映画日記 1999,6,23〜2000,12,30
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「エントラップメント」 アメリカ映画
12月30日 ビデオ(WOWOWにて収録)

伝説の美術品泥棒マックを追う美人保険調査員ジンは、
おとり捜査でマックを捕まえようとする。
自ら泥棒と名乗りマックに近づく。
人里離れたマックの屋敷で入念にリハーサルし、厳重に警備された美術品を
まんまと盗み出す二人。
そしてジンはある計画をマックにうち明ける。
2000年の正月、Y2K問題のため銀行のコンピューターが予備システムに切り替わる
間隙を縫って、大金をオンラインで盗み出すというものだった。
可能性の低いこの計画をマックは最後の大仕事として引き受けることにした。
ミレニアムを前に沸き立つ大晦日の街、2人は銀行ビルに忍び込むが、
ジンの行動に不審を抱いた保険会社も彼らの包囲を着々と進めているのだった。
マックにショーン・コネリー、ジンにキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。
網の目のような赤外線警報装置を、身体をくねらせながらかわす超古典ネタに、
Y2K問題という時事ネタを織り込んだ泥棒物。
恋に年齢差はないかもしれないけど、
ショーン・コネリーとキャサリン・ゼタ・ジョーンズが恋に落ちるのは無理があるような気がする。


「クリムゾン・リバー」 フランス映画
12月22日 15:30 ヘラルド試写室(GAGA)

アルプスのふもとの田舎町、崖に中吊りになった死体が発見される。
検死の結果被害者は無数の刺し傷があり、骨折箇所多数、両目がくりぬかれ両手切断。
全裸で胎児のように縛られていた。
パリから一匹狼の腕利き警視ニーマンスが派遣され捜査に乗り出す。
被害者の村はヨーッロパでもっとも古い大学のひとつゲルノン大学があり、
村人は大学の学生か大学関係者で占められていた。
ニーマンスは手がかりを求めて大学に行くが、大学側の態度はよそよそしく、
あまり協力的とは思えなかった。
一方100qほど離れた町で若手刑事マックスは、墓荒らしと
小学校に忍び込んだ泥棒を捜査していた。
両方ともさして被害がなく、なぜそんな金目のなさそうなところを狙ったのかが
わからなかったが、小学校が、荒らされた墓の少女の学校とわかり、少女の記録が消えていた。
二つのまったく違う事件が接点を持ち、ベテラン刑事ニーマンスと若いマックスは協力して
捜査をしていく内、鍵は大学にあると睨む。
ベテラン警視ニーマンスにジャン・レノ、マックスに「ドーベルマン」のヴァンサン・カッセル。
この映画、無惨な死体のなめるようなアップから始まる。
そのカメラが執拗で冒頭から少し胸が悪くなる。
解説に「セブン」「羊たちの沈黙」に「バーティカル・リミット」「クリフハンガー」の要素を融合、
と書かれてあるように猟奇殺人に山岳アクションを少し加味したところがみそ。
中ほどの山場で犯人追跡シーンがあるが、派手なカーチェイスなどせずに
生身の人間の走りで見せる。
それも障害物を乗り越えたり路地に入ったりではなく、雨の中、陸上競技のトラックを全速で走り、
もう少しで追いつきそうになるが、なかなか追いつかないもどかしさと疾走感。
演出のうまさが光ったシーン。
結末で謎解きがなされるが少しわかりにくい。


「ザ・セル」 アメリカ映画
12月21日 15:30 ヘラルド試写室(GAGA)

心理学者のキャサリンは昏睡状態の患者の潜在意識に特殊な機械で入り込み、
精神の深部から分裂症を治療するという実験チームの一員。
分裂症の少年の精神世界で何度か少年の心を開かそうとするが、
もう一歩のところで成功しない。
キャサリンの精神もまた衰弱していた。
一方、女性を誘拐しては自動管理された水槽内に閉じこめ、水死させる連続猟奇殺人犯を
追うFBI捜査官ピーターは見事犯人を逮捕。
ところが先天的な病気で犯人は意識不明に。
残されたビデオテープから、新たに誘拐された女性はどこかの巨大水槽に閉じこめられていて、
40時間後に自動で水槽内は水が満たされ溺死することがわかった。
なんとか意識不明の犯人から水槽の場所を聞き出さないと女性の命が失われる。
そこでキャサリンが犯人の精神世界に入り込み水槽の場所を探ることになったが、
猟奇殺人犯の精神世界は悪夢の世界だった。
うたい文句に『「マトリックス」と「羊たちの沈黙」の融合』と書かれてあったとおり、
2本のヒット作をうまく合体させたような映画だけど、
CM出身でこれが劇場第一作となるターセム監督の凄い演出力。
所々「羊たちの沈黙」に似たようなシーンもあるものの、
猟奇殺人犯は「羊たちの沈黙」以上の異常さで、犯人役のヴィンセント・ドノフリオ
(「フルメタル・ジャケット」の精神に異常をきたした二等兵役)が超弩級の変態殺人鬼を怪演。
犯人の深層心理に潜入するシーンは、もう悪夢の中にいるような気味悪さ。
この種の悪夢的映像は「ジェイコブズ・ラダー」が秀逸だったけど、
この映画は凄い想像力。とてもシュール。
キャサリン役のジェニファー・ロペスはエキゾチックでセクシー。
時々無意味なアップやお色気シーンもあるけど・・・・
FBI捜査官役のヴィンス・ヴォーンも好感が持てる。
これは映画史に残る1本だと思う。


「倦怠」 フランス映画
12月21日 13:00 東映試写室(セテラ)

大学教授のマルタンは妻とは別居中で、執筆中の新刊もはかどらない、
すべてがうまくいかない状態。
偶然知り合った老画家が亡くなり、その画家のモデルで愛人の17才の少女セシリアと出会う。
マルタンはセシリアと関係を持ち、定期的に会うことになる。
セシリアはあっけらかんとマルタンの家を訪ねセックスをして帰って行くが、
マルタンはセシリアにのめり込んでゆく。
セシリアにはもう一人恋人がいることがわかり詰問するが、セシリアは二人共好きで、
出来たらこのまま関係を続けたいという。
奔放なセシリアを理解できず嫉妬に狂うマルタン。
そこにあるのは17才の奔放な少女に狂った、分別盛りの大学教授の姿だった。
セシリアにまったく演技経験のないソフィー・ギルマンを抜擢したが、
それほど可愛くもなく、身体もぽっちゃりしていて魅力がない。
主人公に同化できない。
何でこんな女にと思うが、実際女に狂った中年はたいてい「何でこんな女に・・・」と
思うことが多いので、かえってリアルなのかもしれない。
ボーイフレンドの存在がわかり詰問されたとき、弁解するでもなく、謝るでもなく、
さりとて逆切れするでもなく、二人とも付き合いたい、ダメだったら仕方ないけど・・・みたいなことを淡々という。
このあたりのとらえ所のなさがマルタンを悩ませる。
この辺、年齢的ギャップの考え方の違いがよく出ていた。


「ホワット・ライズ・ビニース」 アメリカ映画
12月20日 11:25 北野劇場

科学者のノーマンと元チェロ奏者のクレアは、一人娘が大学に入ってからは、
父の残した湖畔の家で夫婦二人だけの生活を送ることとなった。
しかしノーマンのいない間に家では心霊現象のような不思議な現象が起きる。
時期的に最近越してきた夫婦喧嘩の絶えない隣の奥さんが殺されて、
自分に何かを訴えているのではないかとクレアは思うようになる。
隣をこっそり監視するクレアは確信を深めノーマンに話すが、
科学者のノーマンは心霊現象を信じない。
そして隣の奥さんが無事だとわかったが心霊現象は続き、
別の事件が見え隠れしてくる。
ロバート・ゼメキス監督のホラー・サスペンス。
前半は少しかったるい。
前半は観客に、この映画ホラー?それともミステリー?と心を揺れさせ、
丹念に心理的な不安感をあおり、伏線を敷く期間としたようで、
ゼメキスは後半勝負に出た。
それもラスト1/3はたたみかけるたたみかける。
ただ音楽がヒッチコックの「サイコ」に似ていて、演出もヒッチコックをかなり意識したよう。
配役も凝ったようで、ミシェル・ファイファーはもう顔がホラーで、「らしい」キャスティング。
反対にハリソン・フォードはホラーにもミステリーにも「らしくない」顔で、
この「らしさ」と「らしくなさ」がこの映画のみそ。
脇役も地味であまり顔は知らないけど、一癖ありそうでなんとなく事件の鍵を握ってそうな、
そんな配役。
鏡が何度も効果的に登場するけど、鏡という物は自分の見えない背後を見せるという
怖さがあるし、割れると不吉で凶器になる。
ゼメキスらしい手堅い恐怖映画。
 

「ファイナル・デスティネーション アメリカ映画
12月12日 13:30 ヘラルド試写室(GAGA)

高校生のアレックスは、修学旅行でフランスへ発つ飛行機内で夢を見る。
それは今自分の乗っている飛行機が離陸直後に爆発墜落する夢だった。
あまりにもリアルな夢にパニックを起こしたアレックスは、「この飛行機は墜落する」と
わめき、飛行機から引きずり降ろされる。
この騒ぎに巻き込まれた先生と生徒達6人は同じように飛行機から降ろされ、
次の便でフランスに向かうことになったが、離陸して間もない飛行機がアレックスの予言通り
爆発墜落してしまった。
FBIが真相究明に乗り出し、アレックスを疑うがアレックス自身にも
なぜそんな夢を見たかわからない。
そして生き残った者が次々変死していく。
友人の死の真相を探ろうと忍び込んだ葬儀屋のおやじは「死は必然で、
死の筋書きには逆らえない」と言う。
一度死に魅入られるとその運命から逃れられないのか。
アレックスは死の筋書を変えようとする。
有名俳優は誰ひとり登場せず、B級ではあるが、この作品が初めての映画となる「X−ファイル」シリーズの
ジェームズ・ウォン監督の演出はうまい。
特に墜落する飛行機内の描き方はリアルで、墜落する飛行機に乗ったことがある人間でしか
描けないような映像だった。
この冒頭の墜落シーンだけで映画代の元をとったようなもの。(金払ってないけど・・・)
飛行機恐怖症の人の気持ちがよくわかる。
ウォン監督はこの作品1本で、次からもっと大きな予算の映画のオファーが来るだろうけど、
いつまでもこんなB級作品を撮って欲しい。


「アンブレイカブル」 アメリカ映画
12月7日 19:30 完成披露試写、梅田東映パラス(ブエナ・ビスタ)

列車事故で131人の乗客が死亡したが、デヴィッドたった一人だけが傷ひとず負わずに生き残った。
それは奇跡としか言いようがなかったが、その日から不思議な男につきまとわれる。
イライジャと名乗るその男は、ヒーロー漫画の希少原画の販売をしていて、生まれつき骨がもろく、
生まれてから何十回と骨折を繰り返していた。
世の中には「陰」と「陽」の対になった人間がいて、自分の対極にデヴィッドがいる。
デヴィッドこそこの世の中に何かするために生まれてきた不死身のヒーローなのだと。
はじめは漫画オタクの戯れ言と思ってデヴィッドも取り合わなかった。
しかしイライジャはデヴィッドに問う「病気をした記憶は?」。
デビッドは病気らしき病気をした記憶などなく、ずっと心の中でもやもやしていたベールが
次第に取り除かれ、自分の持つ力に目覚めていった。
「シックスセンス」のM・ナイト・シャマラン監督が再びブルース・ウイリスと組んだ作品。
この作品でシャマランは脚本料として最高の500万ドルを手にしたそう。
物語はジグソーパズルのピースをひとつずつ広げられるみたいで、
前半まったく全体像が見えない。いや、後半になっても見えてこない。
このパズルがどんな絵なのかかなりわからない。先がまったく読めない。
普通これだけ引っ張ればダレてくるところだけど、カメラワークのうまさで見せる。
「シックスセンス」のような「大どんでん返し」を期待したが、「小ドンデン」で終わる。
なんか唐突に終わる。
「シックスセンス」では最後にすべての意味がわかるが、
夫婦仲の事や子供との関係など、この映画説明し切れてない。
なんかすっきりしない映画だった。
共演はサミュエル・L・ジャクソン。


「風花」 日本映画
12月7日 15:30 ヘラルド試写室(シネカノン)

文部省官僚の廉司が朝目覚めると、そこは桜咲く公園だった。
そばには見知らぬ女、風俗嬢のゆり子が寝ていた。
酔っぱらってピンクサロンに行き、ゆり子と北海道に一緒に行く約束をしたらしいが
まったく覚えがない。
ゆり子は亭主に死なれてから幼い子供を北海道の親に預けて、東京で風俗嬢として働いているが
この6年間子供に会っていない。
酒癖の悪い廉司は酔っぱらって万引きし、謹慎処分となる。
酔った勢いで空港に行き、ゆり子と北海道に旅に出る。
ピンクのレンタカーを廉司が運転し、ゆり子の家に向かうが、文部省官僚と風俗嬢、
話はかみ合わずぎくしゃくした旅が続く。
やがて母の再婚先のお寺に着くが、6年も子供をほったらかしにしていたゆり子を
義父は責め、子供に会わせてもらえない。
そこに廉司の携帯に上司から連絡が入り、廉司が解雇されることを知らされる。
行き場を失った二人は雪の残る山間へと車を走らせる。
相米慎二監督作品。
風俗嬢ゆり子を小泉今日子が目尻の小じわをものともせず好演。
廉司に浅野忠信。この人ホントに演技なのか「素」なのかわからない。
特に酔っぱらっているところは演出なのかアドリブなのか、
演技なのか素なのかわからない。不思議な役者。
キョンキョンやりにくかったと思う。
途中、山の安宿で柄本明はじめ東京乾電池の連中が登場して、
春歌を歌い倒すシーンがあるけど監督の好みなのだろう、妙に長い。
子供に会いに行くだけのロードムービーだけど、微妙なアンバランスさ、
登場人物の醸し出す変な空気で淡々とではあるがダレさせずに見せる大人の映画。


「グリンチ」 アメリカ映画
11月30日 完成披露試写、北野劇場(UIP)

おとぎ話の世界のような町フーヴィル。町の人達はクリスマスの買い物に浮かれていた。
郵便配達夫ルーの娘シンディーは、なぜクリスマスになると人々が浮かれるのかがわからない。
そんなフーヴィルの人々を苦々しくクランペット山から望遠鏡で見ていたのは、
全身を緑の毛で覆われたグリンチだった。
グリンチはひねくれ者でみんなから嫌われ、山の洞窟で家族もなく愛犬マックスと暮らしていた。
町の人々に意地悪しに出掛けたグリンチは郵便局の裏でシンディーと出会った。
集配機に転落したシンディーはグリンチに助けられ、グリンチは本当は悪い人ではないのでは?、
と思い始める。
独自にグリンチについて証言を集めだしたシンディーは、グリンチは本当は悪い人ではなく、
いじめによって世捨て人になっただけだと確信する。
フーヴィルの1000年祭記念の名誉会長を決める集会で、シンディーはグリンチを推薦。
驚く人々にシンディーはフーヴィルの法典から「誰でも温かく迎えるのがフーヴィル」
「一番温かい心を求めているグリンチに」と皆を諭す。
嫌われ者のグリンチが初めて手にする人々の賞賛、だが昔のいじめっ子メイ・フー市長
の意地悪でキレたグリンチは広場のツリーに火を放ち、町を滅茶苦茶にして帰っていった。
おさまらないグリンチはフーヴィルのクリスマスを丸ごと盗む計画を立てる。
ジム・キャリーが特殊メイクに、全身毛むくじゃらの着ぐるみを来てグリンチを演じている。
東京では有楽町マリオンで同時間にジム・キャリーの舞台挨拶があると言うことで、
開映前に中継が入ったが、目の前にジム・キャリーがいるならともかく、
報道陣にインタビューを受けてるジムや、時間つなぎのビデオクリップなどの映像を
ダラダラ40分も見せられうんざり。
映画は子供向けのように見えるが、グリンチのギャグは大人向けの辛口ギャグで、
子供をターゲットにしているのか若い世代をターゲットにしているのか狙いがわからない。
アメリカ人にとっては馴染みがある物語かもしれないが、日本では馴染みがなく、
どんな層を日本では狙っているのだろう。
おまけにクリスマスネタはクリスマス過ぎるとつらいのと違うかなぁ。
「マスク」や「ロジャーラビット」のトゥーンテイストに「オズの魔法使い」を振りかけたような
映画。
好き嫌いの分かれるところ。
子役のテイラー・モンセンと愛犬マックスが可愛い。


「グロリア」 アメリカ映画
11月29日 ビデオ(WOWOWにて収録)

恋人ケビンの身代わりで3年の刑期を終えたグロリアが出所した。
面会に一度も訪れなかったケビンに腹を立て、ケビンの事務所に乗り込んで
慰謝料を要求するがケビンは支払う気がない。
腹いせに事務所で監禁されていた男の子を連れて逃走するが、
その子供は組織の金をネコババして一家惨殺された金庫番の息子ニッキーだった。
ニッキーは組織の秘密を記したフロッピーを持っていたため、
組織は血眼になってグロリアを捜す。
子供といれば自分の命も危ないが、自分が助かるために子供と別れると、
ニッキーはすぐに捕まって殺されてしまう。
ニッキーに母性愛が目覚めたグロリアは、組織を相手にニッキーを守ることで
自分の人生もやり直せるかのように思い始めた。
80年の「グロリア」のリメイク。グロリアにシャロン・ストーン。
昔の「グロリア」のジーナ・ローランズは長年の情婦暮らしで、
修羅場をくぐった姐さんとしての貫禄があった。
そんなグロリアが拳銃片手に組織を相手に戦う姿にかっこよさがあった。
そういうところがシャロンにはない。
最後の駆け引きも盛り上がりに欠けるし、そこから後も妙に長くてダレる。
監督はシドニー・ルメットやけど少しキレに欠ける演出。
シャロン・ストーンは、どうしてもジーナ・ローランズと比べられるから損した映画やと思う。


「キャラバン」 フランス・ネパール・イギリス・スイス合作映画
11月28日 15:30 ヘラルド試写室(GAGA)

ヒマラヤ山脈の中腹の村にキャラバン隊が帰ってきた。
キャラバン隊は山で採れる岩塩をヤクの背中に乗せて山を越え、
麦と交換してまた戻ってくる。村の住人が生きていく上で、なくてはならない村の生命線だ。
長年村を率いてきた長老のティンレと孫のツェリンが迎えると、
ヤクの背中にひとつの亡骸があった。それはティンレの息子だった。
息子は友人カルマの忠告を無視して近道を通り転落死したのだったが、
長老ティンレはカルマを「自分が長老になりたいから息子を殺した」となじった。
新しいキャラバンのリーダーに経験も豊富で人望のあるカルマをみんなは推したが、
長老はうんと言わない。
幼い孫のツェリンが長老になれるまで、自分がキャラバンを指揮してツェリンを指導するという。
しかし年老いたティンレにそんなことが無理なことは誰の目にも明らかだった。
カルマは占いでキャラバン出発を決める古い因習に反発し、嵐が来る前にと若者達を連れて
キャラバン隊を出発させてしまう。
ティンレは老人達と息子の妻ペマ、幼いツェリン、ヤクの群を連れ、カルマを追った。
老人と女子供には過酷な旅だったが、ティンレの執念はすさまじかった。
危険を冒して近道し、若いカルマ達に追いついたとき、カルマはティンレの強靱な精神に驚く。
伝統の中で指導力を発揮してきた長老ティンレと、因習にとらわれない若き指導者カルマは
ヒマラヤの奥深くで対峙するのだった。
写真家でもあるエリック・ヴァリ監督は80年代からこのネパールの地に住んでいるそうで、
だからデザイナーが作ったそれらしい衣装やセットなどがなく、画面に作り物の臭いがない。
風景も日常生活から見える風景をリアルに切り取っているので、観光案内のようなヒマラヤの映像は一切ない。
そこに生きる者として共存している自然でしかない。
出演者もちゃんと演技しているが、どこから見てもそこに生活している山の民にしか見えない。
リアルでなおかつ今までの映画にないドラマがある。
唯一の作り物は満天の星。
10数年前にヒマラヤのふもとの町ポカラで見た満天の星は、今の技術でもまだ映像化できないよう。


「ふたりの男とひとりの女」 アメリカ映画
11月27日 13:30 完成披露試写、リサイタルホール(20世紀FOX)

チャーリーはロードアイランドの心優しい白バイ警官。
人生の間違いは結婚式の日に起こった。新婚のチャーリー達を乗せたリムジンの
「小人で黒人」の運転手に新妻が恋したのだ。
産まれてくる子供達は黒い子ばかり。でも心優しいチャーリーは妻を許し、
子供達をわけへだてなく愛した。
しかし妻は子供を置いて例の運転手と駆け落ち、チャーリーは3人の男の子を
男手ひとつで育て上げた。
そんなチャーリーを町の人はバカにし、子供までチャーリーをないがしろにする。
ある日我慢の限界にきたチャーリーはキレた。
感情を押し殺していたせいで、凶暴な別人格ハンクが生まれた。
休養がてらぬれぎぬで捕まったアイリーンをニューヨークまで護送することになり、
白バイで旅を始めた。
実はアイリーンは以前勤めていたゴルフ場の悪徳経営者から、悪事を知られていると思われ
命を狙われていたのだった。
旅をしながら優しいチャーリーと凶暴なハンクの人格はめまぐるしく入れ替わり、
アイリーンはとまどうばかり。
そこに金で抱き込まれた警察官達がアイリーンの命を狙って追ってきた。
ジム・キャリー主演のコメディー。
二つの人格を演じるジム・キャリー得意の顔の演技だけでなく、ギャグも結構面白い。
特に3人の息子の親が2人とも「最高IQクラブ」の会員と言うことで、
子供達もずば抜けて頭がいいという設定だから、
見た目はスラム街の不良黒人風なのに、量子物理学を汚い言葉で論じ合ったり、
パパに対しては素直ないい子だったりする。
このセンスいいなぁ。
エンドロールでNG集はよくあるが、この映画はちょっとしか出番のなかった俳優や、
カットされて登場しなかった俳優のシーン写真。
それぞれのシーンにほんとに小さくしか映っていないちょい役俳優に、矢印をして名前が書き込まれていた。
このセンスも面白い。
監督と脚本は「メリーに首ったけ」のボビーとピーターのファレリー兄弟。
下ネタや差別ネタも多いが、さじ加減のうまさで下卑たコメディーにならずにすんでいる。
今まで見たジム・キャリーものではかなり上位に行くコメディー。


「ダイナソー」 アメリカ映画
11月25日 18:30 スーパー・レボリューション・プレビュー in 大阪ドーム(ブエナ・ビスタ)

池の畔の草原でのどかに草をはむ草食恐竜の群を肉食竜カルノタウルスが襲う。
必死で逃げまどう草食竜を追い回すカルノタウルスは草食竜イグアノドンの巣を踏みにじる。
かろうじて1つだけ残ったイグアノドンの卵を小型肉食獣オヴィラプトルが持ち去るが、
仲間と取り合いになり川に落としてしまう。
上流から下流へ流される途中、怪鳥プテラノドンに拾われたが、雛の餌にされる前に
またしてもくちばしから落ち、ジャングルに落下。
拾ったのはキツネザル一家だった。
こうしてイグアノドンのアラダーはキツネザルに育てられ、成長した。
肉食竜のいないのどかな島での平和な日々が続いていたが、
流星雨が降り注ぎ島は壊滅。命からがら島から逃れたが大地は荒れ果てていた。
豊かな草原と水を求めて移動する草食竜の群に合流したアラダーとキツネザル一家だが、
この群は同じイグアノドンで非情なクローンがリーダーとなっていた。
肉食竜に襲われる危険を背負いながら伝説の「生命の大地」目指して死の行軍が始まった。
遅れる者を切り捨てて進もうとするクローンとアラダーは何度も対立するが、
クローンの妹ニーラがなんとか対立を沈めようと中に入ってくれた。
やがて肉食竜カルノタウルスが群を嗅ぎつけ追跡を始めた。
ディズニーのCGアニメ。
開映前、日本語版吹き替えの江角マキ子の挨拶の後、
後方から隕石に見立てたロケット花火が飛んできて大きな炎が大音響と共に上がったり、
事前の演出も金が掛かってる。
初め恐竜の質感などを見て、「ジュラシック・パーク」の方がよくできていたと思ってしまったが、
途中で間違いに気が付いた。
そんな見方をしてはいけなかったのだ。
これは「ディズニーのアニメ」でCG恐竜のリアルさを競うものではない。
「アニメ」として楽しまないといけない映画だった。
内容はCGで恐竜を描いていてもやはり「ディズニー」。
「愛」と「勇気」と「チームワーク」をテーマに、笑わせ、ハラハラさせ、恋が芽生える。
子供連れファミリーにピッタリの正月映画。
クローンは誰かに似ていると思ったら、「バグズ・ライフ」のバッタに似ていた。
キツネザルの歩き方が、いつも横飛びでユーモラス。


「愛のコリーダ 2000」 フランス映画
11月24日 15:30 ヘラルド試写室(大島渚プロ・GAGA)

料亭吉田屋に女中として働きだした元女郎の定を主の吉蔵が、
手を付けた。
初めは遊びのつもりだったが、何度も密かに体を重ねるたびに二人は深みにはまっていく。
やがて駆け落ちして待合い宿で獣のように四六時中交わる二人。
家に吉を帰したくない定は、金がなくなるとパトロンと一夜を共にし金を工面してくる。
二人の愛欲には果てはなく、やがて首を絞めながら性行すると快感が大きいと聞き、
試してみることにする。
阿部定事件をテーマに、24年前カンヌ映画祭で物議を醸しだした大島渚監督の作品。
当時日本ではカットとぼかしだらけで公開されたが、ヘアーOKのこのご時世に
ノーカット版として(と言ってもぼかしは入っている)公開される。
試写室で上映されたのは税関を通っただけのプリントだそうで、
映倫を通るともっとぼかしが入るかもしれないと言うことだった。
毛はもうすべてOKだった。
性器も女性性器はダメだけど男性性器は映っているところ多数。
ただ同じ男性器でもぼかしが入っているところと入らないところがあって、
乞食の殿山泰二が庭で寝ているところを子供達が棒で性器をつつくシーンには
ぼかしが入り、「もう立たない」という吉の性器を定が自分の性器にあてがうシーンはぼかしがなかった。
つまりストーリーにとって重要なところはOKということらしい。
定のアソコにゆで卵を入れるシーンなんかはもうほとんど見えてるも同じ。
ちゃんと本当にゆで卵を入れている。おまけに必ず性器のアップの後顔にパンするので、
吹き替えでないことがよくわかる。
税関でここまでOKということは、日本政府はここまでもう許していると言うこと。
改めて感心した。
問題は映倫にあったのだ。警視庁に呼び出されると困るので過剰な自主規制をしてたわけや。
一般公開ではもっとぼかしが入ると思われるので、日本で見られるギリギリの幻のプリントになるだろう。
公開当時高校生だった僕は彼女を連れてこの映画を見に行ってひんしゅくをかった。
当時はぼかしばかりでよくわからなかったが、今日改めて本当にすべてやっていたということがよくわかった。
吉蔵は藤竜也、定役の松田英子はスタイルもよかった。


「パリの確率」 フランス映画
11月22日 15:30 ヘラルド試写室(ポニーキャニオン・キネティック)

2000年の大晦日、新世紀を迎えようと友人宅に集まってパーティーが催された。
SFの扮装で参加する仮装パーティにアチュールは彼女のリシューと参加したが、
子供が欲しいというリシューに及び腰になるアチュール。
トイレで用を足していると天井から砂がこぼれ落ちてきて、天井に上がってみると上は砂だらけ。
天窓から外に出るとそこは何と砂に埋もれたパリだった。
時は2070年。
ある老人と出会うが実はその老人はアチュールの息子のアコだった。
アコはアチュールにちゃんと子供を作ってくれ、でないと自分や子供、孫達がこの世から消えてしまう。
と、懇願する。
息子や孫達に出会っても、若いアチュールには実感がなく、パパになる勇気もない。
しかしやがてアコの体の一部が消え始めた。
早く子作りをしないと子孫達がこの世から消えてしまう。もう一刻の猶予もなくなってきたのだった。
音楽がとてもおしゃれなフランス映画で、息子の老人アコはジャン・ポール・ベルモンドが演じている。
冒頭、絵に描いたようなスペースオペラの物語から入り、SFのパターンを皮肉り、
便所の天井がタイムトンネルになってるというフランスらしいひねりの利いたユーモア。
この映画の音楽やノリは「PARTY7」の石井克人あたりが好きそうやなぁ。
主演は「ドーベルマン」「ガッジョ・ディーロ」のロマン・デュリス。


「私が愛したギャングスター」 イギリス・アイルランド合作映画
11月22日 13:30 ヘラルド試写室(アミューズ)

アイルランドの強盗団のボス、リンチは仲間4人と数々の銀行を襲撃して成功してきた
プロの強盗だが、
家に帰ると子供達をこよなく愛するマイホームパパとなる。
実はリンチには妻の妹との家庭もあり2家族の良きパパとして2つの家庭を往復していた。
リンチは金のためというより体制への反骨精神の証として強盗をしているふしがあり、
そんなリンチをクイッグリー刑事は執拗に追うのだった。
そして妻に連れられて訪れた美術館のカラバッジオの絵に見せられたリンチは、
仲間達と強奪に成功。
しかしIRAもこの絵を狙っていて、やがてリンチ一味、IRA、警察の三つ巴の出し抜き合戦へと発展していく。
ケビン・スペイシーが伝説の実在した強盗団のボスを好演している。
モンキーパンチが「してやられた」と言うように、これはまんまルパン3世と銭形刑事で、
ちゃんとリンチのキャラクターは憎めないキャラに描かれていて、見ている者すべてがリンチを応援する。
腹心のデイヴィッド・ハイマンが渋い。
ラストは読めたもののシリーズ化して欲しい作品。


「ピーター・グリーナウェイ 8 1/2の女たち」 イギリス・フランス・ドイツ合作映画
11月21日 15:30 東映試写室(ムービーテレビジョン・キネティック)

銀行家のフィリップは最愛の妻に先立たれ、うちひしがれていた。
息子のストリィは父を慰めるため自宅に女達を集め、自分たちの娼館を作ることを提案する。
集められた女達はみんな訳ありで、馬や豚を偏愛する女、パチンコ狂の女、出産マニア、
修道女に憧れる女、歌舞伎の女形でないと燃えない女、など8人の女と車椅子の謎の女(1/2)たちだった。
それぞれ屋敷に部屋があてがわれ不思議な共同生活が始まったが、
やがてその楽園も終焉を迎えるときが来た。
カットカットは不思議な絵画を見ているような画作りだが、
集められた女達はパルミラ以外は魅力がない。
話も唐突で難解。
ピーター・グリーナウェイ監督の映画を見たのは、「プロスペローの本」以来2作目だが、
「プロスペローの本」の方が同じような難解さでも面白かった。
こちらは性の館と言うよりも狂人の館のようで理解不能。


「ビッグ・リボウスキー」 アメリカ映画
11月19日 ビデオ (WOWOWにて録画)

ボウリングだけが生き甲斐のだらしない無職の中年デュード。
同姓の金持ちのリボウスキーの女房が借金を踏み倒したことで、デュードのところに
取り立てにギャングがやってきた。
文句を言いに金持ちのリボウスキー宅を訪ねるが、後日リボウスキーから家内が誘拐されたので
替わりに身代金を持って行って欲しいと頼まれる。
謝礼目当てにボーリングのパートナーを誘って受け渡し場所に向かうが、
ベトナム帰りの相棒が誤って銃を乱射したことで受け渡しは失敗。
おまけに大金入りのトランクを車ごと自動車泥棒に盗まれる始末。
女房の狂言誘拐だと睨んでいるデュードだが、金はなく誘拐犯とリボウスキーの板挟みとなって苦しい立ち場に立たされる。
そこにまたまたおかしな女性芸術家もからんで、ますます話はややこしくなっていくのであった。
コーエン兄弟の不思議なコメディー。
ストーリーの進行と共にどんどん話がこじれていく。
ベトナム帰りの相棒のキャラクターがいい。
どんなに無茶なことされてもキレずに暴力もふるわないデュード。
見た目はだらしないが前向きに問題を解決しようとするデュードにジェフ・ブリッジス。
映画内でボーリングのシーンが幾度となく登場するが、
郷ひろみのボーリングのコマーシャルの原点はここにあった。


「バーティカル・リミット」 アメリカ映画
11月15日 19:00 完成披露試写、厚生年金会館大ホール(ソニー)

野生動物のフォトグラファー、ピーターは3年前有名な登山家の父を登山中に死なせたことに
自責の念を抱え、妹アニーは兄を責め心を閉ざした。
世界でもっとも過酷な山K2登頂を目指すベースキャンプで、ピーターは登山家となったアニーと
再会する。
大会社のオーナー、ボーンは企業宣伝のために今回のK2登頂を企画し、そのためにスタッフは
集められ、アニーもそのメンバーだった。
登頂を始めたが、天候が悪化し引き返そうという隊長のトムの忠告を無視してボーンは登頂を強行。
ボーン、アニー、トムの3人は雪崩に遭遇、クレバスに閉じこめられてしまう。
アニーを救うためピーターは救出作戦を立てたが、その方法とはクレバスを覆った大量の雪を
除去するため、ニトログリセリンを背負って8000mの険しい山を登るというものだった。
皆が尻込みする中、いろいろな思惑を持った5人が志願。
遭難した3人は空気が薄く極寒の中では後22時間しか生存できない。
タイムリミットが迫る中ニトロを背負った危険な登山が始まった。
冒頭の登頂シーンで俳優の顔出し部分はセット臭く、スタントマンの実写シーンと質感が違うが、
転落シーンでいきなりアドレナリンが噴出。つかみはOK。
ダレ場が少なくアクションの連続。何度もアドレナリンが分泌される。
「アイガーサンクション」「クリフハンガー」の山岳アクションのおいしいとこ取りに、
「恐怖の報酬」のニトロ恐怖を加味したところがみそ。
アクションの基本パターンは「転落−宙づり」で、わかっていても、うまうまのせられてしまう。
厳重にケースに入れたニトロが簡単に漏れだしたり、日光をあびただけで湧き出したりするのは「?」
と思わせられる。
見終わって「プレイベート・ライアン」の「1人を助けるために何人も犠牲になる不条理」をこの映画でも感じる。
「プレイベート・・・」の場合はそこがテーマのひとつだったけどこの映画はそうではない。
救助に向かう者が命を落とせば2次遭難で、生還者の数を考えると、レスキューとしては完全に失敗やと思うねんけど、そんなこと娯楽映画で言えば野暮になんねやろうなぁ。


「シックス・デイ」 アメリカ映画
11月13日 9:00 完成披露試写、梅田スカラ座(東宝東和)

2007年遺伝子操作が進みクローンで人間をも複製できる時代となったが、
「人間は人間を造ってはならない」という「6DAY」法によって人間の複製は禁止されていた。
ヘリコプターのパイロットのアダムは、いつものように仕事から帰ると家の中には自分とうりふたつの人間が
みんなから誕生日を祝ってもらっていた。
そこへ怪しげな男女が現れアダムを拉致。すんでのところで逃れ警察に駆け込んだが、
警察では自動車泥棒として手配されていて、精神医異常者ということにまでなっていた。
警察と組織から追われる羽目になったアダムは、6DAY法を破った巨大企業にたった一人で
家族と自分を取り戻す戦いを挑んだのだった。
アーノルド・シュワルツェネッガー主演の正月映画。
最近シュワちゃんは強靱なヒーローではなく、普通の人物が活躍する、等身大のヒーローに
キャラ路線を変更しているが、芝居が大味で下手すぎる。
アップになるとかなり老けたのがわかるし。
ロバート・デュバルの演技がもったいない。
アクションも新味はない。
それでも一応ヒットすんねやろうなぁ。


「ピッチブラック」 アメリカ映画
10月31日 15:30 東映試写室(GAGA)

乗客を冷凍催眠中の定期旅客宇宙船を流晴雨が襲い、やむなく近くの惑星に
不時着することになった。
不時着によって機体は大破、乗客のほとんどは命を落とした。
女性操縦士フライがリーダーとなって生存者をまとめなければならないが、
残った乗客は凶悪犯と刑事、イスラム教の巡礼者、家出少年、骨董品屋など
癖のある者ばかり。
この星は太陽が三つあり、常に昼間で夜のない惑星だった。
近辺探索中鉱山を発見、居住区や宇宙船は無傷で残っているが、
人の姿は全くなかった。
鉱山の人々は鉱山や宇宙船を残してどこに消えたのか。
乗客のひとりが洞窟で行方不明になり、洞窟内でフライは闇にうごめく生物を発見。
そして常に昼間のこの惑星が、22年に一度惑星同士の直列化で日蝕現象が起こり、
闇に包まれると判明。鉱山の住人達が消えた謎が解ける。
鉱山に残された宇宙船に燃料を運び込み、脱出するためには闇の中で目が利く
凶悪犯のリディックの助けが必要になってきた。
冒頭の流晴雨をあびて惑星に不時着するまで一気に見せる。
不時着後、大破した宇宙船のセットを見てびっくり。凄いちゃち。
今時のSFテレビドラマでももっとましやでと思うぐらい安っぽい。
逆に言うとちゃちなセットを気づかせないほど、演出がうまかったと言うこと。
闇を際だたせるために昼間のシーンではわざと露出過多で、ちょっととばし気味に撮影し
青っぽかったり、黄色っぽかったり画面に変化を付けていた。
こういう題材は「エイリアン」からの呪縛から抜けきれず、どうしても「エイリアン」と比べられてしまう。
クリーチャーもギガーが作ったおどろおどろしいエイリアンやセットデザインを越えられないし。
しかし、監督のデヴィッド・トゥーヒーはよく頑張っていた。
この人はうまい監督だと思う。この人にもっと予算をあげてもう一度この種の映画を見てみたい。


「ブレックファースト・オブ・チャンピオンズ」 アメリカ映画
10月27日 15:30 東映試写室(クリエイティブアクザ)

ミッドナイト・シティーで自動車販売会社のを経営するドウェインは、
テレビコマーシャルで自ら愛想を振りまき、町の人気者。
だが妻はノイローゼで息子は地下シェルターでミュージシャン気取りのイカれた奴。
おまけに会社の部下は女装癖があり、秘書で愛人のフランシーともうまくいかない。
自殺を考える毎日だった。
一方売れない小説家ギルゴア・トラウトはミッドナイト・シティーで行われるアート・フェスティバルに
特別ゲストとして招待を受ける。
今まで安物のポルノ雑誌にしか作品が掲載されていない自分になぜ、と思いながら会場へ向かう。
生きる意味を見失ったドウェインと、今まで誰にも認められなかった孤高の作家トラウトが
ホテルのラウンジで出会ったのだが・・・。
ブルース・ウィリスがカート・ヴォガネット・ジュニアの小説「チャンピオンたちの朝食」に惚れ込み、
自らプロデュースした作品。
だがギャグ映画としてはまったく笑えないし、原作に忠実なシニカルな映画だとしたら
メッセージがまったく伝わってこない。
ブルース・ウィリスは何を思ってこんな映画を作ったのだろう。
今まで面白くない映画もたくさん見たけど、試写室まで足を運ぶ労力と、1時間50分という時間が
こんなにもったいなく感じられた映画はない。
こんな事してたらブルースももうしまいやなぁ。


「PARTY7」 日本映画
10月26日 15:30 ヘラルド試写室(東北新社)

不便な場所にある寂れたホテル「ニューメキシコ」の一室にちんぴらやくざの三木が逃げてきた。
三木は組の金を横取りし、へんぴなところにあるこのホテルにしばらく身を隠すことにしたが、
元恋人のカナが借金返せとなぜかホテルまで追いかけてきた。
カナは金持ちと結婚するために金がいるので、貸した金を返して欲しいと言う。
カナに未練がある三木は金はあるがカナを失いたくない。
そこへカナの婚約者トドヒラもホテルを見つけだしてやって来た。
そして三木の兄貴分のソノダも落とし前をつけに部屋に。
部屋の中は4つ巴のバトルとなったが、隣の部屋でこの様子をのぞき見している
のぞき常習犯のオキタと怪人物キャプテン・バナナ。
そこに三木とソノダを始末するために殺し屋が・・・・・。
殺し屋の放った銃弾はマジックミラーを破壊し、二つの部屋がひとつになりバトルロイヤルが始まった。
監督はCM出身で「鮫肌男と桃尻娘」の石井克人。
台詞廻しなどはカット割りされた小劇場の芝居のようだったが、登場人物が絡まりだしてからは、
だんだん笑いが大きくなってきた。
どうもこの監督は前作同様、自分のスタイルを貫き通し、力技で観客をねじ伏せるタイプのうようだ。
登場人物も癖のある人間をそろえた。
バナナの仮面をかぶった怪人キャプテン・バナナに原田芳雄。よくこんな役引き受けたもんや。
堀部圭亮とモデル出身の小林明美が頑張っている。
我修院達也(若人あきら)は前作同様反則技。
浅野忠信はひげもきれいに剃って前髪垂らしてナイーブなのぞき青年風で、一目では浅野とわからないくらい。
永瀬正敏は他が反則ギリギリのキャラなので埋もれてしまう。一番損してるみたい。
この映画で一番おいしかったのは岡田義徳。このキャラはもうちょっと押すと浮いてしまうところだったが、
一歩手前で踏みとどまった。結果的には一番印象的なキャラとなった。
この映画、リハを見てみたいと思った。


「ギャラクシー・クエスト」 アメリカ映画
10月25日 16:00 UIP試写室(UIP)

「スター・トレック」に似たTVシリーズ「ギャラクシ−・クエスト」の放送が終了して20年。
当時の役者達はあまりにもこの番組の印象が強いため他の役が付かず、
仕事は今もなお熱狂的な「ギャラクエ」オタク達のイベントで当時の衣装を着て舞台挨拶し、
サイン会をして回っていた。
そこにはるか彼方から来たエイリアンが艦長役のネズミスに、他のエイリアンの侵略の危機に瀕している、
助けて欲しいと懇願する。
熱狂的なファンがコスプレで仕事の依頼に来たと思い込んだネズミスは、リムジンを用意しておけと言い放つ。
実はエイリアン達は自分たちの星で傍受したTV「ギャラクシー・クエスト」をドキュメンタリーだと思いこみ、
ネズミス達を本物のヒーローだと思っているのだった。
宇宙船に連れてこられたネズミスはよくできたセットだと思っていたが、実はテレビを忠実に再現した
本物の宇宙船だった。
平和的なエイリアンを救うため、落ちぶれた役者達を呼び寄せ、本物のヒーローとしてもう一花
咲かせようと役者達は敢然と立ち上がるのだった。
「スター・トレック」のパロディー映画なのだが、ただのパロディーで終わらない。
笑わせ、ハラハラさせ、ホロッとさせる。
作り手がちゃんとツボを心得ている証拠。不思議なギャグ映画。
B級映画だがシガニー・ウィーバーをお色気要員として贅沢に使っている。
シガニー・ウィーバーがいるおかげで観客動員はかなり変わってくると思う。


「カル」 韓国映画
10月19日 13:30 松竹試写室(クロックワークス)

ソウルで連続してバラバラ死体が見つかる。
しかしその人体パーツはアトランダムに組み合わされ、しかもどの死体にもかけている部位がある。
事態を重く見た捜査当局は、収賄容疑で取調中だがやり手のチョ刑事に捜査本部を任せる。
捜査線上に3人と付き合っていたスヨンが浮かび上がる。
スヨンは何かを隠し、何かに怯えてるようだった。
やがて魔の手はスヨンにも及び、チョは自宅にスヨンを隠した。
やがて彼女の忌まわしい過去が明らかになり、チョ刑事にも殺人者の影が忍び寄る。
猟奇殺人ものがタブーの韓国で、敢えてその禁に挑戦したサイコ・サスペンス。
「ハード・ゴア・スリラー」血のりべったりのスリラーをこう呼ぶらしい。
「シュリ」のハン・ソッキュ主演。
映像的にはかなり頑張っているが、見終わってプレスシートのストーリーを読んでも
謎が残ったまんま。
少しの謎は許されるけど、あまりにも残された謎が多すぎる。
最後はもうちょっと説明して謎を解いて欲しかった。
残尿感が残ってしまう映画。


「オーロラの彼方へ」 アメリカ映画
10月17日 19:00 完成披露試写、リサイタルホール(GAGA)

1969年ニューヨーク。メッツがワールドシリーズで奇跡の優勝を遂げ、
オーロラがニューヨークの夜空を彩っていたある日、勇敢な消防士の父フランクが殉職した。
大好きな父を亡くして悲しみを抱えたままジョンは成人した。
あれから30年、ジョンは刑事となっていた。
30年ぶりのオーロラがニューヨークの空にあった。
自宅に遊びに来ていた友人の子供がクローゼットから引っぱり出してきたのは、
父が昔使っていた無線機だった。
夜、子供の頃見ていた無線機をいじっていると、声が聞こえてきた。
不明瞭だが、懐かしい声。
それは死んだはずの父の声だった。父の話題は69年のワールドシリーズ。
オーロラの影響だろうか、30年の時を隔てて電波はタイムスリップしてきたのだ。
時空を超え、電波による親子の再会。しかしその日は父が殉職する1日前とわかる。
必死で状況を説明し、当日の火災現場を父にアドバイスしたおかげで父は助かったが、
歴史が変わったことによって現実にひずみが出だした。
幼くして父を亡くした少年が、無線のタイムスリップによって父と再会し、命を助ける。
親子愛の感動巨編のようにうたい文句が書かれていたのでそう思ってみていたら、
前半は確かにそうだけど、後半はサスペンスになっていた。
連続殺人犯から母を守るため、父子が無線で協力し合い、母や他の犠牲者を助けようとする。
はたして犯人は誰なのか、母を助けることが出来るのか。
前半の後半でがらりと色が変わる。
親子愛とサスペンス、「ゴースト ニューヨークの幻」を父子でやろうとしたのだろう。
後半のサスペンス部分が別の映画のようになってしまった。


「X−メン」 アメリカ映画
10月17日 北野劇場

近未来、突然変異的に現れた超能力を持ったミュータント達に脅威を感じた政府は、
ミュータント達を登録制にして管理しようともくろんでいた。
ナチスの強制収容所にいた過去を持つミュータント、マグニートーは人類への宣戦布告をすべく
怪しげな手下を使って準備を進めていたが、人類とミュータントの平和的共存を願う
ミュータントのプロフェッサーXは、平和的ミュータント達を組織しマグニートーと戦う。
アメリカンコミックが原作で、バットマンと同じようなダークイメージのヒーロー達の活躍を描く。
悪役のマグニートーは強制収容所にいた過去から、いずれは自分たちも収容所送りになると
危惧しているということが根底にあり、善玉ミュータント達も人間に差別されてきた過去がある。
人間のために戦う善玉達にも悲しみがある。
戦いはそれぞれジャンルの違うミュータント達の超能力合戦で、「マトリックス」の超能力版と
言えるようなアクション。
続編が作れる終わり方になっているので、当たればグレイドアップして続編が作られるだろうけど、
コケればB級シリーズの仲間入りとなり、一部のファンだけに支えられて細々続くオタク映画に
なってしまうだろう。


「サン・ピエールの生命」 フランス映画
10月11日 15:30 東宝東和試写室(シネカノン)

1849年、カナダにあるフランス領サン・ピエール島で殺人事件があった。
漁師が酔って殺人を犯し、裁判で死刑を宣告された。
しかし、のどかな島にはギロチンも死刑執行人もなく、本国から取り寄せるための数ヶ月、
この地を治める軍隊の隊長ジャンのもとに収監されることになった。
ジャンの妻マダム・ラは、死刑囚ニールに温室の花の栽培を手伝わせたり、
島の人達の手伝いをさせていた。
やがてニールは凶暴な殺人鬼ではなく、
心優しい人間で誤って殺人を犯してしまっただけだと島民も思うようになった。
夫のジャンは妻とニールの交流を温かく見守っていた。
しかし、ギロチンを乗せた船は島に近づき、死刑を執行する立場のジャンは、
妻と島民のニールに対する気持ちを考えると、心穏やかではなかった。
島の総督はフランス本国の威厳を保つべき立場のジャンが、島民と同じように
ニール擁護の立場に立っていることに対し苦々しく思っていた。
やがてギロチンを乗せた船が着き、ニールだけではなくジャンの身もまた危うくなっていくのだった。
淡々と語られる時代小説のごとき趣の映画。
地味だけど映像はしっかり丁寧に作られている。
アメリカ映画なら最後は奇跡的な仕掛けのひとつも用意されていて、
ひと盛り上がりあるだろうけど、そこがフランス映画。
なんの解決もせず、まったく救いようのない終わり方。
実際はこうなんやろうけど、あまりにも現実的すぎる。
映像はええけどなぁ。
ラストがなぁ。
つらいなぁ。


「マルコビッチの穴」 アメリカ映画 
10月3日 梅田ピカデリー

クレイグは操り人形師としての才能はあるが、世間では認めてもらえない。
ストリートパフォーマーとして生計を立てているが、ペットショップに勤める妻のロッテ
に食べさせてもらう日々が続く。
仕方なく就職することにしたクレイグは求人広告で見つけた会社に応募したが、
そこはオフィスビルの7と1/2階という不思議な空間にある天井のやたら低い変な会社だった。
ファイルの整理係として働くこととなり、
もともと手先の器用なクレイグはてきぱき単調な仕事をこなしていたが、
ある日ファイリングキャビネットに隠された小さなドアを発見。
開けてみるとそこには穴が果てしなく続いていた。
いいようのない興味に突き動かされ、その穴に恐る恐る入ったクレイグだが、
その穴は俳優ジョン・マルコビッチの脳にワープする摩訶不思議な穴だった。
同じフロアで働く美女マキシンに一目惚れしたクレイグは、彼女とこの穴で一儲けをたくらむ。
変身願望を持つ客を集め、マルコビッッチに送り込むという珍商売だった。
時々どんな想像力でこんな映画を撮ったのだろうと思わせる作品がある。
これもその作品のひとつだけど、この種の作品はだいたいヨーロッパの監督が多く、
アメリカ作品は珍しいと思う。
マルコビッチの脳にワープするというアイデアも変だけど、7と1/2階と言うアイデアは秀逸。
この映画の不可思議さを増幅させる効果がある。
主人公クレイグが人形使いなのもストーリーに厚みを持たせている。
ただ、始めは理屈抜きにしてマルコビッチの脳にワープすることを許していたが、
ラスト近く、複数でマルコビッッチの脳に永住するというあたりから、理屈に無理が出だした。
この辺がわからない。ラストあたりは着地に失敗した感がある。
キャメロン・ディアスは最初誰か判らないほどブスだった。
 

「シャフト」 アメリカ映画
9月29日 13:30 UIP試写室(UIP)

NY市警の刑事ジョン・シャフトは黒人殺害容疑で不動産王の金持ち息子を逮捕。
極めて差別的な動機の殺人事件であったが、目撃者のウエートレスは犯人に脅され失踪、
犯人は金にものを言わせて保釈された。
シャフトは警察での正義の限界を感じ、やるせなさをつのらせながら毎日職務を遂行する。
麻薬王との対決、金持ち息子再逮捕への執念と、ストーリーは2本柱で展開される。
1971年に公開された「黒いジャガー」のリメーク。
主役のシャフトはサミュエル・L・ジャクソンで、昔の刑事活劇を今やろうとしてるみたいだけど、
ストーリーはテレビドラマのようで前時代的。
71年当時のシャフトは黒のタートルネックに黒のレザージャケットでさっそうと登場し、
ファッションも大流行した。
今回もファッションには凝って、やはり黒ずくめで、アルマー二のレザージャケット。
しかし、安月給の刑事がアルマー二の皮ジャケットを着てるのは不自然。
当時はアイザック・ヘイズの主題歌「シャフトのテーマ」が大ヒットした。
リメークだけど主題歌は昔のまんま。
普通昔の曲をモチーフにアレンジするもんだけど、ほんとにそのまんま昔の曲。
「バットマン」の時のプリンスの曲はうまかった。
昔のバットマンのテーマのテイストを残しつつも、新しいテーマを作っていた。
昔のシャフト役のリチャード・ラウンドトゥリーがシャフトのおじさん役で出ている。


「隣人は静かに笑う」 アメリカ映画
9月14日 ビデオ(WOWOWにて収録)

大学教授マイケルが道で手に大けがを負った少年を発見、病院に運ぶ。
少年は向かいに住むラング家の子供で、その事件以来同じ年頃の子を持つマイケル家族と
親しくなる。
しかし間違って配達されたラング家の郵便物から、ラングはテロリストではという疑惑が湧いてくる。
古い新聞資料などを調べれば調べるほど疑惑は深まる一方。
ラングをこっそり監視すると、その行動は実に怪しげで、テロリストだと確信するが、
周囲の者は信用しない。
やがて自分が疑られていると感づいたラングは、マイケルの家に向かう。
マイケルにジェフ・ブリッジズ、ラングにティム・ロビンス。
ジェフ・ブリッジズはかなり頑張ってて、いい味が出てきた。
逆にティム・ロビンスは抑えめな演技。
妻がFBI職員で殉職し、当局に対して反感を持っているなど、
うまい伏線が張られ、ラストは想像できなかった。
実に巧妙な罠だったことが最後にわかる。
してやられた感があるが、ハリウッドらしくない終わり方。


「グリーン・デスティニー」 アメリカ・中国合作映画
9月13日 15:30 ソニー試写室(ソニ−)

19世紀初頭の中国、武術の達人は尊敬され、我こそが一番と武術家が跳梁跋扈していた。
剣の達人リー・ムーバイは師の仇ジェイド・フォックスを探し出せず、剣を置く覚悟を決めた。
死んだ友人の妻で弟子のユーに、自分の分身である名刀グリーン・デスティニーを信頼する
ティエ氏のもとに届けるよう命ずる。
ティエ氏の元にグリーン・デスティニーを無事届けたがその夜盗賊が入り、名刀は盗まれてしまう。
名刀を盗んだのは自分を姉と慕い、政略結婚させられるより剣の道に進みたいとかねがね言っていた
長官の娘イェンではないかとユーは睨んでいた。
実はイェンの家庭教師こそ仇ジェイド・フォックスだったのだ。
リーも駆けつけ、リー・ユー・イェン・フォックスの激しい武術の応酬が始まった。
ワイヤーアクションをふんだんに使い、もう飛ぶ飛ぶ。
屋根に飛び上がる、壁を走る、屋根から屋根に飛び移る。
どうも達人達は一種の妖術を使えるようで、これでもかというぐらい飛ぶ。
ちょっと飛びすぎの感もある。
アクション、バトルは、もうお手のものなのでよくできている。これは今となっては当たり前。
リーにチョウ・ユンファ、ユーに「007トゥモロー・ネバー・ダイ」のミッシェル・ヨー。
どうでもいいけど、ミッシェル・ヨーを見るたびに倍賞美津子を思い出す。


「インビジブル」 アメリカ映画
9月5日 19:00 完成披露試写、厚生年金会館芸術ホール(ソニー)

人間を透明にする研究を政府の秘密機関で任されているセバスチャン達。
研究は透明化には成功したが元に戻せずにいた。
やがて透明化したゴリラを元に戻す事に成功したが、資金打ち切りのタイムリミットが迫っていた。
焦ったセバスチャンは自ら実験台となり透明化に成功するが、
透明になった事のストレスと、誰も持ち得なかった能力を身につけた事により、
セバスチャンの精神は凶暴化しあらぬ方向に向いていくのだった。
今頃透明人間を映画化するので大変。
昔は人間がだんだん薄くなっていって最後に消えてしまうけど、
このSFXやCGが進歩した時代にそんな古くさい見せ方では済まない。
ではどうするか。まず皮膚から消えていく。
筋肉や血管がむき出しになり、内臓が丸見えになる。
心臓がバクバクしていたかと思うとそれも消え、
骸骨となり、骨も消えるとベッドに人型のくぼみだけが残る。
つまり「人体の不思議展」。解剖標本のようになぜか皮膚から順番に消える。
消えたあとも、糸で吊した鉛筆が空中で動くなんて出来ない。
透明人間の身体に体調測定用センサーの電極をたくさんつけるシーンでも、
立体的でかなりしっかりしているし、マスクをしていてもサングラスを取ると、
目のところにボッカリ穴があいていて、後頭部のあたりからマスク越しに
ぼんやり光が透けて見えるところまでとてもリアル。
それもそのはずで実際、主役のケビン・ベーコンが全身レオタードで撮影してから、
CGでその姿を消し、そこにバックの絵を合成していったそうな。
「有る物を消す」という本物の透明人間と同じプロセスでCGを作り込んでいる。
透明人間になれたら、男ならしてみたいこともちゃんと描かれていた。
透明人間になって起こる不都合で、なるほどなぁと感心したシーンは、
透明化したケビン・ベーコンが薬の副作用で気絶し、
17時間眠り続けて目が覚めるシーン。
目を覚ますと部屋に電気がついているので、まぶしいとわめく。
いつまでもまぶしいとわめき続ける。
透明化しているのでまぶたも透明。つまり目を閉じても光が射し込む。
透明にならないとわからない苦労やなぁ。


「リプリー」 アメリカ映画
8月30日 千日前国際劇場

学歴を偽ってピアノ弾きのバイトをしていたリプリーに、プリンストン56年卒なら
息子と同じだ、イタリアに行ったまま帰ってこない息子を連れ帰って欲しいと、
大金持ちから持ちかけられ、イタリアに渡ったリプリー。
金持ち息子ディッキーは何不自由なく贅沢な暮らしで、イタリアでの生活を楽しんでいた。
うまくディッキーに近づき、友達となったリプリーだが、
人々を引きつける太陽のような魅力を持ったディッキーに、やがて憧れ以上の感情が芽生えてきた。
しかしディッキーが自分のことを友人ではなく愛玩動物のように思っていると知り、
また恋人マージと結婚するので自分が邪魔者になったことに気づいたリプリーは、
ディッキーを殺害、物まねのうまいリプリーは自分がディッキーになりすますことを決意する。
アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」のリメーク。
「太陽・・・」は貧乏人が上流社会の生活に憧れ、風貌が似ていることを利用して
金持ち息子を殺害してなりすます犯罪ドラマだったが、
「リプリー」は殺害動機が同性愛的な嫉妬がからんでいる。
「太陽・・・」はルネ・クレマン監督の脚色で原作から離れていったようだが、
今回の方が原作により近くなってるらしい。
前作は完全犯罪を目指した犯罪ドラマだったけど、今回は同性愛の愛憎劇として描かれている。
同じ原作でもずいぶん印象が違う。
僕としては、ラストの大ドンデンがある前作の方が好き。
主演のリプリーはマット・デイモンだけど、ディッキー役のジュード・ロウの方がハンサムで存在感があり、
マット・デイモンは完全に喰われ、人気もさらわれてしまってるんではないだろうか。
この映画、マットはちょっと損したね。
他に「恋に落ちたシェークスピア」のグウィネス・パルトロウ、「エリザベス」のケイト・ブランシェット。


「タタリ」 アメリカ映画
7月18日 13:30 東映試写室(GAGA)
人を怖がらせることにかけては天才的な遊園地のオーナー、プライスは仲の悪い妻のエブリンの
誕生パーティーを、おぞましい生体実験の末に火事となり、大惨事となった精神病院の廃墟で開催することにした。
しかし招待客は何者かによって変えられ、集められた者達はお互いに面識のない5人の男女だった。
招待客をエブリンが勝手に変更したのだと意に介さないプライスは、幽霊が出ると噂のこの精神病院で
無事に一晩過ごすことが出来れば1億円と、賞金を付ける。
こっそりと病院内の至る所に仕掛けを作り、客達を驚かせていたプライスだが、
やがて見えない力が病院内に潜んでいることに気づき、惨劇は起こっていくのだった。
ロバート・ゼメキスらが作ったホラー専門プロダクション「ダークキャッスル・エンタテインメント」の第1弾。
断崖にそびえ立つ精神病院、おぞましい生体実験、廃墟となった病院の医療器具、おどろおどろしいインテリア。
あえて古典的なお膳立てにのっとって、昔ながらの正統的ホラーを作ろうとしたのだと思う。
パーティーのホスト、プライス役のジェフリー・ラッシュの風貌は、昔のホラーになくてはならないキャラクターを
ちゃんと踏襲している。
ビデオの映像など新味のあるところもあるが、霊的な物が登場するあたりからありきたりのパターンになってくる。
ちょっと「ジェイコブズ・ラダー」をお手本にしたような所もある。
そう考えると「ジェイコブズ・ラダー」の病院シーンは不気味やったなぁと改めて感心する。


「英雄の条件」 アメリカ映画
7月13日 19:00 完成披露試写、梅田ピカデリー3(GAGA)

中東イエメンで暴動が起こり、アメリカ大使館が包囲された。
米政府は大使家族救出のため海兵隊の精鋭を送り込んだ。
民衆からの投石に加え、ゲリラの銃撃が続く中、民衆を刺激しないよう発砲せずに
大使家族を救出。
しかしゲリラの銃撃は激しくなり、部下達がバタバタと銃弾に倒れる。
隊長のチルダーズは部下に向かって民衆への発砲を命令する。
海兵隊の無差別銃撃によって80数名の一般市民が死んだ。
世界の世論は比類なき暴挙と米政府を責め立て、政府も狂気の軍人の仕業であると、
チルダーズを軍法会議にかけることにした。
弁護を引き受けるのはベトナム戦争でチルダーズに命を助けられたホッジス。
親友チルダーズの無実を信じての弁護だが、証拠はすべてチルダーズに不利だった。
米政府はおろか世界中を敵にまわしての裁判を、二人だけで乗り越えなければならないのだった。
政情不安な国で暴動が起き、米大使館を包囲する民衆から大使館員達を救出する。
報道ではよく見られる光景で、どこにでも起こりうる話だが、映画では手つかずで残されてた題材。
大使家族救出シーンは見応えがある。これは監督のウイリアム・フリードキンのうまさだが、
ヘリが着陸した大使館の裏に、包囲しているはずの暴徒がまったくいないのは不思議。
トミー・リー・ジョーンズ、サミュエル・L・ジャクソンという2枚看板、おっさん二人がよく頑張っている。
まったく色気のない男のドラマ。


「風を見た少年」 日本映画
7月4日 19:00 完成披露試写、梅田ピカデリー(ブエナ・ビスタ)

少年アモンは「光あそび」と称する不思議な力の持ち主。物理学者の父はアモンの力を強力なエネルギー
に変える研究をしていた。
独裁者ブラニックはその力を武力として使おうとたくらんでいたが、アモンの父はこれを拒否。
資料を研究所もろとも燃やし、家族は逃走を図ったが両親は射殺された。
アモンは捕らえられブラニックの飛行船で研究所に向かっているとき、金色の鷲がアモンに空を飛べと言う。
実はアモンは空を自由に飛べる風の民の末裔だった。
言われるまま恐る恐る大空に浮かび上がったアモン。空を飛べることに気づいたアモンだったが、
未熟な飛行術のせいで川に落下、少女マリアに助けられる。
しばらくマリアの家で厄介になっていたが、ブラニックの手がこの村にも伸びてきた。
強力な微粒子爆弾を作るにはアモンの力がどうしても必要だったのだ。
やがて人々はブラニックを倒すために一斉蜂起をするのだった。
C.Wニコル原作のアニメ。
総監督の大森一樹が舞台挨拶で「『天空の城ラピュタ』と『もののけ姫』をたして2で割ったような作品」
と、冗談交じりで言っていたが、そのとおりだった。
絵作りはジブリ作品ほど緻密じゃないし、ストーリーももひとつ。
さしてセールスポイントのない作品で、テレビの長編アニメとしてなら見られるが、
劇場で金を取ってとなるとちょっとなぁ・・・。


「グラディエーター」 アメリカ映画
6月30日 国際劇場

西暦180年、森での大合戦で勝利をおさめたマキシマス将軍を
皇帝アウレリウスは次期皇帝に指名する。
しかしマキシマスは皇帝という地位よりも、戦続きで会えない家族のことを思い
即答を避けた。
てっきり自分が次の皇帝になるものと思っていた息子のコモドゥスは、
父である皇帝アウレリウスを殺害し。
密かにマキシマスの処刑を部下に命ずる。
命からがら逃げ出したマキシマスは長い旅の末、家族の元にたどり着くが、
妻子はコモドゥスの手に掛かり殺害されていた。
生きる意味を失ったマキシマスは奴隷商人に捕らえられ、剣闘士として売られた。
観客の前で殺し合いをさせられるマキシマス。生きる意味を失ったマキシマスだが
生きるという本能で勝ち進む。
ローマの巨大コロシアムで戦うことになったマキシマスは、VIP席に今は皇帝となった
コモドゥスの姿を見つける。
今やマキシマスの生きる意味は、愛する妻子を奪ったコモドゥスへの復讐のためだった。
ラッセル・クロウ主演、リドリー・スコット監督作品。
冒頭の合戦シーンはエキストラの数の多さもあるが凄い迫力。
いきなりつかみはOK。
何度も登場する剣闘シーンも、毎回戦い方のパターンを変え飽きさせない。
ドラマとしても物語がしっかりしている。
CGもセットとCGの違和感がなく、どこからどこまでがセットでどこからがCGなのか
まったく境目がわからない。
ストーリー性、美術、演出、どこをとっても穴がない。
1級の娯楽作品


「カラー・オブ・ハート」 アメリカ映画
6月23日 ビデオ(WOWOWにて収録)

50年代のテレビシリーズ「プレザントヴィル」マニアの高校生デビッドと、
双子の兄妹で男好きのジェニファーが、テレビのリモコンを奪い合ううちにこわしてしまい、
修理屋の不思議な老人からリモコンをもらう。
このリモコンによって二人はテレビドラマ「プレザントヴィル」の世界に入り込んでしまう。
そこはドラマそのもの、白黒で暖かい晴れた日が続き、人々はいつも笑って暮らし、平和な世界だった。
「プレザントヴィル」オタクのデビッドは喜んでいるが、ジェニファーはこんなダサイ世界は嫌だとわめく。
しかし現実世界に帰る方法もわからず、しばらくはこの世界で暮らすしかなかった。
ある日ジェニファーが高校の同級生を誘惑したことからこの世界に狂いが生じ、
ジェニファーに影響された人々は色付き初め、平和な町は大騒ぎとなる。
理想郷のようなドラマの世界に現実のドロドロした物を持ち込んだことによって、
秩序が乱れ世界が色づき始める。
ところがこの秩序は倫理観や因習で、人間の自由な心はそんな呪縛から逃れようとする。
いつの時代にもあった先駆者たちの行動と精神をテレビの世界で表現したかったのだと思う。
ドラマと現実が交錯する物語ではウッディー・アレンの「カイロの紫のバラ」がよかったなぁ。


「アナライズ・ミー」 アメリカ映画
6月21日 ビデオ(早稲田リーガロイヤルホテル)

マフィアのボス、ポールはストレスからか最近情緒不安定。おまけに性的不能にもなってしまった。
生き馬の目を抜く裏社会では弱みは即、死につながる。
偶然出会った精神科医のベンのアドバイスで徐々に心は落ち着いていくポールだが、
ベンにしては四六時中ポールに呼びつけられ、たまったものではない。
2度目の結婚式を控えているのにこのままではポールに結婚までぶちこわされそう。
しかし有力ファミリーの会合を控えたポールは、ベンをなかなか解放してくれない。
ロバート・デ・ニーロがセルフパロディー的なマフィアのボスをコミカルに演じている。
精神科医にビリー・クリスタル。
あまり期待していなかったが、最近では一番面白いコメディー映画。
デニーロの味だけではなく、本もよくできたコメディー。


「M:I−2」 アメリカ映画
6月19日 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(UIP)

休暇中のハントに指令が下る。
テロリストに奪われた強力な細菌を奪い破壊せよとの命令。
パートナーに選ばれたのは腕利きの泥棒、ナイアという美女だった。
ナイアに接近しその美しさに魅せられたハント。二人は急速に親密になっていく。
しかしナイアが選ばれた理由は泥棒の腕ではなく、ナイアがテロリストのボス、
アンブローズの彼女だったからだ。
ナイアを餌にアンブローズに接近することを命じられたハントの心は激しく動く。
人殺しを何とも思わない非情なアンブローズと、細菌の激しい奪い合いのさなか、
ナイアは感染してしまう。
24時間以内にアンブローズが持つ解毒剤を投与しなければナイアの命がない。
バイクでの激しいカーチェイスの後、二人は解毒剤をめぐり対決するのだった。
トム・クルーズ製作・主演のシリーズ第2弾。
デ・パルマが「ミッション・トゥー・マーズ」を撮るためにこの映画を蹴ったので、
監督はジョン・ウー。
大正解だと思う。銃撃戦もカーチェイスも、すでに手は出尽くしたと思っていたけど、
まだまだいける。ジョン・ウー マジック。
ハントとナイアがあっさり恋に落ちて「おいおい、スパイがそう簡単に恋に落ちてどうすんねん」
と思うところや、ナイアを餌にすることを悩む青臭さもあるが、
強い愛があったからこそなしえた「実行不可能」な作戦だったのではないか、
その辺まで読んでボスもハントとナイアを結びつけたのではないかと、
最後に思わせるよう脚本も作ってある。
「これはスパイ大作戦ではなく007だ」という意見もあり、
確かにオープニングからタイトルバックに至るまで007のようだけど、
今や007でわくわくすることがなくなった今、この映画は昔の007のようにわくわくさせてくれたし、
スパイ大作戦のようにミッションに応じたメンバーをチョイスしているところもよい。
(ちゃんとデジタルメカの専門家は黒人で、電子工学の専門家バーニーを思い出させた)
いいところでおなじみのテーマソングが流れ雰囲気も盛り上がる。
世界中でヒットするのがよくわかる。
今年は「M:I−2」にしろ、「トイ・ストーリー2」にしろ、続編大健闘。


「メジャーリーグ3」 アメリカ映画
6月1日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ガスは3Aのサウスカロライナ・バズの監督を引き受けたが、最下位街道まっしぐらの
オンボロチームだった。
テコ入れに有望選手を自らスカウトしたり、メジャーで引退したタカを現役復帰させたりして、
チームは息を吹き返し連戦連勝。
グループのメジャー球団ツインズの監督が、自分たちをバカにしたことを怒ったガスは、
ツインズに挑戦状をたたきつける。
ガスが勝てばツインズとバズの監督交代。負ければ年俸なし。
そして前代未聞のメジャー球団対マイナー球団の試合が始まった。
シリーズ3作目で今回はマイナー球団。「メジャーリーグ」なのに?
製作費が大幅に減ってテレビドラマのようなチープな映画になってしまった。


「ロミオ・マスト・ダイ」 アメリカ映画
5月28日 10:50 梅田ピカデリー

港町で対立するチャイニーズマフィアと黒人ギャング。
中国人ボスの息子が殺されたことから一触即発の危険な状態になる。
香港の刑務所に服役中のハンは、弟の死を知り脱獄。
アメリカに渡り、偶然知り合った黒人ボスの娘トリシュと、真相究明と事態の収拾に乗り出すが、
何者かによって命を狙われる。
ジェット・リー主演のカンフーアクション。
「ロミオとジュリエット」をモチーフにしているけど、ジェット・リーと黒人娘が恋に落ちるのは
不自然で無理がある。
トリシュ役のミュージシャン、アリーヤは登場するたびに自分の曲が流れ、
そこだけプロモーションビデオのようになる。
ジェット・リーの一枚看板では弱いと見て、アリーヤをテコ入れに起用したよう。
ジャッキーとは違ったカンフーアクションで見せ場も多いが、ワイヤーアクションの滞空時間が長すぎて、
吊っていることを感じさせてしまうのが惜しい。
でも、アメフトのシーンやホースを使ったアクションはGOOD。
ジェット・リーはやはりカンフーのキレがいい。
「X−rayバイオレンス」と言って、骨が折れるところをレントゲンで見せたりする、昔の「必殺仕置人」の
アイデアをパクッているのはご愛敬。
ラストの対決は「燃えよドラゴン」を彷彿とさせるが、相手役のラッセル・ウォンのルックスの方がいいので
ジェット・リーには強力なライバルになるだろう。


「ミラクル・ペティント」 スペイン映画
5月26日 15:30 ヘラルド試写室(パルコ)

ペティント家は代々バチカンに献上するウエハースを作っている。
ペティントの夢はたくさん子供を作って大家族のお父さんになること。
幼なじみの盲目の少女オリビアと結婚し、25年に一度列車が通過する線路の横に家を構え、
双子ができてもいいようにベッドもタンスも2つずつ作ったが、子供の作り方を間違って
覚えたのでいつまで経っても子供ができず、老人になってしまった。
記録映画に付いていた「アフリカの子供 里親応募券」を送って、子供が来るのを待っている
ペティントに、宇宙人や精神病院を脱走した凶暴な男などが次々に転がり込んできて、
ペティント家の子供として生活し出す。
宇宙人オタクの修理工に家の改築を頼んだことから、NASAを巻き込む大騒動に発展していく。
とにかく登場人物全員がバカばっかり。まともな人間は一人として登場しない。
いい悪いは別にして、監督・脚本のフェセル兄弟の想像力とトビ方はすごい。
ただのバカ映画になってしまうところを踏みとどまったのは、画面の明るさと、スペインという
突き抜けた陽気さのパワーのおかげだと思う。
明るい色調の「デリカテッセン」と言ったところか。


「徳川セックス禁止令 色情大名」 日本映画
5月16日 レンタルビデオ

天下太平が長く続く文化文政時代、徳川11代将軍家齋(いえなり)は、
20数人の妾がいたため子供が50人以上いた。
家臣は大量の子供の婚姻、縁組みに頭を痛めていた。
34番目の子供喜代姫は田舎の大名に嫁いだが、この殿様は織田信長に傾倒し、
武道オタクで女嫌い。
家老の手ほどきで初夜を乗り切るが、姫様気分のタカビーな喜代姫とは初日から冷戦状態。
闇の商人のセックス指南で巡り会った、異人サンドラによって性に目覚めた殿様は、
喜代姫に挑むが拒否され、腹いせに手を付けた腰元から庶民もセックスをすると聞き、
こんないいものを庶民がするとはけしからんと、セックス禁止令が出される。
サンドラ・ジュリアンを日本に招いて撮った、72年の東映ピンク映画で、コメディーだが実に面白い。
ピンクの割にセットにも金がかかっているし、大名行列なども手を抜かず延々続いている。
脚本がよくできていて、所々でニヤリとさせられる。
歌舞伎の「京人形」を「フランス人形」にしたり、セックス禁止令を現代の猥褻物陳列罪と同じ
175条にしていたりと、パロディー精神と反骨精神も脚本に込められている。
山城新伍・渡辺文雄・殿山泰司のほか、唄子・啓介、平三平、岡八郎などのお笑い陣も
カメオ出演。
レンタルビデオ屋にいつ行ってもこのビデオが貸し出し中だった事でも、この映画の人気が伺える。


「人狼」 日本映画
5月12日 13:00 ヘラルド試写室(バンダイビジュアル)

昭和30年代の日本。
戦後のめざましい経済成長のひずみで、多数の失業者と犯罪者を生んだ。
反政府勢力はセクトと呼ばれ、武力闘争へと発展。
地下組織となった。
政府は首都の治安維持のため、強力な火器で武装した治安維持部隊
「首都警」を組織した。
伏は、命令されればどんなことでも躊躇なく遂行する、
優秀な首都警特機隊隊員だったが、目の前でセクトの少女が爆死するのを
目撃してから内面に変化が現れる。
少女の姉雨宮圭と交流を深めるうち、伏と雨宮は公安、特機隊、セクト、
そして首都警内の闇の組織「人狼」の謀略の中心に巻き込まれていくのだった。
押井守原作・脚本のアニメ。
SFだけど未来ではなく、昭和30年代という設定がおもしろい。
路面電車や、オート三輪などノスタルジックな景色で、
昔の全共闘と機動隊の衝突が展開される。
絵はそれほど細かくは描かれていない。
SFイコール未来ではなく、これからこんな時代のSFが流行りそう。


「ラッシュ・アワー」 アメリカ映画
5月9日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ロサンゼルスの中国領事の娘が誘拐され、FBIが捜査に乗り出した。
娘を心配した領事は、かつての部下で娘のカンフーの師匠でもある
リーを香港から呼び寄せた。
捜査の邪魔をされたくないFBIはリーのお守り役として、ロサンゼルス警察の
問題児カーターを同行させる。
リーは娘のため、カーターはいいとこ見せてFBIに入るため、捜査を進めるが
外交関係を気にしたFBIは慎重になり、なんとか二人を事件から遠ざけようと
する。
はじめは反発していた二人だが、やがて連帯感が生まれ、二人は事件の黒幕へと
迫っていく。
ジャッキー・チェン主演のハリウッド映画。
今回はクリス・タッカー(フィフス・エレメント)とのコンビ。
ギャグ部分はクリス・タッカーがベラベラしゃべって担当しているので、
ジャッキーは寡黙で、コミカルなところはあまりない。
だから何か物足りなさを感じたのかもしれない。
ハリウッドで撮るとアクションは大がかりにはなるけど、
カンフー部分の細かさが無くなっていくように思う。


「ミッション・トゥ・マーズ」 アメリカ映画
4月20日 19:00 完成披露試写、リサイタルホール(ブエナビスタ)

2020年、火星に人類は到達し、調査が始まった。
しかし岩山を調査中、異様な砂嵐が起こり、飛行士3人が命を落とす。
唯一生き残ったルークも謎の言葉を残し、音信は途絶えた。
すぐさま原因究明と生存者の救出のため、マーズ2号が火星にむけて旅立った。
乗員はルークの昔からの飛行士仲間ウッディと妻のテリー、若いフィル、
妻を亡くしたことから今だ立ち直れないジムの4人。
4人は178日間の飛行の後、火星の周回軌道にはいるが、隕石群が宇宙船を襲い
船体に致命的な損傷を受け大破。
火星着陸はおろか帰還さえもできなくなった。
やむなく火星の軌道を周回する、マーズ1号が残していった補給船に宇宙遊泳で乗り移る事になったが、
ウッディは仲間を救うため命を落としてしまう。
なんとか火星にたどり着き、ルークを発見した3人は謎の岩山に向かい、
火星と人類の秘密を知ることとなる。
ジムにゲイリー・シニーズ。
ティム・ロビンスも出ているが途中であっさり死んでしまう。(まぁ涙を誘う役ではあるが)
ブライアン・デ・パルマが「ミッション・インポッシブル2」を断って、「宇宙を撮りたい」と、
この映画を引き受けたそうだけど、デ・パルマ節と言うような映像は影をひそめ、
全くオーソドックスに撮っている。
隕石によって船体に穴があき、緊迫したシーンはわざと淡々と進めているようだった。
見ていて「何か欠けているなぁ」と思ったのは、宇宙もののセオリー「打ち上げ」と「着陸」
がなかったから。こちらもわざとはずしたよう。
全体的な印象は、「2001年宇宙の旅」と「未知との遭遇」と「コンタクト」を混ぜたような感じ。


「スリー・キングス」 アメリカ映画
4月18日 11:40 千日前国際劇場

1991年湾岸戦争終結直後、ゲイツ少佐は降伏したイラク兵から、
クウェートから奪った金塊のありかを聞き出す。
本国に帰っても先行き望みのないゲイツは、この金塊を手に入れ人生を変えることを決意。
仲間3人と共に反体制派のイラク人の村に乗り込む。
まんまと金塊を手にした4人だが、フセインの国民軍に捕らえられ、食べる物もなく
命の危険にさらされている村人達の惨状を目の当たりにし、彼らを救うために立ち上がった。
ジョージ・クルーニー最新作。
はじめ、隊を離れ勝手に金塊強奪作戦を展開する物語と聞いて、クリント・イーストウッド、
ドナルド・サザーランド、テリー・サバラスの「戦略大作戦」のリメイクかと思ったが、
ヒントにはしているものの完全な別物だった。
「プライベート・ライアン」「シン・レッド・ライン」で悲惨な戦争をシリアスに描くのが
流行になりそうだったのを、戦争を娯楽映画として復権させた映画。
銃撃戦の見せ方も工夫がある。
今までの戦争映画になかったアイテム、ビトンのバッグや携帯電話が戦場で登場し、
いかにもありそうと思わせる。
現代装備の戦争映画をもっと見たい。


「エリン・ブロコビッチ」 アメリカ映画
4月17日 19:00 完成披露試写、シアター・ドラマシティー(ソニー)

元ミス・ウイチタのエリンは、離婚後一人で3人の子供を育ていたが、
美人だが学のないエリンには仕事がなく、子育てに悪戦苦闘していた。
ある日自動車事故にあったエリンは、弁護士エドを雇い大金を手に入れようとしたが、
法廷での自分の言動のせいで敗訴。
金に困ったエリンは、エドの法律事務所で無理矢理働かせてもらうことにする。
単純な書類調べでエリンは奇妙な書類を発見する。
不動産案件の書類に医療記録が含まれていたのだ。
調べるうち、大手電力・ガス会社PG&E社の工場のあるヒンクリーの住人達が、
同じような病気に悩まされていることがわかる。
病気の原因が工場から流れ出た有毒なクロムだと突きとめたエリンは、
エドと住人達を説得し、巨大エネルギー産業を相手に訴訟を起こそうとするが、
困難な問題が次から次にわき起こる。
史上最高額の和解金を手にした女性の実話。
エリンにジュリア・ロバーツ。
はじめはちゃらちゃらした頭の悪い女だったのに、途中から賢くなっているように見える。
ジュリア・ロバーツ主演の映画なので出番が多いのはわかるが、
全カットのおよそ98%に顔出ししている。出ずっぱり。
弁護士エド役のアルバート・フィニーがいい味を出している。
ともすればTVドラマのようになりがちな話を「映画」の域にとどめたのは、
演出の手腕だと思う。
監督は「セックスと嘘とビデオテープ」「アウト・オブ・サイト」のスティーブン・ソダーバーグ。


「コップランド」 アメリカ映画
4月16日 ビデオ(WOWOWにて収録)

マンハッタンから川1本挟んだ静かな住宅街ギャリソン。ここはニューヨーク市警の警官達が住む、
警官の町、通称「コップランド」。
片耳の聴力を事故で失ったフレディは、ニューヨーク市警の警官になれず、
この平和な町コップランドの保安官をしていたが、この町はニューヨーク市警の
古参警官レイによって仕切られていた。
ある日レイの甥で、同じニューヨーク市警のハビッチの不始末をもみ消したレイのもとに、
内務調査官モーが現れ、フレディに調査の協力を仰ぐが、レイ達に憧れを抱くフレディは非協力的だった。
しかし、レイとマフィアとの癒着を感じたフレディは悩んだあげく、正義のために立ち上がる。
シルベスター・スタローンが保安官フレディを演じているが、さえない保安官として登場。
今までと違った役作りに挑戦しているが、スタローンは芝居があまりうまくないので、こういう役どころは損。
内務調査官モー役のロバート・デ・ニーロも、脇役に徹している。
レイ役のハーベイ・カイテル一人がおいしかった。


「マン・オン・ザ・ムーン」 アメリカ映画
4月13日 19:00 リサイタルホール(東宝東和)

アンディ・カフマンは少し変わった子供だった。家の中に閉じこもって、テレビ番組のまねごとばかりしていた。
大人になったアンディはコメディアンになったが、全然うけず、コメディーハウスを転々としながらネタを増やしていった。
ある日、エルビス・プレスリーの物まねで喝采を受けているアンディーを、
たまたま見た大物エージェントのシャピロは、彼を放送局に売り込む。
「サタデーナイト・ライブ」の1回目のゲストとなったアンディは、独特の雰囲気のネタで大いに受け、
コメディー番組「タクシー」のレギュラーになる。
一気にスターになったアンディだが、ありきたりのギャグでは満足できなかった。
特番でわざと放送画像を乱したり、女性とプロレスをして悪態をつき観客全員を敵にまわしたりと、
アンディーのパフォーマンスはどんどん過激になり、何が本当で何がギャグなのか、
まわりの者でさえ分からなくなっていった。
ただ一人、恋人のリンだけはアンディの良き理解者だったが、放送局は無茶なアンディを見限り、
アンディーのギャグは世間からどんどんかけ離れていった。
やがてアンディは友人達に自分が肺ガンであることを告白するが・・・
35歳でこの世を去った実在のコメディアンの伝記的映画。
監督は「かっこーの巣の上で」「アマデウス」で2度アカデミー賞に輝いたミロシュ・フォアマン。
主演ジム・キャリー、エージェントのシャピロにダニー・デビート。
なぜこの人が伝説のコメディアンなのかわからない。
観客に悪態をついて怒らせたり、みんなが望む爆笑ネタをわざとやらず、
文芸小説を淡々と1冊丸ごと朗読して客を帰らせたり。
うたい文句に「生まれてくるのが早すぎた天才コメディアン」などと書いてあるが、
没後16年経った今でも理解できない。
こういう映画は一番の理解者リンの立場から見せないといけないのに、
観客を「そら番組降ろされてもしゃあないわな」と、放送局側に立たせてしまう。
早死にしたのは気の毒だけど、アンディには全然共感できなかった。
ラストはわからない。


「ナインスゲート」 アメリカ映画
4月13日 15:30 ヘラルド試写室(GAGA)

コルソは金持ちの収集家から依頼を受けて、世界中から本を探し出す本の探偵。
悪魔本の収集と研究で有名なバルカンは、コルソに1冊の本を見せた。
それは悪魔自信が書いたという「ナインスゲート」だった。
世界にたった3冊しかない「ナインスゲート」を、他の2冊と比較し真贋を確認せよ、
というのがコルソへの依頼だった。
他の2冊を求めスペイン、ポルトガル、パリと旅するコルソだが、
「ナインスゲート」にかかわる人物が次々に殺され、自分の身にも危険が迫る。
コルソをつけ回す得体の知れない男と、偶然を装う怪しげな女。
調べるうちに3冊の本の持つ秘密が明らかになっていく。
監督はロマン・ポランスキー、コルソ役はジョニー・デップ。
ジョニー・デップの風貌は、こういうオカルトチックな物語によく合うし、
ずる賢い本の探偵役は適役だと思うが、物語の進むスピードが妙に遅く感じられる。
ポランスキー演出はなんか古くさいし、音楽も30年前のホラー映画のよう。
謎の女は説明不足だし、クライマックスも盛り上がりに欠ける。


「グリーンマイル」 アメリカ映画
3月7日 18:00 リサイタルホール(GAGA)

大恐慌時代の1935年、ポール・エッジコムは死刑囚が収容されるE棟、
通称グリーンマイルの看守主任だった。
ある日黒人の大男ジョン・コーフィが収容されてきた。
コーフィは幼い姉妹を暴行して殺した凶悪犯ということだったが、
体に似合わず優しく、殺人犯を見慣れたエッジコムにはとても奇異に見えた。
コーフィは優しいだけではなく、体に触れるだけでエッジコムの病気を治したり、
同じ死刑囚のドラクロアが可愛がっていたネズミを死の淵からよみがえらせたり、
不思議な力をもっていた。
やがてコーフィとの心の交流で無罪を確信したエッジコムだが、
自らの手でコーフィの死刑を執行する日が来た。
スティーブン・キング原作で「ショーシャンクの空に」のフランク・ダラボン監督。
しかも主演がトム・ハンクス。役者は揃った。
トム・ハンクスは芝居に貫禄が出てきたし、抑えめでよい演技。
脇役も余り有名ではないが、いい役者を随所に配置した。
敵役はちゃんと憎く、相棒は男気があって頼もしい。
脇役陣はこの作品以降オファーが増えると思う。
見終わって「2時間ちょっとかな」と時計を見てびっくり。3時間以上あった。
つまり全く時間を感じさせない映画。
舞台芝居のようにほとんどE棟の中だけで話は進むが、全く退屈させなかった。
スピルバーグはこの映画を見て「4回泣いた」そうだが、スピルバーグの涙腺はともかく、
会場内はすすり泣きがそこかしこで聞こえた。感動作ではある。
今年のベスト10には確実食い込んでくる作品。


「菊次郎の夏」 日本映画
2月27日 レンタルビデオ

おばあちゃんと2人で暮らす正男は小学校3年生。
お父さんは幼い頃亡くなり、お母さんは遠くで働いている。
夏休み、正男は写真でしか知らないお母さんの住む豊橋へ、
冒険旅行に出かけることにする。
話を聞いた近所のおばちゃんは、プータロウの亭主の菊次郎を
一緒に行かせることにするが、競輪で旅行資金を使い果たし、
仕方なくタクシーを盗んだり、ヒッチハイクしたりして旅を続ける。
途中、色々な人達と出会いながら、お母さんの家にたどり着くが・・・・
北野武主演、監督作品。
「母を訪ねて三千里」みたいな映画を、暴力抜きで笑いを交えて
撮りたかったそうだけど、何が言いたいのかわからなかった。
人々の絡み方が釈然としない。
カンヌで賞を逃したが、これでは無理だと思う。
やくざも出てこなくて、暴力描写もなく、笑いもなく、「あの夏一番静かな海」
でもない映画を誰かたけしさんに撮らせてあげてほしい。


「バージン・フライト」 イギリス映画
2月24日 レンタルビデオ

全身麻痺の難病で電動車椅子の女性のもとに、
元画家で自分を見失い、空を飛ぶことに執着してビルの屋上から
自作ハンググライダーで飛び降りたりする危ない男、リチャードが
ボランティアでやって来た。
彼は裁判所から社会奉仕120時間の判決を受け、
彼女の元に来たけど、ジェーンという車椅子の子は、
言葉も不明瞭なほど障害が進んでいるけど、憎まれ口を叩いたりする
難しい子。
リチャードも渋々のボランティアでジェーンに手をやいていたが、
いつしかうち解け、お互いの夢を語り合った。
リチャードは自分が描いた絵を翼に張り付けた自作飛行機で、
大空を飛ぶのが夢。
ジェーンは18歳で発病したため今だバージン。その事をひどく悔やんでいる。
そしてリチャードにバージンを捨てるために協力して欲しいと頼む。
自分は無理だけど、ロストバージンの相手を探しに行こうと、
二人してロンドンに旅立つ。
ドラマ「ビューティフル・ライフ」は、この映画から話を作ったと思われる。似たよ
うなエピソードもある。
違うのはヒロインの障害がかなり重度。
リチャードの後について電動車椅子で丘を登っていく様は、
R2−D2のよう。
ロンドンでジェーンの相手をしてくれる男を捜しているとき、
福祉関係でことごとく断られた二人は、身障者の発展場のようなバーに出かける。
様々な障害者が飲んで踊っているバーでジェーンは言う、「ここはいや。出ま
しょ」。
「私は普通の人としたいの」と言うジェーンに
「君は障害者なんだよ」とリチャード。
「夢は普通の人と同じよ」とジェーン。
障害者の愛と性にちゃんと触れられている。
リチャードはケネス・ブラナー。


「ザ・ビーチ」 アメリカ映画
2月22日 19:00 完成披露試写、サンケイホール(20世紀FOX)

リチャードはありきたりな日常から逃れるためにアジアにやってきた。
タイの安宿で知り合ったドラッグ中毒のダフィから、観光客には知られていない
楽園とも言える完璧なビーチの存在を聞かされる。
翌朝、リチャードの部屋のドアに、そのビーチの手書き地図が張り付けられ、
ダフィは自殺した。
リチャードは、隣のフランス人カップルを誘ってそのビーチを目指すことにした。
鉄道や船を乗り継ぎ、孤島を泳いで渡り、目指すビーチにたどり着いた3人。
そこは、国籍も人種も違う20数人の男女が共同生活する、原始共産制のようなコミューンだった。
しかし島の外からは見えない、入り組んだ入り江になったビーチは楽園そのもので、
3人は島の生活に溶け込み楽園生活を満喫していたが、きれいな自然とは裏腹に人間達の
醜さを垣間見、やがて共同生活は崩壊していく。
「仮面の男」よりましだけど、完全なディカプリオ映画だった。
ディカプーは他人の女を盗ったり、恋人のいる女から体目当てに言い寄られたり、
もうモテモテ。
でもやっぱり芝居はうまい。
コミューンのリーダー、サル(ティルダ・スイントン)のキャスティングがよかった。
普通は重要な役どころなので、もっと印象深い性格俳優を使ったりするもんだけど、
始めて登場したときはあまりに普通の人なので、その他大勢に紛れるぐらいだったが、
実際は主義や宗教に一生懸命になる人は、こんな普通の人が多いので逆にリアル。
監督は「トレインスポッティング」のダニー・ボイル。
ロバート・カーライルがちょこっと、おいしい役で出ている。


「スフィア」 アメリカ映画
2月21日 レンタルビデオ

極秘のうちに集められた科学者達。
彼らは海底に300年前から沈んでいる宇宙船を調査するために集められた
心理学者、生化学者、数学者達だった。
深海のベース基地から宇宙船内部に侵入した科学者達は、不思議な球体(スフィア)を発見する。
この球体と接触してから、深海の彼らに不思議な現象が起こり始める。
「2010」や「イベント・ホライゾン」に「アビス」の味付けをしたような映画で、
さして新鮮みはない。
最後まで見ても「スフィア」の正体はよくわからないし、謎は解けていない。
「2001年宇宙の旅」の「モノリス」を意識して、「概念」を抽象的に表現していたのかも知れない。
ダスティン・ホフマン、シャロン・ストーン、サミュエル・L・ジャクソンの3人は、この映画に出たことで
ギャラ以外に何の得があったのだろうか?


「アメリカン・ビューティー
」 アメリカ映画
2月21日 15:30 UIP試写室(UIP)

レスターは広告会社のサラリーマン。
郊外にローンでマイホームを買ったが、妻はうだつの上がらぬ夫にうんざりして
外でバリバリ働き、高校生の一人娘は父親を毛嫌いし、自分はリストラ寸前。
会社でも家庭でもストレスの連続だが、娘がチア・リーダーとして出場するバスケの
試合を見に行ったとき、娘の同級生アンジェラに一目惚れする。
その日からレスターは変わっていく。辛抱することをやめたのだ。
「これからは自分のしたいように生きる」。そう決めたレスターは、会社を辞め、
気ままにハンバーガーショップのフリーター店員となり、あこがれのスポーツカーを買い、
アンジェラに好かれるため体を鍛えはじめた。
旦那が好き勝手するならと、妻も浮気に走り、娘は隣に引っ越してきたビデオマニアのリッキーと
恋に落ちる。
家族がてんでバラバラに好きな方向に爆走しだしたとき、悲劇は起こった。
今年のアカデミー賞で8部門ノミネートされてる注目作品。
ケビン・スペイシーとアネット・ベニングが二人とも主演賞候補になっている。
基本的にはコメディーだけど、おかしければおかしいほど悲しみが増し、
悲しければ悲しいほどおかしみが増す変わった映画。
誇張はしてるけど、日本でもよく聞くような話。アメリカも日本も家庭は同じやなぁと思う。
すばらしい想像力で書かれた脚本だけど、アカデミー作品賞をもし受賞する事になれば、
今年は少し小ぶりだと思う。


「鉄道員」 日本映画
2月20日 レンタルビデオ

乙松は鉄道員の二代目で、蒸気機関車、ディーゼルの運転手を経て、
今は寂れた炭坑町の「幌舞」の駅長。
骨の髄までの鉄道員だが、仕事に一途なあまり、女房と幼い一人娘が死んだ日も駅で仕事をしていた。
その事だけが心の重荷になっていた。
ある日定年間際の乙松のもとに、不思議な少女が次々尋ね来て、乙松はその少女達に
赤ん坊の頃に死なせた娘雪子の面影を見る。
高倉健は昔CMで「不器用ですから」といっていたが、
演技はどの映画も「高倉健」でしかない。
しかしこの映画の役も鉄道しか知らない不器用な男なので、
「高倉健」でしかない不器用な男が妙にハマっていた。
大竹しのぶの演技は滅茶苦茶うまい。
高倉健と夫婦の役は実年齢の開きがありすぎてちょっとしんどい。
広末は可愛いさを強調しすぎの感もあるけど、やっぱり可愛い。
広末が「お父さん ごめんね」とか「お父さん ありがとう」と言うたびに、
目がウルウルする。
広末は日本一「お父さん」という言葉が心にしみる少女や。


「8mm」 アメリカ映画
2月17日 レンタルビデオ

私立探偵トムのところに、大富豪の未亡人から不思議な仕事の依頼があった。
亡くなった主人の遺品から、若い女が殺されるさまを映した8mmフィルムが発見され、
事の真相を調べて欲しいとのこと。
トムは気の遠くなるほど膨大な失踪者リストを調べ、メアリー・アンと言う女性が
フイルムの女性であることを突き止める。
メアリー・アンはスターを夢見、ボーイフレンドとハリウッドに駆け落ちしていた。
ハリウッドのポルノショップの店員の協力で、あるポルノ監督の名が浮かんでくる。
「セブン」の脚本家が放つショッキング・サスペンスと言うふれこみだが、
もっと「セブン」のようなおどろおどろしい猟奇映画かと思っていたら、
殺人フィルムも全部は見せず、割とあっさりしている。
主演のニコラス・ケイジが8mmに映された殺人シーンを捜査のため、
裏ポルノの世界に入り込んでいくシーンは、捜査のためにゲイの世界に
潜入したパチーノの「クルージング」を思い出した。
しかし、ニコラス・ケイジはよく働く。


「インサイダー」 アメリカ映画
2月17日 18:30 完成披露試写、リサイタルホール(東宝東和)

CBSの人気報道番組のプロデューサー、バーグマンのもとに
たばこに関する資料が匿名で送られてきた。
この資料の解説をたばこ会社の元研究開発部副社長のワイガントに依頼したが、
ワイガントは何かにおびえ、バーグマンに対して極端に警戒心を見せた。
ジャーナリストの嗅覚で、ワイガントが何か重大なことを握ってると踏んだバーグマンは、
自分の番組でその秘密を話すことを説得し、ワイガントも悩んだあげく科学者の良心として
公表を決意する。
しかし、ワイガントの告発は、たばこ産業全体を根底から揺るがす秘密で、
見えない圧力がワイガント一家を襲う。
圧力に耐えかねた妻子はワイガントを残して去っていき、ワイガント自信も守秘義務契約違反で
投獄の危機にさらされていた。
非公開の法廷で証言し、インタビューにも答えたワイガントだが、たばこ産業の圧力はCBSにまで
および、ワイガントのVTRはお蔵入りになった。
家をなくし、家庭も崩壊し、投獄の危機にまで陥りながら真実を貫いたワイガントに報いるため、
バーグマンもまた内部告発者となる決意をする。
「ヒート」のマイケル・マン監督とアル・パチーノが再び組んだ硬派な作品。
カーチェイスも銃撃戦も登場しない男の戦い。
2時間38分という時間を感じさせない骨太の映画。
「L.A.コンフィデンシャル」のラッセル・クロウが、たばこ産業の内部告発者役で
アル・パチーノをさしおいてロサンゼルス批評家協会賞の主演男優賞に輝き、
アカデミーもノミネートされている。
ラストのパチーノの後ろ姿は健さんのような「男の背中」だった。


「ヒマラヤ杉に降る雪」 アメリカ映画
2月17日 15:30 UIP試写室(UIP)

1954年、アメリカの小さな島で殺人罪の裁判が行われていた。
容疑者は日系人のカズオ。
被害者と土地のことでもめていたし、状況証拠もいくつかある。
それに加え、陪審員達の目には第2次大戦の敵国の人間としてカズオは映る。
不利な状況の中、被告の夫の背中を不安げに見つめるハツエ。
そのハツエを傍聴席から見つめていたのはイシュマエルという地元の記者。
ハツエとは幼なじみで、かつて恋人同士であったが、戦争が二人を引き裂いた。
幼いハツエとイシュマエルの淡い恋心、強制収容所に連行される日系人達、
ハツエへの思いを断ち切れないイシュマエル、事件の真相。
本人の意思とは関係なく時代に翻弄され、心に傷を負っていく人々。
とてもいい映画だった。
映像がすばらしい。
冒頭から霧の中のぼんやりした映像で、見ている者の心を不安な世界に引き込む。
回想、クローズアップ、風景、この3つが見事に紡がれている。
イーサン・ホーク、工藤夕貴、サム・シェパード、ジェームズ・クロムウエルらが、
抑えめだけどしっかりした演技で魅せる。
特に老弁護士役のマックス・フォン・シドーはアカデミーの助演男優賞をあげたいぐらい。
裁判の結末は、ちょっと説得力が弱いが、台詞を極力少なくし、
表情と映像でじわりじわりと心にしみこむ秀作。
早くも自分の今年のベスト10に入る作品だと思う。
監督は「シャイン」のスコット・ヒックス。


「ライフ・イズ・ビューティフル」 イタリア映画
2月14日 レンタルビデオ

トスカーナ地方にやって来たイタリア系ユダヤ人のグイドは陽気で機転の利く男。
小学校教師に恋をしたが、彼女にはいいなずけがいた。
やがてグイドの明るさとひたむきさに彼女も惹かれはじめ、いいなずけとの婚約パーティーの時に
二人は駆け落ちする。
やがて可愛い男の子が産まれ家族は幸せに暮らしていたが、ユダヤ人狩りが始まり、
家族は強制収容所に入れられてしまった。
息子に不安を与えないようグイドは明るく振る舞い、ありとあらゆる嘘で息子を楽しませた。
しかしユダヤ人達に、死は確実に迫ってきていた。
もっと陽気な映画だと思っていた。
確かにコメディー仕立てではあるが、ユダヤ人迫害の映画だった。
グイドは陽気で頭が良くて優しい。
こんな男なら、はじめはそんなに好きでなくても、女性は情にほだされ惚れてしまうと思う。
タイトルと写真からは想像できない内容だった。
アメリカ映画なら結末は違っていたと思う。


「シン・レッド・ライン」 アメリカ映画
2月13日 レンタルビデオ

第2次大戦中、アメリカ軍C中隊は戦略重要拠点ガダルカナルに
日本軍掃討のため上陸する。
すんなり上陸したC中隊だが、内陸部に進むうち、
彼らの前には日本軍が守りを固める「210」高地が立ちはだかる。
中隊長は高地を迂回して攻めることを進言したが、上官はここで手柄を立てるチャンスとばかり
中隊に正面突撃命令を下す。
敵の機銃や爆弾でバタバタと倒れる兵隊達。
一部の兵の活躍でなんとか高地を落としたが、払った犠牲はあまりにも大きかった。
静かなトーンの一人称の語りは「地獄の黙示録」を思わせる。
ガダルカナルの自然や、平和な現地人の暮らしの映像に一人語りが入る静かなトーンと、
激しい戦闘のシーンのメリハリがハッキリしているが、視線はとてもクール。
有名俳優以外顔の判読が難しく、誰が誰かわからなくなるし、主役が誰なのかもあやふや。
ジョン・トラボルタやジョージ・クルーニーも出ているが「そんなん詐欺や」と思うほど
ちょっとしか出てこない。
ショーン・ペンは、はじめ嫌な奴なのかと思っていたら、案外いい奴になっていたし、
ショーン・ペンが主役かなと思っていたら、途中で存在が希薄になる。
非情な上官役のニック・ノルティーだけが印象に残った。


「パッチ・アダムス」 アメリカ映画
2月9日 レンタルビデオ

自殺癖のあるアダムスは精神病院入院中、笑いで人助けが出来ることを発見。
病気の人達を笑いで癒すことに自分の生き甲斐を見いだした。
数年後医大に入学したアダムスは、実習の出来ない1年生でありながら
大学病院にインターンのふりをして忍び込み、患者達に笑いを振りまいていたが、
学部長に見つかり、病院内に入ることを禁止される。
権威主義の医者を作り出す大学に反発して、アダムスは無料で誰もが気軽に来られる
理想の病院建設をめざす。
アダムス役はロビン・ウイリアムス。
アダムスの笑いは時に度を越す。産婦人科の医師団の歓迎のために講堂のドアに
巨大な女性が大きく広げた足を付けひんしゅくを買う。
実習は3年になってからという決まりを無視して、「笑いは患者の心を癒す。医は仁術」とばかり
病院内でギャグをするアダムスは退学の危機にあうが、当たり前の話。
3年までじっと辛抱すればいいのになぜ出来ないのだろう。
しかも患者を笑わせるためなら、夜中に寝てる患者まで起こしてギャグをする。
理想のためならルールを破ってでもという考え方は非常にわがまま。
最後はアダムスの大演説で、みんなは拍手喝采のハッピーエンド。
ロビン・ウイリアムスはいい加減この種の映画から足を洗うべき。


「13F」 アメリカ映画
2月8日 15:30 ソニー試写室(ソニー)

ダグラスはビルの13階で、コンピューター内に1937年のロスを作り出す
仮想現実世界の研究をしていた。
ある日ダニーは自室で血だらけの自分のシャツを発見し、
研究のリーダーである社長が殺されたことを知る。
社長が死んだことによって会社を引き継ぐことになったダニーに警察は疑惑の目を向け、
ダニーも昨夜の記憶がなかった。
身寄りのないはずの社長の娘ジェーンが現れたが、ダニーはどこかで彼女と会ったような気がする。
真相を探るためダニーはコンピューター内の仮想世界、37年のロスに飛び、
調べるうちにいくつもの現実と平行した世界が作られていることを知り、この「13F」に過去と現在
を結びつける鍵が隠されていると確信する。
別なかたちの「マトリックス」。「マトリックス」は基本が未来で仮想世界が現代だけど、
この映画は基本は現代で仮想世界が37年という過去。
仮想世界の住人達は、コンピューターによって作り出した「個体」だが、
自分達は人間だと思いこんでいて、普通に市民生活をしている。
面白いのは仮想世界に行くときは、そのままの自分がトリップするのではなく、
自分に似せて作った個体に憑依する。
憑依された個体はその間記憶が抜けている。この記憶の抜けることが物語の伏線となっている。
仮想の世界なので「世界の果て」がちゃんとあって、わかりやすいかたちで仮想世界の「世界の果て」が
描かれている。
「インディペンデンス・デイ」「ゴジラ」のローランド・エメリッヒ製作作品。


「交渉人」 アメリカ映画
2月7日 レンタルビデオ

シカゴ警察のダニーは人質事件で犯人と交渉する交渉人のプロ。
署内の横領事件を知ったことで犯人グループに罠にはめられ、
横領事件と友人の殺害容疑までかけられてしまった。
一味と目される内務調査官を人質にとって立てこもったダニーに、
もう一人の腕利き交渉人クリスが交渉に当たった。
なんとか強行突入してダニー達の口封じをしたい犯人グループ、
交渉人同士の知能戦などが緊迫した中で描かれる。
ダニー役のサミュエル・L・ジャクソンは刑事には見えるが、
そんなに頭の切れる交渉人には見えない。
クリス役のケビン・スペイシーは賢そうだけど、心情的にはじめからダニーの
味方になっているきらいがある。
もっと交渉人同士の丁々発止のやり取りがあるのかと思った。


「理想の結婚」 イギリス映画
2月7日 13:00 ヘラルド会議室(アイコン)

1895年ロンドン。アーサーは夜毎パーティーに明け暮れる本物の「独身貴族」。
父は結婚を勧めるが、気ままな今の暮らしを捨てきれないでいる。
一方アーサーの友人ロバートは若き政治家で、美しく聡明な妻ガートルードがいる。
二人はロンドン社交界でも模範的夫婦といわれ、実際当人達もそう思っていた。
ところがウィーンからロバートと昔婚約したことのあるチーヴリー夫人が現れ、
自分が投資している運河建設を議会で押し進めないと、昔のスキャンダルを暴露すると脅す。
意に添わぬ運河建設に賛成するか、夫婦仲の危機かに悩むロバート。
ロバートとチーヴリーの仲を怪しむ妻ガートルード。この危機をなんとか解決しようと奔走する
アーサーにまたしても近づくチーヴリー。それを見て友人に裏切られたと思うロバート。
チーヴリーとの仲を案じるアーサーに思いを寄せるロバートの妹メイベル。
5人の男女が入り乱れて思惑や誤解で、翻弄される恋愛コメディー。
原作は100年前に亡くなったオスカー・ワイルドの「理想の夫」。
もともとは戯曲だったので、ほとんど台詞廻しで物語は進む。
少し台詞のウエイトが大きすぎる。少し気を抜くと物語がわからなくなる。
全体的なトーンは昔のアメリカの恋愛コメディー。
イギリスの上流社会で繰り広げられる、昔ながらのアメリカンラブコメディーと言うところか。
出演は「エリザベス」のケイト・ブランシェット、「グッド・ウイル・ハンティング」のミニー・ドライヴァー、
「ベスト・フレンズ・ウェディング」のルパート・エヴェレット、「クッキー・フォーチュン」にも出てるジュリアン・ムーア。


「スリング・ブレイド」 アメリカ映画
2月6日 ビデオ(WOWOWにて収録)

知能に障害を持つカールは、少年時代母の不倫現場を目撃し、
母と男を殺害。25年過ごした精神病院を退院した。
院長の口利きで修理屋で働くことになった。
コインランドリーで父親のいない少年フランクと知り合いになり、
フランクのガレージに住まわせてもらうことになる。
カールとフランクは友情で結ばれ、フランクの母も父親のいないフランクにとって
カールは大事な存在と考えていた。
しかしフランクの母の恋人は酒飲みの乱暴者で、このままではフランク母子に
危害が及ぶと感じたカールは、母子を守れるのは自分しかいないとある決意をする。
主役のビリー・ボブ・ソーントンが監督、脚本までしている。
登場する人物が、フランクの母の恋人以外はいい人ばかりで、フランクの母などは
出会ったその日に、得体の知れないカールを自分の家に住まわせる。
カールは知的障害があることになっているが、立ち居振る舞いが少しおかしいだけで、
発言内容は極めてしっかりしているし、気の利いたジョークも言う。
障害があるとは思えない。藤山寛美のあほぼん以上。
96年のアカデミー脚色賞を受賞しているが、少し首を傾げる。
ビリー・ボブ・ソーントンはどこかで見たと思ったら、「アルマゲドン」でNASAの指揮官役をやっていた。
役とはいえ顔が全然違う。


「ターザン」 アメリカ映画
2月5日 11:00 南街会館

アフリカの沖合で船が火事に見舞われ、命からがら逃れた一家は、
打ち上げられた船の残骸で木の上に住みかを作り生活をはじめた。
いっぽうマウンテンゴリラの夫婦に子供が産まれたが、
ヒョウに襲われ幼い命を失った。
悲しみにくれるゴリラの母、仲間と安全な住みかを求めて移動しているとき、赤ん坊
の泣き声を聞く。
泣き声に惹かれて駆けつけると、人間の両親はヒョウに殺され、
赤ん坊も狙われていた。
なんとか赤ん坊を守り自分の子として人間の子を育てることにする。
ターザンと名づけられた子供はたくましい青年となったが、
ボスゴリラはいつかターザンが群を危険に陥れると危惧していた。
ジャングルでゴリラ研究にやってきたポーター博士とその娘ジェーンと出会ってから
ターザンの生活は一変する。
自分は人間であると気づき、言葉や知識をどんどん吸収し、ジェーンへの思いも大きくなっていった。
しかしポーター博士と同行していたハンターのクレイトンは、ゴリラを捕まえて一攫千金をもくろんでいた。
古い題材だけど、さすがディズニー、現代的に木々の間をターザンがすべりおりる
シーンなんかはもうローラーコースター。
大人も子供もハラハラ、わくわくさせて、笑わせほろっとさせる。
アニメなのにカメラアングルやカット割りもうまい。


「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」 アメリカ映画
2月4日 11:00 道頓堀パラス

ストーリーは方々で紹介されてるので省く。
映画はドキュメンタリータッチなので16mmのモノクロフィルムと、
ホームビデオの映像のみ。しかも全部手持ち。
だから見える範囲が現場にいる人間より映画を見てる人間の方が狭く、
現場の恐怖が視界が狭い分増幅される。
一度も魔女は姿を見せず、不気味な音と声、主人公の3人の恐怖の表情のみ。
こちらの想像力で恐怖を引き出す極めて落語的恐怖映画。
映画は製作費300万円ほどで2000倍の収益を上げたことで話題になったけど、
ネットを使った盛り上げ方とかマニアックな仕掛けで話題となり、
仕事としては大成功だと思う。
でも純粋に映画だけを見ると、ドキュメンタリータッチははじめは面白いけど、
途中でだれる。
もうふたひねり、ふた盛り上げが欲しいところ。
結末をわざと中途半端にしてるように見えていたが、
後からよく考えると、ちゃんとオチはついていた。
荒削りなように見えて、綿密に計算されているところもある不思議な映画。
しかし、やはりよくできたTV映画レベルか。
パンフレットはご大層に袋とじになっていた。


「SF サムライ・フィクション」 日本映画
2月1日 ビデオ(WOWOWにて収録)

300年ほど前江戸で剣術修行を終えて帰ってきた犬飼平四郎は、
剣の腕を買われ、刀番として雇われた浪人風祭が宝刀を持って逃走したと聞く。
家老である父達は、体面を保つため宝刀の偽物でごまかそうとするが
血気にはやる平四郎は友人達と浪人を追う。
風祭に追いついた平四郎達だが剣の腕は格段に違い、友人の一人は殺され、
平四郎も傷を負う。
助けてくれたのは溝口という浪人。
溝口は平四郎をうちに連れ帰り、娘小春と看病する。
溝口は剣の達人だが、「斬り合いはいかん」と平四郎を諭す平和主義者だった。
風祭を味方に引き入れようと躍起になる女親分、宝刀奪還の命を受けた忍者、
友の仇風祭を打つことに執念を燃やす平四郎と小春との恋。
そして運命の糸にたぐり寄せられた剣豪風祭と溝口だった・・・。
ミスチル、GLAY、布袋寅泰などのビデオ・クリップを手掛けるMTV界の「クロサワ」
中野裕之の初監督作品。
基本的にモノクロ映像だが、切られたりすると画面が真っ赤になったり、線香、空など部分的に
カラーになるパートカラー。
モノクロの映像は時代劇としてよいと思う。
面白い撮り方をしたり、映像にかなり労力をかけているようだけど、
やはりビデオ・クリップの延長のように見える。
風祭に布袋寅泰、平四郎に吹越満、溝口に風間杜夫、夏樹マリ、谷啓ほか。


「クッキー・フォーチュン」 アメリカ映画
2月1日 15:30 東映試写室(ツイン)

死んだ主人の後を追って老婆クッキーは銃で自殺した。
ところが敬虔なクリスチャンの姪二人は、自殺は恥と、
強盗殺人をでっち上げたからさあ大変。
さして事件もない平和な田舎町は大騒ぎ。
クッキーと家族同然の黒人男性が容疑者として捕まったが、
保安官は釣り仲間の彼の無実を信じ留置所のドアは開けっ放し。
中央から敏腕刑事がやって来て捜査に乗り出すが、町の人達の
少しピントのずれた証言でペースは狂わされっぱなし。
教会で町民による芝居「サロメ」が演じられるとき、
事件は意外な展開を見せ、秘密が明らかになる。
「ザ・プレイヤー」「プレタポルテ」などの、皮肉屋ロバート・アルトマンらしい
監督作品。
グレン・クローズ、リヴ・タイラー(「アルマゲドン」のブルース・ウイリスの娘役)、
ジュリアン・ムーア(「ロスト・ワールド」の女性科学者)など、随所に個性派
をちりばめ、みんなが一様に事件にかかわり、かき回し、スパイスを添える。
登場人物の多さの割にストーリーはごちゃごちゃせず、ちゃんとそれぞれの個性が
ひかる。アルトマン演出の勝利。
カメラは「御法度」の栗田豊通。


「トイ・ストーリー2」 アメリカ映画
1月25日 19:30 完成披露試写、三番街シネマ1(ブエナビスタ)

アンディーがキャンプにいっている間に、ママは声のでなくなったペンギン人形を
不用品バザーに出してしまった。
カウボ−イ人形のウッディーはペンギンを救おうとバザー会場に来たが、
ウッディーはおもちゃ屋のアルに盗まれてしまう。
実はウッディーはレトロとして超プレミアおもちゃで、日本の博物館に送られることになった。
スペースレインジャーのバズやポテトヘッド、貯金箱のハムなどのおもちゃ仲間は、
ウッディー救出作戦をはじめたが、家の外はおもちゃ達にとって危険がいっぱい。
大通りを横断するのも命がけ、そこにバズの宿敵ザーグも現れ、救出作戦は難航。
さぁ時間はない。はたしてウッディーは無事救出されるのか。
フルCGで作られた人気アニメ第2弾。
今回は「壊れたおもちゃは捨てられる運命」だとか、「どんなに仲のいいおもちゃでも、
子供は成長して自分たちを見捨てる」とか、おもちゃの悲しみにも触れている。
前作よりコンピューターの処理速度が速くなったのか、CGのキメが細かいような気がする。
おもちゃ屋のアルの質感は実写かと思うぐらい。
オタクの質感までCGで出せるとはすごい。
ストーリー展開のスピーディーさ、キャラクターの個性、物語の盛り上げ方、ギャグ、CG技術、
どれをとっても他の追随を許さないほどの完成度。


「シビル・アクション」 アメリカ映画
1月25日 15:30 UIP試写室(UIP)

ジャン・シュリクトマンは民事専門の弁護士。
儲かる裁判しか手掛けず、ほとんど示談ですむため仕事が早い。
若くして自分の事務所を持ちスタッフも数名いる。
ラジオの法律相談でもおなじみで、ポルシェを乗り回す独身貴族。
ある日、ジャンの番組に電話相談が入った。
ある地区で15年間で8人の子供が白血病で死んだ。
近所の工場の廃液が井戸に入り、子供達が死んだに違いない、
慰謝料はいらない、工場が原因だとハッキリさせたい、と言う。
環境問題は時間がかかるし因果関係の立証が難しいので、ジャンは断りに出向き
その旨を伝えての帰り道、廃液の元凶と見られた2つの工場が大企業とわかり、
これは金になるとスタッフの反対を押し切って引き受けた。
しかし企業には老練なやり手の弁護士が付いていてるし、工場の労働者の口は堅くて
真相解明は難航した。
医学的、地質学的、あらゆる角度で証拠を集めるため、調査に莫大な費用がかかり、
ジャンの事務所は借金地獄となる。
もう引くに引けない泥沼にいることはわかっていた。
いつしかジャンは金や、プライドのためではなく、一人の人間として
大きな敵に対して立ち向かっていくのだった。
ジャンに最近片っ端から仕事をこなすジョン・トラボルタ、老練な弁護士にロバート・デュバル、
示談屋のジャンをハイエナのように見る判事にジョン・リスゴーと、脇も達者。
シドニー・ポラック監督も大企業の社長役で出演。
見終わって、結果的には勝ったけど、なんか負けたような空虚な気持ちになる。
この種の裁判の難しさが心情的に伝わってくるような作品。


「遠い空の向こうに」 アメリカ映画
1月24日 15:30 UIP試写室(UIP)

アメリカの炭坑町に住む、なんの取り柄もない高校生ホーマー。
この町ではほんの一握りのアメフト選手だけが奨学金付きで大学に行き、
ほとんどの男達は炭坑で働く。
それが宿命かのように炭坑以外何もない町で、ホーマーも漠然と自分もおやじのように
抗夫になるのかと半ばあきらめのように思っていた。
ある夜、世界初の人工衛星、ソ連のスプートニクが炭坑町の頭上を横切った。
町の人達と共に見ていたホーマーは、体中に衝撃が走り、
自分でもロケットを打ち上げようと決意する。
学校内で鼻つまみ者のガリ勉を引っ張り込んで、仲間4人でロケット製作に取り掛かった。
当時ロケットに関する文献は少なく、図書館に通い、物理を勉強し、資材を調達して
野原で何度も失敗を重ね打ち上げ実験する4人。
ホーマーは夢中だったが、父はホーマーを立派な抗夫にすることを夢見ていた。
夢、友情、親子の衝突。
後にNASAのエンジニアになった実在の人物の少年時代を描いた実話で、
「ロケット版スタンド・バイ・ミー」と言われているそうな。
今まで実話の宇宙ものは「ライト・スタッフ」にしろ、「アポロ13」にしろ、
飛行士か管制官が中心で、はじめてエンジニアが主役になった。
セオリー通りだけど、手堅い演出で好感が持てる映画。


「マウス・ハント」 アメリカ映画
1月23日 ビデオ(WOWOWにて収録)

製糸工場経営の父が死に、二人の兄弟にはオンボロ屋敷が遺された。
二束三文の屋敷と思いきや、19世紀の有名建築家の未発表の作とわかり、
マニアに売れば一財産になることがわかる。
リフォームに取り掛かった兄弟の前に立ちはだかったのは、ボロ屋敷の主、1匹のネズミだった。
たかがネズミ1匹とタカをくくってた兄弟は、ネズミの悪魔的な知能の前にさんざんな目に遭い、
おびただしい罠、凶暴な猫、果てはマウスバスターと、死闘はエスカレートしていく。
ネズミは調教された本物とCGをうまく使い分けているが、見ている者に、兄弟かネズミか、
どちらに感情移入したらよいのか迷わせる。
「ホーム・アローン」のように悪者と子供というような図式なら分かりやすいが、
こちらは兄弟は間抜けだが悪人ではない。
逆にネズミの方がひどいと思うようなことをする。
もう少し明らかにどちらかを悪くすればすっきり見られたのに。
マウス・バスター役でクリストファー・ウォーケンが怪演している。


「親指スター・ウォーズ」「親指タイタニック」 アメリカ映画
1月20日 15:30 東映試写室(ツイン)

アメリカで放映されたテレビの特番。
親指に服を着せてスター・ウォーズやタイタニックのパロディーをする。
親指の腹には、人間の目と口をCG合成して、ちゃんとしゃべったり、
まばたきしたりするようになってる。
その「親指スターウォーズ」はなんと「エピソード1」公開の前夜に放映されたらしい。
それが当たり、再放送の後、第2弾として「親指タイタニック」が作られた。
原題は「THUMB WARS」と「THUMBTANIC」。
登場人物の名前ももじってあって、ルーク・スカイウォーカーが
ローク・グラウンドランナー。
ハン・ソロがハンド・デュエットといった具合。
レイア姫の頭にはロールパンが付いていた。
テレビ番組なので2本合わせても1時間ない。
まぁ、ばかばかしくて面白いけど、テレビならいざ知らず、
わざわざ金を払って見に行くかどうか。
スター・ウォーズファンなら喜ぶかも。


「救命士」 アメリカ映画
1月19日 15:30 東映試写室(ブエナビスタ)

ニューヨーク、マンハッタン。
フランクは1年前までは腕のいい救急救命士で、人の命を救うことに悦びを感じていたが、
手当もむなしくたくさんの死者を目の当たりにして、心がすさみノイローゼ気味。
特に命を救えなかったローズという少女の亡霊に悩まされ、憔悴しきっていた。
次から次に飛び込んでくる無線、銃撃事件、自殺、麻薬、ホームレス。
搬送する病院はさながら野戦病院そのもので、フランクの心はもう爆発寸前。
そんなある日、ある男を蘇生させたことで男の娘メアリーと親しくなり、
徐々にメアリーと心の交流をはじめていく。
メアリーもまた都会で疲れ、父親との仲で悩んでいた。
次第にフランクはメアリーを救うことで自分が救われるような気がしてきた。
監督マーティン・スコセッシ、脚本ポール・シュレイダーという、「タクシードライバー」コンビの
「救急車版タクシードライバー」。
大都会ニューヨークで、麻薬や自殺志望、銃で傷ついたギャング、ホームレスと、都会の抱える問題の
一番えげつない形を目の当たりにすれば、精神もおかしくなる。
陽気な3人の相棒も実はすでにおかしくなっていて、まじめなフランクがわかりやすい形の
ノイローゼとして症状が出ているかのように見える。
映画の題材はまだこんな所にもあったかと思う穴場的テーマ。
主演はニコラス・ケイジ。


「ブルークリスマス」 日本映画
1月18日 ビデオ

1978年の東宝作品。
世界中で人知れず青い血の人間達が増殖していた。
彼らの共通点はUFOを目撃していること。
国営放送の記者南は青い血の人間の存在を知り、調べるうち国家規模の謀略を感じる。
政府は青い血の人間に恐怖を感じ、青い血の人間狩りをしようとしていたのだ。
物語は記者南の青い血の真相を探る謎解きと、青い血を持った娘冴子と自衛隊特殊部隊員の沖
との恋を絡めながら進む。
SFだけど特撮などはなく、むしろ人間の言われなき恐怖と、差別にスポットが当てられている。
ニューヨークやパリなどにもロケをしてるし、監督岡本喜八、脚本倉本聰、出演仲代達也、勝野洋、
竹下景子、岡田英次、芦田伸介、大滝秀治、八千草薫、田中邦衛、高橋悦史、小沢栄太郎、中条静夫、
天本英世、神山繁、岸田森、岡田裕介、沖雅也など、スタッフ、キャストも豪華で金がかかっているが、
テーマが暗いのでヒットしなかったよう。


「バレット・バレエ」 日本映画
1月18日15:30 ヘラルド試写室(ゼアリズ)

CM製作会社に勤める合田の彼女が拳銃自殺した。
恋人の自殺によって、恋人を死に追いやった拳銃に傾倒し、拳銃入手に奔走する合田。
路地裏で不良少女千里と知り合うが、仲間の少年達にこてんぱんにやっつけられる。
しかし、合田と千里は奇妙な感情で繋がっていると意識する。
大都会東京でゲームのように暴力をふるう少年達、繁華街で対立するグループとの大乱闘。
拳銃を入手した合田は、少年達の危険な渦の中に自ら入っていく。
製作・監督・脚本・撮影監督・美術監督・照明・編集・主演の8役をこなす塚本晋也作品。
全編モノクロームで、ほとんど手持ちの不安定なカメラワーク。
最初から最後まで、息苦しいほどピンと張りつめた緊張感がある。
編集にもかなり時間をかけているよう。


「キッドナッパー」 フランス映画
1月18日13:30 ヘラルド試写室(コムストック)

アルマンは腕のいい金庫破りだが、恋人のクレールの弟、薬中ドライバーのゼロのどじで
服役していた。
出所したアルマンに、すぐ拳銃をぶっ放す超短気なユリスから儲け話が来る。
ギャングのボスの依頼で、リトアニア人の屋敷の金庫から2000万フラン盗み出すというものだった。
渋るアルマンを説得して2000万強奪計画をユリス、アルマン、クレール、ゼロの4人で実行するが、
全然計画通りにはいかず、金庫の中には奇妙な小像しかない。
仕方なしに言葉のわからないリトアニア人を人質に取り帰ったが、ボスは計画失敗を怒り、
手付け金まで返せと言う。
ところがリトアニア人側から「リトバク王子に2000万フラン支払う」との申し出があった。
人質の男が「リトバク王子」なのか、それとも奇妙な小像か?
かくしてちぐはぐ4人組みとギャング、怪しげなリトアニア人との危険なかけ引きが始まった。
「ドーベルマン」のヤン・クーネンを見いだしたプロデューサーに発掘されたグラハム・ギッド監督作。
コミカルでテンポがよく、1時間40分という長さもちょうどいい。


「ジャンヌ・ダルク」 アメリカ映画
1月14日9:50 国際劇場

1412年、フランスはイギリスとの戦争のさなかで、国土の半分近くをイギリスに占領されていた。
田舎に住む13歳のジャンヌは毎日教会に足を運び、神と対話が出来るような気がしていた。
ある日ジャンヌの村はイギリス軍に焼かれ、姉は犯され殺された。
姉は自分をかばって身代わりで死んだと思いこみ、自責の念にさいなまれる。
フランス王子の元に17歳になったジャンヌが現れ、神の啓示を受けた自分に軍を指揮させろと言う。
はじめは半信半疑だったが、ジャンヌに秘めた力を感じた王子は軍への同行を許す。
戦闘でジャンヌは活躍し、ジャンヌに鼓舞され、兵士達も存分に力を発揮した。
こうしてジャンヌは神の使者として、フランスに勝利をもたらす少女となって伝説化した。
前半は激しい戦闘シーン、後半は捕らえられたジャンヌが牢獄で良心と自問自答する心理面が描かれる。
監督のリュック・ベッソンは、フランス人として「ジャンヌ・ダルク」を映像化したかったんだと思う。
しかし生半可な製作費では合戦シーンなど見劣りする。
ハリウッドで成功し、莫大なハリウッドマネーを使える今、満を持して「ジャンヌ・ダルク」の映像化に踏み切ったのだろう。
今までのベッソン作品とはひと味違う、主人公の精神的なところにまで踏み込んだ作品。
ジャンヌの良心役にダスティン・ホフマン、王子の母のフェイ・ダナウェイが冷たくいい味だしている。


「ビッグ・ダディ」 アメリカ映画
1月11日15:30 ソニー・ピクチャー試写室(ソニー)

ソニーは法学部を出たものの、定職に就かず気ままなフリーター暮らし。
そんなソニーに愛想を尽かし、彼女も離れていった。
ある日ルームメイトのケビンの出張中、ケビン本人も知らない隠し子
のジュリアンが母親から押しつけられてきた。
大人になりきれないソニーは、大人として責任を果たすため、
この5歳の男の子を自分が育てることにした。
はじめは無責任に自由にさせていたソニーだが、ジュリアンの母がすでにこの世になく、
やがて里子に出されると聞き、教育やしつけもして立派に育てようと、親としても成長していく。
ところがソニーは父親でないことが福祉課にわかり、ジュリアンを引き取りに来た。
相変わらずアメリカの子役のレベルは高い。
ジュリアン役は双子の兄弟で、シーンに応じて使い分けしてたそうな。まるでベンジーみたい。
主役のアダム・サンドラーは第2のトム・ハンクスになる可能性大。優しさがあって親しみやすい。


「ダブル・ジョパディー」 アメリカ映画
1月11日10:15 UIP試写室(UIP)

実業家の夫と4歳の息子と暮らすリビーは、夫が買ってくれると言うヨットで夫とセーリングに出る。
その夜キャビンのベッドで目覚めたリビーは、主人がいない事に気づいた。船室内におびただしい
血痕と、血の付いたナイフを残して。
警察は殺人と断定、多額の保険金目当ての夫殺しとしてリビーは有罪判決を受ける。
一人息子を友人の養子にしたが、友人は息子と共に失踪。やがて夫が生きていることを確信する。
囚人仲間から、一度有罪を受けた者は同じ罪で罰せられない「ダブル・ジョパディー(二重処罰の禁止)」
を聞き、復讐を決意する。
前半は夫殺害のミステリー、中盤は刑務所内で復讐に燃えるリビーを、そして後半は夫と息子探しが描かれ、
バランスよく物語が展開されて飽きさせず、正攻法できっちり作られている。
リビーに「ヒート」「コレクター」「サイモン・バーチ」のアシュレイ・ジャッド。
トミー・リー・ジョーンズが保護観察官の役でまたまた犯人を追っている。


「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」 イギリス映画
12月27日13:30 完成披露試写、リサイタルホール(UIP)

旧ソ連から中東に伸びた石油パイプラインをめぐり、ボンドとテロリストとの攻防戦。
ボンドはおなじみのピアーズ・ブロスナン、石油王の娘にソフィー・マルソー、
脳髄に受けた銃弾の影響で、全く痛みを感じない不気味なテロリストに「トレインスポッティング」
「フル・モンティ」のロバート・カーライル。
冒頭のアクション、テンポよく、タイトルバックの映像も007らしさをちゃんと出しながらふんだんにCGを
使って豪華。
でも途中でそのテンポの切れ味が薄れ、クールなテロリストに愛情が絡んで少し魅力があせた。


「シュリ」 韓国映画
12月21日13:00 ヘラルド試写室(シネカノン)

韓国情報機関「OP」の情報部員ユ・ジュンウォンは、要人暗殺に暗躍する北朝鮮の女スパイを
毎日追っている。
結婚を1ヶ月後に控えていて、恋人には自分が危険な仕事をしていることを内緒にしているが、
彼女もまた自分に何か隠しているよう。
そんなとき強力な液体爆弾が奪われ、その標的が韓国、北朝鮮両首脳が集まる
南北サッカー交流試合の会場だとわかり、スタジアムに急行。
スタジアムでOP隊員とスパイ達の激しい銃撃戦が繰り広げられる。
韓国では「タイタニック」の動員記録を抜き、社会現象化した映画。
銃撃戦は激しいが、相手を取り囲み、かなり有利なはずなのにこちらの弾はなかなか当たらず、
相手の弾はOP隊員によく当たる。
銃撃戦の臨場感を出そうとしてるのだけど、手持ちカメラを多用しすぎると逆に見にくい。
冒頭の北朝鮮スパイの訓練は凄絶で、「GIジェーン」の訓練は子供のよう。


「ストレイト・ストーリー」 アメリカ映画
12月16日19:10 完成披露試写、梅田ピカデリー2(コムストック)

73歳のアルヴィン・ストレイトは、仲違いして10年会ってない兄が病気で倒れたと聞き、
兄に会うため芝刈り用の小型トレーラーに小さな小屋を付け、時速8キロでアメリカの田舎道を進む。
まるでそれが自分にかせた「行」のように、老体にむち打って野宿をしながらゆっくり進んでいく。
デビッド・リンチの監督作だが、実話を元にした6週間の旅を淡々と描く。
旅の途中、大して大きな事件も起こらないし、さりとて風光明媚なところも映らない。
本当の旅はこんなもんだと思う。
異様な世界も、奇怪なキャラクターも登場しない、リンチらしからぬ作品。
ただ妙に老人がたくさん登場する。
主演はヘンリー・フォンダやカーク・ダグラスなどの代役や、スタントを長年してたバイプレイヤー、
リチャード・ファーンズワース。娘にシシー・スペイセク、兄に「パリ・テキサス」のハリー・ディーン。


「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」 アメリカ映画
12月16日10:00 UIP試写室(UIP)

ビリー・チャペルは大リーグ、デトロイト・タイガースのエース。もう40歳で右腕に限界を感じている。
チームは身売りが決まり、次のオーナーからチャペルは戦力外を通告されている。
対戦相手のニューヨーク・ヤンキースは優勝を決める大事な一戦だが、タイガースには消化試合だった。
試合の朝、恋人に別れを告げられ失意のチャペルは、自分の人生に決着を付けるためにマウンドに上がる。
敵地での消化試合のはずが、思わぬ快投を続けるチャペルにヤンキースファン達も声援を送りだす。
ケビン・コスナーの野球映画。物語は野球と恋愛を絡めながら回想で進み、最後はハリウッド映画らしく
定石で終わる。しかし、わかっていてもホロリときてしまう。定番の偉大さよ。


「ブルー・ストリーク」 アメリカ映画
12月15日15:30 ソニー・ピクチャーズ試写室(ソニー)

腕のいい泥棒のマイルスは青く巨大なダイヤモンド「ブルー・ストーク」を盗みに入るが、
仲間の裏切りで警官隊に包囲されてしまう。飛び移った建設途中のビルのダクトにダイヤを隠し
警察に投降。数年後出所したマイルスがダイヤを隠したビルを見て仰天。何とそのビルは警察署
になっていた。なんとか刑事になりすまして侵入したマイルスだが、捜査にかり出され同じ犯罪者の知恵で
どんどん事件を解決し、出世していくが・・・。
「バッド・ボーイズ」でウイル・スミスとコンビを組んでいたマーティン・ローレンス主演。
全体的なトーンは「ビバリーヒルズ・コップ」。マーティン・ローレンスはエディー・マーフィーを目指しているようだが
エディーよりブレイクするかどうか?


「アナとオットー」 スペイン映画
12月9日13:30 東映試写室(ポニーキャニオン)

8歳の時、偶然森の中で「運命的な出会い」をしたアナとオットー。
それたサッカーボールを追いかけていたオットーの前を走っている少女アナ。
アナは父が死んだことを告げられ、悲しみのあまり、時間を逆にもどそうと
走っているうちの森に来てしまった。
オットーの目前で転倒して振り返ったアナと見つめ合う。ふたりは運命の糸で結ばれていると気づく。
向かいの小学校にいるアナにむけて、愛の言葉をしたためた紙飛行機を無数に飛ばすオットー。
その紙飛行機が縁で、別れた妻の元に小学校からオットーを届けることが日課のパパと、アナのママに恋が芽生え、やがて結婚。
アナとオットーは義兄弟になってしまった。
ママの元から毎週末パパのいるアナの家に通ううち、アナとオットーの
仲も幼くはあるが確実に進んでいた。
青年になり、お互いの愛の強さを確信したアナとオットーであるが、オットーのママの死でオットーは自分を責め、
アナの元を去る。
アナとオットーは別の人生を送ろうとしたが、人生の迷子となってしまった。
お互い強い絆で結ばれていることに抗いようがなかった。
アナのあこがれの地、北極圏フィンランド。アナの住むフィンランドに郵便飛行機のパイロットになったオットーが
向かう。
日の沈まない北極圏でアナとオットーは再び出会って運命の輪を結びつけることができるのか。
映画はアナとオットーそれぞれの視点で交互に描かれ、それぞれの気持ちが語られる。
「手紙」「飛行機」「車」いくつかのキーワードが何度も登場し、それらが絡み合って物語が紡がれていく。
それらがどれも心憎い演出で小粋。
恋愛映画なのに、アクションやサスペンスのように、途中からふたりはいったいどうなるのかと、ハラハラドキドキする。
アメリカではとても作られない恋愛映画。
見終わった後、とてもせつなくなった。


「マトリックス」 アメリカ映画
10月15日10:40 梅田ピカデリー

起きていても寝ているようなしっくりこない現実感に悩まされるコンピュータープログラマーの
ネオに、謎の女性が接触、引き合わされたモーフィアスという男から「この世はコンピュータ−に
支配されていて、今のお前の世界はコンピューター内の仮想世界だ」と知らされる。
コンピューターから人類を解放するため仮想世界で戦いを挑む。
今まで「トロン」以来コンピューター内を描いた映画は多いが、どれもみな無機質だった。
ところが「マトリックス」は、現代を仮想現実の世界としているのでお決まりのCG世界とは無縁。
これがかなり成功している。アイデアの勝利。
コンピューターのバーチャルな世界と言いながら、戦いは銃の派手な撃ち合いであったり、
カンフーであったり、とてもアナログ。
このミスマッチが逆にこの映画の魅力だと思う。
理屈の通らない不思議な世界に我々も引き込まれ、固唾をのんで戦いを見守る。
キャラクターはどれも魅力的でかっこいいし、
久しぶりにわくわくさせてくれる映画だった。


「金融腐食列島・呪縛」 日本映画
10月11日16:50 梅田東映

大物総会屋に対する不正融資疑惑で揺れる朝日中央銀行に、
とうとう検察の強制捜査が入った。
銀行の行く末を案じる中堅行員達は、古い体質の役員達と対立しながら
銀行再生へむけて戦いだした。
不正融資、総会屋対策、大蔵接待と現代の金融機関を取り巻く状況を織り込みながら
語られるビジネスドラマ。
ちょっと都合のいいストーリー展開もあるが、演技はいい。
役所広司、矢島健一、椎名桔平、中村育二など芸達者な役者をそろえていて、
役者達の魅力で物語に引き込まれる。
特に仲代達矢の相談役は、政財界に影響力のある金融界のドンとしての威厳と、
冷酷さがあり、最高の悪役だった。
この役は仲代達矢以上の人間はいなかったと思う。


「DEAD or ALIVE」 日本映画
10月7日15:30 東映試写室(ツイン)

新宿から犯罪を根絶やしにしようと躍起になる城島だが、
中国マフィアと手を組んだ暴力団に、手段を選ばない手荒い新興勢力のちんぴら達が、
宣戦を布告し、三つ巴の激しいバトルが始まった。
犯罪者に対して異常なまでの敵愾心を持つ城島(哀川翔)、邪魔する者は何のためらいもなく殺す本上(竹内力)、変態の若頭(石橋蓮司)、エロカメラマン(ダンカン)と、まともな奴はひとりもいない。三池崇史監督。
独特のカメラスタイル、派手なガンアクション、テンションの高いスピーディーな展開と、
少々の無理は力業で押し切ってしまうパワーはあるが、ラストシーンはいただけない。
あそこまで漫画にしなくてもいいと思うのだが。
最後で失敗したと思う。


「ベオウルフ」 アメリカ映画
9月28日15:30 ソニーピクチャー試写室(ソニーピクチャー)

テクノロジーを失って荒廃した未来。中世のような城の中で魔物が人々を殺戮していく。
城の外では、魔物が出ないように、城から出るすべての人々は処刑される。
そこに颯爽と現れたのは「ベオウルフ」と名乗る謎の男。
ひとり魔物に戦いを挑む。この男はいったい何者なのか。なぜ魔物と戦うために城に来たのか?
クリストファー・ランバート主演。
いくらテクノロジーが無くなっても少しは飛び道具の一つもあるだろうと思うのだけど、
徹底して中世風を貫く。戦う時、ランバートは空中を飛んでばかりで殺陣も単調。
魔物も1体だけではつまらない。


「アベンジャーズ」 アメリカ映画
9月28日 レンタルビデオ

世界の気象を自由に操って世界征服をたくらむ天才科学者に挑む、
イギリスの諜報機関員と女性気象学者の活躍を描くスパイアクション。
60年代の匂いのするコミカルタッチのスパイアクションで、
「オースチン・パワーズ」もヒットしてるように、今この線は流行りなのだろうけど、
なんか中途半端。
ショーン・コネりーがもったいない。


「スネークアイズ」 アメリカ映画
9月26日 レンタルビデオ

ラスベガスで行われたボクシングの試合会場で国防長官が暗殺された。
現場に居合わせた堕落した刑事は、友人の警護官と共に会場を封鎖し、
14000人の観衆の中から犯人を探し出そうとする。
ダメ刑事は捜査を進めるうち、巨大な陰謀に首を突っ込んでいることを知る。
ブライアン・デ・パルマ監督。出演、ニコラス・ケイジ、ゲイリー・シニーズ。
冒頭13分にわたるノーカット撮影が話題になったけど、長廻しは最近では
「ザ・プレイヤー」でもやってたし、新鮮みもなく、大変だっただろうけどあまり意味はない。
「映像の魔術師」として何かしないといけなかったんだろうけど・・・
ゲイリー・シニーズは「身代金」以降、出てくるだけで犯人と分かってしまう
キャラクターになってしまった。


「バンディッツ」 ドイツ映画
9月22日 レンタルビデオ

女囚ばかりが収容された刑務所内で結成されたバンド「バンディッツ」。
警察のパーティーで演奏することになったが、途中でまんまと脱走に成功。
刑務所からたまたまレコ−ド会社に送っていたテープが話題になりCD発売され、
逃避行の最中に一躍スターになってしまう。
ゲリラ的にライブをしながら逃げる彼女たちに警察の手が忍び寄る。
随所に曲が入り、全編ミュージッククリップのような映画。
ちょっと変わったロックミュージカル。


「シックス・センス」 アメリカ映画
9月22日15:30 東宝東和試写室(東宝東和)

「シックス・センス」とは第六感。つまり霊感のこと。
小児精神科医のクロウは、ひとりの少年の心を治せなかったことをいつまでも心に持っていて、
妻との仲もうまくいかなくなってしまった。
そしてかっての少年と同じ症状の子供の治療に取りかかることになった。
少年はいつも何かにおびえ、自分の殻に閉じこもり、友達もなく母にも心を開こうとしない。
やがて少年はクロウに涙ながらに助けを求め、「僕は死んだ人間が見える」とうち明ける。
はじめは幻覚と思っていたクロウも信じるようになり、この子を救うことが自分と妻を救うことになると
解決法を探しだす。
霊感の強い人間が、霊の見えない人に対して「言っても信用してもらえないから」というあきらめと、
霊感の強い人がどんな感じで霊を見ているのかがよくわかる映画。
霊の登場シーンは怖いけどちょっとハッキリしすぎの感も。
しかし、「ポルターガイスト」のようにラストで霊と戦うことなく、前向きに向かっていく方法はいい。
最後の大どんでん返しは久々の「本物のどんでん返し」で、本編が始まる前「みなさまにお願い・・・・
この映画の秘密は決して人に言わないでください」という主演のブルース・ウイリスからのお願いがあるように
ラストがわかればこの映画の魅力の85%は消え失せる。
タフな刑事や荒くれ石油採掘職人のイメージの強いブルース・ウイリスが、
心を病んだ精神科医というのはしっくりこないが、少年役のハーレイ・ジョエル・オスメントの演技は
最年少オスカー候補と言われるだけのことはある。
怖がらせるし泣かせる。


「モンタナの風に抱かれて」 アメリカ映画
9月20日 レンタルビデオ

乗馬中の事故で片足を無くした娘。
事故は娘や両親そして馬の心も傷つけてしまった。
娘の心を治すためには馬の心を治すしか方法がないと、モンタナに住む
「馬にささやく男」ブッカーのところに母と娘、そして傷ついた馬はやってくる。
モンタナの大自然そしてブッカーによって、母と娘と馬の心はいやされていく。
ロバート・レッドフォードが初めて自分の監督作に主演した作品。
じっくりと腰を据えて撮られた作品で、2時間47分という長尺。
ここはいるのかなと思うカットもあるが、映画のつぼを心得たレッドフォードの演出は
安定感がある。
でもアップになるとやはりええ歳です。


「バーシティ・ブルース」 アメリカ映画
9月20日15:30 UIP試写室(UIP)

MTVがパラマウントと手を組んで作った青春映画。
テキサスの高校の名門フットボールチーム「コヨーテズ」。
鬼コーチのキルマーに率いられ、22回の地区優勝に輝いているが、
キルマーは勝つためには手段を選ばず、けがをしている選手に痛み止めの注射を打ち、
無理矢理試合に出場させる。
選手達は次第にキルマーに反発し、自分たちのためのフットボールをしようと試合に挑む。
友情と恋とスポーツ。青春3テーマをちゃんと押さえ、山場は鬼コーチに立ち向かい、
優勝をかけた試合で一丸となって戦う。
主人公は女の子の家に誘われ、すっぽんぽんで誘惑されても「君は友達の彼女だから」
と言って据え膳を食わない。
MTVが作ったとは思えないようなひと昔前の青春映画。
しかし、最後のフットボールの試合シーンは、勝つとわかっていても拳を握りしめてしまう。
定番はやはり強い。
ジョン・ボイトが憎々しい鬼コーチを好演。


「相続人」 アメリカ映画
9月19日 レンタルビデオ

ジョン・グリシャムが映画のために書き下ろした作品。
やり手の弁護士がパーティーで知り合った女性給仕と関係を持ち、
彼女をつけ回すカルト集団のリーダーの父を裁判で病院に強制収容するが、
父は仲間の手引きで病院を脱走。
彼女だけではなく弁護士の子供にまで危険が及ぶが、裏には陰謀が隠されていた。
原作のグリシャムの主人公はいつも弁護士で、今回もそうだが、法廷シーンは少ない。
出演者は主人公の弁護士にケネス・ブラナーほか、ローバート・デュバル、ジェームズ・ダウニーJr.、
ダリル・ハンナなどそこそこいい役者をそろえている。


「トーマス・クラウン・アフェアー」 アメリカ映画
9月16日19:30 完成披露試写(UIP) 北野劇場

マンハッタンに住むトーマス・クラウンは大富豪で若くてハンサム。
豪邸やヨット、自家用機を持ち何不自由のない生活を送っているが、そんな生活に満足できず、
常にスリルを求めている。
ヨットレースでスピードを求めるあまり無謀な操船で船をお釈迦にしたり、
勝ち目のない賭ゴルフに自ら大金を賭けたり。
そしてクラウンはゲームとして、警備の厳重な美術館から時価1億ドルの名画を綿密な計画の元
に盗み出す。
捜査に乗り出した美人保険捜査員は犯人をクラウンと見破り、クラウンに近づいていく。
クラウンは罠と知りつつも保険捜査員を受け入れ、かくして危険な恋のゲームまで始まった。
どう見ても「華麗なる賭け」のリメーク。
なのに、プレスシートにはどこにもリメークとは書かれていない。
テーマソングまで「華麗なる賭け」の「風のささやき」なのに、いっさいリメークとは言わないのは
完全リメークの「サイコ」の後なので、「またリメーク作品か」と思われるのが嫌だったUIPの営業戦略か?
主役の二人は妙なカップル。
ピアース・ブロスナンはあっさり顔なのに、レネ・ルッソはとても濃い。
おまけにルッソは金持ち娘の結婚式のようによく着替える。
ラストは「華麗なる賭け」の方がせつなくてよかった。


「コレクター」 アメリカ映画
9月14日 レンタルビデオ

姪が失踪したことから連続猟奇殺人の捜査に関わることになった異常犯罪専門の刑事が、
失踪した女性達は犯人に監禁されていると推察し、犯人とその場所の解明にむけ
捜査を進めていく。
犯人は殺人が目的ではなく誘拐した女性達に愛を求める。
このあたり昔の「コレクター」と似ている。
昔の「コレクター」は蝶々の採集マニアが蝶と同じように、女性も採集するような
異常な昆虫採集マニアの偏愛のようなものがあったが、この映画は邦題は同じだけど
リメイクではないよう。
昔の方が「蝶マニア」というハッキリしたキャラクター設定で、犯人と監禁されている女性に
スポットを当てて話が進んでいたが、こちらは犯人探しが中心。
監禁している地下室などはかなり「羊たちの沈黙」を意識しているようだし、
モーガン・フリーマンを使っているのは「セブン」色を出したかったのだろう。
主役のモーガン・フリーマンがすぐ単独行動をし、ひとりでえっちら行かんと、
近所にいるパトカーをまず手配せぇ、とイライラする場面多数。


「母の眠り」 アメリカ映画
9月14日13:00 UIP試写室(UIP)

エレンはニューヨークの出版社に勤めるキャリアウーマン。
父の誕生日に実家に帰ると母がガンであるとうち明けられる。
父は小説家であり大学の学部長で忙しく、エレンに母の看病のために戻ってきてくれと頼む。
エレンはやっと築き上げた自分のキャリアを捨てがたかったが、
母の看病のため会社を辞め、フリーの記者となって看病の合間に仕事をすることにする。
母は専業主婦で、毎日帰宅の遅い夫を待ち、家事に追われ、
楽しみはケーキ作りにモザイク、婦人会のボランティア。
キャリアウーマンのエレンから見れば、母の人生はとてもつまらないもののように見えた。
母の病状は確実に悪化し、エレンも看病しながら仕事も続けられなくなり、
心がすさんでくる。
看病せず毎晩遅く、不倫疑惑のある父と衝突したり、
自分の体が言うことをきかなくなった母のイライラをなだめたりしているうち、
だんだん母や父の気持ち、生きざまがわかってくるようになる。
物語はエレンの事情聴取のシーンから始まる。
母の死は自然死?安楽死?それとも自殺?
母役にメリル・ストリープ、父にウイリアム・ハートの2大アカデミー俳優に、
娘役が「ザ・エージェント」でトム・クルーズの相手役を務めたレニー・ゼルウィンガー。
3人とも芝居はうまいけど内容が重いし、ほとんど台詞廻しだけで進んでいくので
途中で眠くなってしまった。


「キューブ」 カナダ映画
9月12日 レンタルビデオ

5メートル四方の無数に連続した四角い部屋に閉じこめられた男女。
部屋の四方と上下に出入り口があり、そこを開けるとまた色違いの同じ部屋が続いている。
ところがいくつかの部屋にはそれぞれパターンの違う巧妙な罠が仕掛けられていて、
命を落とす人間が出る。
警官、女医、脱獄囚、女子大生、建築技師などがこの空間から脱出を試みる。
誰がなぜ罪の無い彼らをそんなところに閉じこめたのか、
最初から最後まで全く説明されぬまま物語がすすむ。
しかし、集められた人間達は無作為で選ばれたのではなく、
明らかに意図して選ばれていることに気づく。
密室の連続の息苦しさ、罠の恐怖、やがて冷静な判断が下せなくなっていく人間の弱さなど、
単純な舞台設定でも深く描かれている。
低予算と言われているが、罠のシーンなど随所にCGも使われていて、チャチさはない。


「ダイヤルM」 アメリカ映画
9月12日 レンタルビデオ

ヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!」のリメーク。
主人公は倒産寸前の会社を立て直すため財産持ちの妻の殺害を決意する。
殺害計画を持ちかけたのは妻の愛人の画家。
緻密に計画された殺人は歯車が狂い、思わぬ方向に展開していく。
主人公のスティーブンはウォール街で財をなしただけあって切れ者で、
窮地に陥っても瞬時の判断で切り抜ける。
主人公のスティーブン役のマイケル・ダグラスは「ウォール街」といい「ゲーム」といい
都会の実業家をやらせたらハリウッド一。
金持ちが板に付いている。


「エリザベス」 イギリス映画
9月12日11:45 OS劇場

16世紀のイギリス。王ヘンリー8世と愛人の間に生まれたエリザベスは、
3歳で母が処刑され私生児とののしられ、25歳で反逆者として危うく処刑されるところが助かり、
女王となった。
ところが新教と旧教の対立で国内は荒れ、外国もイギリスに攻め込む機会をねらっている。
謀略と裏切り、真実の愛と政略結婚、幾多の苦難を乗り越え、生涯独身を貫くことを決意し
英国と結婚したバージン・クイーン、エリザベス。
とにかく映像がすばらしい。カメラアングル、カット割り、編集、照明など、
かなり時間をかけて撮影されたと推察される。
セットや衣装も細かいところまで気を配られていて、
どのカットも絵画を見てるように決まっている。
パンフレットに「この映画はまさに女性版『ゴッドファーザー』」と書かれてあったとおり、
画面の重厚さやドラマ性、それにラストの粛正シーンは「ゴッドファーザー」を彷彿とさせる。
映画らしい映画。


「将軍の娘 エリザベス・キャンベル」 アメリカ映画
9月10日13:30 UIP試写室(UIP)

タイトルの上に「ジョン・トラボルタ」と書かれてるから見る気がするような地味なタイトル。
しかし、冒頭から「これは面白い映画かも・・」と思わせるような一級サスペンスらしい映像で、
「コン・エアー」以降これがメジャー2作目となるサイモン・ウエスト監督は、
こんなうまい監督だったのかと認識させられた。
基地の演習場で、美人で有能な大尉が全裸絞殺死体で発見された。
大尉は将軍の娘で、将軍はこのスキャンダルをなんとか外部に隠すので、
36時間以内に調査せよと、軍の犯罪調査部のトラボルタに命じる。
調べていく内に軍の腐敗した一面が明らかになっていく。
淡々と証拠をつなぎ合わせていく地味なシーンの合間に、派手なシーンを
ちゃんと織り込んでダレさせない。
脇役も「ベイブ」のジェームズ・クロムウェルや、「サルバドル」のジェームズ・ウッズなど、
渋めをそろえている。
トラボルタは演技はいいけど、もうちょっと痩せたらどうや?
どこにそんなカッターシャツ売ってんねんと思うほど首が太い。


「ホーンティング」 アメリカ映画
9月10日10:15 UIP試写室(UIP)

「スピード」「ツイスター」のヤン・デ・ポン監督のホラー映画。
不眠症と恐怖の研究のため新聞広告で集められた男女3人と博士は、
ヒル・ハウスと呼ばれる不気味で巨大な屋敷の中で共同生活を始めるが、
超常現象が毎夜起こり、その屋敷にまつわる忌まわしい過去が明らかになっていく。
博士役にリーアム・ニーソン、不眠症の被験者に「エントラップメント」のキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。
脇にブルース・ダーンもいる。
この映画のもうひとりの主役は屋敷。
随所に作られた不気味な彫刻や絵画、鏡張りのメリーゴーランドのような部屋。
大きく口を開けた暖炉。
どれも怪しくて気味が悪い。
おまけに廊下が直線ではなく湾曲しているので見通しが悪く、いつ何が出てくるかわからないし、
ごてごて彫刻が施されてまるで「エイリアン」のH・R・ギガーがデザインしたような廊下。
前半は幽霊を小出しにし、後半大CG大会で邪悪な霊と格闘する。セオリー通り。
CGは「ツイスター」ほどの新鮮みはないが、巨大な屋敷のセットはよくできている。


「ディープエンド・オブ・オーシャン」 アメリカ映画
9月9日15:30 ソニーピクチャー試写室(ソニーピクチャー)

郊外の一軒家に住む、夫婦と幼い子供3人のごく普通の家庭。
ある日カメラマンのママが子供3人を連れて高校の同窓会に出席
することになった。
会場のホテルロビーは出席者で混雑していた。
ママは長男に3歳の次男を頼み、受付へ。
戻ってくると次男の姿が消えていた。
会場をみんなでくまなく探したが、次男はホテルから忽然と消えてしまった。
警察、ボランティア、マスコミが次男の捜索にあたったがようとして行方が知れず、
家族は悲しみにくれる。
ところが9年後、ある偶然から家族の前に次男が姿を現す。
次男は子供を亡くしてノイローゼとなった、ママの同級生によって連れ去られていたのだ。
その同級生は再婚し、5年前に死んでいた。
再婚相手は妻が誘拐した子供と知らず、子供を大切に育て、
子供も実の父のように慕っていた。
家族の元に帰った次男だが、家族のことは全く記憶になく、とまどい、
育ての父のことを思って寂しがる。パパとママはなんとか家族となじませようとするが、
9年の歳月はあまりにも大きい。
長男は次男が消えたのは自分のせいと思っていて難しい年頃。
末娘は当時乳飲み子で次男のことは知らない。
育ての父は突然息子を奪われて悲しんでいる。
登場人物全員がそれぞれに苦しみと悲しみを持っている。
見ている者もそれぞれの気持ちが分かるので苦しい。
ママ役のミシェル・ファイファーは、原作に惚れ込んで、
企画段階から関わっていただけあって、体当たりの演技。
アカデミー賞をねらっているのかも。
刑事役のウーピー・ゴールドバーグは肩の力を抜いた演技で好印象。
音楽も「荒野の七人」のエルマー・バーンスタインが涙を誘うスコアを書いている。
今まであまりなかった題材の映画。


「クルーエル・インテンテンションズ」 アメリカ映画
9月8日15:30 ソニーピクチャー試写室(ソニーピクチャー)

「危険な関係」の4度目の映画化。
主役の男女はお互いの父母が結婚したために兄弟となった
義姉弟で、一線こそ越えていないが、血のつながりがないため
微妙なバランスで危険な距離を保っている。
裕福な家庭の二人の楽しみは恋のゲーム。
口説いては捨て、また次なる獲物を探す。
姉との賭で校長の娘を口説き落とすのに躍起になっている内に
恋心が芽生える弟。
ゲームだったはずが弟の本当の恋の目覚めによって、姉の嫉妬心に火がつき
さらなる罠が仕掛けられていく。
官能的なシーンや、コミカルなシーンがあるが、どれもみな中途半端。
主役のひとりの女優の顔が、モダンチョキチョキズのボーカルのお姉ちゃん(なんとかマリ)に
似てるので、その子が出てくるたびに自分のテンションが下がる。


「ユニバーサル・ソルジャー ザ・リターン」 アメリカ映画
9月2日10:30 ソニーピクチャー試写室(ソニーピクチャー)

ジャン・クロード・ヴァンダム主演「ユニバーサル・ソルジャー」(92)の続編。
死者を再生して造られた不死身の戦士「ユニバーサル・ソルジャー」の最新版
「ユニソル2500」が感情を持ったスーパーコンピューターに操られ、
人類に戦いを挑んできた。
迎え撃つのは初代「ユニソル」ヴァンダム。
しかし力の差は歴然。初代「ユニソル」は世界を守れるか?
新型と旧型のサイボーグの戦い。何か似ている。
そう「ターミネーター2」と同じ。
「T2」の新型は「T1000」。こちらは「ユニソル2500」。
すべてにおいて優れている新型に旧型が苦戦する。
お約束です。これは「リターン」ではなく「パターン」です。
ラストシーンで死闘の後、額から血を流しながら娘と抱き合うヒーローは多いが、
ヴァンダムは額に大きなたんこぶを作っていた。
ヴァンダムったらお茶目なんだから。


「6デイズ/7ナイツ」 アメリカ映画
8月26日 レンタルビデオ

南の島に彼とバカンスにやって来た女性編集者が、急な仕事で単身帰らなければならなくなり、
小型飛行機をチャーターして飛び立ったが、嵐で無人島に不時着。
パイロットといがみ合いながらサバイバル生活をするが、やがて二人は惹かれていく。
そこへ海賊が現れて・・・・。
もっとシリアスな映画と思っていたらコメディーだった。
製作費のほとんどはハリソン・フォードのギャラではないかと思うぐらい、
他にあまり金がかかっていない。
ハリソン君がこの映画に出ることに「イエス」と言ったのは、単に金のためか?


「アナスタシア」 アメリカ映画
8月22日 レンタルビデオ

帝政ロシア末期、ロシア革命で命からがら逃げ出した王女アナスタシアは、
逃走途中祖母とはぐれ気を失い、記憶をなくしたまま成人する。
宮廷でアナスタシア達を手引きして逃がした少年は詐欺師となっていて、
偶然出会ったアナスタシアを本物と知らず王女に仕立て祖母から賞金を巻き上げようとするが、
ロマノフ王朝に恨みを抱く妖術師ラスプーチンの魔の手が忍び寄る。
細かいところまで丹念に描かれているし、随所にCGも使われ金のかかった
ミュージカル仕立てのアニメ。
ただ、ヒロインのアナスタシアの顔がもひとつきれいじゃないので感情移入できなかった。


「ポケットモンスター ルギア爆誕」 日本映画
8月2日14:45 梅田劇場

この種の映画を初めて劇場で見た。
いつもは女房が子供を連れていくのだが、今回僕におはちが回ってきた。
子供の頃に見た「東映まんがまつり」以来の劇場での子供映画。
14:10ぐらいに劇場に着くと「スターウォーズ」と同じように劇場内一方通行制で、
入場口と退場口をはっきり分け、ロビーも半分に仕切られてた。
ロビーに親子がひしめき、入場口も1カ所のみ人波に押されて入場すると、
席がぽこぽこ空いているように見えるが、実は小さな子供が多くて、
背もたれから頭が出ないので後ろから見ると空いているように見える。
やっと見つけた空席は前から4列目のはし。
追加1000円のおなおり席にも「立ち見はかなわん」と、続々と親子で埋まっていく。
映画は環境保護がテーマで、ポケモンコレクターが火の神と言われる特別な「ファイヤー」を
捕まえた事によって異常気象が起こる。
島の伝説では「世界破滅の時、海の神現れ、すぐれたあやつり人と共に神々の怒り
静めん・・・・」とある。
そこで、「すぐれたあやつり人」サトシが一肌脱ぐことになるのだが、
どうも環境保護のテーマといい、伝説の言葉といい、
「風の谷のナウシカ」を思い出させる。
ナウシカでも伝説は「その者、青き衣をまといて金色の野に降り立つべし・・・」
みたいな事言っていた。
劇場版は宮崎アニメを目指しているのだろうか。
早くも2000年の夏休みにパート3公開が決まっている。


「ブラスト・フロム・ザ・パスト」 アメリカ映画
7月26日19:30 JAL機内

関空からデンパサール(バリ)に行く途中、機内で上映されたビデオ。
99年の作品で、主演はブレンダン・フレイザー(ハムナプトラ)、
アリシア・シルバース(バットマン&ロビンのバットガール)。
他にクリストファー・ウォーケンやシシー・スパセイクなんかも出てるけど、
聞いたこともない映画。吹き替え版だったけど日本未公開か。
キューバ危機の頃、たくさんの特許で富を築いた科学者が、
地下に巨大な核シェルターを作る。
折しもキュ−バがアメリカに核ミサイルの照準を向けたとの報道。
博士は身重の妻とシェルターに避難するが、偶然シェルターの上に飛行機が墜落。
核攻撃と勘違いした博士は、シェルターのタイムロックを放射能の半減期35年にセット。
夫婦は、大量の備蓄食糧と水、魚の養殖用プール、人工太陽の菜園を完備し、
自宅の居間を再現したシェルター内で35年間生活することとなった。
妻はシェルター内で男の子を出産、「アダム」と名付ける。
アダムは父から教育を、母からマナーとダンスを習い成長する。
35年後、ロックが解け、おそるおそる外に出た博士の見た物は、
変わり果てた現代の世界だった。(まるで浦島太郎)
現代人を放射能のせいでミュータントになったと勘違いした博士はショックで倒れ、
安全のためシェルターでの生活を続行することにする。
生活必需品の調達のため外の世界に出たアダムは、初めてみる空や雨に感激し、
いろんな人と出会うが、俗世間とは隔絶されたアダムと現代人の感覚のずれが笑いを誘う。
後半は純真なアダムと現代娘イブとのラブストーリー。
小品ながら笑えるラブコメディー。


「サイコ」 アメリカ映画
7月22日10:15 UIP試写室(UIP) 

ヒッチコックの「サイコ」のリメーク。
ところが普通のリメーク作品は、もとのテイストを残しつつ
監督自身の味を出すものだが、
監督のガス・ヴァン・サントは「オリジナルに忠実に作ることを心がけた」
そうで、完全になぞった。
時代と、出演者とが違い、そしてカラーになった「サイコ」。
演出やカット割りはほとんど同じ。
だから少し古くさい演出があったりするが、それがとてもわかりやすい。
有名なバスルームの殺人はカラーなので、当然血の色がはっきり描かれる。
(バッタリ倒れる時、アン・ヘッシュの吹き替えの女優の肛門まで一瞬見えたような
気がする)
ラストも、最近は死んだかと思ってもまた起きあがってきたり、
二転三転してなかなか一筋縄では終わらせてくれないが、
昔の脚本なので、一転で終わる。
最近のサスペンスを見慣れた人にとっては少し物足りないか。
見終わって、改めて「サイコ」はよく出来てるなぁと思い、
無性にヒッチコックのオリジナルが見たくなる不思議な映画。


「スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」 アメリカ映画
7月14日11:15 北野劇場

11:15から1回目が始まるけど、1時間以上前に映画館に着くと、
すでに長蛇の列!!
最後尾には「最後尾」と書かれたプラカードを持った係員がいて、
そこに歩いていくと、向かいの映画館(ビルの中に同じ系列の
映画館が向かい合わせである)の中に誘導された。
こちらは「ハムナプトラ」だったけど、ロービーは「スターウォーズ」
の行列用になってた。
なんとか座れたけど、上映30分前にはもう立ち見がでてた。
売店もお菓子や、飲み物のためだけでなく、グッズにたかる人で
ごった返していた。
映画が始まって、「20th CENTURY FOX」と出ただけで一部から拍手が起こ
り、
広大な宇宙の映像に「遠い昔、はるか銀河系の彼方で・・・・」とクレジットが出て
おなじみのテーマソングが流れた時は、さすがに鳥肌が立った。
映画は・・・・・ちゃんと「スターウォーズ」してた。
レーザー銃の撃ち合いあり、チャンバラあり、空中戦あり、変な宇宙人に、
R2−D2と、未完成のC3−POもちゃんとでてた。
まぁ、満足。



「オープン・ユア・アイズ」 スペイン映画
7月13日15:30 東映試写室(ツイン)

スペインで公開されるや、いきなりハリウッドでリメイク権の争奪戦となり、
トム・クルーズが権利を買い取って映画化するそうな。
新進監督の作品だけど、夢と現実が交錯して、
見てる者までどれが本当か夢かわからない。
まるで夢野久作の「ドグラマグラ」。どこまで行ってもどうどう巡り。
ラストは説明されてもようわからん。


「CURE/キュア」 日本映画 ビデオ(WOWOWにて収録)
7月3日

黒沢清監督のサイコ・サスペンス。
刑事に役所広司、サイコな犯人に萩原聖人。
連続殺人事件が起こり、手口が同じだがすべて犯人が違う。
殺人は実にあっけないほど淡々と行われる。
ラストは別にお化けも出てこないのに「リング」のような怖さあり。
でんでんがいい味だしていた。これで仕事増えるのと違うかなぁ。


「エンド・オブ・バイオレンス」 ビデオ(WOWOWにて収録)
6月27日

ヴィム・ヴェンダースの監督作品で、
「インディペンデンス・デー」のビル・プルマンや、
「ユージュアル・サスペクツ」のガブリエル・バーンが出てた。
タイトルには「バイオレンス」とあるが、あまりバイオレンスシーンはなく、
一応「暴力」について考えながら、ハイテク、監視、政府の陰謀、
映画プロデューサー夫婦の冷め切った結婚生活などが絡み合った、
何か大きな事が起こりそうで、あまり起伏のない淡々とした映画だった。


「シンプル・プラン」 アメリカ映画。
6月23日19:00 リサイタルホール

監督は、あのサム・ライミ。
兄弟二人と悪友が、雪降り積もる森の中で墜落した軽飛行機を発見。
中から出てきたのは、パイロットの死体と現金が440万ドル。
この金を巡って3人は侃々諤々。
「ネコババしよ。」「いやだめだ。」
ニュースでも飛行機が遭難したなんて言ってない。
現金だって全部使い古しの100ドルばかり。
これはなんぞ犯罪がらみの金に違いない。
だから警察が動くことはない。
我々が盗ったことは誰にも知られない。
この大金さえあればこんな惨めな暮らしからおさらばして人生をやり直せる。
3人は山分けすることにして金を隠す。
そのままじっとしていれば誰にもわからず大金が手に入ったかもしれない。
ところが、些細な思いつき「シンプル・プラン」で、運命は大きく変わってゆ
く。
まるでドミノ倒し。もう止められないし、後へも戻れない。
キャッチ・コピーは「人はいかにして静かに狂い始めるか・・・」
出てくるのはごく普通の人ばかりだけれど、大金の前では冷静な思考力が消
え、
欲と猜疑心で人生の歯車が狂っていく。


「π(パイ)」 アメリカ映画。
6月23日15:30 ヘラルド試写室

うたい文句は「数学とスリラーの融合」
監督はこの映画で「デビッド・リンチとキュ−ブリックの世界を合わせ持つ」
と絶賛されたダーレン・アロノフスキー。
数学者の主人公は数式で、自然界を説明し、宗教から株式までその法則を見つ
ける。
ところが禁断の真理を数字で解明したことによって、次第に精神がむしばまれ
ていく。
「ラン・ローラ・ラン」は主人公の髪まで原色だったのに対して、この映画は
全編モノクロ。
しかも粒子が粗い。
デビッド・リンチの「イレイザー・ヘッド」に雰囲気が似ている。
難解でシュール。見終わった後、体も心も重くなる。


「ラン・ローラ・ラン」 ドイツ映画。
6月23日13:30 ヘラルド試写室

ローラは恋人マニから電話を受ける。
マニは泣きながら「今日どうして遅れた?」と責める。
ローラはバイクを盗まれ、マニと約束の時間に落ち合えなかった。
マニはギャングの手下なのだが、薬の取引の後ボスに時間までに
金を届けなければいけないのに、ローラが遅れ、
仕方なく歩いて遠くの地下鉄に飛び乗った。
ところが現金の入った紙包みを車内に忘れてしまった。
時間までに金を届けなければ殺されてしまう。
ローラさえ時間どおりに来ていれば地下鉄に乗ることもなかったのに・・・
後20分で10万マルク作らないとマニの命がない。
「わかった。きっとあなたを助ける」
ローラはそう言うと脱兎のごとく街に走り出した。
それからはタイトルどおり、もう走る走る。
時間に遅れるとマニは殺される。
マニは金が工面できないようなら近所のスーパーを襲うという。
さあローラは20分で10万マルクを工面してマニを救えるか?
物語は映画が始まって30分で最悪の結末を迎える。
「え、もう終わってまうやんか」と思っていたら、
話は振り出しに戻ってやり直し。また走りまくって金を工面して
また最悪の結末。
また振り出しに戻って・・・・
普通の映画は何十年もの歳月を2時間に凝縮して描いたりするものだが、
この映画は20分の物語を1時間半見せる珍しい映画。
テンポの速いビートが全編に流れ、細かいカットをつないで疾走感も倍増。
日本映画でも流行りそう。