2004 トルコ公演
本文へジャンプ 3月26日〜4月2日 



3月29日(月) トルコ公演

朝6時から起きてトルコ語の字幕入力をしようと思って目覚ましをセットしていたが、
5時半にコーランで目が覚めた。
1日に何度かスピーカーで街中にコーランが流れる。
ベッドの上に小さなベッドカバーのような物があるが、ベッドカバーにしては小さすぎる。
何かと思っていたらお祈り用の絨毯らしい。
モスクもいたるところにあるけど実際にお祈りしている人は見たことがない。
風呂に入って字幕入力にかかる。
8時半に一旦中断し朝食をとりにレストランへ。
レストランには日本人の姿が見える。
僕らと同じ公演で出演する歌舞伎舞の板東鼓登治さんら一行のよう。
そそくさと朝食を済ませて部屋に戻って字幕入力続行。
何カ所か抜けているところや訂正個所、確認しないといけないところがある。
10時に劇場に荷物を運び、舞台設営。
高座になる台を探し、スクリーンの位置決めをする。
高座に毛せんをかけて照明のセッティングをしようと言うところで12時なった。
ここは国立劇場でスタッフは公務員らしく、12時になるときっちり昼休みに入った。
仕方がないので僕らもホテルに戻って昼食にする。
レストランには板東鼓登治さん一行9名がすでに食事していて、
聞くと昨夜は2時頃にアダナ空港に着いたらしい。
昼食後ミネラル・ウォーターやビールを仕入れにホテルの前の店に行く。
実はホテルの裏側は都市開発できれいに整備されているが、
反対側は全く手つかずの住宅街で朽ち果てた家などもあって貧しそうな地帯。
僕らは勝手にホテルの裏を「金持ち側」、前を「貧乏側」と呼んでいた。(失礼なやっちゃ)
ずらっと並んだ商店の1軒に入っていって「ミネラルウォーターはあるか」と聞くと、
おやじはないという。
もう一人の男が「あの店にある」と向かいの店に連れて行ってくれて、
店のおやじに「この人がミネラルウォーターが欲しいと言っている」みたいなことを言ってくれた。
値段を聞くが全く英語が出来ないようでわからない。
すると連れて行ってくれた男が英語で通訳してくれる。
ミネラルウォーターやビールなどを大量に買い込んで合計金額を聞くと、
その男がまた親切に通訳してくれて紙に書いて金額を教えてくれた。
買い物して振り返ると人だかりができていた。
物乞いは紙コップを差し出すわ、子供達は福矢を指さして「ジャッキー・チェン、
ジャッキー・チェン」と叫ぶわ(全然似てないのに)、えらいことになっていた。
日本人が珍しいらしい。でもとても親切で、マルコが頭に鳩のフンを落とされると、
見知らぬ人がすぐさまティッシュを差し出してこれで拭けと言う。
そういえばマルコはイスタンブールの寺院や宮殿で遠足らしき中学生の女の子らから
しきりに一緒に写真を撮ってくれとせがまれてモテモテだった。
中には別れ際にほっぺにキスする子もいた。
同じ外国人でも白人達には目もくれず、中国人・韓国人も間違わず、
日本人だけ非常に好意的に接してくる。
こっちに来る前、昔和歌山でトルコの軍艦が難破したのを漁民が助けて、
それがトルコの教科書に載り、子供の頃からトルコ人は日本に恩義を感じてると聞いたけど、
これほど親日的な国は初めて。
1時半に劇場に戻って照明・音響・プロジェクターなどのセッティング。
舞台まわりが終わると字幕の訂正の作業。
マイケルとアルカンさんで訂正し、楽屋で僕が字幕に入力する。
PCには入力出来たが、マイケルは台本を見ながら字幕の操作をするので、
プリントアウトしないといけない。
日本語・英語・トルコ語の3カ国台本の入ったPCを持って事務所に行き、
事務所のプリンターに繋いでドライバーをインストゥール。
台本を印刷するがひどく遅いプリンターで、本番まで2時間ほどしかないのでイライラする。
何とか台本も3部でき、楽屋にみんなを集めて簡単にリハーサル。
劇場は450人ほど収容できるが、今日は満席らしい。
いつものように鳴り物解説から本番が始まった。
ご当地ソングの出囃子アレンジは「ウシュクダラ」。
有名なトルコ民謡を探したら、昔江利チエミが歌ってヒットしたそうな。
マクラのイルハンネタも受けたし、いいお客さんだった。
後で聞くとトルコにも落語のような芸があるらしい。
どこの国に行っても漫談や漫才はあるけど、一人で何人も演じて物語を語るコメディーは
聞いたことがない。
トルコには一人でいろんな人物を演じ分け、ほうきの柄やタオルをいろんな物に見立てて
物語を語る芸があるらしい。
まさに落語。
トルコが日本に親しみを覚えるのは遭難した船員を助けただけでなく、
文化的にも何か底辺で似かよったところがあるのかも知れない。
我々の後は板東鼓登治さんらの連獅子。
こちらもお客さんは熱心に鑑賞している。
約2時間半の公演は大きな拍手で終了した。
終演後ホテルのレストランで関係者らと打ち上げ。
フェスティバルのプロデューサー、劇場関係者ら、一様に満足の様子。
打ち上げ中、僕がアダナに着いたとたん独特の臭いがしたというと、
プロデューサーは笑いながら「それはケバブ(カバブ)のにおいだ」という。
ケバブは肉や鶏を焼いた物でシシケバブ(シシカバブ)は日本でも有名。
アダナはケバブで有名で街中にそのにおいが漂ってるからだという。
そういえば去年公演した韓国のスウォンは「カルビ」の本場だった。
そんなところが世界中にあるよう。
打ち上げの後風喬の部屋に集まって飲んで騒いでると、フロントから電話で
回りの部屋から苦情が出てるので静かにして欲しいと
「お静かに」を食らって、2時過ぎにお開きとなった。



公演会場のアダナ国立劇場。


机の脚を使って大太鼓の台を作る風喬とグレッグ。
高座も袖回りも劇場にある物を工夫する。


トルコ語字幕の「お玉牛」。


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