毎日新聞2002年3月18日
阪神大震災被災地の魚崎小で新作公演
神戸の劇団「青い森」
阪神大震災の激甚被災地・神戸市東灘区を拠点に活動する劇団「青い森」が、親子のきずなをテーマにした新作「パパと私のミッドナイトシアター」を完成させ、地元の市立魚崎小学校(中島卓三校長、1061人)の新築体育館で18日、公演を行った=写真・中村真一郎。児童5人が犠牲になった同小学校には、震災から7年2カ月たった今も親きょうだいを失った子どもたちが通う。子どもたちは自らの「今」を重ねあわせるように舞台を見つめた。
被災地ではこの1年、児童虐待事件や明石市・歩道橋圧死事故など子どもたちが犠牲になる出来事が相次いだ。新作は、これに心を痛めた同劇団代表で2女の母親でもある細見圭さん(49)が、脚本を5回書き直すなど試行錯誤を重ね、約1年がかりで完成させた。
大人になり損ねたサラリーマンの父親からの自立を願い、母親が家を出た家庭が舞台。主人公の小学5年生の長女こすも、保育園児の二女モモは転校を控えたある夜、宮沢賢治原作の「ツェねずみ」を親子3人で演じる。本音をぶつけ合いながら感情のもつれを解いていく軌跡が、楽器の演奏も交えてテンポ良く描かれる。
青い森は80年の設立。震災と戦災をテーマに97年に初演した前作「見えないネコ、声を出せない僕」は、全国の小中高校を中心に300回超の公演を重ね、「かけがえのない生」を訴えた。
自ら避難した同小学校での初演を終えた細見代表は「子どもたちを取り巻く環境はファンタジーではすまされない厳しいリアリティーがあるが、しなやかな想像力を引き出しながら『家族像』や『生の輝き』を共に考えつづけたい」と話していた。問い合わせは同劇団(078・412・6180)