2001 英仏公演日記
本文へジャンプ 8月17日〜9月16日 



9月7日(金)メリング公演


今日はマンチェスター北西部のメリングに移動することになっていたので、
10時半頃マイケルが我々のB&Bに車で迎えに来た。
いったんマイケル宅で仕事して、昼過ぎに今夜の公演先のメリングに移動することにする。
マイケル宅にボブさん夫妻から、昨夜は本当に楽しかったとお礼の電話があったという。
マイケルのママは、ボブとは30年付き合っているが、
そんな礼の電話は今までもらったことがない。よっぽど楽しかったのだろうと言っていた。
午前中はいつものように僕とマイケルはダイニングで仕事し、
昼は朝日新聞の上田さんがエジンバラに持ってきてくれたインスタントラーメンを
福矢が作り、ママと一緒に食べる。
2時過ぎ、昨夜出した太鼓や字幕機材を全部車に積み込んで、
みんなママと抱き合って別れを告げる。
今までとても親切にしてもらった人とたくさん別れてきたが、みんな握手するぐらいだった。
ママとはみんな自然に抱き合って別れを惜しんだ。
陽気さ、料理のうまさ、そして優しさ、
マイケルの両親は我々にとってもイギリスの父母のような気がする。
マイケル宅を後にしてシェフィールドの丘陵地帯を走る。
道路の脇を馬に乗った人が通る。
このあたりは車で走れば毎日乗馬を楽しむ人とすれ違う。
道の端にも大きな馬糞がいつも落ちている。
自宅で馬を飼い、毎日馬と散歩に出かける人がかなり多いらしく、
日曜日にもなると車の音よりも馬の足音の方が多いらしい。
天気のいい田舎道をメリングに向けて走る。
マイケルは田舎道を走りながら、英国人でありながら
「やっぱりイギリスの田舎はいいなぁ」と、しみじみ言う。
マイケルも初めて通る田舎道とその美しい風景に感激しているよう。
約2時間半ほど走ってメリングに到着。
会場は村の集会場のような所だけど、行くとすでに低いステージに
高座となるテーブルが置かれている。
楽屋となる部屋も広いし、舞台袖も作りやすい。
今までで一番設営しやすい会場かもしれない。
4人でテーブルを運んで高座を組み、毛氈を掛け、定式幕で舞台袖を作り、
スクリーンを張り、プロジェクターを調整し、鳴り物をセッティングする。
おなじみの作業をみんなてきぱきとこなす。
設営しやすい会場だと言うこともあるが、みんないろんな会場の
いろんな状況で設営してきた経験が確実に身に付いているよう。
8時過ぎ村人達がぞろぞろ集まってきて、楽屋のドアを薄めに開けて見ると、
みんな冬のような身支度。夜半から降り出した雨もあるが、かなり寒いのかもしれない。
開演し高座に上がって客席を見回して気が付いた。
日本人が一人もいない。
今まで最低でも1割はいた日本人が、さすがにここまではいないようで、
初めて英国人だけの客の前でする。
約50人のお客さんの反応は上々。子供達もゲラゲラ笑っている。
終演後会場を片づけてホテルにチェックインする。
今までの宿はB&Bと呼ばれる民宿だったけど、ここはホテル。
部屋に荷物をほりこんで、1階のパブへ。
このパブは主人の飼い犬のゴールデン・ラブラドールや、シェパードなどの大型犬が
3頭床に寝そべっている。
みんな犬たちをよけて飲んだりビリヤードしたりしているが、よく酔っぱらいに踏まれないもんや。
さっき見に来ていたお客さんがたくさん来ていて、お客さんとの交流会となった。
この村は200件ほどの家しかなく、50人のお客はかなりの率らしい。
飲んで食事して部屋に戻って窓の外を眺めると、雨はすっかり上がったようで、
よく見てみると星がいっぱい出ている。
福矢を誘って裏庭に出てみるとたくさん星が見えた。
英国に来て初めてこんなに星を見た。
この国は基本的に「晴れ」は「雨が降らない」状態で、「曇り」が基本。
太陽が出ていても雲が多いのですぐに隠れたりする。
だからまともに星を見たことがなかった。
メリングはきれいな星の見えるのどかな田舎の村だった。


マイケルのママと別れを惜しむ。


会場となったメリング村の集会所。



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