藤井あきら |
「よし今日は呑むぞ!」 今日もだろ…今は此処にいない中禅寺はそうぼやいた。 互いにむしゃくしゃする事が有ったのかもしれない。 特に木場は。 立て続けに起こった事件、世間にとっては事件ではないであろうが自分にとって、そしてヤツを取り巻く人間にとってはそれは事件であった.。 関口を取り巻く周りの関係。 確かに木場は中禅寺や榎木津に比べて出会いは遅い、そして多感な時期であった頃を知らない。だが人間として一番悲惨で、そして一生忘れることが出来ない忘れてはならない時期は共に歩んできた。 そう言う自負がある。 いや、その前にそんな下らない事を気にしなければならない自分が分からない。 それはまるで嫉妬である、何一つ生み出すことがない無意味な。 そしてそれを見抜いている榎木津は不可解な感情で藻掻く木場を揶揄する、そして自分が面白い方向に木場を導こうと策を練る。 それこそ榎木津とは腐れ縁、事前に察知しヤツの思い通りにはならない。だがその緊張感に満ちたやり取りが、二人を余計に苛ただせるのかもしれない、それも水面下で。 だが恐ろしいことに、互いに向き合うときは何故か笑っていたりする。 「なんでこうも毎回、お前の不味い顔を見ながら酒を呑まなくてはならないんだ?」 時々その事実に気付く事もある。 自分の事務所の一応応接を兼ねた長椅子に長い足を、惜しみなく投げ出しながら榎木津は天を見る。その先にあるのは埃の被った電灯の笠。 視力が乏しい自分にも見ることが出来る…思わず眉が側められる。 サボったな… そして、気がつけば榎木津しか座らせることが許されていない、探偵と書かれた三角錐が置かれた安机に、和寅は突っ伏すようにして寝ている。 「おい、聞いているのか?」 少し荒立った声、忙しく動かしていた視線を目の前の男に戻す。 木場 修太郎。 見慣れすぎた男が目の前の本革張りの長椅子に深く腰を下ろしている、そして眼は濁っている。たぶん違わずにして自分の目も濁っているハズである。 目の前には日本酒が一升転がり、そして机の上に乗っている滅多に手に入らないウヰスキーの瓶の琥珀色が半分までに減っている。 「つまらん」 「はぁ?」 「だからつまらない、お前の言うとおりだ、どうして僕がお前の不味い面を酒の肴にしなければならない」 和寅が潰れることによってつまみの補充は絶たれた。物資が届かないのである、目の前の机に。由々しき事態である。榎木津は基本的にから酒は嫌いである。 「なんだと?お前が今回は誘ったんだろがぁ」 確かにそうである、孤独が何よりも嫌いである。 こんな静かな夜は逆に騒ぐのが、何よりも好きであり正しいことである。 「なら帰れ」 「はぁ?何だとぉ?」 「電車はもう終わって居るぞ、さて馬鹿修どうやって帰るんだぁ?」 無理矢理この酒宴に参加させた中禅寺は、かなり前にそれを理由に去った、それ以前に関口は締め切り云々と売れもしない三文小説を理由に酒宴すら断ってきた。 さてお前は?好戦的に木場の眼を睨み付ける。 「馬ぁ鹿、酔い覚ましに歩いて帰るに決まっているだろ?」 木場なら本当にやりそうである。そして苦にもならないだろう。それではつまらない。 「榎木津、今、お前何か企んでいるだろう?」 思わず鼻を鳴らす。 「例え変なモノが見えなくても、お前のことはお見通しだ」 先回りされ非常につまらないが、わざわざ木場が懐に飛び込んできたのだ、これはこれで良しとしようじゃないか、そう思う。 「賭けをしよう!」 そう言うと跳ね上がるようにして立ち上がり、道路側の窓をガラリと開けた。まだ夜気は冷たい、微かに酔いが醒める。だが構わず下を見る。 辺りは真っ暗で、灯りは頼りない光りを揺らめかす街灯とこの部屋ぐらいである。 木場が榎木津の横に立つ。 「何を賭ける?」 榎木津の笑みに木場もにやりと返す。 今の木場なら、暇つぶしに榎木津の戯れ言に乗ることを厭わない。 「そうだなぁ…」 じっと薄暗い路地を見る。 「賭けの対象は、この道を通ったモノがあのT字で左右どっちに曲がるかだ」 生き物の気配のしない静かな夜である。 更に長い夜になりそうな予感が、すっと過ぎる。だがきっと緊張感がそれを紛らす。 「無論、俺が先制で良いな?」 「あぁ当たり前だ」 「なら右だ、何故なら左が行き止まりだからだ、賭けにならないぞ?」 そう言いながらも木場の顔に笑みは浮かんでいた。 「だがあの先にある四件の住人が通れば僕の勝ちだ」 よし、そう掛け声を残すと木場は机を引きずらずに窓際に運んだ、そして長椅子も運び其処に腰をかけた。 「飲み直すぞ?」 今度は榎木津がニヤリと笑った。 「勿論だ」 自ら榎木津は台所に行き、するめを片手に引っさげてきた。 「あれ…エノさん?」 一瞬物の怪かと思った、だが奇跡的にも悲鳴を上げなかった関口の口に、それでも榎木津は手を押しつけていた。 外の街灯しかこの部屋に灯りを導いていない、そんな寝室の枕元に片膝をつく榎木津。 隣には雪絵が普段と変わらず深い眠りについている。 「何処から…」 至極もっともな質問である、関口にとっては…だが榎木津が背を向けている方を見て、ただでも大きな目が更に大きく見開く。 木目の雨戸がずれている、そしてその先には小さいながらも我が庭。街灯の灯りがもれ入ってきていた状況を理解する。再び榎木津を見上げる関口。 不適な笑みが彼をその視線を迎える、その瞬間、忘れていた悲鳴を上げようとしたが既に遅かった。 「いい加減、学習しないから京極堂が困るんだ」 と押し殺した言葉とは裏腹に、鳩尾に榎木津の拳が深く沈む、容赦なく。 そして前に倒れこむ関口を簡単に、彼の死角にいた木場が抱き上げた。 真っ先に思ったことは酒臭い…であった。 腹の痛みよりもまず、この酒の臭いに関口の顔は歪んだ。 そして次にここは何処だ?であった。だがその疑問は直ぐに解消される。 狭まっていた視界が広がっていった先は、見慣れた場所である。 「でも…何で…」 「目が覚めたか?」 掠れた声と共に木場の顔が関口の視界を覆う。 横に榎木津の顔が並ぶ…そう、此処は榎木津の住居兼仕事場である榎木津ビルヂングである。やぁ、と一瞬弛みそうになった頬だが直ぐに緊張が走る。 榎木津は兎にも角にも、木場の酒で淀んだ眼は見たこともなかった。 眼を必死に室内に泳がせる。眠っていた頭がフル回転する。 確か、中禅寺も此処に呼ばれ、嫌々ながらも来たはずである…だが… 「和寅なら物置で寝て貰っているよ?」 榎木津が楽しそうに答える。何も言わなくても彼なら関口が今何を考え、そして何に怯えているのかお見通しである、もっとも不思議な力が無くても分かることでもあるが。 だがそれすら間違っていた…だが結果は一緒である。 今、此処にはこの二人しか居ない。 中禅寺がいない場所で二人が自分に求める物…それは… 「珍しく察しがいいなぁ〜が、今更、怯えるな猿!」 図星である。 そして木場にも手に取るように分かる、怯える関口が。何に怯えているのかも。 普通に生きていれば決して知る事の無い恐怖。 慰めるように木場の手がゆっくり震える関口の頬に伸びる。 だが条件反射でその手を叩き落としてしまった、ハッとした表情を作る関口。 「…ぁ…そ…その…」 関口は知っている、下手な抵抗は男の嗜虐心を煽ってしまうことを。 そしてそのことを知っている自分。後悔に歪んだその顔が何故か木場のしゃくに障った。 気がついたときには強かに関口の頬を殴っていた。 「おいおい、木場シュウ、眼の止まるところになるべく傷をつけるな、京極堂に見つかったら煩いぞ?俺はご免だぞ」 「気が散る、榎木津、黙っていろ」 「はい、はい、」 幾ら酔いが回っているにしても、悲壮な顔つきの関口に良心の呵責に苦しまなかった訳ではないが、だがもう始まってしまったのだ。 そうゲーム、これが。 勝者の言うことを何でも聞く。 「時間制限は夜明けまで」 寝かされていた長椅子の上を慌てて起きあがり、無意味に後退る関口にゆっくりと近づく。 「く…来るな…」 「と言って近寄らない男は居ないよな?ま、諦めてくれ関口」 この場にそぐわないほどの脳天気な榎木津の声。だが木場のゴツゴツとした指に腕を握られた関口には、その甲高い声すら耳に入ってきていなかった。 「や…止めろぉ…」 寝間着のままであった彼の帯に躊躇せずに指が掛かり、乱暴に結び目を解く。 弛むだけでも胸元が大きくはだける、が、春といってもまだ肌寒いこの時期肌着を着込んでいたのが幸いし、貧弱な体はそれでも隠されていた。 「色気がないねぇ」 それでも楽しそうな榎木津の声。 「煩いぞ、榎木津!」 だが慌てて前を掻き合わせるその手を嘲笑うように、そのまま乱暴に下肢に手が伸び、そして大きく裾を割る。 「…やぁ…」 もう言葉を続けることに意味はない。 必死に足を閉じる隙間に手を鋭く突っ込み、そのまま握りしめた。 その瞬間、木場の手に短い爪を立てて抵抗する、微かに血で滲む手の甲。 だが猫のようだと思うと、その痛みすら愛しく思う。 「なぁ榎木津、此奴の帯を解いてくれ」 「そのまま手でも後ろに縛ってみるか?」 長椅子の背後に回り、後ろから抱きつくように関口の腰に手を伸ばす。必死に背後から近寄る榎木津の方に首をまわす。 「え…エノさん…止めて!」 「僕の人生、止めろと言って止めたことはない、ついでにおい猿、これはゲームだ」 目を大きく見開く関口の手を掴む、その腕には力が込められていなかった。 逆にその手を掴むようにして問いかける。 「ゲーム?」 「あぁそうだ、だから猿もこのゲームに参加させてやる、特別ゲストだ。本来なら友情出演で京極堂も観客として呼びたかったがな。ま、諦めろ、そして参加するなら楽しまなければ意味がない、楽しめ」 木場の手が意志を持って関口の下半身をまさぐる。 「…ひゃ…やぁ…」 木場に恐る恐る視線を移すと、にやりと笑いかける木場。 ゲーム? 気がついたら瞬間に叫び声を自分は上げていた。 「た…助けて…誰か…誰かぁぁ!」 「そう来なくてはな、猿!」 背後で大きな声で笑いを漏らす榎木津、そして木場がそれを合図に腹の底から叫び続ける関口の頬を強かに掌で打ち付ける。 「ほら、黙れ。こんな夜更けに助けを求めてもお前が余分に痛い目に合うだけだぞ?」 通常の木場からは想像もつかない言動に関口は一瞬ひるむ、だがそれでも叫び声をあげ、そして後ろから手を拘束する榎木津を振り払うように暴れ出した。 「おい、木場シュウ、何だかのってくるな」 だがもう木場は答えなかった。そのまま往復に先ほどより力を込め頬を打つ。その証拠に手を離していた榎木津の支えを失い、長椅子から関口は崩れ落ちた。 それでも上から見下ろす木場を睨み付ける。 「おい榎木津、手拭い」 「面倒くさいからこれで我慢しろ」 そういってズボンの後ろから小ぶりの手拭いを出し木場に投げつける。 ゆっくりだが後退りする関口を睨み付けながら、片手で受け取りそして関口に合わせるようにゆっくりと歩み寄る。 「ゾクゾクするな」 「まだまだだ」 結局解けずに腰の周りを形ばかりに巻かれている帯。もし肌着を着ていなかったらきっと扇情的に見えるのであろう。 「ならお応えしよう、勝者殿にな」 榎木津が乱暴に近づくと慌てる関口をそのまま押さえつけ、そのまま肌着に手をかけると力を入れた。 「さ、触るな!」 だが衣が裂ける音が、突如視野に広がった天井に響く。 僅かに胸元が覗く、だがそれでも満足しないのか、すっと手を離し立ち上がった。そして先ほどまで和寅が涎を垂らしながら寝こけていた机から、がさがさと乱暴に引き出しの中を漁る。 「おい榎木津、何するんだ?」 鋭利な光りが場違いに三人の眼に飛び込む。 鋏であった。 「い…いやぁ…」 電灯の光りに鈍い光を放つ。 鋏を向けられた先にいる関口は徐々に近寄るその鋏から目が離せなかった。 ひやりと胸元にその鋭利な冷たさが伝わったとき眼をきつく閉じた。目で楽しみながら音を立てて残りの肌着が切られていく。 音が響くたびに露わになってくる素肌。 鎖骨の下の薄い胸、そして僅かに見え隠れする乳首…そして浮き上がる肋骨… そして完全に切り取られた肌着をその鋏で左右に大きく開かせた。 火照っていた体に、狂気にも似た冷気がまとわりつく。 それでも恐怖に負けきつく目を閉じ、そして前を掻き合わせることなく床に爪を立てる関口。 木場も榎木津もその姿に知らず知らずのうちに唾を嚥下していた。 まるで何も知らない処女のような純真無垢な姿に錯覚を覚える。 …だが実際は違う 木場の頭に一気に血が上った。 そう、違うのだ…この体は… 「この娼婦め」 容赦なく下着に手をかけると一気に下に引きずり落とした。片足に引っかかる下着が無性に情けなかった。 それでも関口は固く眼を閉じたまま、顔を横に向ける。 「おい関タツ、これはゲームだ、なら楽しむしかないよな?」 横にしゃがみこむと榎木津はそおっと刃で頬をゆっくりと撫でる。そして片手でゆっくりとまだ絡まったままであった帯に指を絡ませる。 「お前は今囚われの身、ここから逃げることはもう出来ない」 擦り込むような言葉に関口はこくりと頷いた。 ニヤリと笑う榎木津。 「おい木場シュウ、関口を寝室に連れて行くぞ」 榎木津はこの時代には珍しくベットを使っていた。理由は簡単だ、布団の出し入れが面倒なだけである。だがこういった時に更に便利な物となる。 更に我が身に降りかかるであろう恐怖に目を開いた関口の体を、木場は簡単に抱き上げた。 何故か手に馴染んでいる関口の体。 既に遠くなってしまった過去が脳裏を過ぎっていく。 だが自分の手を必要としなくなった関口。 ムシャクシャとする、そうこれは夜明けまでのゲーム。 大人しく木場の腕の中にいるのにも関わらず、乱暴に投げつけるようにベットに降ろした。微かに軋む音を立ててベットが揺れる。自分でない自分を演じる、それがゲーム。 既に下着を失っている関口の裾が大きく開き、そして微かに露わになる下半身。 だが直すことも出来ない。 「俺はこの前味わったからお前が先で良いぞ」 「当たり前だ」 みしりと音を立てながら木場もベットの上に膝をかけた。 言葉を失った関口は震えで歯をカチカチとならす。 「ほら嘗めろ」 そんな口に自分の指を差し出す。 何を言われたのか分からない顔を一瞬浮かべる、それに対し今度は震える歯に押しつける。 「それとも一気にやって貰いたいのか?ま、強姦ならそれが当たり前だが?」 「おいおい、この場合は輪姦だろう?」 使ったこともないであろう言葉を榎木津が口にする。自分で言って自分で面白がる。 「輪姦だ輪姦だ!」 騒ぐ榎木津を無視し、関口をじっと観察する。 榎木津は見えないのであろうか?関口の過去の記憶が? 小刻みに揺れる黒目は過去を思い出している、木場が知っている関口の過去。 そして震えていた歯の根が止まり、そして瞳も定まる。 そのまま睨むように見つめていた木場に関口はゆっくりと目を合わせ、そして口に突き刺された指を見る。 温もりが伝わる。 恐る恐る、だが徐々に大胆に…僅かに見え隠れしていた赤い舌が、今度は吸い付くように木場の指を濡らしていく。そっとその手に両手を添える。確かな力が込められる。 「そ、忘れるな、これはゲームだ」 突如まじめな顔をした榎木津が木場の横に並んでいた。そして木場の手を離さない関口の頬に優しく手を添える。僅かに赤く腫れてしまった頬。 「僕も木場もそして関口もゲームの中の一齣に過ぎないんだ。さぁ足を自分から広げるんだ」 ごくりと咽を鳴らしたのは木場であった。 自分の指を嘗める口が止まり、そして視線を横にずらした。ずらした先に見えたのは自分の素足。榎木津の言葉を閉ざされた口の中でもう一度噛みしめる。 これはゲーム 「さぁ木場は見かけによって短気だぞ?」 しかし、関口のとった行動は榎木津にすら予想がつかなかった。 「うぐっ」 短い悲鳴を上げる木場、そのまま指を押さえてベットの下に蹲った。 榎木津の驚いた顔は瞬時に笑顔に変わった。 「流石の僕も予測がつかなかったよ」 そう騒ぐ彼を木場が乱暴に横に押しやる、押しやられながらも榎木津は絶好調の顔を見せる。 噛まれた指からは血が流れ落ちる、手の甲につけられた掠り傷とは桁が違う。にも関わらず、何故か木場も痛みに引きつりながらも笑みを隠しきれない。 そして爪を立てる関口の上に容赦なくのし掛かった。 「よぉうし、これからが始まりだ」 「面倒だ、足をベットの両サイドに括りつけないか?」 何処にその体力があるのか、既に三回以上も犯されながら関口は未だ抵抗する。 木場は腰までズボンを降ろした姿で関口を今現在も下から乱暴に責め立てる。上半身は既に脱ぎ捨て何処に服があるのか見当もつかない。 木場の汗が光る。 「…くっ…はぁ…」 制限無く自分を飲み込もうとする、何処まで行くのだ?木場は更に自分を最奥にと穿つ。 貪欲になっていく自分。 そして苦しいのか感じているのか、関口の鼻に掛かった声。 藻掻きながらも徐々に互いが登り詰めているのは充分と分かる、そして木場に続き関口も己を解き放つ。 その様を榎木津が楽しそうに一部始終見る。 木場が己を関口から外す様をじっと見つめ、そして弛んだ奥に飛びつくように指を伸ばすが、必死に体を捩ってそれから逃れようとする。 「僕に触るな!」 何処までも屈しない態度。 「おい榎木津、それじゃやりにくいだろ?」 だが業を煮やした榎木津が貧弱な関口の両足首を掴むと大きく広げる。すでに誰の物か分からない精液、そして徐々に熱を又持ち始めた陰茎、その奥には紅く熟れている襞が蠢いている。 「離れろぉ!」 それでもその手を退けようと、関口は足に力が込められる。 「こうやって大きく広げっ放しにするんだよ、みろ丸見えだ」 必死に閉じようとする足を更に大きく広げる。奥から白い液が粘りを伴いながら出てくる様が見える。 「恥ずかしいぞ関口!」 綺麗な榎木津の手に関口は自分の爪を立てようとする。 「おい木場、人間は本当に視線だけで感じるか試さないか?」 軽くその手をあしらうと木場の方を見る。もともと淡泊でもある榎木津は既に直接に関口を犯す事に飽きたのだ。だが木場はまだまだ足りなかった、もっとこの体を貪り支配したかった。 「なら一回だけ視線で関口をいかしてみよう、その後はお前に譲る」 旨い具合に木場を誘導する。 そして返答をする前に、榎木津は荒い息をもらしながら暴れる関口の足を器用に両サイドの足に括りつけ、そして枕やもう使い物になりそうもない掛け布団を丸めると関口の腰の下に押し込んだ。 「子供でも生みそうだな」 その木場の台詞に力を失っていない関口の瞳が睨み付ける。 「外せ!この変態!」 それでも木場の視線が下に移った瞬間、唇を噛みしめ横のシーツに顔を埋めた。 「どれどれ?」 榎木津は知らぬ間に酒を片手にし、その顔を更に自分の方に向かせた。そして唇と重ねると 自分の口に含まれていた酒を強引に嚥下させた。度数の強いアルコールに咽せるが構わずに更にコップから自分の口にそして関口の唇にと繰り返す。 「おい榎木津、たしか直腸って吸収力が早いって言うよな?」 「お前にしては良く知っているな?」 「青線で昔、馴染みになった女が女は此処、男はそこだと教えられた」 「青線?まったく…信じられないなぁ」 そう言いつつも榎木津は再び口にアルコールを含む。 「…い…いやぁ…や…やめろ!」 危険を察知した関口が無い腹筋を使って起きあがろうと藻掻く。榎木津の口は擦れすぎて赤みがかった奥にと向けられている。未知への恐怖に顔が歪む。だが榎木津の頭に伸びた手は空かさず木場の両手に捕らえられ、まるで虫の標本のようにシーツの上に縫い止められた。 そして木場の唇が関口の唇を覆い酒の臭いと共に舌を侵入させそして乱暴に蠢く。 「…んっ…」 顔を振っても何処までも蠢く舌は彼を追ってくる。次の瞬間、体が海老剃りになった。 両尻を鷲掴みにした榎木津の唇が最奥の場所に口付けをし、そしてからかうようにそろりと舌で嘗める。徐々にその舌を奥に奥にと忍ばせていく、そして最後に吹き付けるようにして口に含まれていたアルコールを注ぎ込んだ。 不快感に眉間に皺が寄る。 熱く冷たく、そして熱い。 じわりと液体が体の中に吸収されていくのが感じる。 榎木津はそのまま再び頭を擡げてきた関口を口に含み、舌で裏側を乱暴に擦る。立ち始めた乳首は既に木場の指の腹で転がされている。 閃光が頭の中で走りまくる。 だが後もう一つのところで榎木津は突如口から関口を出した。木場も名残惜しそうに糸を引きながらも唇をそして乳首から指を離す。 急に自由になった上半身に戸惑いながらも二人の姿を追う。 いつの間にか用意されていたのか、足下に動かされている長椅子に二人して腰をかけている。 「…な…何?」 だが無言で嘗めまわすような視線を関口の体中に這わせる。そして最後に赤く熟れた最奥に辿り着く。 「お前の体は淫乱だな」 楽しげに言う榎木津の視線の先は先頭から白い液を垂らし始めているモノに移る、木場はひくつく最奥をじっと見つめる。 体中が熱くなってくる。 特にアルコールを吸った奥はムズムズと何かが蠢くように感じてくる。 未知なる感覚に戸惑いそして怯え悶える、下戸に近い関口。 「お願い…」 そう哀願するのは簡単であった、鋭い目つきから潤んだ目つきに変わるのも簡単であった。 だが木場も榎木津も互いに知らし合わせたかのように関口を見るだけであった。 嘗めるように関口の醜態を見るだけである、醜態から痴態に変わる瞬間を。 「おい、大きくなってきたぞ?それにヒクツいて来ている」 関口にわざと見せるように榎木津は自分の赤い舌でゆっくりと自分の唇の周りを嘗める。そしてまるで関口のモノを愛撫するかのように口を軽く動かす。 木場の視線は徐々に漏れてきた先端から離れない。 「おい関口、触って良いぞ、前も後ろも。そして僕たちに向かって出すんだ」 そして関口は迷わず己に自分の指を絡めた。 そう、後少しで夜が明け、そしてこのゲームは終わる。 木場も榎木津もそして関口も解放される、このゲームという言霊から。 |
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