映画日記 2002,1,1〜12,31
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「わすれな歌」 タイ映画
12月26日 ヘラルド試写室(クロックワークス)

タイの田舎村、祭りで歌うのは陽気なペン。会場にいる美しい娘サダウに向けて彼は歌う。
サダウに首ったけのペンは何かにつけて彼女の家を訪れる。サダウもまんざらでもなく
サダウの父親も渋々結婚を許す。
やがてサダウは身籠もるが、ペンは村のくじ引きで負けて兵役に就かないといけなくなってしまった。
厳しい訓練を受けながら兵舎でサダウを思って歌うペン。しかし二人の心は毎日の手紙で繋がっていた。
休暇中ペンはのど自慢大会で優勝してプロダクションからスカウトされる。
サダウに会いたいペンは軍を脱走して歌手修行をするが、仕事は雑役ばかり。
2年後、軍隊を脱走した夫の居場所を知ったサダウと父は、偶然代役で登場したペンの
華やかなステージを見る。
やっと再開した二人だが、ホモっ気のあるプロダクション社長に襲われ、殺害してしまい、
再び二人は離ればなれになってしまうのだった。
タイのタランティーノと呼ばれるペンエーグ・ラッタナルアーン監督作品。
ペンは陽気で優しいが、歌手になるため軍隊を脱走したり、
社長にホモっ気がある事に気付かなかったり、アホである。
どんどん事態を悪化させる。全然共感できない。
サダウ役のシリヤゴーンは可愛く健気。
随所で心境を歌うシーンがあり、これは一種のミュージカル映画と言えるかもしれない。


「パラサイト」 アメリカ映画
12月19日 ビデオ(WOWOWにて収録)

いじめられっ子のケイシーはグラウンドで不思議なさなぎを発見し、
水槽に入れると活動を始め、見る見るうちに細胞分裂を繰り返す。
一方高校内では教師達が未知の生物に寄生され、魔の手は生徒達にもおよび、
町の住人までも次々寄生されていく。
異変に気付いたケイシー達は異星人から人類を守るために立ち上がる。
「デスペラート」のロバート・ロドリゲス監督、イライジャ・ウッド主演作品。
小さなさなぎから寄生するという設定自体がすでに陳腐で、あほらしくなってくる。
何の説得力もないので見ていても全然怖さが伝わってこない。
ラストで「エイリアン2」の女王のような様な異星人と対決させても、
目新しさがないしあほらしさが勝ってしまうので全然盛り上がらない。
ロドリゲスならもっと「遊星からの物体X」みたいに撮れたやろうに、
えらい駄作を作ってしまったもんや。


「キス・キス・バン・バン」 イギリス映画
12月18日 15:30 ソニー試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Kシネマ)

殺し屋のフィリックスは寄る年波には勝てず引退を決意するが、
ボスは生きて組織を抜けることを許さない。
フィリックスの弟子のジミーらにフィリックス抹殺の命令を下す。
引退したフィリックスは、長年付き合ってきた彼女のシェリーから妊娠を告げられるが
結婚するのは二の足を踏む。
老人ホームに入っている父親の入院費用のため再就職先を探すが、
見つけた仕事は密輸業者が溺愛する33歳の息子ババの「子守」だった。
ババは過保護のあまり33年間家から一歩も出たことが無く、身体はおっさんだが
頭の中は子供のままだった。
ハードボイルドなフィリックスと子供頭のおっさんババの奇妙な生活が始まったが、
殺し屋達はフィリックスを狙って行動を開始した。
主演のステラン・スカルスガルドが渋くていい。
ババ役のクリス・ベンも、こういう役はついやりすぎてしまうが抑えめに演じたのがいい。
基本的にはコメディーだが声に出して笑わせるのではなく、ニヤリとさせ、ホロリとさせ、
音楽がかっこいい。このバランスがいい。大人の味付け。
登場するほとんどの人間が主人公フィリックスに影響を及ぼす大事な役割を担っている。
そのキャラクターもはっきりしている。
わかりやすいコメディーだが、テーマは「男とは」と言う硬派な物であったと最後に気付く。


「Mr.ディーズ」 アメリカ映画
12月18日 13:00 ソニー試写室(ソニー)

アメリカの田舎町でピザ屋を営むディーズのもとにニューヨークから使者が来た。
メディア王で巨大企業の社長として巨万の富を築いたプレストンが冬山で遭難して死に、
唯一の血縁としてディーズが遺産を相続することになったのだ。
相続手続きのためニューヨークを訪れた純真なディーズは、莫大な遺産にも無頓着で
マイペース。
マスコミはディーズの素顔をスクープしようと躍起になり、女性リポーターのベイブは
看護婦と偽りディーズへ接近する事に成功する。
一方重役達は会社乗っ取りを狙い、ディーズに株の譲渡書にサインさせてさっさと追い返そうと
画策していたのだった。
アダム・サンドラー主演のコメディー。
1936年の「オペラハット」のリメイクだが、ギャグがいつの時代やと思うほど古くさい。
サンドラーは高みに上がるために今大事な時期だと思うのに、こんな映画出てていいのか。
親しみのもてる俳優で、ちゃんとすればエディー・マーフィーかジム・キャリーぐらいになれそうやねんけどなぁ。
共演のウイノナ・ライダーもそれほどコメディーが達者ではないし、出てくるたびに万引き事件が
脳裏をよぎる。
田舎者が金持ちになると言う成金物語はよくある題材で、もっとおもしろくできるはずやのに
この程度というのは監督と脚本が悪い。


「アレックス」 フランス映画
12月17日 19:00 完成披露試写、梅田ブルク7(コムストック)

美しく魅力的なアレックスと恋人のマルキュス、それにアレックスの元彼ピエールは3人仲良く
パーティーに赴いたが、羽目を外しすぎたマルキュスに怒ってアレックスは先に帰ってしまった。
しかし帰宅途中アレックスは地下道で暴行を受け重体。
救急車に運び込まれるアレックスを見つけたマルキュスは泣き崩れるが、
地元のチンピラが復讐を持ちかける。
チンピラと共に血眼になって犯人を捜すマルキュスをなんとか鎮めようとするピエールだが、
犯人がゲイ・クラブにいることがわかり、ピエールの制止を振り切りマルキュスは乗り込んでいくのだった。
「マレーナ」のモニカ・ベルッチ、「ドーベルマン」のヴァン・カッセル主演。
カンヌで物議を醸した問題作。
時間を完全に逆から追って物語が進む。
エンドロールから始まって、物語の最後から時間を逆にさかのぼり、
何もなかった平和な時にもどった時に映画が終わり、タイトルが現れる。
衝撃的だった。近来希にみるダメージを受けた。
すごい暴力描写。
8分にわたるリアルすぎて吐き気を催すようなレイプシーン。
暗くて陰鬱なゲイ・クラブ、まとわりついてくるハード・ゲイ、怒号、凄惨な暴力、
手持ちの不安定なカメラ。
激しく光が明滅するシーンが1カ所ある。アニメ「ポケモン」で同じような明滅シーンで
子供達が多数痙攣を起こした。この映画大丈夫か。
とにかく興味本位で見に行くと、とんでもないお土産を心に持たされて帰る羽目になる。


「カンパニー・マン」 アメリカ映画
12月17日 15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

モーガン・サリバンは単調な生活から抜け出すため産業スパイとして働くことにした。
最初の任務は企業の商品説明会で講演を聴きながら送信機のボタンを押すだけの単純な仕事だったが、
機器の受け渡しやニセIDなど、さながらスパイ映画の主人公のような高揚した気分になり、
今までと違った自分を演じることに生き甲斐を感じ始めるが、任務をこなすうちに激しい頭痛と
不思議な映像のフラッシュバックに悩まされる。
そんなモーガンの前にミステリアスな東洋女性が現れ、モーガンが行ってるスパイ活動はでっち上げで、
会社からスパイとして洗脳されていると言う。
モーガンは自分のしてることだけではなく、自分の存在もあやふやになっていく。
「CUBE」のヴィンチェンゾ・ナタリ監督作品。
全体的にテレビドラマのようなちゃちさがつきまとう。
謎の女役のルーシー・リューも、ミステリアスな女と言うよりも、なぜ東洋人?という謎が勝ってしまう。
ラストのドンデンも、目新しさはない。
1カ所「CUBE」のような仕掛けが登場し、そこだけ少しわくわくさせる。


「西洋鏡」 アメリカ・中国映画
12月17日 13:00 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ)

1902年、リウは北京の写真館でカメラマンとして働いていた。
リウは新し物好きで、客をリラックスさせるためにと蓄音機を鳴らすが、店主はわかってくれない。
イギリス人のレイモンドが西洋鏡なる新発明を持ってやって来て、町のはずれの小屋を借りて
映画の興行をするが、中国語がしゃべられないレイモンドを人々は相手にしない。
本当に写真が動くのかと半信半疑のリウは映画を見てびっくり、すっかり映画に魅せられてしまった。
リウの呼び込みで映画館は大入り満員になり、リウの協力と口コミで客は増えていったが、
京劇のスター、タンは客を映画に盗られるのではないかとリウ達に冷たい。
そんなある日、レイモンドは西太后の誕生会で映画を上映するように命じられる。
「中国版『ニュー・シネマ・パラダイス』」と謳われている中国での映画草創期を描いた作品。
当時の映画はもちろん無声で、物語もなくただいろんなフィルムを繋いだだけの物だけど、
初めて映画に触れた人々の驚きと楽しさがよく現れている。
京劇スター、タンの娘とリウの恋物語も織り込まれ、物語としてはベタだけど楽しめる。
でも予算が少ないのかセットが少しちゃち。
特に冒頭は、昔の街並みのセットに当時の衣裳を着たそれらしい役者を配置しましたというような
わざとらしさがある。
途中で本物の紫禁城が登場するので、セットとの時代の質感の違いが出てしまう。
こういう映画は金をかけて時代の空気まで作る美術スタッフが必要なのだと思う。


「呪怨」 日本映画
12月16日 20:50 テアトル梅田(東京テアトル+ザナドゥー)

ホームヘルパーのボランティアをしている女子大生の里佳がとある家に派遣される。
訪れた家は散らかり放題で老婆が何かに怯えている。
2階で物音がするので里佳が上がっていくと押入のふすまがテープで厳重に封印されていた。
数日前、その家の息子が仕事から帰ってくると妻が死んでいた。
部屋には見たこともない子供がいるのを目撃する・・・・。
奥菜恵主演、清水崇監督作品。
その家に関係するすべての人間が次々襲われる設定だが、老婆の娘の会社の警備員までも
関係ないのに会社で襲われるのはどうかと思う。
幽霊も何度も同じパターンで登場するし、見せ過ぎ。
「家」に関係する人間の襲われ方も、どこかで聞いた怪談話を集めてきたよう。
ただただ怖い映画を撮りたかったらしいけど、ただ怖いだけではなぁ。
やはり芯のあるストーリーが必要だったと思う。


「マイノリティ・リポート」 アメリカ映画
12月12日 10:45 ナビオTOHOプレックス

2054年、ワシントンではプリコグと呼ばれる超能力者が未来に起こる殺人を予言し、
犯罪予防局は犯人が殺人を犯す前に逮捕する権限が与えられていた。
ところが予防局の敏腕捜査官アンダートンが見ず知らずの男を36時間以内に殺すと予言され
アンダートンは逃走、身の潔白を証明しようとするが、町のいたるところに
IDとなる瞳孔を読みとる装置が設置され、どこに行っても居場所がばれてしまう。
アンダートンは闇医者の元を訪れる。
トム・クルーズ主演、スティーブン・スピルバーグ監督作品。
SF映画としては予算もあるしよくできてるが、どうもしっくりこない。
なぜかというと、スピルバーグらしさがない。
「AI」もSFだったが、どこかに「スピルバーグやなぁ」と思わせるうまいカットが随所にあったが、
この映画は途中で「そう言えばスピルバーグやったな」と、スピルバーグが撮ったことを忘れてしまうほど「普通」。
「ブレード・ランナー」と同じ原作者と言うこともあるのだろうけど、雰囲気も似ている。
予言された犯人の名前を出すとき、なぜ機械でわざわざ木彫りにせんといかんねやろう。
しかもグルグル螺旋状のチューブを通って。
すっとコンピューターのディスプレイに表示できんのやろうか。
スピルバーグはただ達者なだけの監督と違うはずなのに、どうしてしまったんやろう。


「ボーン・アイデンティティー」 アメリカ映画
12月11日 13:30 UIP試写室(UIP)

地中海洋上で漁船が海面に男が浮いているのを発見する。
引き上げるとウエットスーツで包まれた身体には数発の銃弾が撃ち込まれていた。
男は気が付いたが記憶喪失で自分が誰か思い出せない。
身体に埋め込まれたカプセルにはスイス銀行の口座番号が隠されていた。
港に着き、とりあえず男はスイスに向かう。
野宿をしていた男は警察に逮捕されそうになるが、あっという間に2人の警官を倒してしまう。
そして銀行の貸金庫には大金と、名前の異なるたくさんの偽造パスポートと拳銃。
いったい自分は何者か謎が深まるばかりだった。
警察に追われ、たまたま居合わせたマリーと名乗る女性に、大金を餌に手がかりのあるパリまで車で連れて行って貰うことになったが、
CIAは欧州に散らばった殺し屋達を男の追跡のために向かわせたのだった。
マット・デイモン主演のスパイ・アクション。
アクション自体は楽しめるが、殺人マシーンとして訓練されたスパイが秘密を握ったまま
記憶喪失になると言う設定は「ロング・キス・グッドナイト」などですでにやってるし、
オリジナリティーがない。
第一マット・デイモンが手練れのスパイに見えん。顔が優しすぎて精悍さに欠ける。
色気を加えるためにやっぱり行きずりの女を巻き込んだ。こんな方法しかないんやろうか。
集められる刺客達も、もっと手強くないと主役が引き立たん。
これはシリーズにならんな。


「アカルイミライ」 日本映画
12月10日 15:30 ヘラルド試写室(アップリンク)

雄二はおしぼり工場でバイトしてるが、時々感情を抑えきれなくなり暴走することがある。
そんな雄二を先輩格の守は何かと面倒を見、また雄二も守をしたっていた。
しかし些細な事件で守がクビになり、むしゃくしゃした雄二はバイト先の社長宅に
鉄パイプを持って入っていくが、すでに社長夫婦は何者かに殺されていた。
やがて守は殺人罪で捕まり面会に訪れた雄二に、守は譲ったクラゲの飼育方法を
教え、独房で自殺する。
火葬場からの帰り道、守の父親真一郎と出会い、真一郎のリサイクルショップで
働くことにするが、生きる目的を見失った雄二は真一郎のもとを飛び出す。
黒沢清監督、オダギリジョー主演。
先輩格の浅野忠信は相変わらず芝居してるとは思えない「ゆるさ」。
はじめは淡々としてて、セリフもぼそぼそで退屈だったけど、
そのうち物語に入っていった。
父親役の藤竜也がいい。今までとは違う演技。
妙に優しくて時に激しく感情を爆発させる。
でも登場人物がみんなおしゃれなファッションなのは変。
リサイクル屋の親父まで何かおしゃれ。
所々挟まれたビデオの映像は、急に画質が変わって違和感がある。


「リロ・アンド・スティッチ」 アメリカ映画
12月5日 19:30 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(ブエナ・ビスタ)

ハワイに住む5歳のリロは両親を事故でなくし、19歳の姉ナニと暮らしている。
姉妹げんかの絶えない二人だが、友達となじめないリロのために犬を飼おうと
野犬保護施設で1匹の奇妙な犬を選びスティッチと名付ける。
ところがスティッチは、とある惑星で遺伝子操作で生まれた暴れん坊の生物で、
追放されるところを逃げ出し、地球にやってきたのだった。
追っ手から逃れるため犬のフリをしてリロの家で過ごしていたスティッチだが、
悪さがたたってナニは失業してしまう。
福祉局の役人はナニが養育資格なしと判断し、リロは施設に入れられてしまうことになった。
ディズニーのアニメ作品。
主人公リロもスティッチもあまり可愛くないので感情移入が半減。
福祉局の役人の設定も、最後は「そんなアホな」と言うような無理がある。
「ポカホンタス」や「ムーラン」のような、アジアっぽいキャラはどうもディズニーには馴染まない。
ただ冒頭の宇宙船のシーンはディズニーには珍しく、結構見せる。
この宇宙SFものでアニメを作ってほしい。


「バティニョールおじさん」 フランス映画
12月4日 13:30 東映試写室(アルバトロス・フィルム)

ドイツ軍占領下のパリ。肉屋を営むバティニョールは上に住むユダヤ人一家の検挙に
協力してしまう。
おかげでユダヤ人一家が住んでいた広い部屋を与えられることになったが、自宅でのパーティーの最中、
ユダヤ人一家の子供シモンが逃げて来た。
自分がユダヤ人と関わってると思われると困るバティニョールは、仕方なくシモンを隠す。
それから屋根裏で家族にも内緒でシモンをかくまうバティニョールは、自分のために家族が捕まった
シモンのためにスイスへ脱出させようと画策するが、ナチス協力者の娘婿にかぎつけられる。
ジェラール・ジュニョ監督・主演。
商売をする上ではドイツ軍と仲良くするのが得策の時代、バティニョールもまたうまく立ち回りたかった。
前半は仕方なくユダヤ人検挙に協力してしまう抜け目ない商売人、後半は良心に従ってユダヤ人の子供を守ろうとするいい親父と、急に変わる。
おまけにロマンスまで芽生えるのはちょっとなぁ。
子役のジュール・シトリュックは賢そうで可愛い。演技も達者。


「グッド・ボーイズ」 アメリカ映画
12月3日 13:30 東宝東和試写室(ギャガ・ヒューマックス)

マイアミで賞金稼ぎをするバッカムは、ちんけな詐欺師のレジーを追っていた。
レジーが逃げ込んだ先はダイア強奪の現場でバッカムは危うく殺されそうになる。
まんまと逃げおおせたレジーは自分のアパートに戻る。
ちょうど恋人のジーナが宝くじの抽選を見ていて大声を上げる。
レジーに頼んでいた宝くじの数字がドンピシャ1等6000万ドルの大当たり。
喜ぶ二人だが強盗団の車に宝くじを入れた財布を落としたらしく見あたらない。
追ってきたバッカムにレジーは宝くじ奪回に力を貸してくれと持ちかける。
しがない賞金稼ぎのバッカムにとっても人生をやり直すチャンスだった。
アイス・キューブ製作・主演のお気楽アクション。
どうも「48時間」のコンビを意識してるようだけど、速射砲のように軽口を飛ばす
と言うふれこみのレジー役のマイク・エップスの喋りがそれほどおもしろくない。
エディー・マーフィーほどのインパクトがない。
ストーリーもご都合主義だし、もっとまともな脚本なかったんやろうか。


「レッド・ドラゴン」 アメリカ映画
12月2日 19:30 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(UIP)

レクター博士を逮捕する際、瀕死の重傷を負い、引退した元FBI捜査官グレアムのもとに、
以前の上司クロフォードが訪れる。
プロファイルに卓越した能力を持つグレアムに、2家族惨殺事件の捜査協力を要請するためだった。
渋々捜査に協力することになったグレアムは、手がかりから犯人像を絞るが、惨殺された2家族には
共通点が見つからない。
そこで今は精神病院の最警戒区域に収監されているレクター博士に捜査協力を求める。
「羊たちの沈黙」「ハンニバル」のレクター博士シリーズのこれが第1話にあたる作品。
レクター逮捕から始まり「羊たち〜」でお馴染みの精神病院特殊病棟でしかレクターは登場しない。
86年に一度「刑事グラハム・凍りついた欲望」として公開され、「羊たち〜」公開後ビデオでは「レッド・
ドラゴン、レクター博士の沈黙」と改題して発売された。いわばリメイク作品。
アンソニー・ホプキンスも悪くないが精神病院のシーンでも「羊たち〜」程のインパクトはもうない。
ヘリコプターのシーンなども昔の「レッド〜」と同じようなカット割りだし、途中で「これは伏線やな」と
悟られるわざとらしいシーンもある。
ハービー・カイテルのクロフォード役もイメージが違う。
「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」のエミリー・ワトソンだけが得をしたかもしれない。
「ラッシュ・アワー」のブレッド・ラトナー監督、他にエドワート・ノートン、レイフ・ファインズ出演。


「CQ」 アメリカ映画
10月23日 13:30 東映試写室(東北新社)

1969年、パリの映画会社で働くアメリカ人青年ポールは、2001年を舞台にした
おしゃれでセクシーな女性スパイが活躍する映画「ドラゴンフライ」の編集をしながら、
自らは同棲している彼女マルレーヌとの生活を克明にドキュメンタリーとして撮影していた。
しかし彼女には、ただ闇雲に二人の生活を撮っているだけで、
それは芸術作品とは思えなかった。
「ドラゴンフライ」の監督アンドレイはプロデューサーとエンディングの意見の食い違いから
降板され、次の監督も交通事故でリタイア。
ポールに監督のおはちが回ってきた。
やがて主演女優のヴァレンタインに惹かれはじめたポールは、問題のエンディングを
娯楽作品として撮るか、メッセージを込めるかで悩む。
そんなある日、ポールが部屋に戻るとマルレーヌは荷物をまとめて出ていった後だった。
フランシス・フォード・コッポラの息子、ローマン・コッポラ初監督作品。
今まで映画の世界と離れたCMやミュージッククリップの監督として活躍していた
ローマンが自分の一番好きな時代69年を舞台に、スパイ映画というキッチュな活劇を縦糸に
一人の青年の成長を横糸に描くが、ファッションやノリなど、この時代にかなりこだわりを
持ってるよう。
冒頭のセルフ・ドキュメントの作りと、エンディングのフィルムは同じ映像を繋いだだけなのに
全く別の物になっている。
主人公の成長を出来上がったドキュメンタリー映画で見せる。
同じ素材を下手にもうまくも見せられる。この部分だけでも力量を見せられた。
うまい監督だけど撮りたい映画の方向性があるようなので、
ハリウッドの娯楽作品なんかは簡単には撮らないのだろうなぁ。


「化粧師」 日本映画
10月15日 18:30 枚方市民会館大ホール

大正時代、天ぷら屋の二階に間借りをしている化粧師(けわいし)の小三馬は
女性達から人気の的だった。
小三馬に化粧をして貰うと生き生きすると言う大店の女将、よい客が付くと言う
遊女、主役に抜擢された新人女優など・・・。
自分で薬草などを煎じて化粧品を自ら作る小三馬は頑固者で、誰でも彼でも
化粧するわけではなかった。
そんな小三馬を天ぷら屋の娘純江は思いを寄せ、弟子にしてくれと迫る。
椎名桔平主演で菅野美穂、池脇千鶴ほか、いしだあゆみ、田中邦衛、佐野史郎
大杉漣ら脇役人も豪華。
化粧によって人生が変わっていく様が描かれていくが、それぞれのエピソードは
独立していて、ぶつ切れの感がある。
ストーリー展開も少し強引。
俳優陣も豪華で、きれいには撮られているが、いかにも「化粧品会社が作りました」
と言うような映画。


「ジョンQ」 アメリカ映画
9月3日 19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(ギャガ・ヒューマックス)

ある日ジョンの息子のマイクが野球の試合中に倒れ病院の担ぎ込まれる。
マイクは重い心臓病で、心臓移植しないと数週間の命と診断される。
高額の治療費が必要で、リストラされ今までかけていた保険も、知らない間に
ランクダウンされていたジョンの保険では治療費を支払えない。
このまま息子を見殺しに出来ぬとジョンは銃を持って病院に立てこもる。
デンゼル・ワシントン主演、ジョン・カサヴェテスの息子ニック・カサヴェテス監督作品。
企業の経営論理と保険制度のひずみで不条理な苦しみを与えられた人間の、
息子の命を救いたいがための犯行として好意的に描かれてはいるが、
「やっぱりピストル持って病院占拠するのはどうかなぁ」と言う気持ちが残ってしまう。
ジョンに好意的な説得役の刑事ロバート・デュバル、選挙に出る前に名前を売りたい
強硬派の警察署長レイ・リオッタなど、配役がいかにも過ぎる。
オープニングの事故が物語にどう関係がるのかと思ったら、終盤に「こんな所に繋がるのかい!」
と思うほど時間経過を無視して無理矢理繋げる。
この映画で受賞したのではないのに「アカデミー主演男優賞受賞」を大々的に謳って
デンゼルの名前で宣伝をかけて動員するのだろうなぁ。


「サイン」 アメリカ映画
8月21日 19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(ブエナ・ビスタ)

グラハムは牧師だったが最愛の妻の不条理な死で信仰心を捨て、農場を営みながら
2人の子供と弟とひっそりと暮らしていた。
ある日グラハムのとうもろこし畑に巨大なミステリーサークルが現れてから、
回りでは不可思議なことが起こり始める。
家中に水の入ったコップを並べ出す娘、凶暴化する飼い犬。
やがてグラハムは未知なる何者かの存在を確信していく。
メル・ギブソン主演、「シックス・センス」「アンブレイカブル」のM・ナイト・シャマラン監督作品。
「未知なる者」がステレオタイプで陳腐なものではあるが、見せ方がうまい。
得体の知れない者に対する主人公の不安感を観客に同じように与える小道具の配置の妙。
兆候としての「サイン」は少し説得力不足でラストも出来すぎ。
か弱い者が密室に逃げ込むと子供の発作が起きるのは、「パニック・ルーム」の糖尿病と言い、
この映画の喘息と言い、定番になった感がある。
期待したどんでん返しも無く、少し拍子抜けだけど、シャマランの映画作りのうまさ、
独特の味付けの仕方は健在。


「猫の恩返し」 日本映画
8月14日 15:10 ファボーレ東宝

高校生のハルは下校途中で車に轢かれそうになった1匹の猫を助ける。
猫は人間お言葉で礼を言いその場を立ち去る。我が耳を疑ったハルだが、その夜信じられない事が起こる。
猫王が行列を連れてやって来て、助けた猫は王子で、お礼にハルを王子の妃にするという。
猫の国に招待されたハルだが、不思議な声が聞こえ、ハルに「猫の事務所を探せ」という。
ブタ猫ムタの協力で猫の事務所を見つけ猫の置物バロンと会うことができたが、
ハルは猫王の側近に連れ去られて猫の国に連れてこられる。
このままではハルは本当に猫の妃にされてしまう。バロンとムタはハルを追って猫の国に向かった。
スタジオジブリのアニメだが、「千と千尋の神隠し」の後としてはかなり物足りない。
ストーリーもキャラクターのふくらませ方も今ひとつ。
おまけの「ギブリーズ」を付けてもらっても料金分楽しんだ感じがしない。
「千と千尋〜」がよかっただけに、これからのジブリ作品は大変だと思う。


「ギブリーズ episode2」 日本映画
8月14日 15:10 ファボーレ東宝

架空のアニメ製作会社、スタジオギブリの面々によって繰り広げられる
6話の短編オムニバスアニメ。
「猫の恩返し」のおまけ的作品だけど、同じキャラクターでも6話全部作画方法が違う。
「となりの山田くん」のように、CGではかなり難しいタッチを出してるのもあるだろうけど、
このおまけは必要だったのだろうかと思う。
小さな子供にはわからない話もあるし。


「チェンジング・レーン」 アメリカ映画
8月6日 15:30 UIP試写室(UIP)

ニューヨークのハイウェイ。弁護士のギャビンは法廷に向かっていたが渋滞に巻き込まれ、
急ぐあまり無理な車線変更をして接触事故を起こす。
相手は保険会社に勤めるドイル。彼も妻から子供の親権を取り戻すため裁判所に向かっていた。
ドイルからの示談の交渉を時間がないからと白紙の小切手を投げ捨てて立ち去るギャビン。
しかしギャビンは裁判に必要な重要書類をその場に落としていたため窮地に立たされる。
一方ドイルも裁判に遅刻したため親権は妻に渡ってしまう。
書類を拾ったドイルは一旦はギャビンを憎んだが、怒りを静め書類を返そうとしたが、
なんとしても書類を取り返そうとするギャビンの汚いやり方に再び怒りが燃え上がる。
あの些細な事故さえなければ・・・。
それから二人の人生の歯車は狂いだし、埋めようのない溝を作っていく。
ベン・アフレック、サミュエル・L・ジャクソン主演。
たった一度の車線変更で人生が狂い出すというアイデアはいいが、
二人とも裁判所に急いでるというのはネタがかぶってる。
一人は別の事で急いでないとドラマとしておもしろくない。
書類を返さないドイルを追い込むため、裏稼業の男に頼んでハッキングで
ドイルの口座に侵入し破産させるくだりは、いまだにそんなパソコンのキーを
ちょいちょいと叩くだけで侵入できる金融機関なんかあるのかと思うほど陳腐。
もっと練ればおもしろくなった題材だけに残念。


「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」 アメリカ映画
8月5日 19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(ギャガ・ヒューマックス)

イギリスMI6のスパイ、オースティンの父ナイジェルが何者かに誘拐された。
父を追ってタイムマシンで1975年へタイムスリップしたオースティンは、同僚の
フォクシー・クレオパトラと共にゴールドメンバーと称する悪党のクラブに乗り込んでいく。
マイク・マイヤーズ主演の人気シリーズ第3弾。
どうもこのマイク・マイヤーズを「ウエインズ・ワ−ルド」の時から好きになれない。
ギャグがおもしろくない。
ストーリーもよくわからない、というより別にどうでもいい筋運び。
「ギャグを繋ぐための一応の流れ」的なストーリーだから話は頭に残らない。
下ネタは嫌いではない方だけど、マイヤーズのギャグは節度がない。
もうちょっと手前で止めとけばいいのにと思うが、とことんやってしまう。
影絵のシーンだけ少し笑った。
大物スターがカメオ出演しているが、こんな映画に出て何の得があるのだろう。
何故ここまでシリーズ化するほど人気があるのだろう。
わからんなぁ。この映画をおもしろいという人とは友達になれない気がする。


「ハイチ カリブの鼓動」 ハイチ映画
8月3日 18:30 OAPスカイプラザ

ジャズピアニストのみちこはハイチ人パーカショニストのアゾールの音楽に傾倒し
ハイチを訪れる。
ハイチで様々な場所を見、いろんな人と出会い、アゾールを生んだハイチという国を
肌で感じ始めていく。
カリブ海に浮かぶ小さな島国ハイチPRのためのフィクション・ドキュメント。
単なる観光案内の映画とせず、簡単なストーリーに名所旧跡を絡めたり、
日本の流鏑馬(やぶさめ)を挿入したり、少し芸術的な作品にしてる。
今どこかで万博をやっていたら、そのままハイチ館で上映できそうな作品。


「ロード・トゥ・パーディション」 アメリカ映画
8月2日 19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(20世紀FOX)

大恐慌時代のシカゴ。
12歳のマイケルは弟のピーターと厳格な父、そして優しい母と幸せに暮らしていた。
ある日ピーターはマイケルに父の仕事を尋ねる。
父は自分達を孫のように愛情を持って接してくれるルーニーさんの仕事の手伝いをしてるのは
知っているが、具体的な仕事内容はわからなかった。
マイケルはこっそり父の車に忍び込み仕事に付いていくことにした。
父とルーニーさんの息子のコナーは、とある倉庫に入っていった。
ドアの隙間からのぞくマイケルの目に信じられない光景が飛び込んできた。
父がマシンガンをぶっ放し相手の男達を皆殺しにしたのだった。
自分がギャングの手下だと息子に知られてしまった父サリヴァンはうろたえたが、
マイケルのショックはあまりにも大きかった。
一方コナーは息子の自分より父の愛情を一身に浴びているサリヴァンをねたみ、
サリヴァンの留守中に忍び込み妻とピーターを殺害。
サリヴァンとマイケルは死の逃避行に旅立つ。
しかしサリヴァン親子には名うての殺し屋マグワイアが、しつこく付け狙うのだった。
「アメリカン・ビューティー」のサム・メンデス監督、トム・ハンクス主演。
老ギャングのポール・ニューマンが実に渋くて存在感のある演技を見せる。
出演作を選びに選んでやっと出る気になった作品ではないかと思うほど、
役をよく考え、作り込んでいる。
アカデミー助演男優賞を獲るのではないかと思う。
ジュード・ロウは頭を薄くしてみそっ歯にし、わざと汚してへんな殺し屋を作り上げた。
主役のトム・ハンクスがかすむほど、両脇のニューマンとロウが役をふくらませている。
ニューマンの演技を見るだけで映画代の元は取ったと言える。


「ジャスティス」 アメリカ映画
8月2日 15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

第2次大戦中のヨーロッパ。
上院議員の息子のハートは中尉の肩書きを与えられ、安全な後方の司令部で働いていたが、
上官をジープで送る途中で捕虜になり収容所に送られる。
そこでは親子代々の軍人マクナマラ大佐が捕虜達のリーダーとして統率していたが、
ナチスの拷問に耐えかね軍事機密をバラしたことがばれたハートは下士官用の宿舎に入れられてしまう。
ある日黒人兵士を激しく差別し、死に追いやったベッドフォードの死体が発見され、黒人兵士
スコットが逮捕される。
収容所内で裁判が開かれることになり法学を学んでいたハートがスコットの弁護士に任命される。
圧倒的不利な状況で、ナチスが陪審員の茶番のような裁判を何故行うのかハートは悩んだが、
その裁判にはマクナマラの大きな陰謀が隠されていた。
ブルース・ウィリスと若手急上昇のコリン・ファレル主演。
最近復権してきた娯楽戦争映画に、アメリカ得意の裁判物を絡めた作品。
前半は激しい戦闘シーンで掴み、後半は謎解きとサスペンスに持ち込む。
一粒で二度おいしい映画かも知れないけど、ひとつ間違うとどっちつかずになる。
見た人間によって賛否両論。
ブルース・ウィリスは最後きっちり一人カッコつけてる。


「OUT」 日本映画
7月19日 19:00 完成披露試写、リサイタルホール(20世紀FOX)

弁当工場で働く4人の女。雅子は夫がリストラされ息子は反抗して家庭は崩壊状態。
ヨシエは死んだ夫が残した寝たきりの義母の世話を続けている。
邦子はブランド狂で借金地獄に陥り、若い弥生は身重で、ギャンブル好きで暴力を振るう
亭主に悩まされていた。
ある日夫の暴力に絶えかねた弥生が夫を殺害してしまい、子供のために捕まるわけにいかないと
言う弥生にほだされ、雅子は死体をヨシエと共にバラバラにすることにする。
その現場に邦子が現れ、渋る邦子に弥生から金をもらってあげると持ちかけ作業を手伝わせる。
ところがずさんな捨て方をした邦子のために死体が発見され、闇賭博を開いていた佐竹に嫌疑が掛かる。
事件発覚を恐れた雅子は、邦子が金を借りているローン会社に
弥生の保証人契約を取り消すために乗り込み談判するが、金融屋の十文字に死体を解体したことがバレてしまう。
逆に十文字から暴力団絡みの死体の解体を依頼され、ビジネスとしてこの申し出を受ける。
そんな4人に、濡れ衣を着せられ復讐に燃える凶暴な佐竹の魔の手が忍び寄る。
桐野夏生のベストセラー小説の映画化。
死体を風呂場で解体するシーンでは、衣服が血で汚れないように水着に着替え、
シャワーキャップを被り、ゴミ袋でポンチョを作り水中めがねをかけたりする。
その滑稽さが悲惨さを和らげ、それが返ってリアリズムになっている。
この物語では希望のないギリギリのところで生きている女性達がもっと最悪の事態に巻き込まれ、
なおかつそこから未来へ脱出しようとするしたたかさと健気さが描かれているが、
原田美枝子、倍賞美津子、室井滋、西田尚美らが4人4様のキャラクターでいい味だしている。
ただ、凶暴なやくざ役の間寛平は悪人になり切れてなかった。きっととてもいい人なんやろうなぁ。


「スペース・カウボーイ」 アメリカ映画
7月18日 ビデオ(WOWOWにて収録)

フランク達は元空軍のテストパイロット。アメリカがソ連と宇宙競争でしのぎを削っている頃、
宇宙へ行くのが彼らの夢だった。
ところが宇宙開発の管轄が空軍からNASAに移り、アメリカ最初の宇宙飛行士はなんと
チンパンジーだった。
夢破れたパイロット達はそれぞれの道を歩み出す。
40年後の現代、旧ソ連の衛星が軌道を外れ、このままでは地球に激突して
深刻な打撃を与えてしまう。
何故かソ連の衛星に使われているアメリカの誘導装置を直せるのは開発したフランクだけ。
ところがフランクは誘導装置の修理の条件として、かつてのパイロット仲間で
再びチームを組んでこのミッションにあたりたいととんでもない事を言いだす。
渋々折れたNASAはこのおじん集団に地球の明暗を託したのだった。
クリント・イーストウッド製作・監督・主演の映画。
エンターティメントに徹し、そんなアホなというようなことも堂々とやってのける。
それなりにハラハラわくわくさせてくれるし、定石もしっかり押さえている。
伏線としての仕込みもネタバレするが苦にならない。
イーストウッドの娯楽作品としての演出もあるが、トミー・リー・ジョーンズや
ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナーらの肩の力を抜いた楽しそうな
仕事ぶりがほほえましく、理屈は置いといて楽しんでしまうのだと思う。


「チョコレート」 アメリカ映画
7月12日 13:30 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ)

ハンクの一家は3代に渡る看守だった。父親も自分もそして息子も。
当たり前のように看守になり、また有色人種に対する差別意識も父親譲りだが、
一人息子のソニーは違った。
隣の黒人一家と親しくするソニーをふがいなく思い、黒人死刑囚マスグローブの処刑時に
粗相したことに腹を立てソニーを激しくなじる。
しかしソニーは「僕はあんたを愛していた」と最後の言葉を残し自殺してしまう。
息子の愛に応えられなかったと悔恨の情にかられたハンクは刑務所を辞める。
馴染みのカフェーでは夫を亡くし、一人息子を抱えて死刑囚マスグローブの妻
レティシアが働いていたが知る由もなかった。
激しく雨の降りしきる中、道端で泣き叫ぶレティシアを偶然通りかかったハンクが発見。
ひき逃げにあった息子を車に乗せ病院に運ぶがあえなく死んでしまう。
短時間に夫と息子を失ったレティシアと、息子に厳しすぎて愛を受け止めてやれなかった
ハンク。
大きな心の空白を埋めようとするかのように、二人の心は急速に近づく。
自分の夫を処刑した男と知らずに・・・。
映画は全体的に抑え気味に撮られているが、次々起こる出来事のインパクトが衝撃的すぎて
抑えていてもかなり来る。
ビリー・ボブ・ソートンの演技もいいが、ハル・ベリー渾身の演技。
アカデミー主演女優賞もうなずける。
この作品、監督によってかなり出来は変わったと思う。
マーク・フォスター監督の起用は大正解。
ちゃんとしたビジョンを持って、激しさを隠しながら静かに物語を紡いでゆく。
フォスター監督、ハル・ベリー、ビリー・ボブ・ソートン、この3人によって作られた秀作。


「スチュアート・リトル2」 アメリカ映画
7月2日 19:00 完成披露試写、リサイタルホール(ソニー)

リトル家の一員としてジョージと共に小学校に通い始めたスチュアートだが、
パパとママは幼いマーサにかかりっきり、ジョージも人間の子供と遊ぶので
誰もネズミのスチュアートを相手にしてくれない。
そんなある日、凶暴な鷹のファルコンに追われた小鳥のマーガロを助け、
傷ついたマーガロを家に連れ帰る。
同じ小さな動物同士と言うだけでなく、マーガロに好意を抱き始めるスチュアート。
しかし楽しい日々はそう長くは続かなかった。彼女には秘密があったのだった。
ヒットシリーズ第2弾。
CG技術の進歩でスチュアートも毛並みがより細かくなり、動きも繊細。
普通のフルCGアニメと違って、実写の人間と共演しないといけないので
CG合成も大変だと思うが、全くそんな苦労を感じさせない。
内容は小さな子供連れでも安心して楽しめる夏休みファミリー映画だが、
上映時間が1時間18分とロードショー作品としては極端に短い。
しかし、幼児にはこれぐらいの長さがダレずに見られてちょうどいいのかも。


「ジェイソンX 13日の金曜日」 アメリカ映画
7月2日 13:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

近未来、不死身の殺人鬼ジェイソンは捕らえられクリスタル湖研究所で厳重に
拘束されていたが頑丈な鎖を断ち切り、軍の警備員達を血祭りに上げていく。
研究所のローワンはジェイソンを冷凍機の中に誘い込むことに成功するが、
自分も傷を負い冷凍されてしまう。
400年後、環境汚染の悪化で人類は地球を捨て、第2の地球に移住していたが、
旧地球探検隊が冷凍されたジェイソンとローワンを発見、宇宙船に持ち帰る。
未来の科学でローワンは蘇ったが、ジェイソンも覚醒してしまう。
逃げ場のない宇宙船内で屈強な兵士達もジェイソンの犠牲になっていく。
シリーズ10作目はとうとう宇宙が舞台。
ヒューマノイド型ロボットが登場したり、母船を捨てシャトルでの脱出を企てたり、
「エイリアン」シリーズなどの宇宙物の定番をすべて取り込んでスプラッターしてる。
大いなる定番の王道を行くB級スプラッター・ムービー。
ちゃんと随所にお色気要員も配置してシリーズの定番もはずさない。
最後はいったいどこまで行くねんと思わせるエスカレートぶりで笑わせ、
しかもまだまだ続く気配。
なかなかやりおるわい。


「天使にさよなら」 イギリス映画
7月1日 15:30 東映試写室(コムストック)

11歳のジミーはパパとママ、おじいちゃんの4人暮らし。
パパは失業中で生活はカフェで働くママが支え、おじいちゃんは鳩の世話。
ジミーは小さいときパパに「高い高い」されたときの幸せな気分が忘れられず、
天使になりたいと本当に願っていた。
そんなジミーの祈りが通じて大天使ガブリエルから天使見習いを命じられる。
そんな時パパは肺ガンを宣告されるが、見習い天使のジミーの力ではどうしようもない。
早く一人前の天使になってパパを助けようと、羽の付いた服を着て天使修行に励むが、
オカマと勘違いされて逆にパパの怒りをかってしまう。
造船の町ニューキャッスルでジミーにいっぱしの男になってほしいパパと、
天使になってパパの病気を治したいジミー。
お互いを思う気持ちは強いがすれ違う父と子。やがてパパの病気は悪化していく。
「リトル・ダンサー」の脚本家リー・ホールのラジオ・ドラマの映画化。
「リトル〜」同様、斜陽の工業地帯が舞台で街並みや全体のトーンはよく似ているが、
も一つ盛り上がりに欠ける。
「天使になる」事が少し突飛な願望のように見えるので、「バレーダンサー」より
感情移入がしにくい。
子役のショーン・ランドレスの演技も今ひとつ。
ラストは事情が飲み込めるまで少し時間がかかる。


「ショコラ」 アメリカ映画
6月30日 ビデオ(WOWOWにて収録)

フランスの田舎町に北風と共に母と娘が越してきた。
村は厳格な村長のもと、信仰心厚く質素な生活を旨としてきた。
母子は一軒の店を借りチョコレート屋を始める。
断食期に甘い物の店を開くとはなんたることと、村長の怒りをかい、
また自由に振る舞う母子を、村人に悪影響を及ぼす癌と決めつけ村長は弾圧していく。
しかし、客の好みをピタリと当て、客の悩みをその不思議なチョコで癒す店は、
ファンが増えていく。
ある日ジプシーが村に訪れたことによって村の平穏は破られる。
大人のおとぎ話的な物語。
主演のジュリエット・ビノシュの質素だけど暖かみのある笑みでこの映画のトーンはほぼ決まった。
まさにはまり役。
母子を快く思わない村長や飲み屋の親父など敵は何人か登場するが、
それほど悪人として描かず、それぞれの立場や考え方で反目しているだけで、
このスタンスが大人の寓話としての物語の柔らかさになっている。
アメリカでもこんなヨーロッパ的な映画が撮れるんやと少し感心した。


「誘拐犯」 アメリカ映画
6月24日 ビデオ(WOWOWにて収録)

小悪党のロングボーとバーカーは、ふとしたことで大富豪が代理母に大金を支払って
自分たちの子供を産ませるという話を聞き、妊婦の誘拐を企てる。
作戦は成功するが、この大富豪は裏社会の顔役でマフィアに追われる羽目になる。
「ユージュアル・サスペクツ」の脚本家クリストファー・マッカリー監督作で
主演は「トラフィック」のベニチオ・デル・トロ。
主役の二人は初めはちんけな悪党かと思ったら、銃の腕はいいし、
頭もいいしチームワークも抜群。
追う用心棒やマフィアの「掃除屋」など主要メンバーはみんなかなりのプロ。
今までのセオリーとは違ったスタイルのアクションを見せる。
オープニングタイトルや冒頭の雰囲気でこれはコメディーかと思ったら、
ずいぶんシリアスな展開で、シリアス映画かと思えばまた「これはギャグか?」と
思わせるところもある。
最後は強烈なオチまである。
この映画終わってよくよく考えてみれば、シリアスに見えるが実は一種のコメディーだった。
コメディーと言っても「笑わさない」コメディーで、けっしてスベってるのではなく、
食べた後に辛みを感じるカレーのようなコメディーを作ろうと、意図して作られたのだと思う。
銃撃シーンはかなり力が入っているし、結構見応えもあるが、
この映画うかっと見るとただのアクション映画になってしまう。
好き嫌いはすごくはっきりすると思うが、私はこの映画好きです。
この映画で一番よかったのはマフィア役のジェームズ・カーン。
修羅場をくぐってきた渋いプロの味をよく出していて、一番得してる。


「レッド・プラネット」 アメリカ映画
6月23日 ビデオ(WOWOWにて収録)

2050年、深刻な環境汚染で火星への移住が急務となり、酸素を生成するために
火星に藻類が送り込まれる。
火星のデータ送信機器が不調となり、測定器を直すために科学者達が火星に送り込まれるが、
火星上空で太陽フレアを受け宇宙船は大ダメージを受け船長以外のクルーは着陸船で火星に降り立つ。
順調に育っていた藻類が何故か枯れ、おまけにナビゲーション用のロボットが軍事モードとなり
クルーを襲い始めた。
ヴァル・キルマー主演。
この映画、それなりに製作費を使って、要所要所に見せ場も配置しているが、どこをとっても
どこかで見たようなシーンばかり。
いろんなSF映画のいいとこ取りだけで1本撮ったような映画。
ヴァル・キルマーやキャリー・アン・モスなどの出演者は、台本を見ただけでは
こんなオリジナリティーのない映画とは思わんかったんやろうなぁ。


「es [エス]」 ドイツ映画
6月20日 15:30 ヘラルド試写室(GAGA)

元雑誌記者のタレクは今ではタクシーの運転手。
客待ちの時、偶然新聞で奇妙な求人広告を見つける。
それは心理学実験に2週間参加すれば高額報酬が貰えると言うことだった。
これを記事にしてもう一度記者として再起を果たそうと応募する。
実験とは応募してきた20人の男性を無作為で看守と囚人に半分づつ分け、
それぞれの役割を演じさせる事だった。
初めはごっこ感覚だった参加者も次第に抑圧する者とされる者として、はっきり対立構造が
現れ、やがて予期せぬ方向に実験は暴走していく。
実際にアメリカで行われ、今では禁止されている実験を題材にした一種のサイコ・スリラー。
ほとんどが実験用の刑務所セットの中だけで物語が進む密室劇のため、
緊迫感も増幅される。実話を題材にしているとはいえ、刑務所実験という設定もいい。
スポットを当てる人物も絞り込んで、それぞれの性格描写も過不足なく描かれている。
ただ、主人公タレクが実験参加前に知り合った女性ドラとの関係が急進展過ぎる感がある。
ラストはちゃんとフィクションとして盛り上げている。
この映画、実際の実験を題材にしてると言うのもあるが、「こんな事ありえるやろうな」と思わせる
妙な信憑性がある。


「イン・ザ・ベッドルーム」 アメリカ映画
6月20日 13:00 UIP試写室(UIP)

マットは漁師町の町医者、妻のルースは合唱団の歌唱指導をしている。
息子のフランクは大学で建築を学んでいるが、夏休みは家に帰ってきて
ロブスター漁のバイトをしている。
フランクは子持ちで年上のナタリーと付き合っていたが、
よりを戻したい前の暴力夫リチャードに嫉妬され殺されてしまう。
息子を亡くした夫婦仲はぎくしゃくしだし、夫婦は究極の選択をするのだった。
シシー・スペイセク主演。
あらすじを書くとこういう内容だけど、ほとんどこれだけで終わってしまう。
つまりその間の人間描写が非常に丹念に描かれている。
原作を大事にして映画化したのだと思うが、ダレ場が長い。
それなりに出来事はあるのに、見た目より心理描写に力点が置かれてるので
全体的に静かに事が運ぶ。
シシー・スペイセクや夫役のトム・ウィルキンソンがうまくて、なんとか見られたが、
二人の演技がなければ退屈で仕方がなかったと思う。


「ウインドトーカーズ」 アメリカ映画
6月18日 19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(FOX)

第2次大戦中、エンダーズ伍長は沼を死守せよとの命令を忠実に守ったため、
部下全員を死なせ自らも身体のみならず心にも深い傷を負った。
エンダーズに心を寄せる看護婦リタの看護の甲斐あって、すっかり回復したエンダーズは
軍曹となり新しい任務を命じられる。
日本軍にことごとく暗号を解読されてきた米軍は、インディアン、ナバホ族の言葉を暗号とし、
通信兵としてナバホ族を各部隊に配置した。
エンダーズの表向きの任務はナバホの通信兵の護衛だが、万一彼らが捕虜になって
暗号が漏れることを防ぐため、いざというときは彼らを抹殺せよととの極秘命令を受けていた。
コンビを組むナバホのヤージーを初めは冷たくあしらってきたエンダーズだが、
激戦を共に戦ううちに次第に信頼関係が生まれてくる。
戦闘は激しさを増し、二人は敵の大群のまっただ中に取り残される。
ニコラス・ケイジ主演で監督はジョン・ウー。
撮影には大量の弾薬を使ったらしいが、銃器の弾薬もさることながら、地面やセットに仕掛けられた
弾着の量もかなり多い。
しかし戦闘は激しいが同じようなパターンの繰り返し。
ただ撃たれて死ぬ兵士の倒れ方が今までのアクション映画のように
派手にもんどりうって倒れるのではなく、綿人形のように急に力が抜けて倒れる。
第2次大戦中の記録映画と同じようなリアルな死に方をするのはジョン・ウーのこだわりか。
日本兵はちゃんとした日本語をしゃべるが、驚いたのは舞台のサイパン島の家屋が日本家屋だった事。
どうやらサイパンは日本列島の端にある島で、住人は日本人だと思っているよう。
全体にセピアがかった色調なのは「昔々のお話」として悲惨さを緩和しているのだろう。
完全にハリウッドでは戦争映画は娯楽映画として復権したよう。
共演はクリスチャン・スレイター。


「キルミー・レイター」 アメリカ映画
6月11日 15:30 東映試写室(メディア・スーツ)

上司との不倫に失望した銀行のOLショーンは自殺しようと
ビルの屋上に立っていると、隣のビルの男が見つけて警察に通報した。
ところが下では銀行強盗が金をつかんで逃走するところで、
自殺を止めに来た警官と鉢合わせ。
一人は捕まり運転手はそのまま逃走。
犯人の一人チャーリーは取り残され屋上に逃げ、
そこで自殺しようとしていたショーンを人質に取る。
さぁ殺せ、撃てと言うショーンに後で殺してやるから今は協力しろとなだめるチャーリー。
それから奇妙な二人の逃避行となる。そのうち二人には恋が芽生えて・・・。
ちょっと今流行のプロモーションビデオ風の部分があるが、
物語は単純なのでこのプロモ風の部分を取るとかなり短い映画になってしまう。
さらりとしたユーモアのある、小品ながらおもしろい映画だった。
主人公のセルマ・ブレアは黒髪に黒ずくめのファッションでかっこよかった。


「プレッジ」 アメリカ映画
6月10日 13:00 ヘラルド試写室(GAGA)

少女が殺され、引退間際の刑事が被害者の両親に必ず犯人を挙げると誓い、そのまま定年。
知的障害のあるインディアンが容疑者として捕まり、強要され自白したが、
隙を見て警官の銃で自殺する。
これで事件は解決したかに見えたが、刑事は彼が真犯人と思えず、
同僚からのプレゼントのメキシコ旅行もキャンセルして、独自で捜査をする。
過去の同様の犯罪から犯人のテリトリーを割り出し、
古びたガソリンスタンドを買い取って網を張る。
刑事は元夫の暴力から逃れてきた母子と仲良くなり、家庭を持って第二の人生を
歩もうとしたが、事件の呪縛からは逃れられず、自分を父親のように慕う少女を
おとりに最後の賭に出る。
ジャック・ニコルソン主演、ショーン・ペン監督作品。
ショーン・ペンは才能ある監督だった。
一筋縄ではいかないストーリー展開、風景と音楽の絡め方、全体的に少し寄り気味な
タイトな映像など、なかなかの手練れだった。
事件と母子とのドラマ、このバランスがいい。オチも悲しくていい。
ニコルソンの抑えめな演技もいい。
それにしてもペン、いい台本を見つけてきたなぁ。


「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」 アメリカ映画
6月8日 14:15 厚生年金大ホール(FOX)

青年となったアナキンはオビ・ワン・ケノービのもとでジェダイの修行を積んでいた。
銀河元老院ではドゥーク伯爵が先導して数百もの国が共和国脱退を表明、
ジェダイだけでは銀河を守れないとクローン軍の導入に踏みことになる。
アミダラを襲った刺客がクローン工場に潜入してるのがわかるが逃げられ、
アミダラ、アナキン、オビ・ワンの3人は捕らえられ巨大な怪物により
公開処刑されることになった。
この映画、いいところも悪いところもある。
アクションの合間にダレ場がある。恋愛部分もここに入る。
後にレイア姫とルークを産まないといけないので、ここでアミダラとアナキンを
ひっつけとかなければならない事情はあるが・・・。
アクションは今までのシリーズで一番わくわくさせてくれた。
大まかに3カ所。
1,「フィフス・エレメント」みたいな未来都市でのカーチェイス。
2,小惑星の中での空中戦。見たこともない武器が出てきておもしろい。
3,コロシアムでの白兵戦。「グラディエーター」みたいなコロシアムで
ロボット軍団とジェダイの騎士達の壮絶なバトル。
ヨーダまでライトセーバーで戦う。こんなにキリリとした顔で俊敏に動くヨーダは初めて。
最後は「ロード・オブ・ザ・リング」みたいに「つづく」と言う感じ。
前シリーズの2作目「帝国の逆襲」もこんな感じで終わってたけど、踏襲したか。
ラストシーンを見てこれは「クローンの攻撃」ではなく
「クローンの攻撃前」だと思った。
でもやはりよくできてる。
これほど金のかかったVFXでSF撮られたら、これからのSF映画は辛いやろうなぁ。


「蝶の舌」 スペイン映画
6月5日 ビデオ(レンタル)

8歳のモンチョは喘息で小学校に1年遅れで上がることになったが、
兄に怖い先生がいると脅され怖々登校する。
ところが教室にいたのは顔は怖いがとても優しい年老いたグレゴリオ先生だった。
先生は決まりきった授業ではなく、詩を読ませたり野山で自然観察したり、
子供達の興味を引き出すような授業を心がけていて、モンチョはすっかり
グレゴリオ先生が好きになった。
モンチョをとりわけ驚かせたのは蝶にも舌があり渦巻き状になっていると
言うことだった。
発注している顕微鏡が来たら蝶の舌を見ようと先生に言われ、モンチョも楽しみにしていたが
スペイン内乱が起こり、共和派のモンチョの家族や先生の身に危険が迫ってきた。
モンチョ少年と先生の交流を主軸として描きながら、兄の中国女性とのはかない恋や、
モンチョの幼い恋心、などサブ・エピソードの絡め方がうまい。
「蝶の舌」とは変わったタイトルだが、物語途中で出てきたこの言葉がラストシーンで登場し、
重要なキーワードとなる。
ただ共和派であることを隠すために嘘をつき、大人にならざるをえなかったモンチョだが、
あんな年齢でそんな非情なことが簡単に出来るのかと少し首を傾けてしまった。
でも結末は悲しい。


「コレリ大尉のマンドリン」 アメリカ映画
6月4日 ビデオ(レンタル)

第二次大戦中、ギリシャのケロファニア島。
島の医者イアンニスの美しい娘ペラギアには婚約者マンドラスがいたが、
マンドラスは出征し、毎日手紙を送るが返事はなしのつぶて。
そんな時、イタリア軍が島に進駐してきて、宿舎としてイアンニアスの家に投宿したのは
陽気なコレリ大尉だった。
音楽好きのコレリ大尉は部隊で合唱隊を組織し、彼らの陽気な歌声は村民達の
気持ちも和らげていった。
マンドラスは戦地から帰還したがパルチザンに身を投じ、ペラギアは二人の愛が過去の物になったことを悟る。
やがて惹かれ合うコレリとペラギア。
そしてイタリアが降伏し、パルチザンに武器が渡ることを懸念したドイツ軍によって
イタリア兵は武装解除され本国に送られるはずだったが、そこには狡猾な罠が仕組まれていた。
コレリにニコラス・ケイジ、ペラギアにペネロペ・クルス。
この映画のイタリア兵、戦時中なのにのんびりしすぎる。昔の「エーゲ海の天使」と言う映画もこんな兵士やったけど。
コレリとペラギアの心の動きも少しハショリ気味で二人はひっつく。
ドイツ軍は信用できんと、今までの敵側のパルチザンにあっさり武器を渡すのもいかがなものか。
ニコラス・ケイジの演技はもう食傷気味。
ヨーロッパ風の映画を撮ろうとしたようだが、
美しい風景の中での悲恋物語をアメリカが撮るとこんな映画になる。


「マップ・オブ・ザ・ワールド」 アメリカ映画
6月4日 13:00 東映試写室(アートポート、アースライズ)

小学校の保健室に勤務するアリスは農場を営む夫と2人の子供と田舎で暮らす平凡な主婦。
ある日友人の子供を預かっていて、不注意でその子を死なせてしまう。
失意のアリスに追い打ちを掛けるように児童虐待の濡れ衣を着せられ留置される。
裁判は不利な証言が続き、保釈金を払うには農場を手放さないといけない。
留置所内ではいじめが横行し、過酷な状況下で頑張るアリス。
やがて裁判はアリスに希望の光を投げかける展開を見せる。
アリス役のシガニー・ウィーバーが実年齢の役柄として、身体の線が崩れかけた
オールヌードまで見せる女優魂でアリス役を好演。
でっぷり肥えたルイーズ・フレッチャーも出番が少ないが、脇で芝居を締める。
ありがちなストーリーだが、今までのアメリカ映画とは料理の仕方が全然違う。
単純に苦難や希望が訪れない。その現れ方が微妙に屈折して物語が進む。
舞台出身で初監督のスコット・エリオットは、登場人物の考え方と行動をちゃんと演出して
観客に伝えることの出来る力のある監督だと思う。
静かだが登場人物の心の葛藤が見えるような、小説を読んでいるような映画だった。
アリスの友人役はジュリアン・ムーア。


「ドリヴン」 アメリカ映画 
6月3日 ビデオ(レンタル)

ジョー・タントはF−1の名ドライバーだったが、レース中の大事故でライバルのカールを半身不随にしてしまい、今は隠居生活を送っていた。
カールは今ではF−1チームの監督を務めているが、チームの若き天才ドライバー、
ジミーがいいところまでいきながら、ライバルのブランデンバーグに勝てないでいた。
カールはジミーの精神的な弱さを克服するため、教育係としてかつてのライバル
ジョーをチームに迎え入れる。
勝つことだけにこだわるカールに反発しながらも、ジミーに自分の二の舞にならぬよう
なんとかレーサーとして何が必要かを教えようとするジョー。
世界を転戦しながらチャンピオンの行方も混沌としてくるのだった。
シルベスター・スタローンが盛りを過ぎたレーサー役で少し引いた演技をしている。
もうシャカリキになってアクションするより、こんな役の方が年齢的にもしっくりくる。
アメリカ映画でF−1が描けるかと思っていたら、やはり細かい駆け引きはすっ飛ばして
単純明快に描いている。
レースシーンは細かいカットをつないで臨場感を盛り上げているが、所々に挟まれたクラッチや
アクセルワークの足元は「フレンチ・コネクション」のカーチェイスがお手本のよう。
テレビの実況が効果的に使われレースシーンをもり立てる。
実写とCGをうまく使って、今までにないレースシーンを作ったのも評価できる。
同じようなレースシーンでダレないように、公道をF−1マシーンで走るところがおもしろい。
マンホールのふたが飛び、衝撃波でガラスが割れ、スカートがまくれる。
悪評をよく耳にしていたのでどうかと思って観たら、結構楽しめた。
ただ、もう少しF−1のハイテク部分にも触れてほしかった。


「ガウディアフタヌーン」 アメリカ・スペイン合作
5月30日 13:30 ヘラルド試写室(東芝デジタルフロンティア)

18歳の時母親と衝突し、ミシガンの家を飛び出してから世界中を放浪するカサンドラは
今は翻訳者としてバルセロナで暮らしている。
現在翻訳している母娘物語がうまく進まず家賃も滞りがち。
そこに知り合いから聞いたと、派手ないでたちのフランキーと名乗る女性が訪ねてきて、
失踪した夫のベンを捜し出して欲しいと頼まれる。
一度は断ったカサンドラだが報酬に目がくらみ渋々引き受ける。
とあるマンションを張り込むうち、ベンとおぼしき男を発見する。
男は女性と少年のような女と少女の4人で暮らしているらしい。
3人を写真に納めフランキーに見せると夫のベンだと言って、約束の報酬を小切手でもらう。
ところがその小切手が不渡りとわかり、ホテルも引き払ったフランキーを見つけるため
ベンに接近するが、驚いたことに少年風の女がベンで、フランキーは実は男だとわかる。
夫が女で妻が男。
フランキーをなんとか見つけて問いただすと、彼らと行動を共にしている少女は実の娘で
彼女を取り戻したいとフランキーは泣く。
複雑な関係の中で母と娘という関係をもう一度考えさせられるカサンドラだった。
随所にガウディー建築が登場する。
見た目に捕らわれず本質を捕らえることが大事だと言うことをガウディーの建築を比喩にして
物語を重ねているのだろうが、ガウディーはあまり意味がない。
ベンが住むアパートもガウディーだったり、ちょっと無理がある。
バルセロナで撮ったこともさほど意味がないように思われる。
オカマとおなべの夫婦を見て自分がうまく翻訳できない母と娘の絆を悟り、
また自分の母親との仲をもう一度見直そうとする筋運びも、ちょっと強引な気もする。


「燃ゆる月」 韓国映画
5月27日 13:00 ヘラルド試写室(シネカノン・アミューズ)

はるか昔、神山の麓のメ族はファサン族を征服しようとして神山の怒りをかい、荒野に追放される。
メ族の女帝スはファサン族の勇者ハンをたぶらかし、ファサン族の血が流れるピを産む。
このピを生け贄にして伝説の天剣を手に入れ、メ族の再生を画策していた。
ところがハンはピを奪還し、一度は裏切ったファサンの村で密かに育ててもらうことを条件に村を去る。
ピはやがて大きくなり村の若者タンと恋仲になる。
村の族長となり王族の娘ヨンとの結婚も決まっているジョクの心は次第にピに傾き、
親友タンとの仲に亀裂が生じる。
しかし村にはメ族の追っ手がピを狙って忍び寄っていた。
この部族対立を沈めるためには自分が神山に命を捧げるしか道がないと悟ったピは、
一人神山に向かうのだった。
時代考証に捕らわれず、独自の発想で作られた衣裳やセットだけど、全く生活感がない薄っぺらで
ちゃちなセットと衣裳。
どこかの劇団の芝居を見てるよう。
「シュリ」と同じプロデューサーと言うこともあってか、立ち回りの時「シュリ」の銃撃戦と同じように
手持ちカメラでよくぶれる。
見ていて目が回る。
ピ役のチェ・ジンシルは可愛いい。
巨人のチョ・ソンミン投手の嫁はんで、日本に住んでいるらしいので日本でちゃんとセールスすれば
人気が出ると思うけど人妻はダメか。


「13デイズ」 アメリカ映画
5月26日 ビデオ(WOWOWにて収録)

1962年、偵察機によってキューバにソ連製核ミサイルが配備されていることがわかる。
発射されればわずか5分で米本土に到達し、アメリカの報復によって第3次世界大戦は避けられない。
ケネディー大統領はキューバを海上封鎖し、キューバ攻撃を主張する軍部を抑えながら、
平和的解決を模索する。
キューバ危機の13日間を描いた社会派ドラマ。
ケビン・コスナーが大統領補佐官役で出ているが、ケネディーの顔はあまりにも有名なので
ケネディー役はできず、補佐官役になったがこの役ではやはり少し弱い。
コスナーに主眼を置こうとするがどうしてもケネディーの比重が重くなってしまう。
だから少しコスナーがかすんだ印象。
実写映像や、海軍の海上封鎖、空軍偵察機など緊迫したシーンでメリハリはつけてるが、
物語の流れに関係なく所々でモノクロになる。この法則性がよくわからない。
照明もなんか妙に均一で明るく、テレビドラマのよう。


「Dog star」 日本映画
5月20日 13:00 ヘラルド試写室(東京テアトル、オメガ・ミコット)

年老いた盲導犬のシローは、盲人で元ボクサーのゴングと夜道で交通事故に遭い、
ゴングを死なせてしまう。
盲導犬の訓練所で余生を過ごすことになったシローは元気もなく、食事もとらなくなっていた。
そこに死んだはずのゴングが現れ、天国に行くために善行をしないといけない、
シローの願いを叶えてやると言う。
そこでシローは人間になって子犬の時に育ててくれたハルカに会いたいとゴングにねだる。
適当な死体を見つけ乗り移ったシローは、臭いを頼りに幼稚園で働くハルカと再開する。
幼稚園に出入りする移動動物園で手伝ううち、ハルカとも交流できるようになり、
ハルカもシローに何か感じだした。
ハルカの恋人の嫉妬、移動動物園の親父の死など事件は次々に二人を襲うが、
逆に次第に心が近づく二人。
しかしシローが借りた死体には秘密があり、別れの時が訪れる。
シローに豊川悦司、ハルカに井川遥を起用したラブ・ロマンス。
トヨエツはもともと犬顔なのでこの役はハマり役だけど、どうも見てる者の頭の中に
「天国から来たチャンピオン」がチラチラ見え隠れする。
瀬々敬久監督の「ハート・ウォーミングな映画を・・・」という気負いが出過ぎてる感がある。
物語は静かに進むが、所々唐突な事件が起こる。少し極端。
井川ファンのためにバッグをたすき掛けにさせ、胸を強調するサービスカットもちゃんとある。
共演は移動動物園の親父に泉谷しげる、ゴングに石橋凌。


「スコーピオン・キング」 アメリカ映画
5月16日 19:20 完成披露試写、梅田スカラ座(UIP)

5000年前の古代エジプト。
メムノーンは世界制覇の野望に燃え、他部族を虐殺し奴隷にしてきた。
残った部族は手を組み、メムノーンと彼に啓示をもたらす予言者を殺すため、
アッカド人の生き残りの暗殺戦士マサイアスを送り込む。
苦難の末にメムノーンの宮殿に侵入したマサイアスだが、美しい予言者のカサンドラを殺すことはできず、
彼女を連れて宮殿を脱出する。
メムノーンは追っ手を差し向け、残りの部族にも危険は迫る。
もう一度宮殿に侵入してメムノーンと対決するしかもはや道は残されていなかった。
「ハムナプトラ2」のスコーピオン・キングをメインにしたシリーズの別映画。
「ハムナプトラ」シリーズほどのスケールもSFXもなく、旅を共にするコミカル系の足手まといや
肉食甲虫の代わりの巨大蟻なども登場し、作品としては「ハムナプトラ」の弟分と言った出来。
主役のプロレスラー、ザ・ロックはスタローンやシュワルツェネッガーの後を継ぐマッチョ系スターとして、
これからもアクション映画で主役を張ると思われる。
演技はまだまだだけど、考えたらスタローンもシュワちゃんも演技は下手だからこれでもいいのかもしれない。
共演は「グリーン・マイル」のマイケル・クラーク・ダンカン。ヒロインのケリー・ヒューはマルシア似で
日本人ウケする顔立ち。


「イグジット」 フランス映画
5月15日 15:30 ヘラルド試写室(K2)

猟奇殺人事件の犯人と目されながらも証拠不十分で釈放されたスタン。
彼は人格障害者として精神科医の治療を受けながら病院の死体安置所で働いていた。
しかし、またしても同じような手口で殺人事件が起こり、スタンの頭の中ではお前がやったと別人格の男が叫ぶ。
スタンはまったく身に覚えはないが、自分が犯人と思える状況にスタンは追いつめられていく。
そして謎の美女パールを追って廃墟を改造したクラブで驚愕の真実に対峙することとなる。
これが長編デビューとなるオリヴィエ・メガトン監督のサイコ・スリラー。
現実と幻想の境界がぼやけた世界で、物語はナメクジが這うようにゆっくり進む。
クローズアップを多用し、精神科医すら異常に見えるインテリアとキャラクター設定もいい。
前半2/3まではいいが佳境に入ると雲行きが怪しくなる。
最後の大どんでんもいいのになぁ。少し残念。
リュック・ベッソン提供となっているが、
ベッソン製作作品は「TAXI」にしろ「ヤマカシ」にしろ「WASABI」にしろ、ろくなのがない。
この人今は映画界のビジネス・マンとなったようで、金は儲けているが映画の質はよくない。
この映画はベッソンが発掘したと言うより、もともと才能あるメガトン監督に目を付け、
どうも途中から資金援助を申し出たらしい。
ベッソンは信用できないがメガトン監督はこれから注目したい。


「ザ・プロフェッショナル」 アメリカ映画
5月13日 13:30 東宝試写室(K2・GAGA)

ジョーはベテラン窃盗集団のリーダー。
長年の仲間、ボビー、ピンキーに妻のフランといつものように宝石店を襲うが、
ジョーは防犯カメラに素顔を撮られ、引退を決意する。
ところが彼らの盗品を売りさばいて儲けていた故買商のバーグマンは引退を許さず、
最後にスイスから空輸される金塊の強奪を持ちかける。
前回の盗品の代金を押さえられたジョーは引退後の金もなく、渋々そのヤマを引き受ける。
バーグマンは監視役として甥のジミーをジョー達チームに同行させることにしたが
そこからジョーとバーグマンの出し抜き合戦がスタートする。
ジョー役のジーン・ハックマンは相変わらず渋い演技を見せるが、
相棒役のデルロイ・リンドーも負けずに渋い。
この窃盗団、繊細でかつ大胆。チームワークもいいし、ベテランの職人的窃盗手口で
大人の仕事を感じさせる。
ただ劇作家出身のデヴィッド・マメット監督はどんでん返しを多用しすぎ、
最後も含めて所々で観客にどんでんを読まれる。
策士策に溺れると言った趣。
用意周到なジョーがあっさり防犯カメラに素顔を撮られ、防犯カメラのビデオテープが
宝石以上に厳重に守られてたりちぐはぐな面もあり残念。
このベテラン窃盗団でもう一度撮って欲しいなぁ。
故買商役はダニー・デビート。


「ダンジョン&ドラゴン」 アメリカ映画
5月6日 ビデオ(WOWOWにて収録)

イズメール王国は魔法を操れる貴族メイジによて支配され、平民は奴隷の扱いを受けていた。
悪の宰相ブロフィオンは最強のレッド・ドラゴンを操ることのできる魔法の杖を手に入れて、
世界を支配しようとしていた。
杖のありかを記した巻物を手に入れるためブロフィオンの手下ダモダーは魔法大学に向かうが、
見習い魔法使いのマリーナと、たまたま忍び込んでいたこそ泥のリドリーとスネイルズが
巻物を持って逃走する。
レッド・ドラゴンを操るのに必要な「ドラゴンの瞳」を手に入れるため盗賊団の巣窟にある
ダンジョンにリドリーは挑み、見事手に入れるがダモダー達が迫っていた。
RPGゲームの映画化。
ドワーフ族やエルフなども登場し「指輪物語」を下敷きにした別物語。
ダンジョンはそれほど困難でもなく、SFXも大したことないし、
主役のジャスティン・ワリンも魅力がない。


「ほんとうの・ジャクリーヌ・デュ・プレ」 イギリス映画
5月3日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ジャクリーヌと姉のヒラリーは音楽好きの母親に、幼い頃から音楽教育を受けていた。
姉はフルート、妹はチェロを習い、数々のコンクールで優勝する姉は誇らしげで、姉に負けじと
ジャクリーヌはチェロの練習に励む。
いつしか立場は逆転し妹のジャクリーヌの方が天才少女チェリストとして脚光を浴びるようになった。
姉のヒラリーは音楽の道をあきらめ、結婚によって女の幸せを得、妹のジャクリーヌは世界的な演奏家として、
世界中でコンサートを開いていた。
音楽の道をあきらめたが幸せな結婚生活を送るヒラリーと名声は手に入れたが心の空虚さは埋まらないジャクリーヌ。
お互いの生活はうらやましく見える。
双子のように仲のよかった姉妹はいつしか愛と嫉妬の入り交じった複雑な思いでぎくしゃくしていき、
やがてジャクリーヌは不治の病に倒れる。
実在のジャクリーヌ・デュ・プレの生涯を描いた伝記物。
原題の「HILARY AND JACKIE」のとおり、それぞれの視点から同じエピソードが綴られる。
一種のパラレルワールド的な演出がおもしろい。
ファッションやヘアースタイルなど、実にこの時代をよく再現していて、
役者がただ昔の衣裳と髪型で演じているのではなく、その時代から抜けてきたような人をうまく使ってる。
地味だけどしっかり作られた見応えある作品。


「エニイ・ギブン・サンデー」 アメリカ映画
5月2日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ベテランコーチのトニー率いるプロ・フットボールチーム、マイアミ・シャークスは
チームの要のキャップが怪我で離脱し、新人のウィリーにクオーター・バックを任せることにした。
オーナーのクリスティーナはチーム経営をビジネスと割り切り、常にチームの身売りをチラつかせて
トニーの尻をたたき、選手達も致命的な故障を抱えながらも身体を騙し騙しフィールドに立つ。
やがてウィリーは自信をつけ活躍し出すが、そのわがままなプレーに選手達の総スカンを食らう。
なんとかプレーオフにこぎつけたが、ウィリーではチームはまとまらないうえ、選手達は満身創痍。
オーナーからはウィリーを出せとせっつかれ、トニーは決断を迫られる。
オリバー・ストーン監督がフットボール界の暗部にメスを入れたスポーツドラマ。
少しでも儲かるようにチームの移転や転売ばかりを考えるオーナー、CMタイムを作るために中断するプレイ、
選手生命を縮めてまでも薬や注射を投与し、フィールドに選手を送り出すチーム・ドクターなど
プロ・フットボール界の内幕暴露物のようにも見えるが、終わってみればしっかりスポーツ・エンターテインメント映画だった。
特に試合のシーンは細かいカットと編集に、テレビ中継の映像を挟みオリバー・ストーンのうまさが光る。
コーチ役のアル・パチーノは相変わらず渋い演技を見せている。


「スパイダーマン」 アメリカ映画
5月1日 13:00 ソニー試写室(ソニー)

両親のいないピーターは叔父と叔母に育てられた平凡な高校生。
科学は得意だが地味で奥手で、隣に住むあこがれの同級生メリー・ジェーンに
声も掛けられない。
ある日の課外授業でのこと。
遺伝子操作によって生まれた新種の蜘蛛にかまれたピーターは身体に異変が起きる。
身体が俊敏になり、力も跳躍力も増し、壁を登り、手首から糸まで出せるようになった。
はじめは金のためにその能力を使おうとしていたピーターだが、叔父さんの亡くなる前の言葉で改心し、
正義のためにその能力を使おうと決心する。
かくして蜘蛛のコスチュームに身を包んだ「スパイダーマン」はニューヨークの治安を守るため
神出鬼没の活躍を始めた。
軍需産業の社長で科学者のノーマンは自らの人体実験で強大な力を得、
邪悪な心を持った二重人格者となり世界を征服を企んでいた。
悪の化身グリーン・ゴブリンとなったノーマンとスパイダーマンとなったピーターは
マンハッタンで激しいバトルを展開するのだった。
サム・ライミ監督によるアメリカン・コミックの映画化。
コミックでは放射能を浴びた蜘蛛がかんで主人公の身体が変化するが、
映画では遺伝子操作で作られた蜘蛛にかまれて変化する。
新種の蜘蛛にかまれて何で蜘蛛のような身体になるのかわからない。
コミックはさすがに糸まで出せないので、糸を出す機械を手首につけて中指でスイッチを
押して糸を出してたけど、映画は手首から本当に糸が出る。
何でそんなところから糸出るんやろ。まぁお尻からは出せんけど。
映画自体は設定から物語の展開まで完全に漫画で、摩天楼を蜘蛛の糸を飛ばして
ターザンのように飛び移る。この疾走感が見せ場。
ヒロインのキルスティン・ダンストは、おっぱいが大きいだけでそれほど美人でもなく
ヒロインには向いてない。
サム・ライミ、「ギフト」で生まれ変わったかと思ったが、
やはり基本は下世話なB級エンターテインメントのようで少しがっかり。
この映画、「バットマン」が好きか嫌いかによって評価は別れると思う。
敵役はウイレム・デフォー。


「ノー・マンズ・ランド」 フランス・イタリア・ベルギー・イギリス・スロヴェニア合作映画
4月26日 13:30 ヘラルド試写室(ビターズ・エンド)

1993年ボスニア。ボスニア軍の兵士達は交代要員として前線に向かう途中霧で道に迷ってしまう。
仕方なく野営するが、朝、霧が晴れて驚いた。彼らはセルビア軍の真ん前にいたのだった。
セルビア軍の攻撃で小隊はチキ一人が生き残り、両軍の中間地点の無人地帯にある塹壕に逃げ込む。
敵の生存者を確認するためセルビア軍は老兵と新兵ニノを塹壕に送り込むが、
老兵は爆弾で吹き飛ばされたボスニア軍のツェラーの死体の下に地雷を設置し、
ボスニア軍が死体を回収しようとすると爆発するような罠を仕掛けた。
チキの銃撃で老兵士は死に、ニノも腹部を負傷する。
死んだはずのツェラーは実は気絶していただけだったが、
身体の下に地雷が仕掛けられているため動くことができない。
ニノはチキの捕虜となったが、両軍どちらからも攻撃される中間地点で身を守るため、
二人は裸になって塹壕の上に立ち、自陣に向かって味方がいるので攻撃するなとアピールする。
仕方なく両軍は国連防護軍に助けを求め、国連防護軍は中間地点に出向くのだが・・・。
カンヌで脚本賞受賞の他各地で賞を取っているボスニア・ヘルツェゴビナ生まれのダニス・ダノヴィッチ監督作品。
両軍の中間地点に取り残された敵同士の駆け引きと連帯感、地雷を仕掛けられ動けない戦友、
国連軍の建前などブラック・ユーモアで綴られる。
この設定と人物の絡め方に、ほとんど主な舞台となる塹壕といい、まるで芝居のよう。
低予算だけどストーリーのおもしろさで見せる映画。


「きれいなおかあさん」 中国映画
4月24日 15:45 東宝試写室(ムービーテレビジョン)

北京に住むリーインは夫と別れ、耳の不自由な息子ジョン・ダーと二人暮らし。
なんとか普通の小学校に息子を入れようとするが、審査で落とされてしまう。
ジョン・ダーに言葉を教えるためにはもっと息子との時間を増やさないといけないと、
工場勤めを辞め、友人の薦めで無許可の露天商を始めるが警察に摘発されてしまう。
おまけにジョン・ダーは喧嘩をして大事な補聴器を壊してしまう。
高額な補聴器は今のリーインにはとても買える物ではなく、
しがないタクシー運転手の元夫もそんな余裕はないと突っぱねる。
新聞配達に家政婦とジョン・ダーに言葉を教えながら一生懸命働くリーインだが
容赦なく不幸は彼女を襲う。
元夫の事故死に雇い主の暴行。何度もめげそうになるが息子のためと歯を食いしばって
生きていくのだった。
こういう題材の映画はよく「泣かそう泣かそう」とする。
ところがこの映画は確かにホロリと来るが、不幸で泣かせない。
母子の愛の強さと、気丈さに打たれて涙が出る。
お母さん役のコン・リーが実にうまい。
普通の母を化粧気抜きで演じている。
長回ししても表情だけで充分もつ。
子供をしかるときも、「ああ、俺もこんな風にしかられたなぁ」と思うようなリアル
さ。
昔の日本のお母さんは今は中国にしかいないのかも。
今年のベスト10に入る映画。


「ギルステイン」 日本映画
4月24日 13:00 ヘラルド試写室(GAGA)

2088年、世界は株式会社ヤシロに支配されていた。
少女サビはヤシロの支配区域からの脱出を計り、ヤシロの差し向けた
怪物ギルステインに襲われる。
ギルステインは火星から発見されたウイルスを人間に投与して作られた
究極の人間兵器だった。
サビを救ったのは同じギルステインのカオスで、ヤシロに対抗する地下組織
にかくまわれていた。
カオスはかつてはヤシロの研究者だったが同僚の裏切りでギルステインにされた。
ところがカオスだけは人間の心を保っていた。
サビはヤシロに捕らわれている科学者の父を救うため、地下組織のメンバーと協力して
カオスと共にヤシロに乗り込むのだった。
CGアニメだと思っていたら、CGはクリーチャー(怪物)だけで
後は普通のアニメだった。
そのアニメもテレビアニメより質は落ちる。
CGも細かいところはジャギーが出てたりして、
「トイ・ストーリー」なんかに比べるとずっと質が悪い。
おまけに登場する女子のファッションはいくら未来でも
こんなカッコするかいなと思うような変なファッション。
クリーチャーはフィギアファンを、女子のファッションは
コミケなどでコスプレするマニア向けにデザインされたよう。
一部のマニアのためのアニメ。


「ワンス・アンド・フォーエバー」 アメリカ映画
4月23日 19:30 完成披露試写、北野劇場(GAGA)

1964年軍事顧問団として南ベトナムを支援していたアメリカ軍は、
業を煮やして北ベトナムに派兵する。
初めて実戦配備されるヘリ部隊を率いてムーア中佐はイア・ドランの谷に降り立つが、
はるかに数の多い北ベトナム軍に包囲される。
孤立した偵察隊がいるため撤退もできず、部下達は次々に敵の銃弾に倒れていく。
一方ムーア中佐夫人ジュリーは戦死者への訃報が事務的に届けられるのに憤り、
自ら戦死電報の配達人をかって出て、戦死者の家族を慰めて回っていた。
いつかは自分にも電報が来るかも知れないのに。
北ベトナム軍の指揮官アン中佐の的確な指揮でムーア達は全滅の危機に瀕していた。
ヘリは危険を冒して武器や補充兵、負傷者をピストン輸送していたが敵の激しい攻撃で
墜落するヘリも出てきた。
二晩なんとか持ちこたえたムーアは、敵の総攻撃の前に危険な賭に出る。
メル・ギブソン主演の戦争映画。
ベトナム戦争を描いているが、おなじみのジャングル戦ではなく谷だし、
相手はゲリラではなく軍服を着た正規軍だし、なんか第2次世界大戦のような雰囲気。
戦闘シーンは激しいが、「プライベ−ト・ライアン」「レニングラード」「ブラックホーク・ダウン」などで
激しい戦闘を見慣れた今、目新しさはない。
ただ効果音には力を入れているようで、撃たれたときの音がとても痛そうな音だった。
メル・ギブソンがビュンビュン弾が飛んでくるにもかかわらず、姿勢を低くすることなく戦場を歩き回ってたり、
「らしい」鬼曹長が副官としていたり昔ながらの戦争映画の趣。
エンターテインメントとしての戦争映画復活の兆しか。


「暗い日曜日」 ドイツ・ハンガリー合作映画
4月23日 15:30 ヘラルド試写室(GAGA)

1930年代末ブタペストに新しくレストランがオープンした。
オーナーはラズロで美しい恋人のイロナが給仕を手伝う。
流行る店は音楽が流れていると店の中央にグランドピアノを購入し、ピアノ弾きを雇い入れる。
オーディションに通ったのは若きピアノ弾きのアンドラーシュ。
イロナはアンドラーシュに惹かれる物を感じ、アンドラーシュもイロナに惹かれていった。
イロナの心の動きを知ったラズロだが、店は料理の味もさることながら、イロナの色気と
アンドラーシュのピアノ、自分の経営手腕のこの3つでもっている事をわかっているラズロは
アンドラーシュをクビにせず、イロナの愛を共有する事にする。
奇妙な三角関係のもと店は繁盛していく。
イロナの誕生日にアンドラーシュは「暗い日曜日」と題した曲をプレゼントする。
もの悲しい旋律だが人の心をつかんで離さない不思議な曲だった。
「暗い日曜日」は評判になりレコード化もされたが、この曲を聴きながら自殺する者が後を絶たず、
「自殺の聖歌」として有名になっていく。
ナチスドイツはヨーロッパを侵攻し、かつての常連は今やナチスの将校になっていた。
ユダヤ人であるラズロは常連将校のおかげでなんとか収容所行きを免れていたが、
とうとう連行されてしまった。
実際の自殺の聖歌「暗い日曜日」を縦軸に、曲にまつわる人間と
第二次大戦という時代を絡めた愛憎劇。
「暗い日曜日」の作曲者の伝記物にせず、完全にフィクションとして物語を作っているのがいい。
「三角関係の愛」「自殺を誘う名曲」「ユダヤ人迫害」と徐々に物語に味付けが加えられていき
飽きさせない。
最後はどんでん返しもちゃんと用意されている。小品ながらよくできた映画。


「KT」 日韓合作映画
4月23日 13:00 ヘラルド試写室(シネカノン)

1971年、韓国の大統領となった朴正煕は、日本に逃れている政敵金大中の
暗殺命令をKCIAに出す。
ところが金大中の行方は知れず、KCIAは自衛隊の諜報活動部隊である
陸幕二部別班に協力を要請する。
KCIAの金車雲と共に金大中の行方を追う事になったのは
陸幕二部別班で韓国・北朝鮮担当の富田だった。
金大中は在日韓国人の金甲寿らボディーガードに守られ都内のホテルを転々としていた。
富田は以前金大中にインタビューをした夕刊トーキョーの記者神川を尾行し、
金大中の居場所を突き止めるも、韓国大使館内部からのリークで
KCIAが金大中の命を狙っていると雑誌に載ってしまう。
焦るKCIAの実行部隊。
この作戦が失敗すると自分の命はおろか家族までが消される。
金車雲は2000万円の小切手で富田に実行部隊の仲間に入るように説得し、
いよいよ作戦決行の時が来た。
金大中拉致事件を描いた骨太のサスペンス。
実行犯であるKCIA達がただ任務に忠実と言うことではなく、
自分たちの命も掛かった引くに引けない極秘作戦で苦悩する様が描かれていていい。
新聞記者役の原田芳雄は実にうまい。
富田役の佐藤浩市と絡んでいるところは二人ともすごい存在感。
富田が監視対象の女性に恋愛感情を持つのは、
男臭い物語に恋愛の味付けを少ししたかったのかも知れないが不要だと思う。
しかし金大中さん、よく生き残ったものだ。


「マーシャル・ロー」 アメリカ映画
4月22日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ニューヨークでイスラム原理主義者による爆破テロ事件が続発。
捜査の指揮を執るFBIのハバードは、容疑者とにらんだアラブ人サミールの身辺に
CIAの影を見る。
CIAはサミールを情報提供者として利用していたのだ。
ハバードはCIAの女性エージェントのエリースと反発しながらも協力して
テロの首謀者に迫るが、テロはやむことはなかった。
やがて大統領命令で治安維持のためニューヨークに戒厳令が敷かれ、
ウイリアム将軍はマンハッタンを軍の統治下に置き、アラブ人狩りや拷問など
強引な方法でテロを鎮圧しようとしてハバード達と対立する。
2001年のニューヨーク同時多発テロの前に公開された映画だが、テロを予見した
ような内容。
ビン・ラディンに似た人物もちゃんと登場し、ニューヨークのアラブ人が迫害を受けるというところも
実際と同じ。
物語は実にテンポよく進み、テンポがよすぎて説明をすっ飛ばし「あれは何で?」
と考えているうちに置き去りにされてしまう。
ラストは「もう終わる時間やから」と言う風に強引に結末を付けておしまい。
FBI捜査官にデンゼル・ワシントン、将軍にブルース・ウィリス、CIAにアネット・ベニング。


「ノイズ」 アメリカ映画
4月18日 ビデオ(WOWOWにて収録)

小学校の教師ジリアンのもとにNASAから連絡が入る。
宇宙で任務遂行中の夫スペンサーが船外活動中、交信が途絶えたと言うことだった。
奇跡的に生還した夫だが一緒に船外活動していた同僚はその後亡くなり、
彼の妻も不可解な自殺を遂げる。
夫は夜中にどこにもチューニングされてないラジオのノイズに耳を傾けるなど、
おかしな行動を取り始め、ジリアンは夫を以前とは別の人間のような気がしてきた。
やがて双子を身籠もったジリアンだが夫に対する不信感は日増しに大きくなってきた。
いったい交信が途絶えた2分間に何が起こったのか、夫は本当の夫なのか。
やがて夫とお腹の双子に恐怖感を覚えていくのだった。
宇宙飛行士の夫にジョニー・デップ、妻のジリアンにシャリーズ・セロンと言う配役。
SFスリラーで宇宙飛行が絡んでいるが低予算のためか、ほとんど宇宙のシーンがない。
SF的なセットもなく実に地味に淡々と物語は進む。
空白の2分間など謎の部分は解明されないままで結末もよくわからない。
謎が残ったままで終わるので非常に後味が悪い。


「サンキュー、ボーイズ」 アメリカ映画
4月18日 15:30 ソニー試写室(ソニー)

高校生のビバリーは頭がよくて作家になることを夢見ていた。
ところがパーティーで意中のフットボール部の花形選手にフラれ、
風采の上がらないレイという男と付き合い始める。
そのうち妊娠してしまい、両親に打ちあけると、厳格な警官の父によって高校を中退して
結婚させられる。
やがて男の子が産まれるが、レイは優しいけど頭が悪く仕事もサボりがちで暮らしは楽にならない。
すっかり生活設計が狂ったビバリーだがめげずにパートに出て、猛勉強し奨学金を得て
大学に行こうとしたが、子守をするはずの夫がすっぽかしたため、子連れ面接となり
奨学金が貰えなくなってしまった。
やがて夫はドラッグに手を出し、自分のふがいなさを嘆き家を出ていった。
女手一つで息子を育てたビバリーは自伝を書きやっと出版にこぎつけた。
ドリュー・バリモア主演。
かつらをかぶって若作りをしている少女時代はコメディータッチで、
実年齢ぐらいのかつらを取ったあたりからバリモアの演技が変わる。
後半からが本当のバリモアの演技。最後近くのシーンは実にいい表情を見せる。
ダメ夫は本当に駄目な男だけど、暴力を振るったりすることなく優しさはある。
フィクションならもっとひどい男に描くはずだけど、そこが実話なのでそれほどひどい夫にはならない。
だから物語もそれほど山があるわけでもなく、不幸が中途半端になってしまって、
これぐらいの不幸ならよくあることと観客に思われてしまう。


「アイ・アム・サム」 アメリカ映画
4月15日 18:30 リサイタル・ホール(松竹、アスミック・エース)

知的年齢7歳のサムはコーヒーショップで働いているが女房に逃げられ、
ひとりで娘のルーシーを育てていた。
ところがルーシーが7歳になり父親の知能を越えたとき、ソーシャル・ワーカーに
子供を育てる能力に欠けると判断され、ルーシーは施設に入れられる。
なんとか娘を取り戻そうとするサムに根負けし、敏腕弁護士のリタは
無料でルーシーを取り戻すために裁判に挑むが、
裁判の駆け引きとは裏腹に、正直なサムは自分に不利な言動を繰り返し、
ルーシーは里子に出されてしまう。
どうも「泣かせよう、泣かせよう」という演出と
随所にビートルズナンバーをちりばめようと言う作為が見えて、それが鼻につく。
映像も「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のように手持ちで、ズームもぎくしゃくしたタッチ、
編集もフライング編集をわざとするなどドキュメンタリータッチに凝ったつもりだろうけど
見にくい。もっとオーソドックスに撮ればいいのに。
ショーン・ペンの知恵遅れの男の演技はうまいけど「レイン・マン」のダスティン・ホフマンを
彷彿とさせる。
娘役も可愛いくて達者だけど、かわいそうに安達祐美に似てるので日本では損している。
ミシェル・ファイファー他、脇役陣もそれぞれのポジションをよく守ってちゃんと役割を果たしているが、
みんなちゃんとしてるのにしっくりこないのは監督の責任。


「裸のマハ」 スペイン・フランス合作映画
4月11日 13:30 ヘラルド試写室(シネマパリジャン)

19世紀初頭のスペイン。アルバ公爵夫人は社交界の華として、王妃にひけを
とらないほどの勢力を持っていた。
王妃は自分の愛人のゴドイ大臣がアルバ公爵夫人とも密通しているのを知り、
快く思っていなかった。
アルバ公爵夫人はお抱えの画家ゴヤとも関係があり、「裸のマハ」のモデルは
アルバ公爵夫人という噂だった。
一方ゴドイ大臣の方は王妃とアルバ公爵夫人の両方を手玉に取り、また美しい
ペピータも愛人としていた。
ある日アルバ夫人は急死し、ゴヤは夫人の愛用しているグラスから猛毒の絵の具を発見する。
夫人は自殺なのか他殺なのか、また他殺ならば誰が犯人なのか、愛憎渦巻く社交界に波紋は広がった。
初めはゴヤが主人公だと思っていたが、むしろゴドイ大臣やアルバ公爵夫人の方がウエイトが重く、
この映画、主人公がわかりにくい。
物語も盛り上がりそうで盛り上がらず、話もよくわからない退屈な映画。
ちゃんとしたらおもしろくなりそうな題材なのにもったいない。映像はいいのになぁ。
ひとつだけ勉強になったのは「裸のマハ」が絵画史上初めて裸婦に陰毛が描かれた絵だと言うこと。


「パニック・ルーム」 アメリカ映画
4月8日 19:00 完成披露試写、厚生年金大ホール(ソニー)

メグは女を作って離婚した夫への腹いせにニューヨークの高級住宅を購入する。
娘と二人で暮らすにはあまりにも大きな屋敷であったが、そこにはパニック・ルームと
言われる隠し部屋があった。
パニック・ルームは以前の所有者が作った、強盗などが押し入ったときに逃げ込む
銀行の金庫室のような部屋で、中には空調設備が完備され、独立した電源と電話回線、
食料なども蓄えられ、随所に配置されたカメラのモニターもある。
引っ越してきた夜、空き家と思い込んだ3人の賊が侵入。
メグと娘はパニック・ルームに逃げ込む。
しかし賊は屋敷の前の持ち主がパニック・ルームに隠した財産目当てで、
そのパニック・ルームの設計者まで仲間に引き入れていた。
侵入不可能なはずのパニック・ルームに迫る賊とメグとの知能戦となったが、
娘の持病の発作がおき、外にある薬を投与しないと娘の命が危ない。
メグは危険な賭に出る。
「セブン」「ファイト・クラブ」のデビッド・フィッチャー監督とジョディー・フォスターが組んだ
密室サスペンス。
この映画なんかちぐはぐな印象が拭えない。
堅牢な密室という設定だが、部屋の広さの割に大きなダクトがあって、あっさりそれが見つかったり、
部屋の外側に大きな配管があり、そこから外がのぞけたり。
賊も妙に間抜けなところがあって「ホーム・アローン」のよう。
この映画の致命的なところは賊が悪人になり切れていないところ。
妙な優しさや間抜けさは、部屋に閉じこもるしか術のない、か弱い母子の緊迫感をそいでしまう。
アイデアはよかったが料理の仕方をマズったか。


「名探偵コナン ベイカー街の亡霊」 日本映画
4月4日 12:30 IMPホール

仮想体感ゲーム「コクーン」の発表会場でゲーム開発者の樫村が殺害された。
招待されていたコナンとゲームのアドバイザーとして製作に携わっていたコナンの父
工藤優作は捜査に乗り出す。
発表会では招待された子供達50人がまゆ型のゲーム機に入りゲームを
体験することになった。
いろんな時代でいろいろな障害をクリアしていくという体感ゲームで、
コナンは迷わず尊敬するシャーロック・ホームズが活躍した100年前のロンドンを選ぶ。
ところが人工知能がゲームをハッキングし、ひとりでもゲームをクリアーできない場合は
全員の命が奪われる。
コナンは19世紀末のロンドンで切り裂きジャックを追う。
人気テレビアニメの映画版。
仮想体感ゲームでシャーロック・ホームズの時代に行くというアイデアがいい。
殺人事件の謎解きだけでなく、「切り裂きジャック」の謎、人工知能「ノアの方舟」の謎など
いくつもの謎を複合的に絡めて話は進んでいくが難しくならず、よくできた物語。
絵はテレビと同じレベルだがしっかりした物語の映画版。


「ノット・ア・ガール」 アメリカ映画
4月3日 15:30 ヘラルド試写室(GAGA)

ルーシー高校3年生、優等生だけど父親の敷いたレールをそのまま走っているようで
何かしっくりこない毎日。
卒業の日、級友のミミ、キットらと小学生の時に埋めたタイムカプセルを掘り起こす。
そこには幼い三人の夢が詰められていた。
卒業を機にミミは妊娠を隠してロスで行われる歌手のオーディションに参加するという。
キットはロスにいる彼氏に会うため、ルーシーは離婚して音信が途絶えた母に会うため
ミミに同行することにする。
バンドマンのベンの古いオープンカーで旅する4人は反発しながらも友情を深めていったが、
それぞれの思惑はことごとくはずれていく。
しかし、ルーシーの心の中には確実に何かが芽生えてきていた。
ポップス界のスーパーアイドル、ブリトニースピアーズ初主演映画。
ブリトニーはファッションリーダー的な存在だけど、下着姿を見るとそれほどスタイルはよくない。
ブリトニーの演技の未熟さを隠すためか、芝居部分の重点は友人二人に時々移る。
そのために主役のブリトニーの存在が希薄になる。
青春ロードムービーだけど、絵に描いたような古いオープンカーで
アメリカを旅する。
アメリカン・ロード・ムービーの典型的シチュエーション。
所々でブリトニーに歌わせないといけないので、車から曲が流れ
ラジオに合わせて歌ったり、旅の資金稼ぎでカラオケ大会に出場したり。
いくら歌手の主演映画とはいえ、もういい加減こんな映画作りやめたらいいのに。


「ブラックホーク・ダウン」 アメリカ映画
4月1日 16:10 北野劇場

1993年、アフリカ東部ソマリアの首都モガディシオに
100名の米軍兵士がヘリで降り立った。
民族紛争で食料の略奪と虐殺を繰り返すアイディード将軍の副官2名を捕らえるための
奇襲作戦だった。
作戦は1時間で終了するはずだったがアイディードの民兵の思わぬ反撃に遭い、
孤立した米兵達は敵に囲まれた街で激しい市街戦を強いられる。
リドリー・スコット監督が描く実録戦争映画。
最近の戦争映画は第2次世界大戦かベトナム、もしくは「スターシップ・トゥルーパーズ」のようなSFばかりで、
近代戦はきわめて少ない。
これは娯楽としての戦争映画にするにはずいぶん昔の話か、SFでないと生々しくなってしまうからだと思う。
そう言う意味では近代装備の戦争を描いた数少ない映画。
戦闘シーンはリアルでかなり長く、1時間以上迫力ある激しい戦闘シーンが続く。
見終わると力がこもっていたのか肩が凝るぐらい。
陸上部隊、ヘリ部隊、車両部隊と、三者三様の戦闘で飽きさせない。
ただ皆同じような格好なので誰が誰だかわからないし米兵の弾がちょっと多すぎる。
ガンガン撃っているのになかなか弾が無くならない。
でもこのド迫力。
やっぱりリドリー・スコットぐらいの監督にこれだけの予算で戦争映画を撮ってもらわないと
しょぼい映画になってしまう。


「パーフェクト・ストーム」 アメリカ映画
3月31日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ビリーはマグロ漁船の船長だが他の漁船に比べて漁獲高はさえない。
歩合制の船員達の意気も下がり気味。
休日を返上して再び出漁するビリー達は遠くまで遠征する。
大漁となるが製氷器が故障し、早く港に帰らないとせっかくのマグロが腐ってしまう。
最短コースで帰路につくが帰還コースに3つの嵐が作り出す大嵐が待ち受けていた。
儲けを捨てて嵐をやり過ごすか、嵐を突っ切って大金を手にするか、
船員達は迷うが船長の腕を信じ一攫千金、嵐を乗り越えることにする。
ウォルフガング・ペーターゼン監督、ジョージ・クルーニー主演。
パニック物の定番らしく前半はそれぞれの人生を描き、金銭的にまた人生の転機として
一発当てる必然性を描き、後半は自然の猛威に翻弄される人間達を描く。
後半の台風シーンは実によくできていて、大波などミニチュアだけでは作れない大迫力。
台風に翻弄されるマグロ漁船とヨットを助ける救助隊のヘリと二つのシーンで、
違ったハラハラドキドキを見せるのもいい。
最後はハリウッド映画なのにこんな終わり方でいいのかと思ったが、実話なので仕方がない。


「E.T. 20周年アニバーサリー特別版」 アメリカ映画
3月29日 10:15 UIP試写室(UIP)

「E.T.」公開20周年の今年、けっして続編を作らず、
アンブリンのマークにまでした思い入れのある作品をスピルバーグ自ら改訂版として
再編集し公開する作品。
公開当時、スピルバーグは作品に少し不満があったようで、
20年たった今その部分を加工し直して再公開することにしたらしい。
音響をクリアなサウンドにしたり、カットされた部分を付け足したりの他、
どうしても直したかった部分をCG処理した。
昔のE.T.はシリコンの顔にワイヤーをいっぱい付け、何人かで操作して細かい表情を作っていたが、
それでは限界がある。
そこで輪郭を残してCGで細やかな表情を作り出した。
しかし全部の表情を変えたわけではなく、シーンによって昔の張りぼて顔の部分と
CG顔の部分とがあるので顔の質感が変わる。
最後のE.T.を宇宙に返すために少年達が自転車で森に向かうシーンで、政府の役人達が
銃を手に追ってくるところを
スピルバーグは「子供に銃を向けるなんて」と後悔してたそうで、その部分を変えた。
銃をCG処理して全部無線機に変えているが、全員無線機を持つ人差し指が銃の引き金にかかる形のまま。
この映画を見て改めてエリオットの妹役のドリュー・バリモアは実にうまい子役だったと再認識する。
幼いドリュー・バリモアがこの映画の隠し味になっている。
この映画何度見てもホロリときてしまう。


「少林サッカー」 香港映画
3月28日 15:30 ヘラルド試写室(GAGA)

ファンはかってはサッカーの名選手だが、八百長試合をして足を折られ選手生命を絶たれた。
八百長を持ちかけたハンは今やサッカー界のドンとなってファンを惨めにこき使っていた。
ある日ファンは並はずれた脚力を持つ青年シンと出会い、サッカーをやろうと持ちかける。
少林拳の使い手のシンは少林拳を一般に広められるならと、同じく少林拳の使い手の兄弟5人に声をかける。
それぞれ惨めな暮らしをしていた兄弟達はシンの情熱に動かされ、サッカーをすることにする。
ファンの指導のもと初試合に挑むが、なまった身体と相手のラフプレイで敗北するかに見えたが、
何かが彼らに憑依し少林拳の極意を取り戻した彼らは驚異的なプレーで相手チームをねじ伏せた。
全国大会に出場した少林チームは快進撃したが、決勝戦に待ち受けていたのは、
ハイテク・トレーニングと薬物で肉体改造された、ハン率いるデビルチームだった。
W杯に合わせ、サッカーと少林寺拳法を合体させたコメディー。
常人をはるかに凌ぐパワーでプレーするサッカーシーンは漫画のような世界。
ギャグは時々やりすぎの所があるが、同じアジア人同士、ギャグのセンスは日本人に合うような気がする。
ハリウッドとは全く違うギャグセンス。
兄弟それぞれ得意技が違い、それによってポジション分けもちゃんとされている。
ヒロインのヴィッキー・チャオはあんなに顔を汚さなくてもいいのに。
ダサいヴィッキーがオカマの洋装品店でセクシー路線に変身する、その変身ぶりが笑える。
ワイヤーアクションとCGをふんだんに使った、実にばかばかしい映画。


「ミモラ 心のままに」 インド映画
3月27日 13:30 東宝試写室(GAGA)

有名な声楽家の娘ナンディニは親戚達と豪邸で暮らしていた。
そこにイタリアとインドのハーフ、サミルが父の弟子として入門してくる。
陽気なサミルと美しいナンディニが恋に落ちるのにそう時間はかからなかった。
ところが弁護士のヴァンラジとの縁談を父親は勝手に決め、
サミルとの仲を知った父は激怒し、サミルを破門してしまった。
二人の仲を引き裂かれたナンディニは失意のうちにヴァンラジに嫁いでいったが、
サミルのことを忘れられず、毎日サミルへの思いを募らせていった。
ナンディニの心は自分ではなくサミルにあると知ったヴァンラジは
愛するナンディニのためサミルを探しに二人でイタリアへと旅立つ。
苦難の末にやっとサミルを見つけるが、ナンディニの心に微妙な変化が芽生えていた。
上映時間187分、インドの大純愛映画。
やはり物語の合間に全員が歌い踊る。しかしこの踊りもかなりの高レベルのダンスで、
カット割りといい、ハリウッドのミュージカル映画と比べても遜色ないダンスシーン。
主役のアイシャワリヤー・ラーイは94年のミス・ワールドだけあって、とても美しくて
スタイルもいい。
また彼女が着ているサリーもシーンごとに全部変わり、とても素敵で女性なら一度は着てみたいと思うだろう。
彼女が着ているサリーはおへそが出ている。現代的なサリーなのだろうか。
物語はとても臭いがついハマってしまう。


「ニューヨークの恋人」 アメリカ映画
3月14日 19:30 完成披露試写、梅田スカラ座(GAGA)

1876年のニューヨーク。
舞踏会の会場で結婚相手を見つけろと父に言われた公爵のレオポルド。
娘達はハンサムなレオポルドに指名してもらおうと一生懸命だが、財政を立て直すために
金持ちの娘と結婚しないといけないレオポルドは、会場に一生を共にするような素敵な女性がいないのを知ってがっかりしていた。
ところが、不思議なカメラを持つ男を発見したレオポルドは、男を追ううちに建設途中のブルックリン橋へ登る。
男ともつれるように川に転落すると、落ちた先は現代のニューヨークだった。
男は科学者のスチュワートで、ブルックリン橋に時空間のトンネルがあることを発見した。
仕方なしにレオポルトを自分のアパートに連れ帰るが、エレーベーター事故で入院してしまう。
階下には元彼女でキャリアウーマンのケイトが住んでいて、レオポルトを時代錯誤の変な奴と見ていた。
ところがレオポルトと話すうちにその紳士的で誠実な人柄に惹かれ、レオポルトも強がっているが
弱いところのあるケイトを意識しだす。
メグ・ライアン主演のラブ・ロマンス。
女の子なら誰しも夢見た「白馬に乗った王子様」をタイムスリップで現代のニューヨークに連れてきた
異色作。
ずいぶん強引な設定である。
メグ・ライアンはかなりやつれた印象で、目の下にくまがあるのをメイクでごまかしている。
最後のドレスを着たシーンはなんとかきれいに撮っていたが、途中はどうも病的なやつれ方をしてる。
かわいさ半減。歳いったんやろか。
タイトルの「ニューヨークの恋人」も能が無いなぁ。まぁ原題も「ケイト&レオポルト」で愛想なしやけど。


「ドメスティック・フィアー」 アメリカ映画
3月7日 15:30 UIP試写室(UIP)

手作りヨットの会社を細々と経営するフランクは2年前に離婚した。
しかし息子のダニーはフランクを慕って時々会いに来る。
妻は最近町にやって来た実業家のリックと再婚したが、虚言癖のある息子は
リックとそりが合わず母親とも反発していく。
結婚式の日にレイと名乗る男が現れてからリックの様子がおかしくなり、
偶然リックがレイを殺害する現場を目撃した息子はフランクにこのことを話す。
警察に行くが警察は虚言癖の子供と女房に捨てられた男の言うことと取り合わない。
そしてすべてを見られたリックの魔の手は息子のダニーに向けられ、
フランクは息子を守るために立ち上がる。
ジョン・トラボルタ主演。
殺人現場の目撃者が殺人者から命を狙われる定番サスペンスに、
家庭内暴力と親子の絆を絡めただけで目新しさはない物語で、
べつにトラボルタでなくってもという映画。
映画館やレンタルビデオで金を払わず、日曜映画劇場の放送で見ればいいような映画。


「D−TOX」 アメリカ映画
3月7日 13:30 UIP試写室(UIP)

警官ばかりが惨殺される事件が立て続けに起こり、手がかりは全くつかめなかった。
この事件を追うFBI捜査官マロイは昔なじみの警官まで殺され焦りの色を隠せなかった。
ところが犯人はそんなマロイをあざ笑うかのようにマロイの恋人にまで魔の手を伸ばし、
マロイの恋人は残忍な犯人によって殺される。
失意のどん底のマロイは酒に溺れ、同僚のヘンドリクスの勧めで精神を病んだ警察官の施設
D−TOXへ入所する。
ワイオミングの雪の中にあるこの施設は、昔の軍の司令所をそのまま転用した要塞で、
同じような境遇の警官達が世界中から集まっていた。
しかし執拗な犯人は雪で閉ざされた陸の孤島D−TOXに潜入し、警官達を血祭りに上げていく。
いったい誰が犯人なのか、疑心暗鬼の中D−TOXの警官達はひとり、またひとりと犯人の犠牲になっていく。
主人公のマロイ役はシルベスター・スタローン。
スタローンは最近タフなスーパー・ヒーローよりも等身大の人間くさいキャラクターに
歳とともにシフトしてるようで、もうアクションは自分でしないよう。
犯人を追いかけて屋根を走るシーンではスタローンと似ても似つかないスタントマンが走っている。
おまけにこのスタントマンも命綱をズルズル引きずって走っている。
なんてずさんなアクションシーンなんやろう。
冒頭から絵に描いたようなサイコ野郎の部屋をなめるように撮ったり、わざとらしいD−TOXの施設といい、
B級映画を通り越してテレビ番組のよう。
こんな事してたらスタローンももうおしまいやな。


「ロード・オブ・ザ・リング」 アメリカ映画
2月15日 18:30 厚生年金芸術ホール(ヘラルド、松竹)

魔王サウロンは自ら作り出し、行方不明になっていた魔の指輪で世界を支配しようとしていた。
この指輪を手にすると普通の人でも心の暗黒部分が増幅され、邪悪な心になってしまう。
ひょんな事からこの邪悪の指輪を手に入れたホビット族のフロドは、自分は指輪の宿命を背負わされた者と気づき、
この指輪を葬るため「滅びの亀裂」に投げ込むことにする。いろんな部族の勇者達がフロドを守るために立ち上がり、
「滅びの亀裂」への旅が始まったが、サウロンは指輪を狙って追っ手を差し向けていた。
世界的なベストセラー「指輪物語」の映画化で、制作費が340億円、製作日数が15ヶ月と
謳われているが、実は3部作で3部同時に撮影されているのでこの金額と日数になった。
普通まず1本撮って、ヒットしてから続編を撮るが、そうすると主役のギャラが高騰する。
3本同時に撮ってしまえば、その都度のギャラ交渉が無く、コストを抑えられる。
まぁベストセラーの映画化なので、ある程度ヒットは見込まれていたので3本同時製作となったのだろう。
そのせいか、初めから1/3の物語と割り切っていて、ラストは中途半端に「つづく」と言う感じ。
基本的にはファンタジーなのでこの世界の好き嫌いは別れるが、結構ヤマ場を随所に設けてダレさせず、
楽しめるが3時間は長すぎる。もっと削れると思うけどなぁ。
3部作だが続きとせず、その都度完結するように作ったらいいのに。


「アザーズ」 アメリカ映画
2月7日 19:20 完成披露試写、梅田ピカデリー(GAGA)

第2次大戦末期の英国の小さな島にある古い屋敷。
ここに美しい妻のグレースは二人の子供と出征した夫が帰ってくるのを待っていた。
たくさんいた使用人達はある日突如として姿を消し、募集広告を見たという3人の男女が
屋敷を訪れた。
以前この屋敷で働いたことがあるという3人にグレースは屋敷でのルールを教える。
光アレルギーの子供達のために日中は子供のいる場所では分厚いカーテンを常に閉め、
部屋の鍵は出入りの度に閉めること。常に静かに暮らすこと等厳格なしきたりを3人に課した。
しかし3人の出現から屋敷内では得体の知れない誰かがいるような不可思議な現象が起こり始める。
「オープン・ユア・アイズ」のリメイク件を獲得し、アレハンドロ・アメナーバル監督の脚本に
惚れ込んだトム・クルーズが製作に携わり、当時の妻のニコール・キッドマンを主役に据えたホラー。
「見せないことが恐怖を引き出す」と言うとおり、最後まで具体的なものはいっさい見せず、
シチュエーションとニコールの目の演技だけで観客の恐怖心をあおる。
ドイツ軍によって電線が切られ、日光アレルギーの子供達のため、常にカーテンがひかれ
昼間でもランプの明かりしかないうす暗い屋敷という設定がいい。
3人の使用人も何か鍵を握っているようだが悪人に見えない。
この「悪人に見えない」ところがみそで、3人のキャラクター設定が最後に生きてくる。
最後は大どんでん返しとなる。このパターンは初めてではないが、意外な展開であった。
アメナーバル監督は伝説的ホラ−の1ページに名を刻んだ作品といえる。


「ビューティフル・マインド」 アメリカ映画
1月31日 19:00 完成披露試写、厚生年金芸術ホール(UIP)

ジョン・フォーブス・ナッシュは数学の天才と呼ばれプリンストン大学の大学院に入学したが、
変人で友達も少なく、時間の無駄と授業にも出ず、独学で数学の研究をしていた。
やがて独自の「ゲーム理論」で念願のマサチューセッツ工科大の研究室に入り、
美しいアリシアとも結婚したナッシュだが、第2次大戦中の軍はその天才的な数学の頭脳を
暗号解読など軍に協力するように要求する。
軍に協力するうち敵の諜報員から命まで狙われるようになり、妻にもうち明けられず
やがて精神に異常を来たし出す。
ノーベル賞を受賞した実在の数学者をラッセル・クロウが熱演。
数学者でドラマが作れるかと危惧したが、幾何学模様のネクタイやフットボールのフォーメーションを
数式で表したり、女性の口説きも数学的にするなど、数学でエンターテインメントをちゃんとしている。
フィクションでラストにノーベル賞を受賞するとできすぎになるが、実際に受賞したので
文句なしのラストはすでにできていた。
ノンフィクションの部分に諜報活動などのフィクションを盛り込み、単なる伝記ではなく
サスペンスの要素を加えた脚色のうまさが光る。
ラッセル・クロウの演技は、うまい役者が変人でしかも心身症を演じるのだから、うまくて当たり前。
監督のロン・ハワードは、たいしたシーンでもないところまで画を作り込んでいて、
改めてうまい監督だと思った。