2001 英仏公演日記
本文へジャンプ 8月17日〜9月16日 



8月25日(土)ペリエ・コメディー・アウォード発表


朝、マルコが浴室のシャワーのお湯が出ないと言う。
スイッチを入れてもランプがつかず水しか出ない。
ボイラーは冷蔵庫と同じ戸棚の中にあって見るとちゃんとついている。
マイケルに聞こうとドアをノックしたが返事がない。
マイケルは昨夜スペイン人タップダンサーと仕事の話をしに出かけていき、
夜が遅かったので、まだ寝ているのだと思ってドアを開けるともぬけの殻。
どうやら昨夜は帰ってないよう。
バスタブ側はお湯が出るので台所から手鍋を持ち込み、
鍋でお湯をすくって頭や身体にかけることにする。
ところが日本のような混合栓じゃなく、お湯と水が別の蛇口から出るので、
お湯をすくって水でうめないといけない。
お湯と水の蛇口を行ったり来たり鍋ですくって頭や身体にかける。
三人風呂を使い終わったところにマイケルが帰ってきた。
タップダンサー達の宿に泊まっていたらしい。
シャワーが出ないと訴えると、あちこちのぞいてメインスイッチを発見。
洗面台の上に天井からひもがぶら下がっていて、これがシャワーのメインスイッチだという。
ひもを引き本体のスイッチを入れると、ちゃんとシャワーからお湯が出た。
こんなひもがシャワーのメインスイッチなんて誰が気付くねん。
国が変わるとずいぶん機械のスイッチも変わるもんや。
昨日誰かが間違ってひっぱったんやと思う。
昼は朝日の上田さんが持ってきてくれたインスタントラーメンを食べる。
どんぶりがないので4人分のラーメンを鍋で炊き、
テーブルの真ん中に鍋ごと置き、それぞれスープ皿にとって食べた。
去年領事館でこっちのポッドと言うカップラーメンを食べてまずかったと
舘石領事に言うと、日本のインスタントラーメンを差し入れてくれ、
みんなで涙流しながらうまいうまいと鍋食いしたことを思い出す。
今日は「皿屋敷」をやってみようと、
僕とマイケルは字幕の打ち合わせ、福矢・マルコはチラシ配りに出かける。
あとで聞くと福矢はチラシ配りのとき、毎回「ジャパニーズ・コメディー」と言うのは飽きてくるので、
「ジャパニーズ・エロティック・ショー」とか、僕のチラシの写真を指さして悲しそうな顔で
「マイ・ファーザー」と、色気でひっかけたり、不憫哀れで同情誘ったりしてたらしい。
マルコなどは相手が日本語がわからないことをいいことに、チラシを渡すとき
ニコニコしながら「お前ぶっさいくやな」「あんた乳でかいんちゃうん」などと言って
渡してたそう。失礼なやっちゃ。
今日の入りは30人ほどでもノリはいまいち。
マイケルに聞くと日本人が多かったからだという。
英国人が笑おうとしても日本人があまり笑わないと失礼なのかと思って
笑いを抑えてしまったらしい。
字幕を読む時間を稼ぐためにかなりゆっくりしたテンポでしゃべってる。
日本人にとっては間延びして聞こえるかもしれない。
少なくてもすごくうけるときもあれば多くても乗りが悪いときもある。
毎日反応が変わる、それは日本でも同じ。
それがライブ芸だ。
宿に戻って福矢・マルコの作ったペペロンチーノ・スパゲティーとワインで遅い夕食。
夜の12時、我々がエントリーしたペリエの発表がテレビであった。
残念ながら最終選考にも漏れた。
大賞は映像を使ったコメディーで、最近の流行らしい。
規定で英語でしかエントリーできないコンペに
字幕は英語だからとトップの人間をマイケルが数時間にわたり説得して
何とか参加したがやはりだめだった。
マイケルは最終選考に残ったコメディアンの舞台をテレビで見ながら、
「全然おもしろくない」「単純な笑い」「うちの方が絶対おもしろい」と
ワインの酔いもあってテレビに突っ込んでいた。
選には漏れたが、英国最大のコメディー賞に、
英語以外で参加した初めての外国人として足跡は残せたと思う。


我々の宿の前で


一番賑やかなハイ・ストリートの竹馬パフォーマー



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