第20話 ハプニングとラッキーで旅は終わる
  鍾路三街(チョンノサンガ)駅から地下鉄5号線に乗って、金浦国際空港へ。昼間だというのに
 あいかわらず混んだ車内。乗り慣れた地下鉄とも、これで乗り納めだ。
  約40分で金浦国際空港駅へ到着。早速、搭乗手続きをしようとユナイテッド航空のカウンター
 へ行ってみると、そこには長蛇の列。いずれは並ばなければならないのだが、時間が経てば
 空いてくるかと思い、先に空港使用料のチケットを買いに行く。

空港利用料領収書  どこで売っているのかなと探してみると、
両替窓口で販売しているのを見つけた。
ところが、ここも列が出来ている。しかも、
先頭で両替をしている人が係りの人と
なにかもめていて、一向に進む気配がない。
これはダメだと思い、他の両替所を探す。
結局、さんざん歩きまわって、ユナイテッドの
カウンターから一番遠い両替所で、やっと
買うことが出来た。

  再度、ユナイテッドのカウンターに戻ってみると、列の長さは相変わらずだ。仕方がないので、
 列の後ろに並んで順番を待つ。ようやく自分の番が来て搭乗手続きをしてもらうと、予想はして
 いたのだが、問題が発生した。と言うのも、釜山でパスポートに押された入国スタンプの日付が
 間違っていたのだ。2日ほど前に、何気なくパスポートを見ているときに気づいたのだが、どう
 したものかわからず、そのままにしておいたのだ。少しわかりにくいかもしれないが、下の写真
 を見て欲しい。

問題の韓国の入国スタンプ

  緑色のが入国スタンプだ。訂正されているので見えないが、日付が「1996 FEB 12」になって
 いた。このスタンプが、どのような方法で日付をセットするのかわからないが、釜山の係員が
 「9」と「6」を間違えたことは明らかだ。きっと、ぼくと同じゲートを通った人は、みんな間違えられ
 ていることだろう。
  ところで、この間違えで一つ救いだったのは、その日付がパスポートの発行日より前だという
 ことだ。ぼくのパスポートの発行日は、1996年10月30日。つまり、そんなスタンプが押される
 ことは、本来ならあり得ないことなのだ。そのおかげで、カウンターの係員もすぐに間違えだと
 理解してくれた。しかし、このままでは手続きが出来ないので、上の階にあるイミグレーションで
 訂正してもらったら、もう一度、自分の窓口に戻ってくるようにと言われる。
  早速、エスカレーターで2階に上がり、うまく説明できるかちょっと不安を抱きながら、フロアの
 端の方にあるイミグレーションの扉を開く。中には50歳くらいの係員がいた。パスポートの入国
 スタンプが押されているページを見せ、これが間違いであること、パスポートの発行日より前で
 あることを説明すると、すぐにわかってくれたようで、入国スタンプと発行日が印字されている
 ページを見比べながら、笑っている。係員は、パソコンでなにか調べはじめた。入国の記録を
 検索しているのだろうか? それも問題はなかったようで、ペンで入国スタンプの日付を訂正し、
 その下にもなにか書き加えた上で、訂正印と横長のはんこを押してくれ、[OKだ」とパスポート
 を返してくれた。
  さて、これで一件落着とほっとしながらカウンターに戻り、さっきの係員にパスポートを見せると
 「これなら大丈夫だ」らしきことを言って、すぐに搭乗券を発行してくれる。よかったよかったと
 思っていると、係員がなにか言ってきた。まだなにか問題があるのかなと思いつつ聞いてみる
 と、「グレードアップ」と言っている。「なんだなんだ?」と思って聞き返すと、「You are lucky !
 Business class」と言っている。エコノミーで予約したのだが、ビジネスに座らせてくれるらしい。
 こういったことは希にあるというのは聞いていたけど、まさか自分が当事者になるとは思っても
 みなかった。実際、搭乗券を見てもエコノミーと印刷されているので、説明されても半信半疑だ。
 本当なのだろうか・・・

  時間が近づいてきたので、出国手続きをしてゲートへ向かう。韓国一の国際空港である金浦
 空港であるが、中は意外と狭い。新しい国際空港の計画がある(既に建設中?)と聞いたことが
 あるが、これでは手狭だろうと思う。
  搭乗開始となって、他の人に続いて機内に入る。搭乗券に印字された番号の座席に行って
 みると、そこはやはりビジネスクラスであった。それでも、本当にここでいいのかと、搭乗券と
 座席番号を見比べていると、いかにもアメリカ人といった感じのスチュワードがやって来た。
 そして、ぼくの搭乗券を見て、「No problem」と言って、にかっと笑う。アメリカ嫌いのぼくには、
 背筋がぞくっとする。
  まあ、そんなことはいいとして、大きなシートにゆったりと座っていると、まだ離陸もしていない
 のに、いきなり飲み物のサービスだ。エコノミーとのあまりの差に驚いてしまう。差と言えば、
 シート自体も全然違う。幅が広いのはもちろん、リクライニングの角度、様々な動きをするヘッド
 レスト、長く伸びるフットレスト、電動で調節できる腰あて、そして液晶モニタ。料金の違いを考え
 ると、この差は納得できるけれど、ビジネスでこれだけ豪華なら、ファーストクラスはどれほど
 すごいのだろう。
  しかし、豪華なのはいいけれど、なんだか場違いな感じだ。服装も、いつものように安っぽい
 よれよれの服なので、誰が見てもビジネスの客には見えない。一番難儀なのは、ぼくの席は
 ビジネスでは一番後列、つまりすぐ後ろがエコノミーなので、いつもそのうらやましげな視線に
 さらされていると言うこと。途中でカーテンをひいてくれたのだが、それまでは、なんであんな
 貧乏旅行者がビジネスに乗ってるんだ?と言いたげな視線が、飛んできていた。そんなこと、
 気にしても仕方ないのだけど。
  ビジネスのもう一つの楽しみは、食事だ。料理自体も豪華だが、食器もエコノミーのような
 ちゃちい物ではなく、ちゃんとした陶器(磁器?)やグラスが出てくる。まあ、アメリカの航空会社
 なので、それほど良い物ではなかったのが、ちょっと残念。
  食事の後は、お休みタイム。シートを思いっ切りリクライニングさせると、ほとんど横になって
 いるのに近い状態だ。これなら、長い空の旅もゆったりと眠って過ごせる。今回のソウル〜大阪
 間は、たったの1時間半。寝る時間なんてちょっとしかなくて、もったいないくらいだ。出来ること
 なら、もう少し乗っていたいなあと思う。

  今までは、ビジネスクラスなんて、乗り降りするときに通り過ぎるだけの空間で、自分とは
 まったく無縁だと思っていた。なにより料金が高すぎて、メリット以上に負担が大きすぎると考え
 ていた。けれど、今回、ビジネスのメリットを体験することで、その価値観は少しだけど変わった
 と思う。そうは言っても、当分はエコノミーしか使うことはないと思うが、いつかヨーロッパのように
 長時間かかる旅の時、使ってみたいなあと思うのだった。



  今回の韓国旅行、最初はネパール旅行で落ち込んでいた部分を盛り返すのが狙いという、
 ちょっと変わった動機で始まったのですが、終わってみれば他の旅行に負けないくらい、豊富な
 内容で、思い出深い旅となりました。近いけれど、意外と知られていない国、韓国。ぜひ、もう
 一度、近いうちに訪れてみたいと思うのでした・・・

おわり



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