2006 フランス公演日記 |
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5月18・19日(木・金) さよならフランス 今日は8:45に領事官の車が迎えに来るので、6時に起き出して荷造り開始。 衣類・洗面用具だけでなくビデオ撮影機材、PC機材などがスーツケースの外に点在しているので、 荷造りだけで小1時間ほど掛かってしまう。 あらかたできたところでシャワーを浴び、朝食をとってロビーへ。 領事館のランドクルーザー(だいたい日本の公館の車は日本車)1台に 荷物を載せると全員乗れないので、マイケルとマルコは空港までリムジンバスで移動。 まず車でマイケル、マルコがバス乗り場まで送ってもらい、車は再びホテルに戻って僕と福矢、 風喬が荷物と共に空港に向かう。 リヨンの空港は当地出身のサンテグジュペリの名が冠されたサンテグジュペリ空港。 ここからまたアムステルダムへ向かい、そこから関空へと乗り継ぐが、KLMのカウンターに行くと、 コンピューターがダウンしていて係員がプリントアウトした紙を見ながら手続きしている。 おまけに搭乗券は手書きで、席も自由席。 こんな国際線初めて。 アムステルダムで関空行きに乗り換えると、乗客はほとんどが日本人になる。 飛行機に乗る度にセキュリティー・チェックで荷物を調べられるが、 どこに行っても一番丹念に調べられるのが三味線だった。 三味線は3分割されコンパクトになるため機内持ち込みをするが、X線の機械を通す度トランクを開けさせられ、 三味線の竿を袋から出して何度も機械を通し、細かなパーツまで執拗に調べられる。 三味線は竿の継ぎ目に金属が埋め込まれてるし、バチにはおもりが埋め込まれている。 これがいつも何か隠しているように思われる。 5年前の英仏公演ではロンドンからパリに移動する前日に9.11のテロが起こり、 機内には三味線が持ち込めなくて壊れ物扱いで預けたが、少し破損したし、 4年前の欧州公演の時もノルウェーの空港で厳しく調べられているときに係官が三味線のこまを破損した。 アメリカでの公演が多い林家和女もやはり三味線のチェックは厳しいと言っていたので、 どこも状況は同じよう。 バチや糸巻き部分は象牙でワシントン条約でとやかく言われそうやし。 セキュリティー・チェックは三味線弾きにとって鬼門のよう。 航空会社のコンピューターがダウンしていたので、ちゃんと荷物の乗り継ぎができたか心配だったけど、 19日午前9時15分に関空に着くと荷物は全部届いていた。 しかし、福矢のスーツケースが大きく割れていた。 早速カウンターでクレームをつける。 日本国内の作業員は丁寧だけど、海外では荷物はかなり手荒く扱われることを覚悟しないといけない。 航空会社のサイトを見ると空港作業員の労働条件改善のため荷物は32kg以内とまで書いてある。 僕も何度もスーツケースを壊された。 太鼓や機材の入ったスーツケースは厳重に梱包しているけど、 しつこく壊れ物扱いのステッカーがいろんな航空会社名でベタベタと貼られている。 最近は航空会社もまったく責任を取らないのでステッカーすら貼ってくれない。 今までのステッカーが気休め程度の主張となっているだけ。 でもそのお守りの御利益か、最近はあまりスーツケースの破損はない。 今回の公演も各地で大きな笑いが起こり、日本とまったく変わらずフランス人にも落語は楽しんでもらえた。 各地の主催者が一様に言うのは「小春團治さんの表現力と訳がすばらしい」ということ。 フランスも2度目でフランス語圏での公演は3度目。 いろんな人が翻訳に携わり、その都度手直しをされ、洗練されてきたのだと思う。 延べ12カ国、英・仏・独・露・ブルガリア・フィンランド・ベルギー・ノルウェー・韓国・トルコ。 いろんな言語の国で公演してきた経験が確実に身に付いているよう。 表現力も三味線や太鼓が物語の中に入る「はめもの」が細かな仕草の間を持たせてくれるので 外国人にもイメージが広がる。 「はめもの」が入るという上方落語特有のスタイルが、 外国でも効果的に作用していることは明らかだ。 各地のスタッフの皆さんもメールと電話のやりとりだけで、こちらの細かな注文に応えて高座やスクリーン、 照明の舞台設営をしてくださった。 今回字幕機材もNECからノートPCとプロジェクターを提供してもらった。 特にプロジェクターは大きな会場でも対応できて、 なおかつ海外にも持って行けるほどコンパクトな物。 明るい舞台でも文字が鮮明に見え、どこに置いても台形補正でひずみがない。 今までの苦労が一気に解消された夢のような代物だった。 たくさんの人たちに支えられての成功だと思う。 皆さんどうもありがとうございました。 もどる |
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