろいろな笛の使い手だそうで、持って来てらしたのも、能管、篠笛、角笛(正式名称失念)と。
篠笛には元々1(調子)から13(調子)まであるっていったかな、長さも違い、一噌氏はその間のものも作ってもらったりしてるそうです。
・・・しかし、この方、話方その他をみていると、とてもおもしろいキャラクターというか、天然的に浮世離れした雰囲気が・・・。
閣下も一週間かそこらのお付き合いらしいのですが、とてもそれがよくわかったらしく、閣下のつっこみ意欲(?笑)をかきたてるようです。
笛の一本一本が指の感覚も音程も違うというようなことを聞くと、
「(取り)間違えたりしない?(笑)、なにしろ、昨日”400年前の能管、間違えて持ってきちゃった。”とかで、しかたないからそのまま吹いたという(笑)、いろいろやってるんぢゃないの?」(なんでもケース入れ替えたの忘れてたんだとか;)
すると・・・「あぁ・・・、ありますね。能の舞台に他ぜ〜んぶ持ってって、能管だけ忘れてったとか・・・(^^;。」会場爆笑。
そのときは結局、近くに住んでるお弟子さんに借りたっていったかな(^^;。大物です。

先ほどの曲は、秘曲(主習・おもならい)だそうで、なかなか大変でやる人がいないそうです。なんか、4つの節をくりかえし演奏してるっていったかな。
「へぇぇぇぇ」と感心する閣下。「63ヘェ」(笑)、「え?」きょとんとされる一噌氏。「あ、知らないんですね。いい、いい、浮世のことは知らなくていい。」

今度は望月氏のほうへ、望月氏もいろいろなものを叩かれる方らしく、しかし今回はプロデューサーの三橋氏のたっての依頼で大鼓(通称:おおかわ)のみ。
手が痛くて大変なんだそうです。指にゴムのようなサックをして、でも手のひらでも叩かなきゃいけなく・・・。
「今日一日で、歌舞伎座(の舞台)3ヵ月分ぐらい叩く。」とのこと。うわぁ。唄で声も枯れ・・・。
大鼓が組み立て式であることも、紐(?)をはずし、胴と別々にして披露してくださいました。
本来、長唄、歌舞伎系で町民文化にカテゴライズされるため、武士の能とはあいまみえないものらしいのですが、一噌氏には時々声をかけられて一緒にされてるそうです。

●朗読「怪談 贋作・牡丹灯篭」<後半>
ステージ上はお二人の演奏人に加え、前半ご出演だった筝と尺八の皆さん。はて、湯澤さんはいたかな・・・;
朗読の続きが始まります。後半も浪人、使用人夫婦、若い娘、乳母、と見事に声を使い分けながら話がすすみます。様々な笛と大鼓もはいったバックは厚みも増す。
成仏したはずのお露がまた現れたときには、思わず閣下の声色にぞくっと。・・・たたずむ閣下の上に、静かにサクラが舞います・・・。風流でした・・・。

●尺八ゾリスデン(4名)+グループ昴(5名)+一噌氏+望月氏+黒船バンド(3名)+閣下
最終的には、総勢15名となる豪華なステージ。
まずは、インストで「地上の星」。スラップなベースに唄が絡み、フロアタムがずんずんくる、プリミティブなドラム。篠笛(?)の軽やかな響き。ナチュラルな感じがしたかな・・・。

戻ってきた閣下「この時点で、昨日をすでに40分オーバーしてることに気づいた。」(笑)。
少しアップテンポな・・・?ん。この尺八が奏でるリフは「太陽がいっぱい」
おぉぉ。繰り返されるフレーズに、閣下のシャウトとはまた違った、長いフレーズの望月氏の独特の唄が伸び伸びと乗り、イントロを盛り上げます。(もしかしたらここぢゃなかったかも;)
正確に8ビートを刻むドラム、どっしり刻むベース。本来のギターソロは、尺八ソロと、続く速いフレーズの横笛のソロ。動ずることなく(?)歌う閣下。
それにしても、尺八って面白い楽器ですね。アタックのある息の音がはじめ何かと思ったんですけど、すごくパーカシブルで、ロックの中で初めて聞くおもしろい効果だと思いました。
春に、ロックなアレンジで聞いたときよりも、メロディアスでどっしり感があって、よかった。。。

宇宙規模の楽曲たち・・・。「続いては・・・」と始まったのは・・・。

ドンドンと響くバスドラ・・・。変拍子?・・・「オォ〜っ」という唄や、笛が重なる(確か;)。この感じ・・・。宇宙・・・。「THE OUTER MISSION」?おぉぉぉ。
4本からなる尺八のコーラス部は人の声にも遠からず、シンセと笛のオブリが勢いを付ける。何よりも。。。エース長官のソロが、尺八だぁぁぁ。フレーズも変えてた・・・と思う;。
きらびやかなエレピも華やか。・・・で、ちょっと筝の音色が全体的にやや埋もれがちだった気もするのですが、フレーズの合間の、この曲だったか、ところどころグリッサンド(っていわんだろ;)とか効いてました。

本来の楽器の特性と、意外な効果。このような邦楽器も含めた、ある種のオーケストレーション・アレンジをされる松崎様・・・さすがです。
舞台音楽などでクラシカルなアンサンブル・アレンジをされてる方なればこそ。と思いました。

●アンコール
なんの曲だろ?;。爆裂聖飢魔IIの「夏休み」なんかも交えて、メドレーのような。みんな立ち上がって踊りながら陽気に終演を迎えました。

+++++++++

なんというか、邦楽界にもこ〜ゆ〜方々がいらして、こ〜ゆ〜世界もあるんだな。って、目からうろこの楽しいステージでした。
もう4年ぐらい前、閣下が、テレビ番組の収録でしたが、室内楽とのコラボレーションされてるのを観に行って、そこで感じたことに近かったかも。
新しいことに触れられる。ありがたいことです。お疲れ様でした。 


(2004年8月20日)

出演者(敬称略 閣下のぞく?;):

デーモン小暮閣下(朗読・歌唱)


一噌幸弘(能管、篠笛、角笛他)
望月太喜之丞(大鼓)
◆尺八ゾリスデン
三橋貴風(尺八)
添川浩史(尺八)
水川寿也(尺八)
坂口夕山(尺八)
◆グループ昴
吉村七重(二十絃筝)
桜井智永(二十絃筝)
丸山映美(二十絃筝)
山田由紀(二十絃筝)
田村法子(十七絃筝)
◆黒船バンド
松崎雄一(編曲、キーボード)
石川俊介(ベース)
雷電湯澤(ドラムス、太鼓)

「贋作・牡丹灯篭」主題歌作曲 秋岸寛久