映画日記 2004,1,1〜12,31
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「デイ・アフター・トゥモロー」 アメリカ映画
12月30日 DVD

地球温暖化のため異常気象が起こると予測したジャック・ホール博士は、各地で巨大竜巻や洪水など
の被害が実際起こったため、政府に招集され対応に追われていた。
しかし息子が大洪水のまっただ中のニューヨークにいて、その後大寒波が襲うとわかり、
危険を冒して極寒のニューヨーク目指して救出に向かうのだった。
ローランド・エメリッヒ監督のパニック大作。
異常気象が次々に各地で起こるシーンはそれなりに見応えがあるが、映像にそれほど新鮮味はない。
主演のデニス・クエイドも悪い役者じゃないけど、こんなヒロイックな役はピンとこない。
やはりパニック物は昔のチャールトン・ヘストンのようなカリスマ性のあるリーダーがひっぱらないと。
途中動物園から逃げたオオカミが襲ってくるのがわざとらしい。なぜオオカミだけが逃げたのか疑問。


「トロイ」 アメリカ映画
12月30日 DVD

紀元前12世紀、貿易で栄えた都市トロイを列強国は狙っていたが、トロイの王子バリスは
スパルタの王妃ヘレンと恋に落ち、ヘレンをさらってしまう。
スパルタ軍は千艘の船団を率いトロイへ攻め込むが、強固な城壁に守られたトロイにスパルタ軍も手を焼いていた。
スパルタ軍には傭兵で無敵の戦士アキレスがいたが、独自の判断で動くため王達も扱いにくい存在だった。
ブラッド・ピット主演、ウォルフガング・ペーターゼン監督作品。
国の関係と登場人物の関係がわかりにくい。
合戦シーンは大量のエキストラとCGで迫力あるが、「ロード・オブ・ザ・リング」でもう見慣れた光景。
むしろブラピの1対1の対決の方が見応えある。ほとんど一瞬でカタがつくが、かっこいい。
史実をもとにスケールの大きな映画を作ったつもりが、結局ブラピ一人の映画になってしまった。


「オーシャンズ12」 アメリカ映画
12月16日19:15 完成披露試写、梅田ブルク7(ワーナー)

カジノから大金を強奪し、悠々自適の生活を送るオーシャン達を、カジノのオーナー、ベネディクトが
見つけ出す。
盗んだ金に利子を付けて返さないとオーシャン達の命はない。
新たな仕事で大金を手に入れないといけなくなった彼らは、再びチームを招集。
新たな強奪プロジェクトを始動させるが、怪盗ナイト・フォックスに先回りされるわ、
インター・ポールの腕利き女性捜査官イザベルが立ちはだかるわで「借金返済計画」は難航。
支払期限が迫る中、最後の大勝負に出る。
スティーブン・ソダーバーグ監督、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、
マット・デイモン、アンディー・ガルシアら前作同様のメンバーに、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、
ヴァンサン・カッセルが加わった。
スターはたくさん出てるけど、メンバーが多すぎる。この仕事はこの半分の人数できるはず。
現にメンバーの半分は存在が薄く、顔も覚えてない。
話は単純でそれなりに見せ場はあるけど、スターを並べただけの娯楽映画。


「サスペクト・ゼロ」 アメリカ映画
12月16日13:30 ソニー試写室(ソニー)

謎の猟奇殺人が続発し、FBI捜査官マッケルウェイが捜査に乗り出すが、被害者達に共通点はなく
死体に残された「0」の文字だけが手がかりだった。
しかしマッケルウェイのもとに謎の人物から奇妙なスケッチやら謎めいた言葉などのかかれたFAXが届き、
被害者達の知られざる一面が明らかになっていく。
FAXの主は捜査に協力しているのか、挑戦しているのか・・・・。
調べるうちに政府の極秘プロジェクトが浮かび上がってくる。
「ザ・コア」「ペイ・チェック 消された記憶」のアーロン・エッカート主演の少しひねったサイコ・スリラー。
「羊たちの沈黙」「セブン」などの連続猟奇殺人系だが、そこに遠隔透視を絡めた一工夫で新味をプラス。
「マトリックス」のキャリー=アン・モス、ベン・キングスレーらが脇を固め、E・エリアス・マーヒッジ監督の
映像手腕もあって、サイコ・スリラーの王道を行くできばえになった。


「ナショナル・トレジャー」 アメリカ映画
12月14日19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(ブエナ・ビスタ)

太古から手にした者は至高の権力を手に入れることができると言われ、数千年にわたり世界中で奪い合いを繰り広げられてきた秘宝。
この秘宝を代々探し求めている歴史家で冒険家のベン・ゲイツは北極で秘宝の手がかりを発見するが、
同行した金持ちのイアンに奪われてしまう。
秘宝のヒントはアメリカの独立宣言書に隠されているとわかり、国立博物館に厳重に保管されている独立宣言書に近づこうとするが、イアン達も狙っていたのだった。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」「アルマゲドン」「パール・ハーバー」のジェリー・ブラッカイマー製作、
ニコラス・ケイジ主演作品。
全体的な雰囲気は現代のインディー・ジョーンズだが、ニコラス・ケイジにこの手のヒーローは似合わない。
アクションはそれなりに随所にあるが、謎解きが多く「フリー・メイソン」と言う組織も日本人になじみがないのでダレる。
「ロード・オブ・ザ・リング」のショーン・ビーンやハーヴェイ・カイテル、ジョン・ボイトら渋い役者も出てるけど
全体を覆う「ぬるさ」に負けて力が発揮できなかった。
監督は「クール・ランニング」のジョン・タートルトーブ。


「レイ」 アメリカ映画
12月9日15:00 UIP試写室(UIP)

幼い頃に視力を失ったレイは母から「施しを受けず自分の足で立て」と教えられ、
ミュージシャンとして単身街に出る。
音楽的才能が認められレコードも発売、自立心からくるビジネスセンスで音楽界の寵児となり、
ゴスペル歌手のデラ・ビーと結婚して子供も生まれるが、目の前で溺死した幼い弟のトラウマと
麻薬中毒、浮気で心身はすさんでいく。
73才で永眠したレイ・チャールズの半生を描いた伝記映画。
この映画はレイのすばらしい音楽的才能という表面だけでなく、女好き、麻薬中毒など裏面もちゃんと描かれている。
苦労を共にしてきた仲間もステップアップのためにあっさり切り捨てる非情な一面も描かれているが、
幼い頃からの母親の「施しを受けず自分の足で立て」というキーワードがやらしさを緩和した。
女性関係・麻薬なども弟の溺死による「水」の幻覚などのトラウマを絡めることによって救いを持たせている。
表面と裏面のバランスがうまく描かれている。
「コラテラル」でトム・クルーズを食うほどの印象を残したジェイミー・フォックスが見事に若きレイ・チャールズを再現。演技の幅の広さを見せつけた。
監督は「愛と青春の旅立ち」のテイラー・ハックフォード。


「ボーン・スプレマシー」 アメリカ映画
12月9日13:00 UIP試写室(UIP)

記憶をなくした元CIAトップ・エージェントのジェイソン・ボーンはCIAの手から逃れ、
インドで妻のマリーとひっそり暮らしていた。
ベルリンでCIA内部資料の取引があり、交渉に当たったCIA職員は殺され大金も盗まれてしまう。
現場に残されていたのはボーンの指紋だった。
そして何者かがボーン殺害を企て妻のマリーが犠牲になってしまう。
CIAの仕業とにらんだボーンは復讐のため立ち上がる。
マット・デイモン主演「ボーン・アイデンティティー」の続編。
前作は記憶をなくしたボーンが訳がわからぬままCIAから逃げていたが、今回は追う側に回って
積極的に仕掛ける。
ボーンの過去も絡めアクションと謎解きの2本柱で物語を盛り上げる。
カー・アクションにも工夫があり退屈せずに楽しめた。
カール・アーバン、ジョアン・アレンら渋い脇役陣のおかげで登場人物が引き締まった。


「ステップフォード・ワイフ」 アメリカ映画
12月8日10:30 UIP試写室(UIP)

ヒット番組を連発してきた敏腕プロデューサーのジョアンナは過激番組の失敗で失脚する。
ジョアンナのすさんだ心を癒すため夫のウォルターは郊外への引っ越しを提案する。
家族が移り住むことになったステップフォードは広い敷地に豪邸が並び、家事はオートメーション化され、
絵に描いたような幸せな家庭生活が営まれている夢の住宅地だった。
しかし妻達は夫に従順でいつも着飾り、あまりにも理想の妻らしく振る舞っていて、
夫達は夜な夜な男だけの秘密クラブに入りびったている事に疑惑を抱いたジョアンナは、
女流作家のボビー、建築家でゲイのロジャーらとステップフォードの秘密を探りだす。
ニコール・キッドマン主演のコメディー。
この映画の二コールはあまり美しくない。ニコールよりも脇役のクリストファー・ウォーケン、
ベット・ミドラーの方が目立ってるし、特にグレン・クローズはやりたい放題。
怪優ぶりを発揮して一番印象を残した。
物語は途中で失速した。


「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」 フランス映画
12月7日13:30 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ)

パリの裏町に住むユダヤ人少年モモは父親と二人暮らし。
家事はモモの役割だが家計のやりくりはたいへんで、近所のトルコ人イブラヒムの店から毎日缶詰を万引きしていた。
イブラヒムじいさんは「万引きするならうちの店だけにしてくれ」とモモを許し、人生についていろいろ教えてくれる。
やがて父が自殺しモモはひとりぼっちになってしまった。
イブラヒムじいさんはモモを養子にして故郷のトルコに旅に出ることにした。
オマー・シャリフ主演のハート・ウォーミングな映画。
引退から復帰したオマー・シャリフが実にいい枯れ方をしていて、トルコ人おじいさんの役を自然に演じ
暖かみのあるキャラクターを作り上げた。
物語は淡々としているが退屈することはなく、オマー・シャリフを見ているだけでじゅうぶん楽しめる映画。
イザベル・アジャニーがちょっとだけ顔見せてる。


「ミスティック・リバー」 アメリカ映画
12月1日 DVD

幼馴染みのジミー、デイブ、ショーンは子供の頃いたずらをいているところをがめられ、
ニセ刑事にデイブは連れ去られて行方不明になる。
4日後にデイブは暴行を受けたものの無事発見されるが、3人にとってこの事件は拭いようのない心の傷となった。
25年後19歳になるジミーの娘が殺され、捜査に乗り出したのは幼馴染みのショーン。
しかし捜査線上に浮かび上がってきたのはデイブだった。
3人の心は激しく揺れ動く。
クリント・イーストウッド監督のサスペンス・ドラマ。
ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコンの3人がそれぞれの心のひだを繊細に演じる。
しかし全体的に重いトーンで見る者の心もどんより暗くなる。
イーストウッドの演出手腕はうまいが、後味の悪い終わり方。


「舞台よりすてきな生活」 アメリカ映画
12月1日13:30 ヘラルド試写室(キネティック)

人気劇作家のピーターはスランプに陥り、公演が迫る芝居の台本は遅れ気味。
特に子供のいないピーターには子供を描くことが難しく、芝居の稽古ははかどらない。
子供にダンスを教える妻のメラニーは子供をほしがるが、子供嫌いのピーターは二の足を踏む。
そんな時向かいに越してきた足に傷害のある少女エイミーは、子供好きのメラニーの誘いで頻繁に遊びに来るようになる。
初めは執筆の邪魔と疎ましく思っていたピーターだが、子供心を知る絶好のチャンスとエイミーに接近していく。
ロバート・レッドフォード製作、ケネス・ブラナー主演作品。
台詞とシチュエーションでニヤリとさせる大人のコメディー。
ケネス・ブラナーが英国出身の劇作家という役どころで、ピーコートを着たり英国車に乗ってたり、
米国に住む英国人らしい言動もニヤリとさせる。
話の起伏はあまりないが、大げさにならないブラナーのコミカルな演技が全体の落ち着いた雰囲気を作り出した。


「ミシェル・ヴァイヨン」 フランス映画
11月29日 DVD

富豪の息子で父親のレーシングチームのエースドライバー、ミシェル・ヴァイヨンは
ラリーでチームメイトのデヴィッドを事故で失う。
長年のライバル、チーム・リーダーが車に細工したと見られるが証拠がない。
ル・マン耐久レースの準備に追われるヴァイヨン・チームは、チーム・リーダーが5年ぶりに
ル・マンに参戦するという報を受ける。
亡き父親の無念を晴らすためにチーム・リーダーの娘ルースは、ヴァイヨン・チームに
復讐しようと手段を選ばず挑んでくる。
リュック・ベッソン脚本のレース映画。
ル・マンに出場するようなレーサーがラリーも参加するかは疑問だが、オン・ロードだけでなく
オフ・ロードのレースでもアクションを盛り上げる。
漫画が原作だけに物語はとても単純でわかりやすい。
ハリウッドなら金を使って大量のエキストラを雇うか、CGで本物らしくル・マンの雰囲気を再現するところだが、
フランス映画ではそんなに金をつぎ込めないので本物のル・マン24時間レースに参加して撮影した。


「スコルピオンの恋まじない」 アメリカ映画
11月28日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ブリッグスは腕利きの保険調査員だが新しく乗り込んできた女性重役ベティー・アンとそりが合わない。
社長の愛人のべティー・アンは社内合理化を進め、古いやり方のブリッグスはことごとく衝突する。
ある日同僚の誕生パーティーでブリッグスとベティー・アンはある呪文を唱えると恋仲になると言う催眠術を魔術師に掛けられた。
しかしその日から金持ちばかりを狙った謎の盗難事件が続発し、ブリッグスは社内に犯人がいるとにらむ。
ウディ・アレン監督・脚本・主演のコメディー。
お気楽なコメディーだけど、ウディ・アレンが歳をとりすぎてロマンスは似合わない。
もう監督だけに専念するか、主役は誰かに譲って脇役に徹するべき。
共演はヘレン・ハント、ダン・エイクロイド、シャーリーズ・セロン。


「ハウルの動く城」 日本映画
11月28日13:30 ナビオTOHOプレックス

18歳の少女ソフィーは親の残した帽子屋を一人で切り盛りしている。
ある日町で何者かに追われているハウルと言う魔法使いと出会い、惹かれるものを感じる。
ところがソフィーは店に来た荒れ地の魔女に魔法をかけられ、90歳の老女に変えられてしまう。
店にいられなくなったソフィーは町を出てハウルの動く城で働くことになった。
宮崎駿のアニメだが期待はずれ。
絵は相変わらず緻密だけど驚くほどじゃないし、物語に深みがない。
ハウルは家を出ていっては飛んでばかりやし、荒れ地の魔女の扱いも中途半端。
宮崎駿の名前でヒットはするだろうけど、口コミで「もひとつ」と言う噂が広がれば、
客足は落ちると思う。


ジャッカス・ザ・ムービー 日本特別版」 アメリカ映画
11月26日13:30 UIP試写室(UIP)

アメリカのCSで放送されていたバカなことばかりやる番組「ジャッカス」の映画版。
悪路を走る車の上で入れ墨を彫ったり、便器の展示場で本当に糞をしたり、
肛門にミニカーを突っ込み病院でレントゲン撮影してもらったり・・・。
とにかく痛いのやら汚いのやら無茶やら、考えられる限りの「アホなこと」をやる。
確かに笑える物もあるが、見るからに痛そうなのやら、糞尿やゲロなど汚いのも多く
試写室を途中で出る人も出るぐらいグロい。
何のルールもなくただ無茶してるだけで、人に迷惑を掛けてるだけのネタも多い。
無茶な中にも何かルールめいた「縛り」がないと笑えない。


「アンナとロッテ」 オランダ・ルクセンブルグ映画
11月25日13:30 東宝試写室(ファインフィルムズ、ギャガ・コミュニケーションズ)

仲のいい双子の姉妹アンナとロッテは両親の死によって2組の親戚に別々に引き取られる。
アンナはドイツの農家で学校にも通わせてもらえず牛の世話をさせられ、病弱のロッテは
オランダの裕福な家庭で治療を受け何不自由なく暮らしていたが、お互いの手紙は
双方の里親によって出されることはなかった。
成人しアンナはナチス将校と、ロッテはユダヤ人と結婚し、二人はドイツで再会し、
つかの間の平和な日々を送るが、夫を収容所に送られたロッテはナチス将校と結婚した
アンナを許すことが出来ず、二人は絶縁状態になる。
両親の死によって引き裂かれた姉妹が数奇な運命をたどり、戦争に翻弄されていく様を描いているが、
一方が極端に貧しくもう一方が裕福な家庭だったり、それぞれがナチス将校とユダヤ人と結婚するなど、
物語の展開がわざとらしい。


「シルヴィア」 イギリス・アメリカ映画
11月24日13:15 ヘラルド試写室(ザナドゥー、エレファント・ピクチャーズ)

アメリカ人のシルヴィアは英国のケンブリッジ大学で詩人を目指していた。
パーティーで大学院生で詩人のテッドと出会い二人は恋に落ちる。
二人は結婚しテッドは賞を取り注目を集める。
シルヴィアは小説を書くため二人でシルヴィアの実家アメリカに引っ越し、
シルヴィアが教師をしながら生活を支えるが夫の浮気疑惑に悩まされる。
ロンドンに戻り二人の子供をもうけ、シルヴィアの詩も注目を集めるようになったが、
またしても夫の浮気に悩まされ二人の関係は修復不能となる。
失意のシルヴィアは冬の夜、ある選択をする。
没後29年後にピューリッツア賞を受賞したシルヴィア・プラスの生涯を描いた伝記映画。
グウィネス・パルトロウがシルヴィアを繊細に熱演しているが、物語のトーンが全体的に暗い。
心の暗部だけでなく、イギリスの気候風土も含めて物語がどんより暗い。
淡々と話が進みラストも救いようがない。見た人間まで暗い気持ちになる。


「オペラ座の怪人」 アメリカ映画
11月19日18:30 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(ギャガ・ヒューマックス)

同名ミュージカルの作曲者が製作した映画版。
確かにいい曲が多いけど、ただ舞台をそのまま映画にした感じ。
ミュージカルはどうしても歌に時間が取られるので、その間のストーリー展開ははしょられる。
でも舞台では違和感ないが映画ではなぜかすごく短略化された気がする。
同じ曲が何度も登場すると映画では飽きてくる。
ボブ・フォッシー(「オール・ザット・ジャズ」「シカゴ」)のミュージカルはダンスで映画でも見せるけど、
劇団四季がやってるようなミュージカルは映画にしても魅力ない。
やっぱり舞台で観た方がいいと思う。


「パッチギ!」 日本映画
11月19日13:00 東映試写室(シネカノン)

1968年、京都の府立高校に通う康介は、教師から朝鮮高校にサッカーの親善試合の申し込みを
託される。
しかし朝鮮高校は地元でも恐れられ、康介の高校の空手部と抗争を繰り返していた。
同級生の紀男と恐る恐る訪れるが吹奏楽部のキョンジャに一目惚れ、彼女らが演奏していた
「イムジン河」に興味を覚える。
楽器店で知り合った坂崎にフォーク・クルセイダースの「イムジン河」のいきさつを教えてもらった康介は、
紀男とフォークバンドを結成し、朝鮮語も勉強してキョンジャに接近するが、キョンジャは番長の妹だった。
ひたむきな康介に心を許し出すキョンジャだが、在日朝鮮人と日本人の間にはあまりにも大きな溝があった。
「ゲロッパ!」の井筒和幸監督作品。
若い俳優からベテランまで、役者達が達者で皆それぞれ個性を発揮し印象を残している。
途中、朝鮮半島、日朝の歴史など割ゼリフになった説明臭い部分もあるが、この背景が物語の
根幹をなしているので痛し痒し。
ギャグなどは「関西人は普通の会話でじゅうぶん」と、わざとらしいセリフや演出を廃し、
自然なセリフ回しで表現されている。
わざと爆笑を狙わず、演出と役者の技量でクスリと笑わせる。これも監督のこだわりのよう。
最後は少し丸く収まりすぎ。


「エイプリルの七面鳥」 アメリカ映画
11月17日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ)

自由奔放に生きて黒人と同棲中のエイプリルは家族とは絶縁状態。
最悪の仲の母親がガンで余命いくばくもないと聞き、感謝祭の日に家族を
ニューヨークのアパートに招待する。
料理もろくに作ったことないエイプリルは何とか七面鳥を料理しようとするが
オーブンが壊れてしまった。
どこの家も七面鳥の丸焼きを作るためオーブンフル稼働の日、悪戦苦闘するエイプリル。
一方エイプリルの家に向かって車を走らせる家族だが、
エイプリルは子供の頃から問題児で誰一人としていい思い出がない。
ママは何とか理由を付けて引き帰そうとする。
「ギルバート・グレイプ」「アバウト・ア・ボーイ」の脚本家ピーター・ヘッジズ初監督作品。
家族の再生をブラック・ユーモアで綴った物語。
次から次に問題が起こるエイプリルや彼の悪戦苦闘の「動」の部分と、
ギュウギュウ詰めの車中でエイプリルのいい思い出を探そうとして気まずくなる
家族の「静」の部分の対比が面白い。
家族との心の交流を軸に、オーブンを貸してもらうため訪れた近所の部屋で、
いろんな人種の人々に冷たくされたり助けられたり、小さな心の交流をくり返す。
小品だけどヘッジズの脚本のうまさが光った。


「ベルヴィル・ランデブー」 フランス・カナダ・ベルギー映画
11月17日13:30 東映試写室(クロックワークス)

内気な少年シャンピオンはおばあちゃんと二人暮らし。
友達のいないシャンピオンにおばあちゃんはテレビやおもちゃ・子犬などを買い与えるが、
シャンピオンの気は晴れない。
ある日シャンピオンに三輪車を買い与えたことからシャンピオンの興味が開花。
おばあちゃんとの二人三脚のトレーニングの結果、自転車レース「ツール・ド・フランス」に
出場するまでになる。
レース中シャンピオンは謎の人物に誘拐され、おばあちゃんは愛犬ブルーノの嗅覚を使って
シャンピオンを追い、ベルヴィルと言う街の闇の賭博場でシャンピオンを発見する。
シルヴァン・ショメ監督のフランス・アニメ。
とにかく絵のタッチがアメリカ・アニメにない独特の雰囲気で、人物や建物などがデフォルメされ、
最近の精巧なアニメではなく昔ながらの「漫画」として作られている。
セリフを廃し、絵や表情だけで淡々と筋を運ぶ。
ノスタルジックな絵柄に乾いたナンセンスギャグ。
アメリカにはないヨーロッパ的な大人の漫画。


「カンフー・ハッスル」 中国・アメリカ合作映画
11月16日13:30 ソニー試写室(ソニー・ピクチャーズ)

シンは街一のギャング団「斧頭会」に憧れてるチンピラ。
豚小屋砦という貧しいアパートで恐喝をしようとして失敗。斧頭会を争いに巻き込んでしまう。
ところがギャングをアパートの住人達がいとも簡単に倒してしまった。
実はアパートには偶然にもカンフーの達人達がひっそりと暮らしていたのだった。
メンツを潰された斧頭会のボスはアパートに刺客を送り込み、刺客と住人達との壮絶な戦いが始まったのだった。
「少林サッカー」のチャウ・シンチーが監督・脚本・主演をこなした超絶カンフー・アクション。
全体のノリは「少林サッカー」と同じで、どこまでいくねんと言うほどエスカレートした戦いが
繰り広げられ、まさに漫画の世界。
ギャグもアメリカにない味付けで、同じアジア人としてツボにバシバシはまる。
ただシンが主役のはずだが、前半は完全に脇役で存在感が薄く、
後半急に人間が変わって中心人物になる。ここのところが急すぎた。
とはいえこれだけアホ臭いことを真剣にやるチャウ・シンチー、どれだけ儲かっても
この路線を守って欲しい。


「オールド・ボーイ」 韓国映画
11月15日10:20 ナビオTOHOプレックス

サラリーマンのデスはある日突然何者かに監禁される。
誰が何のために・・・。身に覚えが無く月日は過ぎていく。
ガスで眠らされている間に部屋は掃除され、着替えも散髪も眠っている間にすんでいる。
やがてテレビで妻が殺され、犯人が自分になってることを知る。
自分を監禁し妻を殺した者への復讐のため、デスは虎視眈々と脱走の準備を進めるが
月日は流れ15年が経過していた。
ところがある日、いつものようにガスで深い眠りに落ち、目が覚めるとビルの屋上で解放されていた。
誰がなぜ自分を15年も監禁したのか、なぜ突然解放したのか。
デスは自分を監禁した者を探すため街をさまよう。
2004年のカンヌ映画祭でグランプリを獲得したパク・チャヌク監督作品。
日本の漫画が原作らしいが、オリジナリティーがあって秀逸、まったく展開が読めず、
ただただ物語に翻弄されるのみ。
ハリウッドでリメイクが決定したのもうなずける。
カット割りもうまいしチェ・ミンシク、ユ・ジンテなど、主要俳優も強烈な個性を印象づけた。
でもこれがハリウッドでリメイクされたとき、このアジア人の執念深さがどれだけ描けるかが疑問。
この異常とも言えるほどの執念深さがこの物語の根幹をなしてるねんけどなぁ。


「Mr.インクレディブル」 アメリカ映画
11月14日17:30 家族試写、IMPホール(ブエナ・ビスタ)

かつてスーパー・パワーで街の平和を守っていたスーパー・ヒーロー「Mr.インクレディブル」は
政府から活動を禁じられ、今では保険会社で地味なデスクワークをこなす毎日。
同じようにスーパー・パワーを持つヘレンと結婚し3人の子供に恵まれたが、
過去の栄光が忘れられない。
ヘレンは慎ましくとも平和な今の暮らしを大事にしたいと夫をたしなめるが、インクレディブルは
上司と喧嘩して会社をクビになる。
そんなある日、インクレディブルの元に政府の極秘機関と名乗る謎の人物から仕事の依頼が来る。
ヒーロー復活とばかりインクレディブルはいそいそと出かけていくのだった。
ディズニーとピクサーの最強タッグによるCGアニメ。
今までのピクサー作品と違い人間が主人公だが、超人的なキャラクターにすることで
きわめて漫画的に人物を扱えたので違和感なく楽しめた。
「007」と「スパイ・キッズ」のテイストをフルCGで描いたエンターテイメント作品。
CGの技術は日進月歩で当然すばらしいが、何より「アイアン・ジャイアント」のブラッド・バード監督が
カット割りやテンポ、ギャグのセンスなどエンターテイメントのツボを心得ていて、
2時間があっという間もなく終わる。
100人に見せたら100人全員が「おもしろい!」というような映画。


「ポーラー・エクスプレス」 アメリカ映画
11月11日19:10 完成披露試写、梅田ブルク7(ワーナー・ブラザース)

サンタクロースの存在を疑いだした少年の家の前に、イブの夜中蒸気機関車が停車する。
その列車は北極行きの「ポーラー・エクスプレス」。車掌に誘われるままパジャマ姿で乗り込むと、
同じような年頃の少年少女がすでに乗っていた。
知ったかぶりの少年、面倒見のいい女の子、引っ込み思案の男の子・・・。
長い旅路をサンタが住むと言われる北極目指して列車は走るのだった。
トム・ハンクスが声で5役もこなしてる、ロバート・ゼメキス監督のCGアニメ。
もう驚愕の映像だった。
エンターテイメントにかけては力量のある監督が最新技術で今まで観たことないような世界を作り上げた。
「動く絵本を作る」というゼメキス監督の執念とこだわりがひしひしと伝わってくる。
現在の映画では最高の映像技術で作られた映画やと思う。
途中で何度も実写と見まがうほどよくできている。
CGに関しては目の肥えてきた観客を夢の世界に誘う。
ハラハラ・ドキドキ、ホロリとさせて、挿入歌もいい。


「アイ・ロボット」 アメリカ映画
11月5日13:55 ナビオTOHOプレックス

2035年のシカゴ。U.S.R.社のロボットは世界中で人間をサポートするパートナーとして
働いていた。
ところがU.S.R.社のロボット研究の第一人者ラニング博士が研究室の窓から転落して死亡。
部屋には鍵が掛かっていたため、誰もが自殺だと思い始めたがスプーナー刑事だけは部屋に一緒にいたロボットが犯人だとにらむ。
ロボット心理学者のスーザンはロボット3原則がちゃんとプログラムされ、ロボットが人を殺すことは絶対にないと断言するが、
ロボットに対して反感を持っているスプーナーはサニーと名付けられた新型ロボットを容疑者として連行しようとする。
ウィル・スミス主演のSFサスペンス。
セットや車・小物などがSFらしいデザインではあるが、混沌としたところもあり、
「未来でござい」というわざとらしさが出ないように気を遣って作られている。
特にロボットのデザインは重要で、「善と悪」どちらにも見えるようなキャラクターが必要とされた。
しかも機械的な部分ときわめて人間的な表情を併せ持つこのロボットは見事なできばえ。
この微妙なバランスを保ったロボットのデザインが出来たことによりこの映画は60%成功したと言える。
それに加えアクションシーンもよくできているし、なぜスプーナーはロボットに反感を持っているのかが
物語を膨らませラストに生きた。


「炎の戦線 エル・アラメイン」 イタリア映画
11月4日 ビデオ(WOWOWにて収録)

第2次大戦下のエジプト。砂漠地帯で地雷原を挟んでイギリス軍とイタリア軍はこうちゃく状態で
にらみ合いを続けていた。
そこに学生志願兵のセッラが着任してきた。祖国のためと意気揚々と戦場にやってきたセッラだったが、
補給も途絶え、武器弾薬のみならず食料や水も不足し、兵士達は赤痢に苦しめられ砂漠に孤立した
部隊だった。
古参兵から生き残る術を教えてもらいながら散発的に起こる戦闘を経験していくセッラ。
やがてイギリス軍の総攻撃が始まった。
日本ではあまり馴染みないイタリア軍の戦争映画。
舞台も砂漠で、最近の戦争映画らしくきれい事を廃した乾いたタッチで物語が進んでいく。
補給が途絶え孤立した部隊の「敵よりも食料や水のことが心配」といった焦りや不安が
淡々と描かれ、じわじわ観る者に迫る。
ただ、ラストの総攻撃のシーンはイギリス軍のずさんな攻撃に首をかしげる。


「スーパーサイズ・ミー」 アメリカ映画
10月28日13:00 東映試写室(クロックワークス、ファントム・フィルム)

アメリカの女性2人が肥満になったのはマクドナルドのハンバーガーを食べ続けたせいだと、
マクドナルドを相手取って訴訟を起こした。
裁判ではマクドナルドを食べたせいで肥満になったと立証できないと、
マクドナルド側の勝訴に終わった。
その記事を見てモーガン・スパーロック監督は1ヶ月マクドナルドだけ食べたらどうなるか、
自ら人体実験を開始した。
3食マクドナルドで食べる。すべてのメニューを一度は食べてみる。
飲み物などスーパーサイズを勧められたらスーパーサイズにする。
実験開始前に心臓や消化器など3人の医師の検診を受け、
栄養師も付け、健康状態良好と診断が下され、体型も標準体で実験スタート。
ウォーキング誌の元編集長にアメリカ人の平均歩数を聞き、
万歩計を付けて1日5000歩以内にとどめる。
1週間ほどで顕著に体重が増え、2週間ほどで肝機能など明らかに障害が出てきた。
その間、学校給食を取材したりして現代アメリカが抱える肥満問題などをレポートする。
コーラなどの糖分もすさまじく、肥満の人達のインタビューも説得力がある。
この映画はけっしてマクドナルドを攻撃している映画ではなく、
外的要因で喫煙に次ぐ死亡原因になっているにもかかわらず、なぜアメリカで肥満が増えているのかを、
自らを実験台に問うた捨て身のドキュメントだった。
スーパーサイズの量や、学校給食の現状などを見て、「ボーリング・フォー・コロンバイン」を見たときと同じように、
アメリカ人はアホやとつくづく思う。


「エヴァンジェリスタ」 イギリス映画
10月27日13:30 東映試写室(ハピネット・ピクチャーズ、メディアボックス)

作家の夫クレイグとニューヨークに住むサマンサの悩みは子供ができないこと。
産婦人科医から不妊治療の最新技術を持った郊外の病院を紹介され、
体外受精の手術を受けるが、こっそりと怪しげな試験管から取り出した液体を
体内に入れられる。
めでたく懐妊したが、それからは近所の住人の失踪事件や、正体不明の男からつきまとわれたり
不穏な出来事が周りで起こりだす。
「キリング・ミー・ソフトリー」のヘザー・グラハム主演のスリラー。
「ローズマリーの赤ちゃん」みたいな悪魔崇拝者に魅入られた妊婦の話に
現代的なクローン技術を絡めた。
撮影途中で年配の男優が死んでしまった。
かなり重要な役回りだったから脚本の変更を余儀なくされ、クライマックスの詰めが甘いし、
悪魔崇拝者達の掘り下げも薄っぺらく終わってしまった。
撮り直すとかなり予算オーバーするし。
本作品がデビューとなったサイモン・フェローズ監督には不運なスタートとなった。


「メン・イン・ブラック2」 アメリカ映画
10月21日 ビデオ(WOWOWにて収録)

地球にいる異星人の監視をする秘密組織MIB本部が謎の異星人によって占拠された。
Jはかつての相棒で今は引退して郵便局員となったKに協力を求めに行くが、
Kは昔の記憶を失っていた。
トミー・リー・ジョーンズ、ウィル・スミスのコンビが復活した人気映画の第2弾。
全体のノリは前作同様で、ひじょうに金のかかったバカバカしい映画だけど、
このテイストは妙にツボにハマってしまう。
コメディーをやってもわざとらしさがないのは、トミー・リー・ジョーンズのうまさと、
ウィル・スミスの軽さのなせる技。
この二人の雰囲気がこの映画の全体のトーンになってる。
よくもまぁこの対照的な二人にコンビを組ませたものだ。


「ギャング・オブ・ニューヨーク」 アメリカ映画
10月20日 ビデオ(WOWOWにて収録)

19世紀半ばのニューヨークはアメリカ人とアイルランド移民が縄張り争いをくり返していた。
アイルランド移民のアムステルダムは、子供の頃アイルランド移民のリーダー格で牧師の父親を
対立するアメリカ人組織のリーダー、ブッチャーに殺された。
復讐を誓ったアムステルダムは成人し、素性を隠してブッチャーに接近し、虎視眈々と復讐の機会を狙う。
アムステルダムは女スリのジェニーと愛し合うようになが、ジェニーはブッチャーの情婦だった。
レオナルド・ディカプリオ主演、マーティン・スコセッシ監督作品。
19世紀半ばのアメリカ人とアイルランド人の対立を描いた珍しい映画。
対立するそれぞれのグループに「ネイティブズ」や「デッド・ラビッツ」などチーム名が付いているのが
いかにもアメリカらしい。
ディカプリオ、キャメロン・ディアスよりもブッチャー役のダニエル・デイ=ルイスの存在感がすごい。
彼一人が全部喰ってしまった。


「マジェスティック」 アメリカ映画
10月20日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ピーターは新進の脚本家。自分の脚本が映画化されこれからと言うときに、赤狩りの標的にされてしまう。
落胆し、酔っぱらって交通事故を起こして川に転落。とある町に流れ着くが記憶をなくして自分が誰かもわからない。
しかし町の住人ハリーの、出征して戻らない息子とうり二つだったため、
息子のルークが戻ってきたと町は大騒ぎ。
ピーターも周りの人々の暖かさに包まれ、ハリーがかつて経営していた映画館を再建しようと立ち上がる。
ジム・キャリー主演、「ショーシャンクの空」「グリーンマイル」のフランク・ダラボン監督作品。
ジム・キャリーがオーバーアクションのコメディーを封印して抑え気味の演技。
赤狩りと記憶喪失と映画をうまく物語に絡めた。
ハート・ウォーミングな映画を作ろうという意図が見え見えの話だけど、
まぁよしとする。
ロビン・ウィリアムズの後釜をジム・キャリーは狙ってるよう。


「サラマンダー」 アメリカ・イギリス映画
10月18日 ビデオ(WOWOWにて収録)

クイン少年は母が働く地下鉄工事現場で古代のドラゴン「サラマンダー」と遭遇。
命からがら脱出するが母親は命を落としてしまう。
サラマンダーは驚異的な繁殖力で増殖し、人類を食らい、人類は滅亡の危機に瀕してしまった。
20年後クインは若き指導者としてわずかにうm生き残った者達と、古城を砦として密かに暮らしていたが、
そこにアメリカ軍の生き残りを中心とした精鋭部隊がドラゴン討伐にやってくる。
監督は「Xファイル ザ・ムービー」のロブ・ボウマン。
現代にドラゴンが蘇るという話に無理がある。あんな恐竜の身体に羽根付けても飛べるとは思えん。
ドラゴン狩りの部隊も近代装備の割に武器が歯が立たないし、今まで生き残ってきたのが不思議。
マッド・マックスの相手をドラゴンに置き換えたような映画。


「予言」 日本映画
10月14日16:20 ナビオTOHOプレックス

大学講師の里見は家族と帰省から帰る途中、電話ボックスに立ち寄る。
電話ボックスでふと目にした古ぼけた新聞には交通事故で女児が死亡とある。
その女児の名前は自分の娘だった。
振り返ると娘の乗った車にダンプが激突。夫婦の目の前で娘は炎上して帰らぬ人となってしまった。
娘を失った悲しみから抜けられない里見は妻綾香と別れ、高校教師として働いていたが
情熱もなく抜け殻同然の生活を送っていた。
やがて未来を予知する能力を持った人達の存在に気付いた夫婦は、その人達に接触を図る。
三上博史主演、「ほんとうにあった怖い話」「リング0 バースデイ」の鶴田法男監督の「Jホラーシアター」第2弾。
こちらも幽霊を出さないホラーだけど、別れた夫婦が協力して真相に迫ったり、雰囲気的には「リング」を彷彿させる。
山本圭や吉行和子などベテランも出ているが、どうも締まらない演技。
酒井法子も「呪怨2」でホラー女優というイメージが強くなったが、芝居はうまくない。
「感染」も「予言」もたいして怖くない。


「感染」 日本映画
10月14日14:15 ナビオTOHOプレックス

経営状態が悪化し院長が失踪した総合病院。
スタッフ不足で過酷な勤務を強いられ、薬品も底を突きかかった劣悪な環境で治療をする医師と看護師達。
ところが疲労から医療ミスを起こし、患者が死亡。
隠蔽工作のため遺体をストーブで暖め、腐敗を早めることにした。
そんな時、急患で搬送されてきた患者は身体が溶け出す、今まで診たこともない患者だった。
失踪したはずの院長が現れ、売名のためこの珍しい患者をこの病院で研究すると言い出したが、
医師達は感染症を恐れて猛反対する。
佐藤浩市主演、「パラサイト・イブ」「催眠」の落合正幸監督作品、「Jホラーシアター」第1弾。
共演の高嶋政伸がいい。今までテレビドラマで当たり障りのない優しいキャラの俳優というイメージだったが、
佐藤浩市を向こうに回し、今までにないキャラで存在感をアピール。
ホラーと言っても幽霊などではなく、人間の深層心理の恐怖を描いている。
佐野史郎はこの種の映画にハマり過ぎ。


「スカイ・キャプテン」 アメリカ映画
10月13日19:00 完成披露試写、リサイタルホール(ギャガ・ヒューマックス)

1939年、ニューヨークを巨大ロボットの大群が襲撃。
緊急発進した空の英雄スカイ・キャプテンが撃退したが、科学者が謎の失踪をしていることがわかる。
元恋人で新聞記者のポリーと捜査を進めるうち、トーテンコフ博士の「明日の世界計画」が浮上する。
手がかりを求めて二人はチベットに飛ぶのだった。
ジュード・ロウ、グイネス・パルトロー、アンジェリーナ・ジョリーの冒険活劇。
監督は自宅で4年がかりで作った6分のCG映像が認められ、いきなり監督に起用された新人ケリー・コンラン。
昔のアメリカの少年漫画のような話で、空飛ぶインディー・ジョーンズみたいなヒーロー物。
役者はブルーバックの前で演技して、ほとんどCG合成。
人間が絡むシーンはほとんどスタジオでブルーバックだけのセットだから、
短期間でちゃっちゃと撮れる。
短期間だけの拘束で売れっ子の役者陣を押さえたよう。
監督はCGオタクで人間の演出をしたことがないから芝居に深みがない。
(まぁ単純な冒険活劇だからこれでいいと言えばいいのだが・・・)
なんか照明の加減も安っぽいし。
上記の3人が出てなかったら本当に子供だましみたいになってしまうところ。
アンジェリーナ・ジョリーはかっこよくて一人得してた。


「80デイズ」 アメリカ映画
10月13日15:30 ヘラルド試写室(ヘラルド)

19世紀末、イングランド銀行から翡翠の仏像を盗み出したラウ・シンは、警察に追われ
発明家のフォッグの屋敷に逃げ込む。
成り行きでフォッグの珍発明の実験台となる羽目になる。
フォッグの発明は科学アカデミーの笑いの種となり、冷笑するケルヴィン卿と、
80日間で世界一周すると賭けをする。
故郷の村から盗まれた仏像をいち早く持ち帰るため、フォッグの旅に同行することにしたラウ・シンに
パリで出会った娘モニクも加わって3人は最短コースで世界一周の旅に出た。
しかし仏像を狙うファン大佐やケルヴィン卿の命を受けて彼らの旅を妨害しようとするフィックスらが
執拗につけねらうのだった。
ジャッキー・チェン主演、「80日間世界一周」のリメイク。
ジャッキーは太ってアクションの切れがないし、ヒロインはすきっ歯で歯並びが悪い。
いくらコメディーでも、こんな不細工な女優をヒロインに置いてたらあかん。
主要メンバーは安物の俳優ばかりで、シュワルツェネッガーもひどい役で出てる。
ラストのキャシー・ベイツだけが存在感があった。
ギャグはまったく笑えないし、2時間がとても時間の無駄と思えるようなくだらない映画。


「ビハインド・ザ・サン」 ブラジル映画
10月13日13:30 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、アニープラネット)

代々土地をめぐって抗争をくり返している2つの家。
家族が殺されたら、必ず仕返しに行かなければならない。
殺された者のシャツをずっと物干しに干し、血の赤い色が黄ばんできたら喪が明け、復讐に移る。
兄貴を殺され復讐を果たしたトーニョは、今度は自分が狙われる。
ところがサーカスの娘に恋をして、外の世界への憧れが芽生えてくる。
いつまでも途切れることのない復讐の輪の中にいる抗いようのない宿命と、愛することを知った人間らしい心の狭間でトーニョは苦悩する。
「セントラル・ステーション」「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレス監督作品。
家族全員が朝から晩まで協力して重労働に耐え、わずかの糧を得る。そんな貧乏農家だから自分一人だけが外の世界に飛び出していくことも出来ない。
その家に生まれた者の宿命と復讐の掟。がんじがらめの主人公の苦悩が観客にちゃんと伝わる。
話が単純な分セリフも少なく、カメラワークのうまさが際だった。
人々の内面を映像で伝えるうまい監督。
トーニョ役のロドリゴ・サントロは二枚目なのに鼻水垂らして泣いたり熱演。
「ラブ・アクチュアリー」「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」など米英の作品にも顔を出しているので、
これから世界中で女性ファンが急増することだろう。


「トリコロールに燃えて」 アメリカ映画
10月12日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

1933年、英国の名門大学に通うガイはふとしたことで美しいギルダと出会い一夜を共にする。
お互い惹かれあうが奔放なギルダはたくさんの男と遊び、旅がしたくなったとガイをおいてさっさと旅だった。
大学を出て教職に就いたガイにパリにいるギルダから手紙が来て、二人はパリで再会する。
今ではカメラマンとなったギルダはパトロンをうまく渡り歩き、華やかなパリで人生を謳歌していた。
ギルダとスペイン人のミアとガイ。奇妙な三角関係の生活がしばらく続いたが、スペイン内乱、
ナチスの台頭、そして第2次大戦と時代は大きく変わっていく。
そしてミアとガイは刹那的に享楽を求めるギルダと別れ戦火に身を投じるのだった。
アカデミー女優「モンスター」のシャーリーズ・セロン主演作品。
セロンは「モンスター」の後にこの作品を撮ったようで、顔もふっくらしてるし、
太股も少したるんで体重がまだ戻りきっていないよう。
でも当時のファッションに身を包んだセロンはかっこいい。
実生活でも恋人のスチュアート・タウンゼントは第2のジュード・ロウと言った感じの
正当派二枚目。
占い師に34歳で死ぬと言われ、奔放だが精一杯生きたギルダを中心に描いているので、
どうしても戦争の話はウエイトが軽くなる。これは仕方ないことだけど、戦闘シーンがお粗末。
ロケ地は絵になりすぎてわざとらしい。
共演はペネロペ・クルス。


「9デイズ」 アメリカ映画
10月11日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ポータブル核爆弾取引を持った闇の武器商人を長年追っていたCIAエージェントのゲイロードは、
おとりとなって武器商人に接触していた相棒が死に、双子の兄弟のジェイクにこの仕事を引き継がせる。
しかし生まれてすぐに里子に出されたジェイクはダフ屋でいい加減。
取引まで9日の間、ジェイクを徹底的にしごいて武器商人と接触に成功するが・・・・。
「バットマン・フォエバー」「フォーン・ブース」のジョエル・シューマイカー監督作品。
老練なCIAエージェントをアンソニー・ホプキンスが演じているが、歳をとりすぎて
現役で働けるとは思えない。
素人のジェイクを助けるため取引場所などに多数のエージェントを配置して救助体制万全と言いながら、
遠すぎて踏み込むまでに時間かかりすぎ。
コミカルな部分を取っ払ってシリアスなアクションにした方が良かった。
どっちつかずの中途半端なアクション・コメディーになってしまった。


「座頭市」 日本映画
10月9日 ビデオ(WOWOWにて収録)

居合い切りの達人で盲目のあんま、市は賭場で知り合った新吉と仲良くなり、
新吉の叔母のおうめの家にやっかいになる。
町は銀蔵一家が仕切っていて、住人を苦しめていた。
病身の妻と旅する浪人の服部は、食いぶちを求めて銀蔵一家の用心棒となる。
そこに幼い頃家族を盗賊に殺され、仇を捜すおせい姉妹が町に現れ、
銀蔵が仇の一人とにらむ。
ひょんな事からおせい姉妹を助けることになった市は、腕の立つ用心棒の服部と剣を交えることとなる。
北野武監督・脚本・編集・主演の痛快時代劇。
勝新太郎とは違った座頭市像を作ろうと、金髪にしたり赤い仕込み杖を持ったりと工夫しているが、
全般的に市を含めて登場人物の掘り下げが浅い。
単純でわかりやすいストーリーはいいけど随所に挿入されたギャグは邪魔。
エンターテインメントとしては、タップダンスやコントよりも、殺陣などの活劇で楽しませてもらいたかった。


「2046」 香港映画
10月6日19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(ブエナビスタ)

1960年代の香港。新聞記者で作家のチャウは失恋の痛手から自堕落な生活をしていた。
住まいであるホテルの2046号室に夜な夜な女を引っ張り込み、パーティーに明け暮れ、
三文小説で生計を立てていた。
チャウを愛する女も現れるが心を許すことはなく、やがて女は傷つき去っていく。
日本人男性との恋愛を反対されたホテルの娘ジンウェンの勧めで、チャウはSF小説を書き始める。
タイトルは「2046」。
「2046」という幻の場所に向かうミステリートレインに乗り込んだ日本人タクと乗組員のアンドロイドの
禁断の恋など、
身近にいる人間を小説に登場させたが、やがて知らず知らずのうちに自身をタクに投影している
自分に気付く。
「恋する惑星」「ブエノスアイレス」のウォン・カーウェイ監督作品。
この映画には台本がなく、撮影しながらストーリーが作られていったらしいし、
何度も撮影が中断されたので、やはり物語のつながりがどうもしっくりこない。
「ブエノスアイレス」「インファナル・アフェア」のトニー・レオン、木村拓哉、
「紅いコーリャン」「始皇帝暗殺」のコン・リー、「恋する惑星」のフェイ・ウォン、
「初恋のきた道」「HERO」のチャン・ツィイーら、そうそうたる出演陣は
しっかり自分の役割を果たしているが、彼らは全体像がわからぬまま不安な芝居を強いられたよう。
すべてカーウェイ監督の責任。
ひどく退屈な映画だった。


「ユートピア」 スペイン・フランス映画
10月6日15:30 東映試写室(ワイズポリシー)

アドリアンは予知夢を見る能力を持った集団「ユートピア」のメンバーだったが、
人が死んでいくのを予知できても助けることが出来ない苛立ちで組織を抜けていた。
しかし指導者のサムエルから「未来を悪夢に変えてはいかん」と諭され、
夢によく出てくるアンヘラを救うことを決意する。
アンヘラは金持ちの娘だが南米でボランティアをしている時にカルト的ゲリラ集団「ジャガー」に
拉致され、今では彼らと行動を共にしていた。
一方6年前にアドリアンの忠告を聞かなかったために妻子と視力を失った元刑事のエルヴェは
アンヘラの親からアンヘラ奪還の依頼を受けていた。
こうしてアドリアンとエルヴェはそれぞれアンヘラに接近していくが・・・・。
「カルメン」のレオナルド・スバラグリア主演、共演は「オープン・ユア・アイズ」「アナとオットー」の
ナイワ・ニムリ、「ニキータ」「ドーベルマン」のチェッキー・カリョ。
この「ジャガー」というゲリラ集団が何を目的にした組織なのかよくわからない。
特殊能力を持った組織「ユートピア」や拉致被害者奪還の専門家など、面白くなりそうな
素材が揃ってるのに未消化のまま。
アドリアンの精神的な苦悩にウエイトを置きすぎて、他の部分が希薄になった。
アンヘラの人物描写も掘り下げ方が浅いので、なぜ彼らと行動を共にしたのか、
なぜ簡単に目覚めたのか説得力がない。


「エクソシスト ビギニング」 アメリカ映画
10月5日19:00 完成披露試写、リサイタルホール(ギャガ・ヒューマックス)

第2次大戦中、メリン神父は目の前のナチスによる虐殺を止めることができず、
信仰心を失ってしまった。
そんなメリンに古美術商と名乗る男がケニヤで発掘された教会跡から古代の彫像を
見つけて欲しいと持ちかける。
その彫像に悪魔の影を見たメリンは発掘現場に向かうが、まわりで起こる不可解な死や、
少年ジョゼフの怪しげな行動など、何者かの力がこのあたりに広がっているとにらむ。
73年公開の「エクソシスト」の25年前の時代を描いた、「クリフハンガー」「ドリブン」の
レニー・ハーリン監督作品。
73年の「エクソシスト」の半分も怖くない。
主人公があっちこっち行くがどうもまどろっこしい。何かモタモタした感じ。
悪魔に乗り移られた特殊メイクも、リンダ・ブレアの方が怖かった。
はるかに技術的には進歩してるはずやのに、これではいかんやろ。
今何故「エクソシスト」なのかわからんし、続編作るねやったらもっと気合い入れて欲しかった。


「ピエロの赤い鼻」 フランス映画
10月5日15:30 ヘラルド試写室(ワイズポリシー)

14歳のリュシアンは日曜日になると憂鬱になる。
それは小学校教師のパパ、ジャックが公民館でピエロに扮して人々の笑いものになるからだ。
くさるリュシアンにジャックの昔からの友人アンドレは、何故パパがピエロになったかを話し始める。
ドイツ軍占領下のフランス。
ジャックとアンドレは美しい娘ルイーズの気を引くためレジスタンスとなって、
鉄道のポイント切り替え所を爆破する。
怒ったドイツ軍は4人の人質を取り、犯人が自首しないと4人を処刑するという。
人質の4人の中に選ばれてしまったジャックとアンドレは自首することも出来ず、
深い穴の中で他の二人と死の恐怖に震えていると、見張りについた元ピエロのドイツ兵が
赤い鼻を付けて彼らを和ませてくれたが、処刑の時は刻一刻と迫っていくのだった。
「クリクリのいた夏」のジャン・ベッケル監督作品。
ジャックとアンドレの二人が昔のシーンでもすでにじじい。
現代のシーンで老けメイクをしてるがあまり変化がない。
捕らわれた4人を前におどけてみせる元ピエロのドイツ兵というのも唐突すぎる。
それまでにもう少し交流がないと説得力がない。


「スウィングガールズ」 日本映画
10月1日13:45 ナビオTOHOプレックス

友子達は落ちこぼれの高校生。
野球部の応援に欠かせない吹奏楽部が集団食中毒で急遽部員を募集することになった。
補習授業を抜け出す名目に吹奏楽部に入った友子達だが、練習するうちにジャズの魅力にハマり、
吹奏楽部とは別にビッグバンドを結成。
楽器の調達、練習場所、指導者など幾多の問題を克服して市の音楽祭を目指すが・・・。
「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督の青春グラフィティー。
お話はセオリー通りに進み、途中ちょっとはしょりすぎの展開もあるが、観終わって
「あー面白かった」と言って帰っていくような、普通に面白い映画。
竹中直人が出ているが、またかという感じ。
この人を絡ませずにこの種のコメディータッチの映画って撮れんもんかなぁ。


「ターミナル」 アメリカ映画
9月30日19:20 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(UIP)

東欧の小国から来たビクターはニューヨークのJFK空港の入管で自分の国がクーデターで消滅し、入国できないと知る。
法の隙間に迷い込んだビクターは帰国も入国も出来ず、言葉のわからないアメリカの空港の中で足止めを食わされ、
何ヶ月も生活させられるが、空港で働く周りの人達と交流が芽生え(恋も!)、
彼の渡航目的が明かされていく。
スピルバーグとトム・ハンクスが組んだハート・ウォーミングな映画。
コメディーっぽい映画だから都合のいいところもあるし、憎まれ役もそれほど悪人にはならないが、
中途半端になってしまった。
面白いけど、スピルバーグらしい冴えがない。
スピルバーグは名前のあるただの達者な監督になってしまったよう。
共演はキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。


「コラテラル」 アメリカ映画
9月30日13:00 UIP試写室(UIP)

マックスはロスの街を熟知したタクシードライバー。いつもなら客はただ後部座席に次々流れていく存在だが、その日は違った。
アニーという知的な女性と会話を交わすうちお互いに惹かれる物を感じた。
そして次に乗ったのがヴィンセントと言う紳士。
土地勘のないロスで朝までに5人の人間と会わないといけないと、運転の腕を見込まれ
高額のチップで一晩雇われることになったマックス。
ところがヴィンセントはプロの殺し屋で朝までに5人の人間を次々に殺すためにマックスを
雇ったとわかる。
銃で脅され渋々車を走らせるマックスだが、やがてヴィンセントに抗う勇気が芽生えてくる。
トム・クルーズ主演、「ヒート」「インサイダー」のマイケル・マン監督作品。
始めから殺しの映像を見せず、小出しに見せるところがうまい。
徐々にガンアクションを見せ、半ばで激しい銃撃戦を配置する。
これでクルーズの凄みが増した。
このあたりにくると二人の心理と警察などが絡み合ってヒートアップ。マン演出のうまさ。
クルーズは今までにないクールなキャラでかっこいい。
齢を重ね渋みを増して、ちゃんとそれに見合ったキャラを見つけて仕事している。
この路線なら、少なくとも後3年は安泰。
クルーズ相手に存在感を示したジェイミー・フォックスもこれから仕事が増えること間違いなし。
ラストはターミネーターみたい。


「エニグマ」 ドイツ・イギリス映画
9月18日 ビデオ(WOWOWにて収録)

第2次大戦下のイギリス、失恋で憔悴して休暇を取っていた数学者のジェリコは暗号解読センターに呼び戻される。
連合国の船団がドイツ軍のUボートに狙われていると分かり、ドイツの暗号解読機エニグマの解読が急務となった。
しかしジェリコは謎の失踪をした恋人クレアに何か秘密があると彼女のルームメイト、ヘスターの協力のもと、
独自の捜査を開始する。
「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」のマイケル・アプテッド監督作品。
エニグマ暗号の解読を縦糸に恋人の謎の失踪事件を横糸に複合的に組み立てられたミステリーだが、
ややこしいくてわかりにくい。
出演者も魅力がなくTVドラマのよう。
「タイタニック」のケイト・ウィンスレットも肥えて、見終わるまでそうと気付かなかった。
ラストも盛り上がりに欠ける。


「春夏秋冬そして春」 ドイツ・韓国映画
9月17日13:30 東宝試写室(エスピーオー)

山奥の湖に浮かぶ寺に老僧と幼子が暮らしていた。幼子が悪戯で魚や蛙、蛇に石を結んで遊んでいるところを老僧が見つけ、幼子の背中に石を背負わせる。
「お前が石を結びつけたもの達が1匹でも死んでいたら、お前の心は一生石を背負い続けることになる」と。
泣きながら悪戯した魚たちを探すが、蛙以外は死んでいた。心に石を背負った幼子がやがて思春期になり、青年になり壮年になり・・・。
それぞれの時代に苦難は待ち受け、人間の業を知る。
「魚と寝る女」「悪い男」のキム・ギドク監督作品。
四季に人生を重ね合わせて人間の業を描いているが、湖に浮かぶ寺や門、
殺人を犯した男の怒りを鎮めるために床に彫る般若心経など大道具・小道具が実に象徴的にうまく使われている。
全体的なトーンは静かだが、心の内面の激しさはひしひしと伝わってくる。
キム・ギドクは人間の業の深さを描くのが実にうまい監督。
老僧役のオ・ヨンスも実にいい味を出している。
ラスト近くでギドク自身も出演しているが、靴ズレで足が血だらけになっているのには苦笑い。


「モンスター」 アメリカ映画
9月9日15:30 東映試写室(ギャガGシネマ)

住むところもなく身体を売ってその日のわずかな生活の糧を得ていたアイリーンは、
同性愛者のセルビーと出会い、いつしか愛し合うようになる。
人から初めて愛される喜びを知ったアイリーンは生活力のないセルビーと暮らすため、
せっせと身体を売るが、客のむごい仕打ちに耐えかねて殺人を犯す。
それからはタガがはずれたように、客を誘っては殺害して金を奪うのだった。
この作品が長編デビューとなるパティー・ジェンキンス監督作品。
主役のシャーリーズ・セロンは13kg体重を増やし、不細工な特殊メイクでアイリーンを演じ
見事アカデミー主演女優賞を獲ったが、何もこんなにきれいな人が
わざわざよごしてこの役を演じる必要がどこにあるのかと首をかしげる。
もっとそれらしい人がいただろうに。
芝居としてはセルビー役のクリスティーナ・リッチ(「アダムス・ファミリー」の娘役)の方がうまいし、
久しぶりのブルース・ダーンもいい味出してる。
実在の女死刑囚を不幸な子供時代から振り返るのではなく、セルビーと出会ってからの物語にしたことで
コンパクトにまとまり見やすくなった。


「シークレット・ウインドウ」 アメリカ映画
9月8日19:00 完成披露試写、リサイタルホール(ソニー)

小説家のモートは愛人の出来た妻との離婚問題に悩まされ、別荘で仕事もせず、
ひたすら眠りこけていた。
ある日モートの前にシューターという男が現れ、自分の小説をお前が盗作したとなじる。
モートには身に覚えのないことだが、やがてストーカーとなったシューターの行動はエスカレートし、
殺人事件まで発展する。
スティーブン・キング原作、ジョニー・デップ主演作品。
登場人物が少なく、ジョン・タトゥーロやチャールズ・S・ダットンら個性派も出てるが、
やはりデップの独壇場。
観ながら「こうしたらええのに」と主人公の行動にイライラさせられるが、それはキングの仕掛けに
まんまとはまった証拠。
舞台劇のようなキングの小品ミステリー。


「バイオハザードU アポカリプス」 アメリカ・カナダ・イギリス映画
8月27日20:50 完成披露試写、梅田ピカデリー(ソニー)

Tウイルスに冒され封印された研究所をアンブレラ社が扉を開いたため、ラクーンシティーにゾンビが
蔓延してしまった。
街を封鎖したがシティーの外への感染を恐れたアンブレラ社はシティーに核爆弾を投下することを決める。
しかしウイルスを開発した博士の娘が小学校に取り残されていると分かり、博士は街にいるアリス達に
娘の救出を交換条件にシティーからの脱出を約束する。
ゾンビがうごめく街を小学校に向けて出発するアリスと特殊部隊のジル達。
しかしアンブレラ社はこの状況下で密かに研究していた「ネメシス計画」の実験を開始した。
人気ゲームの映画版第2弾。
前半は大量発生したゾンビとの戦いで、後半はまるでエイリアン・シリーズのような展開。
ゾンビはわかるが途中で得体の知れない物が襲ってくる。何者なのかこのあたりちょっと説明不足。
前作もそうだったが、あちこちのSF映画のアイデアをちょこちょこ借用して作られた映画で、
新鮮味が全然無い。
主演は前作に引き続きミラ・ジョヴォヴィッチ。


「ヴィレッジ」 アメリカ映画
8月26日19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(ブエナビスタ)

1897年、ペンシルバニア州のうっそうとした森に囲まれた村。
住民約60人は、自給自足で大きな一つの家族のように協力し合い平和に暮らしていたが、
村には掟があった。
村を取り囲む森にはけっして足を踏み入れない。森は「彼ら」の土地だから。
赤い色は不吉な色だから村から排除する。森に近づくときは黄色い物を身にまとう・・・など。
しかし青年ルシアスが瀕死の重傷を負ったとき、ルシアスを愛する盲目のアイヴィーは
「彼ら」の土地である禁断の森を抜け町に薬を取りに行くことを決意する。
「シックス・センス」のM・ナイト・シャマラン監督作品。
シャマラン監督得意のどんでん返しが何カ所かに仕込まれているが、
キャスティングについても巧妙な罠が仕込まれているように思う。
それは「サイン」でメル・ギブソンの弟役で登場したホアキン・フェニックスを起用したこと。
「森に何かがいる」というシチュエイションにホアキンである。
観客は知らないうちに「サイン」のような展開に想像が誘導される。
そこに落とし穴が仕掛けられていた。
シャマランはストーリーの巧みさだけでなく、キャスティングまで使って巧妙に罠を仕掛ける、
どんでん返しのうまい監督。


「ハイウェイマン」 アメリカ映画
8月25日15:30 ヘラルド試写室(ヘラルド)

レニーは5年前妻をひき殺した犯人をずっと追っている。
犯人はキャデラック・エルドラドで人をひき殺すことで快感を得る、サイコ・キラーだった。
犯人に次なる標的と狙われたモリーをレニーは間一髪の所で助けた。
モリーは交通事故で家族を亡くした深い傷を心に負っていた。
同じ傷を持つ者同士モリーとレニーの心は近づくが、レニーはモリーをおとりに犯人をおびき出そうとする。
「ヒッチャー」のロバート・ハーモン監督、「パッション」のジム・カヴィーゼル主演作品。
上映時間1時間22分という、ひじょうにコンパクトでわかりやすいお話。
犯人の異様な風貌も狂気感を増大させたが、どうしても「マッド・マックス」を思い出させてしまう。
ラストシーンは「あんたがそんな事したらあかんやろ」と、思わず突っ込んでしまうような終わり方。


「サンダーバード」 イギリス映画
7月16日19:00 完成披露試写、リサイタルホール(UIP)

トレーシー一家は、元宇宙飛行士で大富豪のパパを中心に5人の息子達と国際救助隊を組織していた。
かつて国際救助隊に助けてもらえず逆恨みしたフッドは、救助隊の基地を見つけ出し、
宇宙基地の5号をミサイル攻撃した。
5号救出に向かうためメンバーは宇宙に飛び立ったが、その隙に基地は乗っ取られ、メカが奪われる。
サンダーバードのメカで世界中の銀行を襲い、サンダーバードの信用を落として、自分が巨万の富を得る、
一石二鳥の作戦を開始したのだった。
人気人形劇の実写版だがトレーシー一家に個性も華もない。
CGもこのぐらいでは世間は驚きも感心もしない。
物語もこのネタは2作目のネタであって、1作目は純粋に災害救助でハラハラさせるべき。
ペネロープも青臭く、レディーに見えない。
世界中の「サンダーバード」ファンをがっかりさせた映画。


「ブラザーフッド」 韓国映画
7月15日 ナビオTOHOプレックス

1950年のソウル。父亡き後ジンテは頭のいい弟のジンソクに、
何とかいい大学に行って立派な人間になって欲しいと、屋台で働く母とジンソクの学費を
稼ぐため靴磨きをしながら家計を支えてきた。
ところが朝鮮戦争が勃発し、二人は徴兵されてしまった。
悲しみにくれる母にジンテは弟を無事連れ帰ると約束をする。
しかし戦場は地獄絵図のような激しい戦闘で仲間はバタバタと死に絶える。
弟を少しでも安全な任務に就かせるため、自ら危険な任務をかって出るジンテに、
弟のジンソクは兄に反発する。
「シュリ」のカン・ジェギュ監督の戦争巨編。
「プライベート・ライアン」を思わせる激しい戦闘シーンだが、ハリウッドほど予算がないので、
「シュリ」同様、手持ちのカメラでわざと画面をブレさせ、細かいカットの繋ぎで臨場感を出している。
あまり我々が見ることのなかった朝鮮戦争を描いた珍しい映画といえる。
ただ激しい戦闘のまっただ中にいて、兄弟だけがあまりにも無傷なのが、都合よすぎるように思える。
退屈せずに観られたのは、兄弟愛という縦糸と、金を掛けた戦闘シーン、同じ民族同士戦うことの悲しみなど、
ちゃんと描かれているからだと思う。


「ヴァン・ヘルシング」 アメリカ映画
7月6日19:20 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(ギャガ・コミュニケーションズ、ヒューマックス)

19世紀、街の闇に潜む怪物達と戦う一人の男がいた。
彼の名はヴァン・ヘルシング。バチカンの密命を帯びたモンスター・ハンターなのだ。
ヘルシングはドラキュラ一族を倒すため兵器開発のエキスパート、修道僧のカールとトランシルバニアに派遣される。
代々ドラキュラと戦い続けているヴァレリアス家の兄妹と共にドラキュラ一族との死闘が始まった。
「ハムナプトラ」のスティーブン・ソマーズ監督と「X−メン」のヒュー・ジャックマンがタッグを組んだ
ダーク・ヒーロー物。
ドラキュラだけではなく、狼男、フランケンシュタインの怪物、ジキルとハイドなど、モンスター総出演。
全体的にテンポはいいし、VFXもよくできてるけど、もうそんなに目新しさもない。
ヒーローに007のQのような兵器開発者を付け、秘密兵器の味付けもしてあるが、
ガス圧で機関銃のように連続発射できる弓矢なのに、ちゃんと弓も張ってるのは何のためか?
ヒュー・ジャックマンは「X−メン」と言い、この作品と言い、怪物と戦う兄ちゃんのイメージが定着してしまった。


「マッハ!」 タイ映画
7月6日13:00 ヘラルド試写室(クロックワークス、ギャガ・ヒューマックス)

タイの寒村で村のご神体である仏像の首が盗まれた。
仏像の首奪還の命を帯びたのはムエタイの達人ティン。
バンコクで同郷のジョージを訪ねるがティンのなけなしの金を使い込んで一文無しになってしまう。
仕方なくティンは闇の格闘場で戦う羽目になってしまったが、その格闘場のボスこそ仏像の闇の
商人だった。
ムエタイ(キックボクシング)の格闘アクションだが、「1,CGを使いません」
「2,ワイヤーアクションを使いません」「3,スタントマンを使いません」
「4,早回しを使いません」というのを約束事にして撮ってる。
単純な話やけど上の4つを本当に使ってないので緊迫感があるし本当に痛そう。
偽闘もアメリカンスタイルの殴り合いや、カンフーと違う殺陣は新鮮で本当の格闘らしい。
主人公は本当に強いと思ってしまう。技のキレだけでなくすごい運動能力。
見せ場は何度もスローのリプレイがあるが、いつもならうっとうしく感じるのに、
この映画は「もう一度みたい」とリプレイを観客が求める。
3輪タクシーのカーチェイスなどタイらしいカースタントも折り込み楽しめた。
この種の映画で「燃えよドラゴン」以来のワクワク感を味わった。
この映画は世界でヒットするやろうけど、主人公のトニー・ジャーはいかにもタイ顔なので
アクションスターとして世界で受け入れられるやろか。


「プリンス&プリンセス」 フランス映画
7月5日13:30 東映試写室(ワイズポリシー、ツイン)

呪いをかけられたプリンセスを救うため111個のダイヤを草原から探すプリンス。
女王に季節はずれのイチジクを献上して褒美をもらう少年を嫉んで悪巧みをする行政官。
魔女と勇敢な青年など、6つのお話からなる影絵アニメ。
監督は「キリクと魔女」のミッシェル・オスロ。
製作費が無く苦肉の策として作られた影絵のテレビアニメから6編を選んで1本の映画にした。
映画館で少年と少女が映写技師と話を考え芝居をするという設定で語られるオムニバスの物語。
フルCGの緻密なアニメ全盛の時代に、影絵という単純な平面の絵は逆に見る者の想像力をかき立てる。
話も独特のテンポでユニーク。
全体で1時間10分しかない映画なのに途中で「1分」の休憩が入り、その間フクロウの首が一周する映像が流れる。そんなしゃれっ気もある。
日本語の吹き替えは原田知世と松尾貴史。


「リディック」 アメリカ映画
7月1日19:00 完成披露試写、リサイタルホール(東芝エンタテインメント)

5つの惑星から殺人と脱獄で指名手配されてるリディックを追って、賞金稼ぎがやって来た。
自分に多額の賞金を掛けた相手がヘリオン第1惑星にいると聞き、彼に賞金を掛けたエーテル生命体エアリオンと会う。
エアリオンはリディックが強大な力で次々に惑星を支配していくロード・マーシャルに滅ぼされた一族ではないかと睨み、
ロード・マーシャルから宇宙を救ってくれと懇願する。一笑に付すリディックだが、ロード・マーシャルの魔の手は
ヘリオン第1惑星に向けられていた。
「ピッチ・ブラック」のヴィン・ディーゼル、デヴィッド・トゥーヒー監督が再びタッグを組んだ「ピッチ・ブラック」の続編。
それぞれのシーンは「エイリアン」「砂の惑星」「ディープ・インパクト」など、いろんなSFから拝借した
アイディアだけど、それぞれ工夫がしてあって結構楽しめた。
ヴィン・ディーゼルは声がいい。タフでカリスマ性がある。肉体系アクション俳優として今一番ノッている。
このキャラクターでまた撮ると思う。


「ワイルド・レンジ 最後の銃撃」 アメリカ映画
6月28日18:30 リサイタルホール(日本ヘラルド)

カウボーイのボスとチャーリーは十数年来のパートナーとして牛の群れを追ってきた。
今回の旅も大男のモーズとあどけなさが残るバトンを従えて、牛を追いながら草原から草原を移動する。
ところがある土地でモーズが因縁をつけられ悪徳保安官に痛めつけられ捕まってしまった。
町を牛耳るバクスターが自分の土地を勝手に通ることを許さないのだ。
仕返しをしに行ったボスとチャーリーの留守中にモーズは殺され、バトンも瀕死の重傷を負う。
復讐のためボスとチャーリーは町に乗り込んでいくのだった
ケビン・コスナー主演・監督の西部劇。
ロバート・デュバルとカウボーイのコンビを組んで、悪人達と決闘する。
ラスト20分の西部劇史上に残るリアルなガン・ファイトというふれこみやった。
確かに今までの西部劇のように簡単に弾は当たらず、泥臭い撃ち合いでリアルかもしれんけど、
物語が実に古くさい。
わかりやすい勧善懲悪のストーリー展開で、主人公達の恋物語も深みがなく
男臭さに華を添えるためのセオリーと言った感じ。
退屈はせえへんかったし主役二人は渋くていいけど、今時この「昔ながらの西部劇」と言った感じの物語はどうかと思う。
共演はアネット・ベニング。


「天国の青い蝶」 カナダ・イギリス合作映画
6月25日15:30 ヘラルド試写室(東芝エンタテインメント)

脳腫瘍で余命いくばくもない昆虫好きの少年が幻のブルーモルフォを捕まえたいと昆虫学者を訪ねる。
情にほだされ母親と3人で南米のジャングルにおもむく。
身体の不自由な少年を背負い毎日ジャングルを探し、ようやくブルーモルフォを見つけるが、
もう少しと言うところで学者は重傷を負い、少年は不自由な身体で助けを呼びに戻るが日没で
動けなくなる。
実話をもとにした映画らしいが、今まで歩けなかった少年が怪我した学者の助けを呼ぶためヨタヨタ歩く。
何や無理したら歩けるんやんか。
今まで人におぶってもらってばかりで歩かなかったくせにと思ってしまう。
あんなに苦労した蝶が簡単に現れたり、奇跡が起こったり。
「〜真実の物語〜」と書かれているがあまりにも陳腐な話。
学者役はウィリアム・ハート。


スパイダーマン2」 アメリカ映画
6月24日19:20 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(ソニー)

スパイダーマンとして日夜悪と戦うピーターは、その忙しさから学業もバイトもうまくいかない。
おまけに自分と関われば危害が及ぶと愛するMJに本心をうち明けられない。
女優として成功したMJは煮え切らないピーターに婚約したことをうち明ける。
失意のピーターはスパイダーマンのコスチュームを捨て、平凡な人間ピーターの生活を取り戻そうと
するが、ロボットアームを背中に付けたマッド・サイエンティスト、ドック・オクが立ちはだかる。
漫画を原作にしたシリーズ第2弾。
今度の敵は4本のロボット・アームを背中に付けたタコ男。
クモ対タコの対決は面白いが、悩めるスパイダーマンの内面を描いている部分が長く
少しダレるところもある。
物語は漫画ノリで進むのにそこだけシリアスにされてもと言う感じ。
もうちょっと内面描写をコンパクトにすれば2時間内に収まったはず。
「1」にも登場したヒロインが美しくないので、魅力半減。
「3」の製作もすでに決まっていて、最後はちゃんと続編を匂わせてる。


「ステップ・イントゥ・リキッド」 アメリカ映画
6月24日13:30 東映試写室(グラッシィ)

世界中のサーファー達を追ったドキュメンタリー映画。
大きな波に挑むサーファーを音楽で綴るだけのサーフィン映画ではなく、
何故彼らが波に魅せられるのか、サーフィンとは何なのか、サーファーの精神に迫った映画。
ハワイやロスの大波、海のない内陸部の巨大な湖で楽しむ淡水サーフィン、
大型タンカーが作る波を利用してのサーフィン、従軍してたベトナムに30年ぶりに息子と行き、
ベトナムにたった10人しかいないサーフクラブと交流する男など。
世界中でいろんな形でサーフィンを楽しむ人達をインタビューを交えながらサーフィンの真髄に迫る。
カメラが浜・海面・海中・ヘリとありとあらゆる所から撮影し、膨大なフィルムを編集して迫力ある映像を作り出した。
伝説の大波に乗るため150kmもの沖合に船で出かけていきサーフィンする男達は、もう酔狂としか言いようがない。


「バレエ・カンパニー」 アメリカ・ドイツ映画
6月23日13:00 ヘラルド試写室(エスピーオー)

ジェフリー・バレエ・オブ・シカゴのダンサー・ライは、マイラの怪我で主役に抜擢される。
公演当日、野外劇場は途中から激しい雷雨に見舞われるが、それすらもあたかも舞台装置
であったかのようなライのすばらしいダンスに、観客のみならずカンパニーの主宰者ミスターAも賛辞を惜しまなかった。
新星誕生の評に酔いしれる間もなく、次の作品のリハーサル、公演、バイトと息つく暇もないライ。
寂しさを紛らわせるため深夜立ち寄ったバーでコックのジェフと出逢い、ジェフと会う短い時間だけが
ライにとって唯一落ち着ける場所だったが、少しでも劣る人間は振付師の厳しい目でふるい落とされ、
どんなベテランダンサーも容赦なく切り捨てられ、みんなが主役の座を狙っている。
ライの心は消耗していくのだった。
ロバート・アルトマン監督のバレエ映画。
実在のバレー団を舞台にした物語で、ストーリーはあるけどメインはバレエの舞台。
それが斬新ですばらしくてセクシー。「オール・ザット・ジャズ」のバレエ版といったところ。
すばらしい舞台の合間に貧しくてバイトするダンサーや狭いアパートに何人も寝泊まりする仲間。
足のまめやケガに苦しみ、振付師の厳しい目で役の交代を言い渡される。
主役とていつ交代させられるかわからず、リハーサル中もずっと代役となる人間が同じダンスを隅で稽古して虎視眈々とその役を狙ってる。等身大のダンサー達の物語。
このオリジナルの舞台が観たい。


「シュレック2」 アメリカ映画
6月22日19:30 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(UIP)

フィオナ姫とめでたく結婚したシュレックのもとにフィオナ姫の父から舞踏会の招待状が来る。
堅苦しいことが嫌いなシュレックを何とか説得したフィオナ姫は生まれ故郷の「遠い遠い国」に戻るが、
娘の結婚相手が見にくい怪物と知ってフィオナの父である国王はシュレックを亡き者とせんと刺客を送り込む。
一方、妖精のゴッドマザーは自分の息子のチャーミング王子こそフィオナの結婚相手にふさわしいと
陰謀を画策する。
人気フルCGアニメの続編。
人物の質感が前にも増して実に細かいところまで描き込まれている。
フィオナの髪の1本1本の質の違い、妖精のゴッドマザーの皮膚のシミなど病的なこだわりがうかがわれる。
新キャラ「長靴を履いた猫」の必殺技は「アイフル」のクーちゃんみたいで、日本でもウケる事間違いなし。
このシリーズはディズニーのような子供から大人までというターゲットではなく、ギャグの作りや「間」が大人向け。
いつもは洋画は字幕派だけどフルCGアニメに限って言えば吹き替え版がお勧め。
目を字幕に捕らわれることなく、存分に細かなCGの隅々まで堪能するため。


「ディープ・ブルー」 イギリス・ドイツ合作映画
6月22日13:30 東宝試写室(東北新社)

様々な海洋生物たちを追ったドキュメンタリー。
鯨の子供を狙うシャチと親鯨の攻防、夜の珊瑚礁で獲物を狙うハンター鮫、深海の不思議な生物達。
マグロに襲われる小魚達は大きな群れでかわそうとするが、空からは水鳥たちも飛来して上から襲いかかる。
なんとか難を逃れても今度は鯨の大きな口で一網打尽。
大海原で生きていくことの厳しさをまざまざと見せつけられる。
ドキュメンタリーだけど鮫の不気味さに身の毛がよだち、アクション映画を見てるようにハラハラ・ドキドキする。
音楽と映像だけでまったく退屈させない。
編集のうまさもあるが、それだけ膨大なフィルムを費やしたと言うこと。
実に多方面でじっくり時間と金を掛けて撮られた驚愕のドキュメント。
同じようなドキュメントで渡り鳥を追った「WATARIDORI」は、鳥の種類は変わっても
結局同じような映像になっていたが、こちらはバリエーションが豊富なだけに最後まで飽きさせない。


「ターミネーター3」 アメリカ映画
6月20日20:00 WOWOW

自分の運命の重さから全国をさすらうジョン・コナー。
「審判の日」は回避されたかと思われたが、またしても未来から女性の姿をした最新型ターミネーター「T−X」が現代に送り込まれる。
すかさずコナーを守るため旧型ターミネーターが送り込まれるが、T−Xは前回のT−1000をはるかにしのぐ
強敵だった。
シュワルツェネッガーの人気シリーズ第3弾。
アクションなどはド派手でそこそこ見せるが、新型ターミネーターがグレードアップしたとはいえ
前作ほどのインパクトがない。
何よりコナー役のニック・スタールとヒロインのクレア・デインズにまったく魅力がない。
これでは守ってやりたいと観客に思われないので、冷めて見てしまう。
シュワちゃんもしわを隠して頑張っているが、もうこれがこのシリーズの限界だと思う。


「カレンダー・ガールズ」 イギリス映画
6月17日16:00 ナビオTOHOプレックス

英国の田舎町。クリスと親友のアニーは教会の婦人会で今日もまた退屈な会合に参加している。
ある日アニーの夫ジョンが白血病で他界し、悲しみに暮れるアニーのため、
クリスはジョンが入院していた病院にソファーを寄付することを思い立つ。
しかし唯一の資金集めのカレンダーではたいした収益も出ず、クリスは起死回生の資金集めとして
自分たちのヌードカレンダーの販売を提案する。
やがて賛同者も増え、婦人会の反対など障害も乗り越えて販売にこぎ着けたが、
あまりの反響の大きさにクリス達はとまどうのだった。
実話を元にした映画。
ただのサクセス・ストーリーではなく、成功してからの問題も描かれ、薄っぺらなドラマにならないようまとめた。
イギリスののどかな田舎の風景もいい。
おばちゃん達のかわいさでこの映画はもっている。観客の共感無しでは成り立たない話だから
これは大事なポイント。
英国らしい映画。


「トゥームレイダー2」 アメリカ映画
6月3日 DVD

ギリシャで起こった地震の影響で海底に眠っている幻の神殿が姿を現すと聞き、
トレジャー・ハンターのララ・クラフトは現場に急行する。
海底の神殿に一番乗りしたララはメダリオンと黄金の玉を発見するが、
何者かに奪われてしまう。
その玉は実は「パンドラの箱」の所在地を示す物だったのだ。
ララは人類に災厄をもたらす「パンドラの箱」を悪人の手に渡るのを阻止するため、
追跡を開始する。
人気ゲームの映画版、シリーズ第2弾。
主演は前作に引き続きアンジェリーナ・ジョリー。監督は「スピード」のヤン・デ・ボン。
やってることはまんま「インディー・ジョーンズ」で、主人公を女に置き換えただけで
「インディー」シリーズなきあとやりたい放題。
たいしたアイディアもなく手慣れた監督に任せて「カウチ・ポテト」向けのアクション映画を
撮っただけ。


「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」 アメリカ映画
6月3日 DVD

テロリストに誘拐された政府要人救出のためモンゴルへ潜入したエンジェル達。
要人を救出したものの、証人保護プログラムで守られた重要証人のデータ・バンクへ
アクセスする鍵となる指輪を奪われてしまった。
指輪を取り戻すべくテロリストを追うエンジェル達だが、影に大きな陰謀があることを嗅ぎつける。
人気シリーズ第2弾。
派手なアクションなどはスケールアップしてるが、所詮可愛子ちゃんがCG合成の前で演技してるだけで緊迫感がない。
他の映画も合成だけど、この映画は特に嘘くささが感じられる。
バイクやカンフーなど、あの手この手でアクションをちりばめているがノリが軽すぎてあほくさい。
やっぱりテレビ番組の延長線上の映画やなぁ。


「スパイキッズ3−D ゲームオーバー」 アメリカ映画
5月30日 DVD

新しいゲームソフト「ゲームオーバー」が大ヒットし、世界中の子供達がゲームに没頭していたが、
実は子供達を洗脳して世界征服をしようとするトイメーカーの策略だった。
秘密諜報組織OSSはスパイキッズのカルメンを潜入させるが、ゲームのバーチャル空間に
捕らわれてしまった。
姉を救出すべく今は探偵となったジュニは自らもゲーム空間に潜入するのだった。
人気シリーズ第3弾。「ジョーズ」もそうだったけどシリーズ3本目は立体映画「3D」にするパターン。
DVDで見たせいかそれほど飛び出して見えなかった。
話も「1」「2」と変わりばえもせず、悪役のスタローンも「バットマン」のジャック・ニコルソンほど
存在感がない。
スタローンはもうどんな役やってもあかんな。


「ドーン・オブ・ザ・デッド」 アメリカ映画
5月27日14:20 千日前セントラル

看護婦のアナが夫と就寝中、寝室に隣の家の少女が血まみれで入ってくる。
驚いた夫が近づくと少女は夫ののど笛に噛みつき、夫は息絶える。
しかし死んだはずの夫が今度はアナを襲い、命からがら家の外に脱出すると、
外では隣人達が殺し合う阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられていた。
謎のウイルスによって死者が蘇って凶暴化し、襲われた者がまた死んで凶暴化する。
わずかに残った生存者達はショッピングモールに立てこもるが、警備員CJらに支配され、
囚人のような扱いを受ける。
やがてモールはゾンビ達に包囲される。
ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」のリメーク。
冒頭の少女が襲ってくるところは今までのゾンビと違って素早く、恐怖感を感じるが、
ゾンビの集団になってからは目新しさが感じられず昔のまま。
初監督ザック・スナイダーは無難な演出だけど、ただそれだけで突出したうまさは感じられない。
CM出身らしくラストでビデオを効果的に使うが、これも「ブレア・ウィッチ」風。もう手垢にまみれた手法。


「あなたにも書ける恋愛小説」 アメリカ映画
5月26日13:30 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ)

アレックスは2流の恋愛小説作家。ところがギャンブル好きでギャングから借金があり、
30日以内に次回作を書いてその金で返済しないと命がない。
仕事道具のパソコンをギャングに壊されたアレックスは、速記者を雇い口述筆記で
小説を完成させようともくろむ。
雇われてきたエマとアレックスは性格が合わず、おまけにスランプのアレックスはアイデアも
出ず、作業ははかどらない。
やがて二人で協力し合いながら執筆活動は進み、二人の間にいつしか好意を越えた感情が芽生える。
「10日間で男を上手にフル方法」のケイト・ハドソン主演。監督は「恋人たちの予感」のロブ・ライナー。
まず、主役の二人に魅力が無く感情移入できない。ケイト・ハドソンはメグ・ライアン系統を
狙っているようだけど、日本人には鈴木蘭々を思い出させる風貌。
相手役のルーク・ウィルソンもテレビ俳優のような安っぽい二枚目。
恋のライバル役ソフィー・マルソーの存在感に主役二人がかすんでしまう。
劇中アレックスの書く物語も陳腐で、それだけで話の半分が面白くなくなった。
セットも安物臭く、テレビドラマのよう。


「ウォルター少年と夏の休日」 アメリカ映画
5月21日13:00 ヘラルド試写室(日本ヘラルド)

母子家庭のウォルター君はおじさん達が大金を持ってると知って
夏休みの間おじさん宅に押しつけられる。
母親から大金のありかを探れと密命を受けたが、おじさん兄弟は偏屈で、
大金目当てのセールスマン達を銃で脅して追い返すような無茶者。
しかしウォルター君はおじさんの活劇めいた冒険話に想像力はふくらみ、うち解けていく。
ハーレー・ジョエル・オスメント、マイケル・ケイン、ロバート・デュバルの心温まる物語。
ちょっと「ビッグ・フィッシュ」に似た所もあるけど、オスメント君はやはり天才子役。
少し成長してえなり君のようになってるけど、「オスメント・スマイル」「オスメント・クライ」は健在で、
オスメントの泣きや笑いで観客の感情をコントロールする。
おじさん役のマイケル・ケイン、ロバート・デュバルもいい。
ラストはやはりハリウッド映画はこんな終わり方せなあかんねんなぁと思うけど、まぁよしとする。


「スイミング・プール」 フランス映画
5月19日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Gシネマグループ)

スランプの英国の女流ミステリー作家サラは出版社社長が所有するフランス南部の
田舎の別荘で執筆を始める。
ロンドンと違って太陽が降り注ぎ静かで邪魔も入らず創作意欲がわいて書き始めるが、
社長の娘と称するジュリーが別荘に来てから状況は一転する。
食い散らかし、毎夜男を引っ張り込む。
初めは疎ましく思っていたサラだが、ジュリーのまばゆいばかりの若さと奔放さに目が離せなくなっていき、
いつしか彼女のことを書き留め出す。
二人はだんだんうち解けるがジュリーは謎の部分も多く、やがて殺人事件が起こる。
シャーロット・ランプリング主演、フランソワ・オゾン監督作品。
舞台劇のようにほとんど別荘内で物語は進む。
ジュリーの存在が一つの謎で、その謎解きのクライマックスに殺人を配置した仕掛けはわかるが、
その後の展開が今ひとつ。
繊細に描いているけど、謎が残ったままの部分も多く、なんか見終わって消化不良。


「コールド・マウンテン」 イギリス・イタリア・ルーマニア合作映画
5月14日12:50 三番街シネマ

ノースカロライナ州コールドマウンテンにモンロー牧師が娘のエイダと赴任してきた。
教会建築にかり出された若者の一人インマンとエイダはお互いに惹かれるものを感じる。
南北戦争が始まり、出征するインマンはエイダに口づけし愛を告白する。
父が亡くなった後世間知らずのエイダは一人で生きていかなければいけない。
男勝りのルビーに助けてもらいながらたくましく生きていくが、女二人で生きていくには
あまりにも過酷な時代だった。
一方インマンも激しい戦闘で傷つき、軍を脱走してエイダの待つコールドマウンテンに向けて
命を賭けた旅が始まった。
ニコール・キッドマン、ジュード・ロウにレニー・ゼルウィガーがからむ。
監督は「イングリッシュ・ペーシェント」のアンソニー・ミンゲラ。
純愛映画なのだけど、次から次に二人を襲う障害が物語の中でいいバランスで襲いかかる。
激しい戦闘シーンも「どこかで見た戦闘」ではなく、オリジナリティーがあって見応えがある。
ミンゲラ監督のうまさ。
ゼルウィガーの役どころはおいしい。ちゃんとチャンスにアカデミー助演女優賞を獲った。


「テッセラクト」 タイ・イギリス・日本合作映画
5月12日13:30 ヘラルド試写室(アーティスト・フィルム、ファントム・フィルム)

タイ、バンコク。安ホテルの一室でイギリス人ショーンはドラッグの運び屋として連絡を待っていた。
組織のボス、シア・トウは対立組織からドラッグを奪いショーンに連絡するが、相手のボスから差し向けられた女殺し屋に襲撃される。
数名の部下を失ったものの女殺し屋を撃退したシア・トウは、ショーンにホテルでドラッグの引き渡しを告げる。
瀕死の女殺し屋は最後のチャンス、取引先のホテルで待ち伏せするが出血多量で意識はもうろうとしている。
ショーン、シア・トウ、女殺し屋、ホテルで働く手癖の悪い少年、子供心理学者など、全く交わるはずのない人間達が
同じホテルで繋がっていく。
「the EYE【アイ】」のオキサイド・パンが兄弟ではなくソロで監督している。
原作は「ザ・ビーチ」「28日後...」のアレックス・ガーランド。
主人公の感じる息の詰まるような蒸し暑さと密室感がちゃんと観客に伝わる。
「レイン」で見せた銃撃戦の映像のうまさはここでも健在で、やはりうまい監督。
タイトルの「四次元立方体(テッセラクト)」や謳い文句の「映像化不可能の原作」「視覚化せよ」などで
わかりにくい映画かと思ったけど、ちょっと脅しすぎ。


「愛しのローズマリー」 アメリカ映画
5月5日 ビデオ(WOWOWにて収録)

いい女ばかりにアタックしてはフラれるモテない君のハルに、女性の外見だけにとらわれてはいけないと、
自己啓発セミナーの講師が、ハルに催眠術をかけてしまう。
100kg超の巨漢女性ローズマリーを見て、スレンダー美人と思いこんだハルは猛烈にアタック。
初めはとまどっていたローズマリーだが、やがてハルの心にほだされていくが・・・。
グウィネス・パルトローに「スクール・オブ・ロック」のジャック・ブラック主演、「メリーに首ったけ」の
ボビー・ファレリ監督のロマンチック・コメディー。
ハルから見たパルトローはスレンダー美人だが、ちゃんとデブの歩き方をしてるのがいい。
まぁ、ほのぼのとしたコメディーだけど、ジャック・ブラックはコメディアンとしてアダム・サンドラーを
猛追。
かげりの見えたエディー・マーフィーのコメディー・スターの座につけるか。
最近のパルトローはスタイルを強調した映画ばかり出ているような気がする。


「トリプルX」 アメリカ映画
5月4日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ザンダーは命がけのパフォーマンス「Xゲーム」の画像をネット販売し、若者達のカリスマ的存在。
並はずれた身体能力と冷静さ、その度胸のよさに国家安全保障局が目を付け、
ザンダーをエージェントとしてスカウトする。
厳しい訓練をパスしたザンダーはテロ組織「アナーキー99」潜入のためプラハへ向かう。
「ワイルド・スピード」のヴィン・ディーゼルとロブ・コーエン監督が再びタッグを組んだアクション映画。
悪の臭いのするディーゼルに007をやらせたようなスパイ映画。
秘密兵器や美女の絡め方も007と同じ。
訓練シーンも派手でこれ自体がアクションシーンになってて飽きさせない。
まぁ理屈抜きで楽しむアクション映画やけど、それぞれのシーンはどこかで観たようなアクションの連続。
ヴィン・ディーゼルはB級アクションスターのグループから頭一つ出ているが、A級へステップアップできるか。


「ザ・ワン」 アメリカ映画
5月3日 ビデオ(WOWOWにて収録)

この宇宙は125のパラレルワールドからなり、125人の「自分」がそれぞれの世界に存在する。
多次元の「自分」を一人殺すとその分のパワーが身に付き、すべて抹殺してたった一人の「自分」と
なったとき、強大なパワーを持った「ザ・ワン」となる。
多次元宇宙捜査局捜査員のユーロウは「ザ・ワン」になるため、次元を越えて「自分」暗殺に乗り出す。
最後に残ったロスの保安官ゲイブは強力なパワーを持ったユーロウに命を狙われる。
「ロミオ・マスト・ダイ」「キス・オブ・ザ・ドラゴン」のジェット・リー主演。
命を狙っているのも狙われてるのもジェット・リーだからややこしい。
最後の対決はわかりやすく、それぞれ白黒のコスチュームで戦ってる。
そうしないとどっちがどっちかわからないから。
SFセットは昔のスタローン映画のようなチャチさやし、ワイヤーバリバリのアクションも
新鮮さがない。
ジェット・リーもジャン=クロード・ヴァン・ダムやスティーブン・セガールのようなB級アクション・スターの仲間入りか。


「サウンド・オブ・サイレンス」 アメリカ映画
5月1日 ビデオ(WOWOWにて収録)

精神科医のネイサンは同僚から分裂症のエリザベスという少女の診察を頼まれる。
少女は凶暴性を発揮するが、どうも分裂症の芝居をしてるのではとネイサンは
彼女の症状に疑問を抱く。
ところがある日、ネイサンの娘が誘拐され、何者かからエリザベスからとある番号を聞き出せと
脅迫される。
マイケル・ダグラス主演、ゲイリー・フレダー監督作品。
別に荒い作りでもないが、見終わってあまり印象に残らない。
マイケル・ダグラスが精神科医に見えないし、話にひねりがない。
何よりもダグラスのこの手の映画に少し飽きてきたのかも。


「オーシャン・オブ・ファイヤー」 アメリカ映画
5月1日13:20 角座

1880年、第7騎兵隊のスー族虐殺を目のあたりにしたカウボーイのフランクは酒浸りになり、
サーカスの曲乗りとして生計を立てている。
かつて愛馬ヒダルゴと数々のレースを制したフランクのもとにアラブの砂漠越えレースの話が舞い込む。
人生の再起をかけてレースに挑むフランクだが、行く手には容赦なく照りつける太陽、砂嵐、イナゴの大群、
そして陰謀が渦巻く過酷なレースだった。
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのヴィゴ・モーテンセン主演、「ジュマンジ」「ジュラシック・パーク3」の
ジョー・ジョンストン監督作品。
全体的な印象は「インディー・ジョーンズ」と「ハムナプトラ」を足して2で割ったような映画。
別に目新しいところもなく、たいした落ち度もない。
話もわかりやすく、そこそこ楽しめる娯楽映画。
ヴィゴ・モーテンセンにとっては、ちゃんと1枚看板で主役を張った映画として大事な1本。
 

「WATARIDORI」 フランス映画
4月29日 ビデオ(WOWOWにて収録)

生まれ故郷の北極を目指して長距離移動する北半球の渡り鳥を追った記録映画。
撮影に3年、製作費が20億円という記録映画にしては破格の金と時間をかけているだけに、
その映像は驚異。
飛んでる鳥の群れの中にカメラが入り込み、観客まで渡り鳥の仲間入りしたようで、
どうしてこんな飛んでる鳥を至近距離で撮れたのかと驚く。
「マトリックス」の映像を初めて見た時と同じような驚きがこのドキュメンタリーの映像の中にはある。
美しい風景と鳥の姿。制作者の心意気が伝わってくるが、いろんな鳥が登場するものの、
どうしても映像がワンパターンになってしまうので、所々に作為的な演出が見えてしまう。
記録映画としてこの演出はどうかと思う。


「ロスト・イン・トランスレーション」 アメリカ映画
4月28日15:30 ソニー試写室(東北新社)

ハリウッドスターのボブ・ハリスはウイスキーのコマーシャル撮りのため単身来日し、
撮影に入るが、日本人カメラマンとコミュニケーションがうまくとれず、時差ボケもあって
眠れぬ夜を過ごす。
エレベーターで出会ったシャーロットとバーで言葉を交わすボブ。
シャーロットはカメラマンの夫について東京に来たが、夫は忙しく一人寂しく街をうろついて
退屈を紛らわせていたが、刺激的で賑やかな街とは裏腹に疎外感を感じていた。
同じ気持ちのボブはシャーロットと意気投合。二人でクラブに行ったりランチをしたり東京を楽しもうとする。
この異国の地で二人でいるときが一番心が落ちつくと感じるようになった二人だが、
やがて帰国の日が近づいてきた。
ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン主演、ソフィア・コッポラ監督作品。
ソフィア・コッポラはこの映画でアカデミー脚本賞を獲得した。
毒々しいまでのネオンを好感度フィルムで撮影し、不夜城東京での孤独感をうまく観客に伝えた。
高級ホテルに投宿することで余計疎外感を増した。
大きな出来事は起こらないが、静かに二人の疎外感と心の接近を見せ、安易に二人を結びつけず、
危ういままで二人を見守るような視線はソフィア・コッポラ監督の繊細な演出の巧みさ。
外国人からは日本はこんな風に見えるんやと思うようなシーンもあって面白い。
ただ、アカデミー脚本賞を獲るほどの脚本かは疑問。


「レディ・キラーズ」 アメリカ映画
4月20日19:15 完成披露試写、梅田ブルク7(ブエナ・ビスタ)

敬虔なクリスチャンで堅物のマンソン夫人は一人暮らし。
そこへ下宿人としてやって来たのは紳士然とした大学教授ゴースウェイトだった。
マンソン夫人の眼鏡にかない下宿人となった教授は音楽の練習のため地下室も貸りるが、
練習にやってきた男達は音楽に無縁の顔立ち。
実は男達は偵察・格闘・トンネル掘り・爆薬のエキスパート達で、知能犯の教授の指揮の下
カジノ船までトンネルを掘り大金を盗もうという計画。
計画は成功したかに見えるがマンソン夫人が大金を見つけてしまう。
トム・ハンクス主演、コーエン兄弟監督作品。
「映画という名の<完全犯罪>」という謳い文句だったので楽しみにしていたが、
とんでもない駄作だった。
とにかく登場人物がことごとく間抜け。知能犯であるはずの教授までも大馬鹿者。
いくらコメディーでもこれでは笑えない。
観ていてだんだん腹が立ってくるほど。
コーエン兄弟も何故こんな映画を撮ってしまったんやろ。
オーソドックスなコメディーを撮ろうと思ったのかも知れないが、これではコメディーセンスを疑う。


「キル・ビル vol.2」 アメリカ映画
4月16日19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(ギャガ・ヒューマックス)

夫と子供を殺された元殺し屋ザ・ブライドは沖縄で伝説の刀師服部半蔵から名刀を譲り受け、
復讐の旅を続ける。
残る仇エド、エル・ドライバーも倒し、とうとうかつて愛したボスのビルに迫るが、驚愕の事実が明らかになる。
後編は場所をアメリカに移しての復讐戦。岩塩を詰めた散弾銃や棺桶での生き埋めなど随所に
面白いエピソードがあるものの、漫画チックな脱出方法や武道の師匠が漫画のようなキャラやし、怒りっぽくて全然人間が出来てない。
ここでも失笑がわき起こる。
魅力あるキャラクターが随所にいるのに残念。
そこまで外さずに、もっとちゃんと作ってくれたら最後まで楽しめるのに・・・。
この人のノリにはやはりついて行けない。
「パルプ・フィクション」ぐらいでとどめておいてくれたらもっと楽しめたのに。


「白いカラス」 アメリカ映画
4月16日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

大学教授のコールマンは生徒に発した言葉が差別発言ととられ、勇退前に辞職に追い込まれる。
そのショックで妻は亡くなりこの無念さを本にしてくれと、作家のネイサンを訪ねる。
スランプのネイサンはコールマンに自分で書けと勧めるがコールマンは足繁くネイサン宅に通ってくる。
やがて二人の間に友情が芽生え、コールマンはネイサンに最近出来た恋人のことを告白する。
恋人のフォーニアは大学で掃除婦として働いているが、養父から虐待を受け、ベトナム帰還兵の
夫からも暴力を受け、おまけに子供を火事で死なせてしまうという過去を心の奥底に閉じこめて
気丈に一人で暮らしていた。
実はコールマンの心にも閉じこめられた秘密があった。コールマンは肌が白く生まれた黒人で
そのことをひた隠しにして白人として生きてきたのだった。
お互いの傷口をなめるように二人は愛し合うが、フォーニアの別れた夫が復縁を迫ってくる。
アンソニー・ホプキンス、ニコール・キッドマン主演、「クレイマー、クレイマー」のロバート・ベントン監督作品。
心に大きな秘密と悲しみを抱えた二人を静かにじっくり撮っている。
原作の力もあるだろうけど、観客を退屈させずに心のひだを静かに描いていくには、
監督の力量が大きくものを言う。さすがベントン監督。
役者達も安心して監督に任せているような演技。
脇役人もエド・ハリス、ゲイリー・シニーズなど渋い役者を揃え、しっかりと物語を脇で支えている。


「キル・ビル」 アメリカ映画
4月16日 DVD

かつて暗殺者集団でエージェントとして働いていたザ・ブライドは結婚式当日に
ボスであるビル達の襲撃を受け、夫とお腹の子供を殺され、自らも昏睡状態に陥る。
5年後奇跡的に目覚めたブライドは自分を襲った仲間達に対し復讐の旅を始める。
クエンティン・タランティーノ監督、ユマ・サーマン主演作品。
B級映画大好きのタランティーノがネーム・バリューを使って思いっきりB級らしく作った
荒唐無稽なアクション映画。
銃があるのに何もわざわざ刀で斬り合いしなくてもと思うような場面や、大げさに噴き出す血しぶき、
あまりにも下手な日本語など失笑のオンパレード。
音楽の使い方も変やし、この映画はっきり好みが分かれる。
下世話なエピソードのいくつかは好きやけど、全体的なノリはついていけない。


「パピヨンの贈りもの」 フランス映画
4月8日15:30 東映試写室(東京テアトル)

8歳の少女エルザはシングルマザーのママとパリのアパートに引っ越してきた。
でもママは看護助手で忙しくて学校が終わってもなかなか迎えに来てくれず、いつも待ちぼうけをくわされる。
同じアパートに住むジュリアンは見かねて自分の部屋にエルザを連れ帰る。
ジュリアンは引退した時計職人で一人暮らし。蝶の蒐集家で幻の蝶「イザベル」を捕まえるのが夢。
ある日イザベルがフランス南部の高原にいるという情報を得たジュリアンは、いそいそ車で出かけていくが、
車にはなんとエルザが隠れていた。途中何度か携帯でママに連絡しようとしたが、
一緒に行きたいエルザの策略で携帯は通じず仕方なくエルザもつれて山を登ることになってしまった。
都会育ちで初めて自然に接するエルザにはすべての物が新鮮で、初めは反目していた老人と少女の間に
奇妙な友情が芽生え始めていた。
しかしパリではエルザ誘拐事件として騒動になっていたのだった。
ミシェル・セロー主演、フィィップ・ミュイル監督作品。
とにかくエルザ役のクレール・ブアニッシュがいい。
ハリウッドの達者だけど作られた子役ではなく、無垢で自然なかわいらしさを持つ。
200人以上のオーディションで選ばれたらしいが、この子役選びで映画のトーンが決まってしまうので、
ブアニッシュを見つけたことの意義は大きい。
頑固じじいのジュリアンが子供のエルザに対しても厳しいルールを言い渡すあたり、
エルザとジュリアンが対等の人間として旅している。
小品ながらほっこりさせる。


「宣戦布告」 日本映画
3月24日 ビデオ(WOWOWにて収録)

福井県で小型潜水艦が座礁しているのが発見される。
内部には数名の死体と銃器が残されていた。北朝鮮の工作員が日本に潜入したと思われ、
原発が集中する福井に緊張が走る。
警察特殊部隊が山中に潜伏する工作員を発見するが政治的配慮から射殺命令が出せない。
ロケット弾攻撃で多数の死傷者を出した日本政府は工作員の強力火器に対抗すべく自衛隊を投入。
しかし自衛隊が攻撃するにはあまりにも法律の縛りが多く、攻撃されるがままの状況に現場は苛立つ。
首相役に古谷一行、秘書官に杉本哲太他、石侍露堂監督作品。
自衛隊の攻撃にあらゆる法律の縛りがあり、有事の際にその法解釈で迅速に行動できない
日本の危機管理の弱さをよく表している。
しかしアクションの主体となる自衛隊員、警察特殊部隊の役者の動きが精鋭部隊に見えない。
アメリカ映画ならしばらく軍事訓練を受けさせるとか、軍事アドバイザーが付きっきりで動きをレクチャーし
それらしく見せるが、助監が少しぐらい演技指導してもぎこちなさが残る。
このディテールは映画を楽しむのには重要な部分。
アクションシーンのちゃちさに繋がる。
話の展開も少し飛躍しすぎて現実離れしてしまった。


「インソムニア」 アメリカ映画
3月20日 ビデオ(WOWOWにて収録)

アラスカの田舎町で少女が殺された。ロサンゼルスから応援としてプロファイリングに長けた
ドーマー刑事が相棒ハッブとともに派遣される。
汚職による内部調査を受けているドーマーはハッブがすべてをバラしてしまうのではないかと言う不安と、
24時間陽が沈まない夏のアラスカで眠れぬ夜を過ごす。
しかし、犯人をおびき出すことに成功したものの、霧の中で誤ってハッブを射殺してしまう。
一睡もできぬまま数日経ったある日、犯人からドーマーに電話がかかってくる。
犯人はハッブを撃ったのがドーマーだと知っている。
やがて刑事と殺人犯という立場ではなく、ドーマーは共犯者としてズルズルと泥沼に引きずり込まれていく。
アル・パチーノ主演、「メメント」のクリストファー・ノーラン監督作品。
何もない退屈な街で、陽は沈まないとはいうもののずっと曇り空。
ノイローゼになるのも無理はないような画面のトーンをうまく作り出している。
不眠症のベテラン刑事と言う役どころはパチーノにピッタリだが、ロビン・ウィリアムズの犯人役は
しっくりこない。
あまりにもベタな善人をやりすぎたので、ちょっとやそっとでイメージは変えられない。
殺人捜査、同僚殺し、内部調査と不眠症の種はいくつも絡み合ってるのに、
どうもスッキリ処理されずに終わってるようなふんぎれの悪さが残る。


「ミッシング」 アメリカ映画
3月19日13:00 UIP試写室(UIP)

1885年ニューメキシコ。マギーは人里離れた荒涼とした土地で、女手ひとつで娘二人を育てていた。
ある日、マギーの恋人で牧童のブレイクが連れてきた男は、幼い頃にマギー達を捨ててアパッチ族となった
父のサミュエルだった。
父を失った母は過労でなくなり、自分も今まで苦労してきた。
マギーは父を許せず一夜の宿を提供するだけで追い出してしまう。
明くる日街に祭り見物に出かけたブレイクと娘二人は途中ネイティブ・アメリカンに襲われ、
ブレイクは殺され長女がさらわれてしまう。
騎兵隊は頼りにならず、国境を越えるまでに助けないと娘はメキシコに売られてしまう。
マギーはネイティブ・アメリカンに精通している父に渋々頼み、父とともに娘の救出に向かうのだった。
ケイト・ブランシェット、トミー・リー・ジョーンズ主演。監督は「ビューティフル・マインド」「アポロ13」の
ロン・ハワード。
二大俳優の演技、ロン・ハワードの演出ともにいいが、話に無理がある。
ネイティブ・アメリカンにさらわれた娘を追うのに、父が家族を捨ててアパッチ族になっていた
などという設定自体があざとい。
途中呪術師の敵が呪いをかけると離れたところで人が苦しむというオカルト的な部分も今時ではない。
さらわれた娘のアホさも観客の反感を買う。
これロン・ハワードだから最後まで何とか観客を引っ張って行けたけど、力量のない監督だったら
とんでもないことになってたと思う。


「ビッグ・フィッシュ」 アメリカ映画
3月16日19:00 完成披露試写、リサイタルホール(ソニー)

エドワード・ブルームは奇想天外なホラ話で人々から愛されているが、
息子のウィルは自分の結婚式で、またしてもホラ話をする父が許せず
数年間断絶状態。
そんな父が余命いくばくとわかり身重の妻ジョセフィンと実家に戻る。
ジョセフィンは看病しながらエドワードのヨタ話を楽しく聞くが、ウィルは
本当の姿を見せない父との心の隙間を埋められない。
しかし、父の話のすべてが嘘ではない事がわかり、徐々に父に心を開いていくが
最後の時は刻一刻と近づいていたのだった。
ユアン・マクレガー主演、ティム・バートン監督作品。
魔女や巨人、人魚、中国の美人シャム双生児などが登場し、エドワードのお伽話に
観客もワクワクさせられる。
ティム・バートン最高作と評されているのもうなずける。
考えてみれば今までティム・バートン作品は「シザー・ハンズ」も「バットマン」も
「スリーピー・ホロウ」も形を変えたお伽話だった。
お伽話の集大成としてこの話を作ったように思う。
この原作を魅力的に映画化する監督はティム・バートンしかいなかったように思う。
俳優陣も父役のアルバート・フィーニーしかり、ジェシカ・ラング、ヘレナ・ボナム=カーター、
スティーブ・ブシェミ、ダニー・デビートら魅力ある俳優陣を配した。大人のお伽話。


「クライム&ダイヤモンド」 アメリカ映画
3月15日 ビデオ(WOWOWにて収録)

証明書偽造のプロ、フィンチは殺し屋の毒舌ジムに訳がわからぬまま捕まり、
ホテルの一室に監禁された。
無類の映画好きのジムに自身の物語を聞かせるフィンチ。
刑務所で知り合ったマイコーが隠したダイヤを取りに行くため二人で脱獄し、
死体安置所の適当な二人になりすましたが、
実はその二人はマフィアのボスの殺人現場を撮影したパパラッチで、
マフィアから消されたのだが、
まだ生きてると勘違いされフィンチは殺し屋に追われる羽目になったのだった。
クリスチャン・スレイター主演の小粋な犯罪映画。
殺し屋に物語を語りながら、回想で話は進む構成で
映画好きの殺し屋の「このあたりで女の登場だ」「サイドストーリーが必要」など、
「面白い映画の条件」にそって語られていくのが面白い。
脚本の作り方がよくわかる。
随所にちりばめられた名作映画のセリフなど、映画ファンは倍楽しめる。
(ただしかなりマニアックだけど)
語られる物語はジムを満足させるために捏造されたのか、本当かはわからないが
聞いていてワクワクする展開。毒舌ジムと同じように観客も話にノセることに成功している。
脚本が上手い。
ラストシーンは映画ファンに一番わかりやすいサービスかも知れないけど、少しやり過ぎかも知れない。


「仄暗い水の底から」 日本映画
3月14日 ビデオ(WOWOWにて収録)

夫と離婚調停中の淑美は5歳の娘郁子の親権を得るため、職と住むところを探し
自立を目指していた。
何とか小さな出版社に就職も決まり、古びた団地も見つけて入居したが、
カビ臭く階上から水漏れも起こる始末。そして何か得体の知れない不気味な存在も感じる。
引っ越してすぐ郁子の奇行が見られるようになり、団地の貯水槽で死んだ美津子という少女の存在が明らかになる。
「リング」の強力タッグ、鈴木光司原作・中田秀夫監督のホラー。
映画全体の雰囲気は怖そうだけど、出そうで出ない。
「水」がキーワードになっているが、後半は無理に「水」を使ってるよう。
ラストは「なんじゃこりゃ」と言った感じで、唖然とする。
黒木瞳主演。


「17歳のカルテ」 アメリカ映画
3月14日 ビデオ(NHK・BSにて収録)

17歳のスザンナは自殺未遂で精神病院に入院する。
反抗的で脱走常習者のリサ、顔の発疹を自ら焼いたポリー、虚言癖のジョージーナらと
共に生活するうち、
初めはなじめなかったスザンナもやがてうち解け、看護師等と衝突しながらも
自分と社会を見つめ直していく。
ウイノナ・ライダー主演で共演のアンジェリーナ・ジョリーがアカデミー助演女優賞を獲得した。
大人になる課程で上手く脱皮できないナイーブな少女達の心の葛藤をうまくまとめた。
役柄上「静」のウイノナに対して「動」のアンジェリーナの方が目立つし、表現しやすいので
アンジェリーナの方が得をした。
ウーピー・ゴールドバーグも抑えめな演技。
題材が似てるのでどうしても「カッコーの巣の上で」と比較されてしまうのは仕方ないが、
いろいろな事件が起こるものの、物語の起伏があまり感じられず単調な印象を受ける。


「ゴシカ」 アメリカ映画
3月12日14:20 梅田ブルク7

ミランダは夫である刑務所長ダグラスと女子刑務所の精神病棟のカウンセラー
として働いている。
ミランダを悩ませるのは女囚クロエ。夜ごと悪魔に犯されると訴えるクロエに、
ミランダはただの妄想だと諭すがいっこうに症状は改善しない。
ある雨の激しく降る夜、一人車を運転するミランダの前に少女の姿が。
間一髪除けるが、少女は傷だらけで激しく怯えている。
そっと少女に触れるミランダは衝撃を受け気を失う。
目が覚めると自分が働く刑務所の精神病棟だった。
そして同僚からミランダが夫ダグラスを惨殺したと聞かされ、収監されていることがわかる。
その日から不気味なことが回りで起こり始め、たった一人で得体の知れない何かの正体を探る。
ハル・ベリー主演、「クリムゾン・リバー」のマシュー・カソビッツ監督作品。
製作は「マトリックス」シリーズのジョエル・シルバーにロバート・ゼメキス。
共演もペネロペ・クルス、ロバート・ダウニーjr.と、ホラーにしては豪華だが、
内容はたいしたことない。
予告編は怖そうだけどそれほど怖くないし、幽霊と猟奇殺人を合体させ、
ひとひねりしたつもりかも知れないけど中途半端。
この程度の映画にハル・ベリーもペネロペも必要ない。
二人とも有名プロデューサーにつられて出たのだろうけど、もっと仕事選ばなあかん。


「スクール・オブ・ロック」 アメリカ映画
3月9日(火)19:30 完成披露試写、OS劇場(UIP)

売れないロックバンドのギタリスト、デューイはバンドコンテストで優勝して一攫千金をもくろんでいたが、
デューイの派手なパフォーマンスが災いしてバンドから追い出される。
おまけにルームメイトから滞納している家賃の催促を受け、部屋も追い出される寸前。
ところがルームメイトのネッドのもとに来た代用教員採用の手紙を見たデューイは、ネッドのふりをして
名門小学校に潜り込む。
ロックバカのデューイが秀才揃いの小学生を教えられるはずもなく、自習でお茶を濁していたが
生徒達の音楽の才能を見つけ、バンドを組織してバンドコンテストに出場することを思いつく。
「愛しのローズ・マリー」のジャック・ブラック主演、「恋人までの距離」のリチャード・リンクレイター監督作品。
実際にロックミュージシャンとして活躍するジャック・ブラックを主役に据えたことがこの映画の勝因。
役者がロックミュージシャンを演じてるのではなく、ロックミュージシャンが等身大の人物を演じているので、
演奏も本物だしロックのノリも嘘っぽくない。
子供達の不満をロックの歌詞に乗せて歌うところなど「ロックとは何か」を改めて教えられる。
ロック史を教える黒板のチャートもよくできてるし、「天使にラブ・ソングを」のロック版みたいだけど、
本物のロック魂で撮られたロック映画。


「猟奇的な彼女」 韓国映画
3月9日(火)10:30 朝日ベストテン映画祭、リサイタルホール

心優しい大学生のキョヌは、地下鉄でベロベロに酔っぱらった女子大生と出会う。
成り行きで彼女を介抱する羽目になったキョヌは、仕方なくホテルに連れて行く。
悪態を付く酔っぱらった姿とは裏腹に、キュートな寝顔に惹かれていくキョヌだったが
二人を怪しんだ宿の主人の通報で警察が踏み込み、キョヌは豚箱で一夜を過ごす羽目になった。
それから暴力的な彼女との奇妙な付き合いが始まり、無茶な彼女の要求に振り回されるキョヌだが、
彼女の心に秘めた寂しさを垣間見て何とか彼女の心の空白を埋めたいとけなげに努力する。
主人公二人のキャラクターにピッタリの俳優を上手く配した。
ただただ暴力的なわがまま女に翻弄される優しき男の恋愛話ではなく、彼女の秘めた心の空白が徐々に明らかになり、
変わった形の純愛映画であるとわかる。
脚本家志望の彼女の書く荒唐無稽な映画の話を随所に入れ、物語に変化をつけたのもいい。
周到に仕組まれたラストの仕込みも見事。
暴力的な彼女の物語なのに見終わったあと優しい気持ちにさせてくれる映画。


「スコーピオン」 アメリカ映画
3月8日 ビデオ(WOWOWにて収録)

刑務所から出所したマイケルは昔の仲間を集めてカジノの売上金強奪の計画を立てる。
毎年ホテルで開かれるエルビス祭りに乗じて強盗を働こうというのである。
世界中からエルビスの扮装をした男達が集まる会場に同じようにエルビスの扮装で紛れ込み、
金庫室を襲撃。警備員と撃ち合いになりながらも屋上からヘリでまんまと逃走する。
計画は見事に成功したが、マイケルが仲間を裏切り金を独り占めしようとする。
ケビン・コスナー、カート・ラッセル主演のギャング映画。
ケビン・コスナーが珍しく極悪人を演じている。
綿密に計画し、その道のプロを集めている割にバンバン撃ちまくって仕事が手荒い。
エルビスのコスチュームで強盗を働くあたりなど、全編に「これはコメディー?」と思わせるような
場面が随所にあるけど中途半端。
銃撃シーンはやたら派手やけど極悪人のコスナーのキャラに深みがなく、
ただの荒くれ人非人になってしまった。
これでは新境地を開拓したとは言ってもらえんやろうな。


「GO」 日本映画
3月5日 ビデオ(WOWOWにて収録)

高校生の杉原は在日韓国人で民族学校に通っていたが、人生の視野を広げるため
普通高校に編入する。
彼女もできるが自分が在日韓国人であるとなかなか言い出せない。
行定勲監督、窪塚洋介主演作品。
在日朝鮮・韓国人問題を大上段に構えず、若者の等身大のノリで悩む。その語り口がいい。
ただ物語の合間に挿入される「無駄」とも見えるコミカルシーンが気になる。
最近こんなシーンを入れるのが日本映画の流行になってきてるような気がする。
監督賞や主演男優賞など各地の映画祭で賞を取ったが、他に山崎努・柴咲コウらも助演賞など
総なめにした。
話題を聞いてから観たが、そんなに賞を取るほどの作品ではない。その年は不作やったのか。


「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」 アメリカ映画
3月4日11:00 梅田ブルク7

指輪を滅びの山に投げ込むため旅するフロドとサム。その指輪を執拗につけねらうゴラム。
冥王サウロンの軍勢と最後の戦いを挑むガンダルフとアラゴルン達。
3部作のシリーズ完結編。
城や合戦シーンなど、今までのお馴染みのシーンが今回も登場するが、次から次に新手の
難敵を出して飽きさせない。
CG技術も見事で、膨大な金と時間を費やしたであろうがスケールも大きくて見応え十分。
2話から登場したゴラムが、指輪を捨てる旅と合戦の2本柱に、物語の深みを与えた。
原作以上にイメージを膨らませたピーター・ジャクソン監督は見事。
映画でしか表現できない世界を観客の前に出現させ、これだけ満足させた功績は大きい。
このあとジャクソン監督は燃えかすのようになってしまったのではないやろか。


「ぼくは怖くない」 イタリア映画
3月3日15:45 東宝東和試写室(アルバトロス・フィルム)

広大な麦畑が広がる数軒しかない寒村に住む10歳のミケーレは、友達と丘を走り回っていた。
ある日廃屋で不自然にトタンで覆われた穴を見つけのぞき込むと、一人の少年が鎖に繋がれていた。
怖くなったミケーレは友達や両親にも言い出せず秘密にしていたが、穴の少年が気になってしょうがない。
意を決して穴に潜り込み少年に話しかける。フィリッポと言うその少年は自分と同じ歳で、
食べ物や水を運んできてくれるミケーレを自分の守護天使と思いこんでいた。
やがて自分の親たちがフィリッポに関係してるのではという疑念がミケーレの心にわき上がってきた。
「エーゲ海の天使」「ニルバーナ」のガブリエーレ・サルヴァトーレス監督作品。
とにかく広大な麦畑が美しい。この映画のもう一つの主役はこの景色かも知れない。
登場人物やセリフも少なく話は簡単だが、子供の心理や小出しにされる状況で上手く観客を引っ張っていく。
ラストも順当。小品ながらわかりやすく、適度に起伏のある物語でオリジナリティーもある。


「ピーターパン」 アメリカ映画
3月2日19:20 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(ソニー)

叔母さんの勧めでレディーの教育を受けることになったウエンディーだが、大人への入り口でとまどいを隠せない。
夜、空を自由に飛べる少年ピーターパンが現れ、ずっと子供でいられる国へ行こうとウエンディーと
2人の弟に妖精の魔法の粉をかけネーバーランドへと飛び立つ。
ネバーランドでは子供達がピーターパンをリーダーに自由気ままに暮らしていたが、
そこにピーターに恨みを持つフック船長が現れる。
1904年の初演からちょうど100周年にあたる今年は「ピーターパン生誕100周年」の年。
ディズニーのアニメでもお馴染みのこの話を実写で見せるのだから、当然特殊効果でアニメに負けない
夢の世界を作らないといけない。
特殊効果もかなり頑張っているしピーター役もイメージを壊さない少年をうまく見つけた。
聞けば今までピーター役は女性が演じることが多く、初の男性が演じる「ピーターパン」らしい。
ディズニーアニメのお伽話的なファンタジーだけではなく、この映画は初演の舞台のエッセンスを大事にして描かれている。
ピーターとウエンディーの淡い恋物語を軸にしているし、ティンカー・ベルはただのいたずら好きではなく、少し悪い面もある。
フック船長がピーターを狙うのは右手をワニに喰われた事だけが原因ではないし、
ピーターの「大人になれない」事が物語のポイントとなっている。
子供だけでなく、大人も新たな認識をしながら楽しめる映画。


「ケミカル51」 アメリカ・イギリス・カナダ映画
2月29日 ビデオ(WOWOWにて収録)

エルモは大学時代マリファナ所持で捕まり、薬剤師の道を断たれ今ではドラッグ精製人となった。
そんな彼が今までのドラッグの51倍の快感という究極の薬「POS51」を完成させ、
LAの組織を裏切りリバプールの組織に売り込むため英国に乗り込む。
ところが組織から派遣された護衛役のフィーリクスはサッカー狂で大のアメリカ人嫌い、
おまけにLAの組織から送られてきた女殺し屋や警察が彼らを追う。
サミュエル・L・ジャクソン主演、ロバート・カーライル共演、監督は「チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁」のロニー・ユー。
コメディーなのだが、そのハズし方が微妙。好みの別れるところ。
こんなギャグが好きな人はハマるし、全然笑えない人はこき下ろすやろう。
全体的に「ズレ」を楽しむ映画のようで、黒人のアメリカ人サミュエル・L・ジャクソンがキルト姿で
ゴルフバッグを抱えていたり、アメリカ人と英国人の違いなどガハガハ笑わせるギャグではなく、
シニカルなニヤリ系ギャグを楽しむ映画。
でもアクションはしっかり作られているのでそれなりに楽しめる。


「ラストサムライ」 アメリカ映画
2月27日16:50 角座

時代は明治と変わり、近代化の波が急速に押し寄せ変貌していく日本。
そこに西洋の戦術指南として南北戦争の英雄ネイサンが派遣される。
近代化に反発し昔ながら武士道を守ろうとする勝元盛次はしばしば政府軍と衝突し、
ネイサンは勝元達に捕らえられる。
勝元達の隠れ里で生活を共にするうち、軍人としての誇りに反して、金持ち達の利益のために
インディアンを追いやった負い目を感じるネイサンは、「義」を貫くサムライ達の生き様に共感していく。
トム・クルーズ主演、渡辺謙、真田広之共演、監督は「グローリー」「戦火の勇気」のエドワード・ズウィック。
かなり渡辺謙らが「日本的なもの」の指導をしたようで、ハリウッド映画にありがちな
間違った「日本風」という物があまりなく、日本人もたいした違和感なく見られる。
歴史的な話の流れは「?」という部分もあるが、衣装・セット・合戦シーンなど時間と金を掛けて
ちゃんと撮られている。
特に合戦シーンはハリウッドの大作らしく、これを見せられると少々の製作費では太刀打ちできない
と思ってしまう。
外国ウケする日本のサムライという題材を選んだトム・クルーズは、なかなかの商売人。


「21g」 アメリカ映画
2月24日19:20 完成披露試写、梅田ピカデリー(ギャガ・ヒューマックス)

刑務所を出たり入ったりしていたジャックは信仰を強めて改心し、
酒もたばこもやめてまじめに働いていたが交通事故を起こし、男と2人の娘をひき殺してしまった。
主人と2人の娘を失ったクリスティーナは、旦那の心臓を提供し、心臓移植を受けたポールは提供者を捜し出す。
妻との空虚な生活に耐えられず離婚を決意したポールは、クリスティーナに接近、
惹かれ合うがクリスティーナの心の空白はあまりにも大きく、ジャックへの復讐を誓う。
ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベネチオ・デルトロ、3人の演技がすごい。
三人三様の心の痛みを描いているが、シーンの時間軸がバラバラに組み立てられていて、
話が前後する。観客は頭の中でそれぞれのシーンを再構築して物語を確認しないといけない。
「メメント」「アレックス」の逆進行とは違う斬新な手法。
三人の心のひだを順に追って丹念に描くとクッションになるシーンなど入れるため
時間がかかってしまうが、この方法なら必要なシーンだけでつなげるから短時間で描ける。
それでも2時間かかった。
3人ともすばらしい演技だけど特にワッツが良かった。


「ル・ブレ」 フランス映画
2月21日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ギャングのモルテスは仲間の裏切りで服役していたが、看守のレジオに頼んで
買ってもらった宝くじが大当たりしていた事がわかる。
ところがレジオの妻は宝くじを持ったままパリ・ダカの医療班としてアフリカへ渡っていた。
刑務所を脱獄したモルテスはレジオと共に妻を追ってアフリカへ向かう。
2人はうまくレースに紛れ込んだはいいが、弟をモルテスに殺されたトルコが復讐に来るわ、
宝くじ目当ての盗賊は襲って来るわで、命からがら妻を追うが・・・。
派手なカーチェイスのフランス・コメディー。
アクションとコメディーの配分がいいバランスを保っている。
渋いモルテスと間抜けなレジオに、凶暴なコルトに鉄の歯の大男と
主人公のみならず追っ手もデコボコ・コンビ。
なーんも考えずに楽しめる娯楽作品。


「K−19」 アメリカ映画
2月20日 ビデオ(WOWOWにて収録)

米ソ冷戦時代の1961年。ソ連が建造した原子力潜水艦K−19は模擬航海で散々な結果に終わってしまった。
艦に使われていた粗悪な部品が原因だったが、艦長のポレーニンは副艦長に降格。
代わりに艦長としてボストリコフが乗り込んで来た。
艦に不安を抱えたまま処女航海に出たK−19、ボストリコフの厳しい訓練で乗組員は鍛えられ、
困難なテストも次々成功させていくが、やがて原子炉の冷却装置に深刻な問題が発生し、
このままでは炉心融解という大惨事に発展するおそれがでてきた。
実際に起こったソ連原潜事故を題材にしたハリソン・フォード主演、
「ハートブルー」のキャスリン・ビグロー監督作品。
ソ連人が英語をしゃべっている事はおいといて、潜水艦内部が実物大に作られているのがいい。
映画の潜水艦のセットというのは妙に広く作られるが、この映画は登場人物達の頭が天井に当たりそうで狭くリアル。
おまけにスイッチ類やマイクのちゃちさも当時のソ連船らしい。この細かいこだわりは好感が持てる。
ただ、艦長に不信感を抱いていた副官が途中で急に艦長側に立ったのには唖然とした。
実に唐突な展開。
副官にリーアム・ニーソン。


「悪い男」 韓国映画
2月20日15:30 東映試写室(エスピーオー)

ヤクザのハンギは女子大生ソナに一目惚れするが、思いを伝える方法を知らないハンギは
彼氏の前でいきなり強引にキスをする。
回りにいた軍人にボコボコにされたハンギはソナから侮辱の言葉と唾を浴びる。
ハンギは復讐のためにソナを捜し出して罠にはめ、売春宿に売り飛ばす。
悲しみに暮れるソナをマジックミラー越しに見守るハンギ。
やがてソナはいっぱしの娼婦へと変貌していき、ハンギも抗争に巻き込まれていく。
屈折した純愛物やった。
北野武が描きそうな暴力とユーモア。監督のキム・ギドクが「韓国の北野武」と呼ばれるのもよくわかる。
珍しい凶器もいくつか登場する。
シーンの作りも上手く、「不死身か」と突っ込みたくなるような所もあるものの、
ありきたりのラストにせず、落としどころも上手い。
主人公のヤクザが全編を通じて一言しかセリフをしゃべらず、その一言で強烈に印象を残した。
このあたりの演出もいい。
不器用なヤクザと女子大生の不思議な恋愛の寓話。
韓国映画は多種多様でいい映画が多い。


「ションヤンの酒家」 中国映画
2月19日15:30 ヘラルド試写室(ヘラルド)

重慶で屋台を営むションヤン。名物の「鴨の首」の人気だけでなく彼女の美貌と人柄で常連も多い。
明るく気丈なションヤンだが悩みも多い。
株に熱を上げる兄嫁に子供の世話を押しつけられたり、文革で他人名義になった父の家を
取り戻すために奔走したり、
麻薬で苦しむ弟を更正させようとしたり、女手一つで切り盛りしてきた彼女の肩に
あまりにも多くの問題がのしかかる。
おまけに都市開発で屋台取り壊しの噂まで流れてきた。
「山の郵便配達」のフォ・ジェンチイ監督作品。
主人公は多くの問題を抱えているが、物語の起伏はそれほど大きくなく静かに進んでいく。
主人公ションヤン役の陶紅(タオ・ホン)の芝居はあまり上手くない。
特に暇なときにタバコに火をつけ、屋台でたたずんでいる表情に深みがない。
もっとうまい女優にさせればもっと人物の広がりが出たと思う。
屋台の美人女将の細腕繁盛記として、どっかりカメラを据えて一人の女性の人生を見せるが、
それほど大きな事件が起こるわけでもなく淡々として退屈な映画。


「テキサス・チェーンソー」 アメリカ映画
2月19日13:30 ヘラルド試写室(ヘラルド)

1973年、テキサスの田舎を5人の男女が乗るワゴン車が走る。
マリファナを吸い野外コンサートに向かう途中、少女を轢きそうになる。
放心状態の少女を車に乗せるが少女は隠し持ったピストルで自殺する。
工場の廃墟で保安官を待つが保安官はなかなか現れず、仲間の一人が
電話を借りに入った家で何者かに襲われ姿を消してしまう。
それが惨劇の始まりだった。得体の知れない何者かがチェーンソーのうなりをあげ、
彼らを襲ってくる。
「悪魔のいけにえ」を「アルマゲドン」「パール・ハーバー」のマイケル・パレが
リメイク製作。
ビデオクリップ出身のマーカス・ニスベル第1回監督作品。
物語の前後に偽の警察撮影フィルムを挿入し、さも実際にあった話のように見せる手法が
怖さを増幅させる。
こういうディテールは大事。このあたり「ブレア・ウィッチ」の手法を習っている。
女優陣が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら泣き叫ぶ捨て身の演技。
人皮マスクの怪人がチェーンソーのうなりをあげて襲ってくるおきまりのスプラッターだけど、
怪しげな登場人物達が過剰な「変さ」でなく、節度を保った不気味さでいい。


「タイムリミット」 アメリカ映画
2月18日19:00 完成披露試写、リサイタルホール(東芝エンタテインメント)

ウィトロックは島の小さな警察署長。マイアミ警察殺人課に所属する妻とは別居中で、
暴力亭主に虐げられているアンと不倫関係を続けている。
ある日アンは癌であることをウィトロックに告白し、生命保険の受取人も暴力亭主から
ウィトロックに変更してしまう。
高額の治療を受けると助かる可能性があると聞いたウィトロックは麻薬取引で押収した
大金をアンに渡すが、その夜アンの家は火事となり、黒こげの焼死体が2体発見される。
放火殺人として捜査が始まるが状況証拠はウィトロックに不利な物ばかりだった。
捜査に乗り込んできた殺人課の妻に先回りして、ウィトロックは不利な証拠を隠し真犯人を
捜し出さなくてはならなくなってしまった。
デンゼル・ワシントン主演、殺人課の妻役は「レジェンド・オブ・メキシコ」のエヴァ・メンデス。
次々出てくる不利な証拠を妻に先回りして隠していくスリリングな展開がメインだけど、
どうも都合いいところやわざとらしいところがある。
はじめの筋立てはいいけど展開に荒さが見える。
ちょっとケビン・コスナーの「追いつめられて」に展開が似てる。
不倫したり押収した金を横領したり、主人公にあまりいい印象を持たないのでちょっと冷めて見てしまう。


「ディボース・ショウ」 アメリカ映画
2月18日15:30 UIP試写室(UIP)

マイルズはロスで離婚専門の弁護士として法廷で連戦連勝、彼に頼めば離婚は有利になると
金持ち達から有名な存在。
そんなマイルズに不動産王レックスから離婚訴訟の弁護が持ち込まれる。
レックスは妻のマリリンの雇った探偵に浮気現場を押さえられ離婚となったが、
マリリンに高額な慰謝料を払うと事業もたちいかなくなり破産してしまう。
何とか慰謝料を一銭も払わずに離婚をという。
この不利な状況に燃えたマイルズはマリリンの過去を調べ、金目当ての結婚だったことを法廷で暴き完勝に終わった。
無一文でほり出されたマリリンは、またしても石油王と婚約するが、マリリンに惹かれていくマイルズ。
そして二人の第2ラウンドの火蓋は切って落とされる。
ジョージ・クルーニー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演。コーエン兄弟監督・脚本作品。
金目当ての結婚相手から離婚後の財産を守る、婚前契約書というものが物語のポイントになっている。
美貌を武器に金持ちと結婚して離婚により財を得る女と、離婚専門の敏腕弁護士が
恋の駆け引きをするストーリーが面白い。
金持ち男を虜にするゼタ=ジョーンズのセレブな魅力は適役。
さらりとしたコメディーで、今までと違った恋の駆け引きを描いた恋愛映画。
コーエン兄弟の脚本のうまさ。
「シャイン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジェフリー・ラッシュ、「チョコレート」のビリー・ボブ・ソーントンら脇役もいい。


「ハッピー・フライト」 アメリカ映画
2月18日13:30 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ)

何の目的もなく退屈な田舎町のトレーラーハウスで暮らすドナは、
テレビで観たカリスマ・スチュワーデスの言葉に発憤し、田舎の小さな航空会社に就職成功。
しかしそこはスチュワーデスとは名ばかりで、ボディーラインを協調したエッチな制服を着せられ
まるでホステスのような航空会社だった。
憧れの国際線スチュワーデスめざし猛勉強。晴れて大手航空会社に合格し、訓練も勉強も
がむしゃらにがっばったのに、結果は自分より成績の悪い友人が国際線勤務となり、
自分はローカルな国内線勤務となってしまった。
彼も出来、この生活に甘んじかけたが、やはりトップをめざしドナはまた夢を追いかける。
グウィネス・パルトロウ主演のスチュワーデス物語。
テレビドラマのように軽く、作りも大雑把。
パルトロウのスタイルばかり強調したサービス映画。
パルトロウは始めあまり綺麗じゃないけど、憧れの国際線スチュワーデスになったときは清楚で綺麗やった。
キャンディス・バーゲンのカリスマ・スチュワーデスはハマリ役。
教官役のマイク・マイヤーズは全体の空気関係無しにギャグ優先の自分を出してしまう人なので、
彼のシーンだけ別の映画になっている。


「ピノッキオ」 イタリア映画
2月14日 ビデオ(WOWOWにて収録)

夜明けの街を多数のネズミに牽かれた馬車に乗る妖精から青い蝶が飛び立ち、
荷車の丸太に止まる。
その途端丸太は生き物のように街中を転げ回りジェペットじいさんの家の前で止まる。
ジェペットじいさんはその丸太で人形を作り、子供のいないジェペットは人形に
ピノッキオと名付け、息子のように育てようとしたが、この人形はやんちゃで、
ピノッキオのせいでじいさんは投獄されてしまう。
童話でお馴染みの物語を「ライフ・イズ・ビューティフル」のロベルト・ベニーニが実写で映画化、
ベニーニが主演の他監督と脚本も手がけている。
どうもピノキオを言えば少年というイメージがあるので、おっさんのベニーニにピノッキオ役は少し無理がある。
年齢の違和感を隠すために同じような年頃の子供も全部大人に演じさせているが、
おっさんはおっさんで派手な衣装はピエロのよう。
コンパクトにするため物語をはしょり、ジェペットのピノッキオに対する思い入れの課程が飛んでいる。
「現代のチャップリン」と言われるベニーニの独壇場。


「シェイド」 アメリカ映画
2月12日15:30 東宝試写室(エスピーオー)

いかさま師ミラーは羽振りのいいギャンブラー・ジェニングスに儲け話を持ちかける。
カード捌きで超絶テクニックを持つ昔の仲間ヴァーノンと組んでいかさまで儲けようと言うのだ。
金持ち達が集まるカジノハウスでジェニングスは勝ち続けたが、調子に乗って忠告を無視し、
最後の大勝負ですべてスッてしまった。
自信喪失のジェニングスだったが実はこれはすべてミラーの仕掛けだった。
カジノハウス、客達などジェニングス以外はすべてミラーの仕込みだったのだ。
まんまと大金をせしめたミラー達だったが、ジェニングスがつぎ込んだ金はギャングのボスの金だった。
命を狙われる羽目になったミラー達は、ボスへ金で詫びるため、一攫千金の大勝負を伝説の
ギャンブラー相手に仕掛ける。
「ユージュアル・サスペクツ」のガブリエル・バーン主演で伝説のギャンブラーにシルベスター・スタローンが扮している。
前半の引っかけは「スティング」、後半のポーカー勝負は「ハスラー」のよう。
特にだまし取った金がボスの金だったなどというのは、「スティング」以降「またか」と言うほど
手垢にまみれた展開。
スタローンも老獪な伝説のギャンブラーに見えない。
この人はどう頑張ってもポール・ニューマンにはなれない。


「ホーンテッドマンション」 アメリカ映画
2月6日19:00 完成披露試写、リサイタルホール(ブエナ・ビスタ)

不動産業を営むジムは仕事に追われ、家族サービスの約束もなかなか果たせない。
今度こそと、週末に湖畔で過ごす約束をしたが、荒れ果ててはいるが広大な屋敷の売買話が
ジムに持ちかけられる。
この儲け話をみすみす逃すのはもったいないと、バケーションの途中家族で屋敷に立ち寄るが、
天候不良で屋敷に泊まる羽目になってしまった。
しかしこの屋敷には不気味な秘密が隠されていたのだった。
エディー・マーフィー主演で、ディズニーランドの人気アトラクションの映画化。
全体的に子供連れのファミリー向けに作られているようで、
ゴースト達もそれほど怖くないし、映画の尺も短め。
ゴーストのCGも目新しいところがなく、一般の映画館で公開せずもっとコンパクトにして
ディズニーランドのアトラクションで3Dかなんかで上映すればいいような作品。
監督はファミリー映画に定評ある「スチュアート・リトル1、2」のロブ・ミンコフ。


「殺人の追憶」 韓国映画
1月29日15:30 ヘラルド試写室(シネカノン)

1986年、ソウル郊外の農村で女性ばかりを狙った連続猟奇殺人事件が起こるが、
勘を頼りの暴力刑事パクは捜査に行き詰まっていた。
ソウルからソ刑事が派遣され捜査に加わるが、資料からプロファイリングする理知的なソ刑事と
証拠を捏造し拷問で自白させようとするパク刑事が合うはずもなく、二人は対立しながらそれぞれ捜査を進める。
やがて犯行時の共通点「雨の日」「赤い服」「ラジオの同じリクエスト曲」などが見つかるが、
犯人へ結びつく物は見つからず、二人はそれぞれの方法ではもはや犯人を特定することは不可能ではないかと絶望的になっていく。
やがて有力な容疑者が捜査線上に浮かび上がってくるが・・・。
実際に起こった猟奇連続殺人事件を映画化しているが、登場人物が実にいい。
暴力刑事パクと後輩チョ、理性派ソ、頭の弱い容疑者クヮンホなど、個性的な人物達が上手く絡み合ってドラマを盛り上げる。
シリアスにすればするほど、どこかおかしみが増す。
刑事達の苛立ちが手に取るように観客に伝わるのは演出のうまさ。
「シュリ」「JSA」のソン・ガンホが暴力刑事役で印象を残した。


「幸せになるためのイタリア語講座」 デンマーク映画
1月28日15:30 東映試写室(ザジフィルムズ)

不能のホテルマン・ヨーゲン、客とのトラブルが絶えずリストラ寸前のレストラン支配人ハル、
身体が不自由な父に奴隷のように扱われているパン屋の店員オリンピア、
彼らは市のイタリア語講座で共に学ぶ仲間。
そこに妻を亡くした代理牧師アンドレ、アルコール依存症の母の看病に疲れ果てた美容師カーレン等が加わる。しかし講師が亡くなり、講座も閉鎖の危機に瀕していた。
心に何かを抱えた者達がやがてお互いを必要とする者に巡り会い、何とか講座を存続させ
イタリア旅行でそれぞれの心の空白は埋められていく。
例の「ドグマ」で撮られたデンマーク映画で、それぞれの悩みを見せながら、複数の恋が展開していく。
でも考えてみると別にイタリア語講座でなくてもいいような話。
最後みんなでイタリアに行くのは、なんか取って付けたような感じ。


「ヘブン・アンド・アース」 中国映画
1月27日15:30 ソニー試写室(ソニー)

紀元700年頃の中国。遣唐使として派遣され、唐王朝のもとで刺客として働く来栖に
25年ぶりの帰国が決まるが、長安まで司令官の娘を警護する途中、皇帝から最後の指令が下る。
それは唐を脅かす突厥(とっけつ)の女子供の処刑命令を拒んで逃走した元軍人李の暗殺命令だった。
インドの天竺から皇帝への献上品を運ぶ僧侶の警護に就いている李を発見した来栖だが、
皇帝への献上品を長安へ届けることを優先し、李暗殺は長安で行うことにする。
来栖、李とその部下、司令官の娘文珠、僧侶覚慧ら一行が砂漠を旅していたが、
献上品を狙う安の軍勢が襲いかかってくる。
次々に仲間を失い、とうとう来栖らは朽ち果てた砦に追いつめられる。
中井貴一、「鬼が来た」「ミッシング・ガン」のチアン・ウェン主演。文珠役に「少林サッカー」のヴィッキー・チャオ。
作品的には悪くないが運が悪い。
中井貴一はせっかく海外の映画で主役を張ったのに、「ラスト・サムライ」の渡辺謙に話題をさらわれ、
ストーリー展開も先に公開された「武士 MUSA」に似ているので損した。
中井貴一の演技は優等生過ぎた。
日本人向けの細かな演技ではなく、外国でもウケるように少し臭い目に演技した方が印象を残したと思う。


「ペイチェック 消された記憶」 アメリカ映画
1月26日19:30 完成披露試写、リサイタルホール(UIP)

ジェニングスは有能なコンピューター・プログラマー。期間限定で企業に雇われ新製品開発に携わっていた。
契約終了後、機密漏洩を防ぐため契約期間中の記憶を消し、企業を渡り歩くジェニングスは、
オールコム社から3年という長期にわたっての契約を持ちかけられる。
3年間の記憶を消す事は人体へのリスクがかなり大きいが、高額報酬につられプロジェクトに参加する。
しかし3年後ジェニングスが手にした物は、自分がサインした報酬を放棄する書類とがらくただけ。
おまけにFBIに逮捕される始末。
一体3年間に何があったのか、消された記憶の秘密は何なのか。
ジェニングスは大きな陰謀に巻き込まれていることに気づき、がらくたを手がかりに消された記憶のヒントを探す。
ベン・アフレック主演、「M:I−2」「フェイス・オフ」のジョン・ウー監督。共演はユマ・サーマン。
「ブレード・ランナー」「トータル・リコール」「マイノリティー・リポート」のSF作家フィリップ・K・ディックの
短編をもとにしているが、「マイノリティー・リポート」を彷彿とさせるシーンが随所にあり、
「ああやはり短編やなぁ」と思うような映画。
もう映画化できるようなめぼしい作品はディックにないのかも知れない。
ジャック・ライアンシリーズ、ディック作品と、ハリソン・フォードと同じような作品を選んでる
ベン・アフレックはハリソン・フォードになれるのか、このあたりが正念場。


「イン・ザ・カット」 アメリカ映画
1月23日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

ニューヨークの文学教師フラニーは、恋人もなく他人と適度な距離を保ちながら気ままな一人暮らしを続けていた。
唯一の楽しみは街で見かけた広告の言葉や詩の一説を収集することと、義妹とのおしゃべりだけ。
ある日フラニーの家の近くで猟奇殺人が起こり、フラニーは犯人らしき男を目撃する。
捜査のために訪れた刑事マロイと話すうち、次第に心を開いていくフラニーだが、
犯人の魔の手は義妹やフラニーにまでおよび出す。
メグ・ライアン主演、「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン監督作品で、ニコール・キッドマンが
製作に名を連ねている。
当初キッドマン主演で進められていたのを、メグ・ライアンが台本を読んで是非自分がフラニー役をと
熱望して交代したらしい。
女性の「性」がシンボリックに描かれ、メグ・ライアンもヌードになり新境地に挑んでいるが、
終わってみればやはりキッドマンで観たかった。
このキャラはやはりメグ・ライアンではない。
殺人場面を見せず、両親の結婚にまつわる逸話を少しシュールに描いたり、
フラニーの内面にスポットを当てたりして、ただの猟奇殺人事件を描いたスリラーと一線を画そうとしているが、
ラストはスリラーの定番のような展開。どっちつかずの中途半端なものになってしまった。


「ルビー&カンタン」 フランス映画
1月21日17:00 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、メディアボックス)

ギャングの2000万ユーロを奪い、秘密の場所に隠したヒットマンのルビーは、
警察に捕まったがいっこうに口を割ろうとしない。
業を煮やした警察は、ちんけな罪で捕まったおしゃべりのカンタンをルビーの同室にし、
金の隠し場所を聞き出そうという魂胆。
今までおしゃべりが災いして友達ができなかったカンタンだが、寡黙なルビーは
黙って自分の話を聞いてくれる(ように見える)ので、親近感を覚える。
しかしルビーの脱獄計画にカンタンまでについて来てしまい、無口とおしゃべりの逃避行が始まる。
しかし追ってくるのは警察だけではなく、ギャングも彼らをつけ狙ってたのだった。
ジャン・レノとジェラール・ドパルデューが組んだコメディー。監督は「メルシィ!人生」のフランシス・ヴェベール。
全体的に古くさいコメディー。二人が追っ手を逃れて走るシーンも、「用意、スタート」で走り出しました
と言うような感じで緊迫感がない。
全体的に力抜き過ぎ。ジャン・レノは無口な男を演じてるつもりかも知れないけど、こんな演技しかできない。
大根が際だってしまった。
コメディーってこんな感じでしょと、何かお手軽に作りすぎているようで、二大俳優を使った割に観るべき所がない。


「ザ・リング」 アメリカ映画
1月18日 ビデオ(WOWOWにて収録)

新聞記者レイチェルは姪の不可解な突然死を探る途中、「死のビデオ」の存在を知る。
そのビデオを観ると1週間後に死が訪れるというのだ。
姪が仲間達と泊まった山荘でそのビデオを観たレイチェルは、自分も死の恐怖にさらされ、
息子もまたそのビデオを観てしまう。
別れた夫とビデオに隠された真相を究明しようとするが、死への時間は刻一刻と迫ってくる。
和製ホラー映画「リング」のハリウッド・リメイク版。
日本映画と同じように忠実にリメイクされているが、やはりどこかしら日本と欧米で怖がり所が違うよう。
決して出来は悪くはないのだけど、もひとつ怖さに欠ける。
ナオミ・ワッツ主演、監督は「タイム・マシン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」のゴア・ヴァービンスキー。


「ドッグヴィル」 デンマーク映画
1月16日13:30 ヘラルド試写室(ギャガコミュニケーションズ、Gシネマグループ)

ドッグ・ヴィルという貧しい村に一人の美しい女が逃げてきて、みんなでかくまうことにする。
条件は村人の雑用を手伝うこと。
土を耕し、子供に勉強を教え、身体の不自由な娘の世話をしたり盲目の男の話し相手になり、
果樹園を手伝う。
だんだん村に女はとけ込んでいったが、やがて奴隷のような存在になっていく。
ニコール・キッドマン主演、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー監督作品。
例の「ドグマ」で撮られてるがセットが変わってる。
倉庫みたいなだだっ広い所に通りや家の間取りなど床に線だけ引き、
最小限の家具調度品だけしか装置がない。
そこで村人役の俳優達が芝居するが、何せ壁など具体的な物がないので村人達がむき出しで全員演技してる。
まるで舞台を見ているようだけど、アップやロングなど観客の目をコントロールできるのは紛れもない「映画」だ。
9章のチャプターに分けられ、章の始めにこれから起こることのあらましが語られる。
ナレーションで事細かに起こっていることが説明されわかりやすいが、
それでも物語を語り尽くすのに3時間近くかかった。人間の業の深さをこれでもかと見せる。
ローレン・バコールやジェームス・カーンなど達者な役者達がそれぞれの役を忠実に演じ
人間の心の暗部を観客の前に曝す。
この実験的な演出は賛否両論だけど、装置を簡素化することによって余計な物を排し、
人間の心がよりクローズアップされた。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」同様、後味の悪さは残るものの、ラース・フォン・トリアー監督は
やはりすごい映像作家であると思った。


「フルタイム・キラー」 香港映画
1月14日15:40 東映試写室(彩プロ)

タイ、警察に単身乗り込み派手な銃撃戦を繰り広げながら留置場にやってきた殺し屋トクは拘留中の男をみごと爆殺する。
しかし、どんなに困難な仕事をこなしても、冷静で正確な孤高の殺し屋「O」の影にかくれ
彼の評価は常に「NO.2」だった。
殺し屋「NO.1」の座を奪うため「O」の家政婦チンに接近し、「O」に勝負を挑むが、
刑事のリーも「O」を追っていた。
「インファナル・アフェア」のアンディー・ラウと反町隆史主演。
ありがちなシチュエーションのアクション映画だが、アンディー・ラウの日本語が下手すぎる。
何も無理に日本語をしゃべらなくてもいいのに。日本人にとっては興ざめ。
それにアンディー・ラウのキャラクターも変。もっと違うキャラで狂気を出してもよかったのに。
反町はカッコつけすぎやし、ラウは変なとこイッてるし、どうも話にノリきれんなぁ。


「サロメ」  スペイン映画
1月14日13:30 ヘラルド試写室(ヘラルド)

フラメンコダンサー、アイーダ・ゴメスの舞台を映画として記録するため監督は打ち合わせをし、
リハーサルを始める。
物語は「サロメ」。誘惑に屈しないヨハネの心を自分に向けるため、王の前で踊ることを承諾したサロメ。
妖しいその踊りは王の心をとらえ、何でも好きな褒美をやると言われる。
サロメの求めた褒美とは、ヨハネの首だった。
ダンサー、アイーダ・ゴメスの舞台の映画化で、少女時代の苦難の様子を自らが語る部分もあるが、
後半2/3は舞台をそのまま映像化している。
ダンスは確かにすばらしいが、舞台をただ撮影しただけでこれが果たして映画といえるのか。
映画としての工夫がないのでただの記録映画になってしまってる。
もうすぐこの「サロメ」の日本公演があるそうだが、来日公演前の予告編なのか、
12,000円払って舞台を観られない貧乏人向けの「天井桟敷」なのか。
ダンスはすばらしいが映画としては今ひとつ。