第18話  北川温泉に見た堕ちた偶像


ラスベガス旅行から早2ヶ月弱。ラスベガス旅行記の完成も遅れている中、やはり温泉行きたい病には
勝てなかった僕達。と言う訳で、いろいろと候補地の検討に入りました。やはり美味しい食べ物と良い
温泉は欠かせません。そして決定したのは、伊豆北川温泉の『つるやホテル・吉祥亭』。
5年前くらいに一度行き、その豪華さ・サービスの良さ・懐石料理の美味しさに、我が家の中でbPホテルの
座を占めていたホテルです。さあ、久々に訪れたホテルは僕達の期待に応えてくれたのでしょうか・・・?



2000年6月24日(土)

梅雨の時期だと言うのに、皆さん旅行好きなんですね。前日の夜にスーパービュー踊り子号を予約しようとしたのですけど、もうすでに2人並んだ席は取れない状況でした。朝、駅で念のために再確認しましたが、世の中そう甘くはなく、やはり予約はいっぱい。結局、新幹線で熱海まで行き、そこから伊豆急行線に乗り換えて行く事に・・・。


10:10発のこだまに乗り込み、熱海までは約50分。あっという間です。ホント、缶ビール1本飲み終えるかどうかって時間です。
ここで一旦、熱海で途中下車。12:05発の伊東線〜伊豆急行線直通の列車まで約1時間。ちょっと早めの昼食なのです。

お目当てのお寿司屋さんとかもあったのですが、駅からは1kmほど離れていて、時間的にちょっときつそう。と言う事で、駅前のアーケード街をぶらぶら歩き、小奇麗な構えの和食処『こばやし』って店に入る事に・・・。

鮪3種盛りなんておススメ品もあったのですが、結局頼んだのは奥さんがちらし寿司(¥1600)、ダンナさんが天婦羅定食(¥1800)でした。
天婦羅定食は揚げたてで、ブリブリのエビやほくほくのあなごが美味。これで¥1800はまずまずお得です。でも、ちらし寿司は今イチだったよう。生の鮪は取りたてでなかなかでしたが、ホタテやら他のネタはお世辞にも美味しいとは言えなかったようです。駅前の観光客目当ての食事処では、まあこんな所がオチでしょう。今夜の食事に期待を馳せ、熱海を後にする僕達でした。


熱海駅に戻り、12:05発のリゾート21号に乗車。この列車は普通列車なのですが、観光客向けのリゾートタイプの車輌なのです。ちょっとおシャレな座席が海側に向いていたり、車輌もカラフルな色合い。
そんな座席でも良かったのですが、今回は奮発してサロンカー風のロイヤルボックスに乗りました。この車輌は座席がゆったりめで、45度・90度と座席の向きも変えられるのです。オマケにトンネルに入ると、ライトが消えて天井に星空が映し出されたりと、リゾート気分を高めるには優れものです。もちろん専任の女の子がいて、ドリンク類のオーダーもOK。JR線内・伊豆急行線内のいずれかだけであれば¥750。通して乗っても¥1000と、なかなかお得ですよ。一度試してみる価値はありです・・・(!)

ちょっぴり優雅な気分の中、13:20には伊豆熱川駅に到着。今回行く『つるやホテル・吉祥亭』はひとつ手前の伊豆北川駅が最寄り駅なのですが、そこには特急列車が停まらないので、送迎は伊豆熱川駅がメインになります。
あらかじめ到着時刻を連絡してあったので、送迎バスはすで来ており、すぐさまホテルへと出発です。
今回の宿泊は13時チェックインOKなのです。以前一度泊まっていたので、サービスのご案内のハガキが来ていて、宿泊料もお一人様¥21000とリーズナブルだし、13時チェックイン・12時チェックアウトものんびりできてお得です。以前泊まった時には、部屋・食事・風呂・サービスとも高評価だった記憶があり、それをこの値段ならラッキーじゃない(!)・・・って目論見があった訳です。

海岸沿いの切り立った崖の道を車で5分ほど走り、いよいよ到着。このホテルは東伊豆の海岸沿いの小高い位置に建ち、白い建物がキレイです。この日は曇り空で海の眺めも悪く、本来であればその姿がはっきり見える初島や大島が見えなかったのは残念ですが・・・。

ロビーのソファでウェルカムドリンクのオレンジジュースを飲み、さっそく仲居さんの案内で部屋へ・・・。
部屋数もそれほど多くはなく、館内は落ち着いた良い雰囲気です。6階の部屋はそれ程広くはないですが、相変わらずキレイにまとまった感じ。
ただ和室の脇の海側に部屋付きの風呂があるため、多少眺望が悪いのです。もっと部屋全面に窓が広がる感じでないと、圧迫感を感じてしまうんですよね。

部屋に案内してくれた仲居さんの子が、『ちずるです。ヨロシクお願いします』と挨拶したのはご愛嬌(笑)
つるやホテル吉祥亭に泊まると、すぐ近くにある本館の『つるやホテル』の貸切り露天風呂が利用できるので、早速中居さんに予約して貰います。まずは、お風呂に入ってゆっくりする・・・これが温泉の基本ですからね。

予約の確認に気を取られていたせいなのか、中居さんはお茶も入れてくれません。アレっ(?)・・・て感じ。更に中居さんが下がった後に部屋を見て回ると、破れた障子が見付かります。こういう細かいところにもキッチリ気が回る・・・そんなホテルだったイメージがあるのですが・・・これが今回の旅の綻びの始まりでした。まあ、それはおいおいと言う事で。


さっそく本館の貸切り露天風呂へ。ジャグジーと岩風呂があったのですが、今回は岩風呂を選択。海が目前に広がり、波の音が心地よく響いてきます。適温の温泉に浸かると、心身共に疲れがほぐれていくようです。
1時間の貸切り時間はあっと言う間に過ぎていきます。

露天風呂から上がり、再び吉祥亭へと戻ります。ところが、ここには飲み物の自動販売機がないっ(!)
部屋の冷蔵庫にはお決まりの飲み物類が入ってはいるのですが、この類いの飲み物が高いのは当たり前。それとは別に自販機を置いといてくれても良いんじゃないでしょうか。この辺りから、”オヤッ、ちょっと違うんじゃない”って雰囲気が漂い始めます。
しかし風呂上がりの飲み物が大好き(欲を言えば、湯上がり処があればなお格別)のダンナさんは、矢も楯もたまらず冷蔵庫の¥350のコーラに手を伸ばしてしまうのでした。
更に一言付け加えれば、あるとばかり思っていたブラシがなく、ちょっと奥さんはおかんむりでした。

さてさて、湯上がりでのんびりしてしまえば、もうこれはお昼寝しかありません!
マンガなぞ読んでる内に、知らず知らず意識はなくなっていきます・・・(^^;;;

気が付けばもう6時間際。お待ちかね、お食事タ〜イム(!)
この旅館の食事は部屋出しではなく、お食事処で頂きます。部屋でのんびりくつろぎながら食べる料理も良いですけど、ちゃんとした食事処で食べる懐石料理は風情タップリです。
何と言っても我が家のモットーである『温かい物は温かく、冷たい物は冷たい内に。一品一品頃合いを見計らって・・・!』がきちんと守られますから、もう理想です。以前から抱いていたこの旅館への絶対的な好感が少し崩れ始めてはいたのですが、食事だけは言う事はありません・・・と言うより、絶品です。この料理だけでも来る価値は十分あります(!)

では、さっそくこの晩の絶品懐石料理のお品書きを見ていただきましょう。

◆◆◆ 懐石コース − 本日のお品書き ◆◆◆
地酒の冷酒 旬の前菜膳
梅酒ワイン
お造り
ハモの吸い物
とことん日本酒って感じ(笑)です。 いったいこれは何だって言う珍味揃い。見てくれだけではなく、味も粒揃い。 とろとろのマグロとウニはさすが。ハモの吸い物は上品な味わい。
金目鯛の煮付け 笹の葉寿司 カマスの塩焼き
リピーターへの板長からのサービス。ダシの利いた甘辛い煮汁は絶品。 ネタは鰻とエビ。鰻はこってりして美味。 淡白な味わいの中に深みがあります。
鴨と茄子の冷製炊き合わせ 稲ぎく風天婦羅 ブイヤベース
しっかりした味の鴨に、良いダシの出た葛餡が絶妙。 揚げたて天婦羅に、抹茶塩とレモン汁がマッチします。 つるや名物。エビ・ムール貝・イカ・白身魚のコクがスープに溶け出しています。
アーモンドのババロア
美味しいのですが、伊豆のフルーツも食べたかった。

もう大、大、大満足でした(!)
一つ難を言えば、最後に出たご飯のおかずがなかった事。ブイヤベースで汁かけご飯にしろっつーの?

部屋に戻って、しばしTVでも眺めてボーっとします。9時頃から奥さんはマッサージを頼み、ダンナさんは館内の大浴場へ。
館内の風呂はこじんまりした感じですが、付随の露天風呂は回りがすぐ林の中。露天風呂はこうじゃないと。露天風呂などは名前ばかりで、回りを竹垣で囲まれ、ただ天井からちっぽけな空が見えるだけの露天風呂がよくありますからね・・・。その点、ここの露天風呂は合格です。
ただここでも難点がいくつか。まず、浴室の水回りが問題。蛇口から出て来るお湯が突然水になったりします。毛穴の汚れをとことん取り除くという炭シャンプーとか、つぶ塩ボディソープとか、趣向を凝らしたグッズがあったのは○でしたが・・・。
ちなみに男湯と女湯は夜の12時で入れ替わり、基本的に24時間いつでも入れます。

そんな感じで夜は更けていきますが、あんな一杯だったおなかもだんだんこなれて来ます。いつもなら一日の締めと言う事で、夜食処でラーメンでも食べるのがお決まりのコースなのですが、館内案内にはある夜食処が真っ暗で営業している気配もありません。まあ、このくらいの規模の旅館で夜遅くまで営業していても儲けにはならないでしょうけど・・・。
でも、それならそれで、ルームサービスでおにぎりやお蕎麦くらいは出して欲しいなー。
と言う訳で、満足と不満が交錯する中、夜は深々と更けていくのでした・・・。



2000年6月25日(日)

2日目の朝、8:30。寝ぼけて目覚ましを掛け忘れた僕達は、フロントからの食事の催促電話で起こされます。たぶん電話がなかったら、いつまでも寝ていたでしょう(笑)


朝食は昨日と同じ食事処です。朝食は格別美味しいという程の事はありませんが、作り立ての感じが出ていて、その点は好感が持てます。

12時チェックアウトは余裕があります。通常の10時チェックアウトだと、朝が慌ただしいですからね。
最後の温泉がのんびり楽しめます。朝から温泉、極楽ですなー。あーっ、日本人に生まれて良かった瞬間です・・・(*^^*)

そしていよいよチェックアウト。支払いは部屋で済ませていたので、後は送迎を待つだけ。ところがフロントのオジさんは、”ではありがとうごいました”と言うだけで、送迎の”そ”の字もありゃしない。送迎で着いたのは知ってるくせに、歩いて帰れっつーのかぁ〜(怒)
やっとの事で送迎の車が到着し、フロントのオジさんに見送られて出発。そう言えば以前は、若女将や中居さん達が勢揃いして見送ってくれたよなー・・・と思いながら、ホテルを後にする僕達でした・・・。


再び熱川駅まで送って貰い、ちょっと早い昼食を取る事に。駅前のちょっと気になっていたお寿司やさんへ・・・。
おススメの地魚握り(¥2100)は美味しかったですよ。特に、程よく脂乗った金目鯛の握りはちょっと東京近辺では食べられない味でした。

結局、今回の旅はそこそこ納得の旅ではあったのですが、あれだけ期待を込めていた『つるやホテル・吉祥亭』が、自分達の思い出の中で作り上げていた程のサービスはなくなっていた事がチョッピリ残念でした。決して、トータル的に見れば悪いホテルではないんですよ(誤解のないように・・・)。でも、僕達の抱いていたイメージがあまりにも偶像化されていたのか、それともいろんな旅を通じてわがままが多くなったのか、それは分かりませんが、一つの偶像が崩れ落ちた事は間違いありません。
言いたい放題の事を言ってますが、これがお客さんの言い分だし、これが温泉旅館を訪れたお客がホテルや旅館に求める姿だと言う事を声を大にして言いたかったので、あえて書かせて貰いました。決して他意はありませんので、万が一つるやホテル関係者の方がこれを読んでも怒らないで下さいね。時代の流れや、旅館経営の難しさは想像できるつもりですので・・・。

最後に一言。
頑張れ『つるやホテル・吉祥亭』。目指せ、我が家のbPホテルの座、奪還(!)