エピソード48 

みちくさのあと〜わらしべ長者〜

 今回の海外出張は、大阪−(1)→マンチェスター−(2)→リヨン−(3)→大阪という旅程でしたが、なんと2回((2)と(3))もロストラゲッジしてしましました。ちなみにロストラゲッジとは、単なる荷物の紛失ではなくて、搭乗前に預けた荷物が到着地の空港で受け取ることが出来ないことを言います。

 (2)の場合。パリ・シャルルドゴール空港発リヨン行きの最終飛行機を降りた私。暗〜いリヨン空港で上司とともにターンテーブルに乗って荷物が出てくるのを待ってました。しかし、いつまでたっても出てこない。周囲の人たちは自分の荷物を手に取り、1人、また1人と去っていく。(まさか…)空になったターンテーブルが完全に停止したあと、秋風が吹いたような虚しさが…(やっぱり)。上司と私は、廊下の脇に唯一ライトが点灯している部屋を見つけて飛び込みました。

 そこにいたエールフランスの女性は、一応スマイルを浮かべながら対応はしてくれましたが、特に悪びれた様子もなく、ロストラゲッジ用の手続き…色や鍵のタイプなど荷物の特徴を説明し、後日の届け先を告げる…を淡々と進めました。あ、そういえば、オーバーナイトキットくれました。結構いいやつ。何故か白い上の肌着が1枚入っていました。

 続いて(3)の場合。パリ・シャルルドゴール空港発関空行きのJALを降りた私。1Fのターンテーブル前に行くと、ファーストクラスやビジネスクラスのPriorityタグをつけた荷物とともに変な物体が回っています。高さ1m、幅70cmくらいのたて看板みたいの。くるくる寿司で「お吸い物は直接ご注文ください」などと書いたカードが寿司に混じって回っていたりしますが、あれを縦横に10倍位でかくしたやつが回っているのです。そこには300ptくらいの文字で、「Tsucchy(実際は本名)様、最寄のカウンターまでお越しください」と書いてあります。

「なんと!俺のこと!」

 行ってみると、地上係員がいて、「本日の便でお客様のお荷物が届いておりません。まことに恐縮ですが…」とのこと。係員は超恐縮していて何だか気の毒…。「いや〜、私の荷物はパリが気に入ったんでしょう!」と冗談を言っても笑ってくれない(ガックリ)。「明日(日曜日)の便で届くと思いますので宅急便でお送りします」ホテルの変わりに自宅の住所を告げるところを除けば、リヨンでやったのとほとんど同じ。かばんの特徴を説明するための見本写真シートに至っては万国共通のようです。手続きを済ませた私は「海外出張帰りで手ぶらなんてカッコいい」とわけのわからないことを言いつつ、とりあえず帰宅しました。

 次の日(日曜日)、月曜日から別の国内出張が入っている私は、やはり今日中に荷物を受け取りたい、と考え、JALへ電話。

「直接来て頂いても構いませんよ。大変ご足労おかけします。後で費用をお支払いします…」

「それはいいのですけれど、ねえ、JALさんの来年のカレンダーとかもらえませんか?」

「それは…まだ、刷ってないもので」

「あ、そう。残念!じゃ、あきらめます」

 で、空港に行った私。待ち合わせの場所に血相を変えた係員登場!

「大変申し訳ありません!あってはならないことなのですが…」

「何?」

「今日の便でも届かなかったのです」

「えーっ!?」

「もし、至急ご入用のものがあれば、代わりの購入代金をお支払いいたします」

「いや、急ぐといえば会社へのお土産のチョコレートくらい…いえ、何でもありません」

「大変申し訳ございません」

「いやいや、JALさんは悪くないですよ。おそらく。悪いのは仏人ですよね」

「そういっていただけると…。あの、これ交通費と…」

と渡されたのは茶封筒。空港までの交通費だけなら1000円もかからないのに、ン千円入ってます。ま、拒否しても相手も困ると思い、あっさり受け取りました。

 結局、予備のお泊りセットを持って、月曜から2泊3日の福岡出張に出た私。水曜日は関空から大阪に戻り、荷物を受け取ることになっています。事前に電話を入れたら、届いているとのこと。私は福岡空港で「そうだ!」とお土産を買っていくことにしました。ちなみに値段は1000円のもの。前日の茶封筒で余裕のおつりが来ます。

 関西空港で荷物を持って出迎えてくれた係員。お約束のお詫びの言葉を聞いたあと、買ってきたお土産を渡しました。

「こんな…ご迷惑をおかけしたのに、お土産まで頂いて…」

「いえいえ、誠意を持って対応して頂いたのはむしろ好印象でしたから…」

「そうですか、では、ありがたく頂戴いたします」

 と。帰り道、(俺ってものすごくいいやつ(風)?)と自己満足。

 家に帰ると電話が鳴りました。受話器をとると、

「Tsucchy様ですか?先ほどは結構なものをありがとうございました」

「いえいえ」

「実は先日Tsucchy様がカレンダーをご所望だったとお聞きしました。先ほど上司と相談をしました。是非、お送りさせてください」

「えーっ?いいんですか」

というやりとり。何故か今年からJALスチュワーデスカレンダーはなくなっていたので、代わりに世界の美女カレンダーをもらってしまいました。結構、今回の成り行きは大満足。

「俺はお客様やで!」とこぶしを振りかざして詰め寄る人も結構いますが、やはり誠意や善意でコミュニケーションするほうが心地が良いですよね。途中経過もエンディングも。 最初のロストラゲッジは災難でしたが、それが茶封筒に変わり、一部がお菓子になって、最後は美女カレンダーって、ちょっとしたわらしべ長者体験みたいで楽しかったなーというお話でした。

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