エピソード32 

KAMIKAZE

 台風シーズン。航空会社は大変だと思います。欠航、引き返し、はたまたそれに伴う払い戻しとクレーム対応、計画外の機材と乗務員のやりくり…。

 今日、2002年7月16日は台風7号が首都圏直撃するかもしれない、にもかかわらず出張のため大阪→東京移動をしなければならなかったのです。

 朝、ニュースを見ると…天気予報によればまさに飛行機は静岡あたりに上陸しようとしている、でも公共交通機関の運行状況によれば全日空で欠航が決まったのは別の航路の1便だけとのこと。
(あまり問題ないのかな…)
ということで、20便(9:45伊丹発羽田行き)にのるべく伊丹空港へ向かったのでした。

 

 空港に着いて、チェックインカウンターの機械に回数券を差し込んでみると、「近くの係員にお問い合わせください」のメッセージが。で、尋ねてみると「天候調査中」とのこと。しばらく待っていると「途中で引き返す可能性もありますのでご了承ください」の条件で出発することになりました。少し心配になってチェックイン前に係員にいろいろ聞いてみました。

「行って戻ってきたら時間はどれくらいかかるの?」
「どこで戻る判断をするかにも寄りますが、片道1時間かかる道のりですから、1時間超えることもあるかと」
(そしたら新幹線で出直しても打合せ間に合わんな…)
「ちなみにお金は?」
「回数券は使わなかったことになります。不可抗力なのでご迷惑をおかけした点についての補償は…」
「そこまでは求めません」(それにしても1往復飛んで全額返却じゃANAもたまったもんじゃないな…)
まあ、新大阪まで行って新幹線にのるというプランも絶対安全策ではないのでとりあえず飛行機で行くことにしました。 

 

 飛行機は定刻から10分くらい遅れで出発しました。空ではコーヒーを飲み、新聞を読んで、時間的にはそろそろ着陸態勢に入るころ…そのときです。
「えー、機長です。ただいま羽田空港より着陸できる基準を越えているとのことで空中で待機するよう言われました。お急ぎのところ…」
という機内放送が流れたのです。
(来るべきものが来たかー。)

 とにかく、周囲は雲の海。どこにいるかもわからないところを延々と飛行していきます。機内では乗客のみならず乗務員も着席し、じーっと何もできない(たまにトイレに立ってしまうオジサンあり)の状態が続きました。しょうがないのでお決まりの暇つぶし…。

「スチュワーデスさん。次も仕事あるんでしょ」
「ええ」
「どこに飛ぶんですか?」
「鹿児島です。…申し訳ありませんお客様のお仕事にも影響が出ているのでは…」
「まあ、影響あるような無いような…」(←本当はあるんですよ)
「そうなんですか???」
「…そうだ、駐機時に見れるようなTVのニュース受信できないんですか?」
「TVはだめです。ラジオは1番のチャンネルで聞けますが…」

そういって、「翼の王国」とイヤホンを差し出されました。
(うるさいから黙っとけ、っちゅうことかな?考えすぎか?)
そう思いながらラジオを聞いていると、ちょうど台風情報をやっているところでした。それも新幹線…
「…新幹線は、小田原−新横浜間で運転を見合わせています…」
(ラッキー!(←語弊あり)『危ないと思ったら何で新幹線に切り替えなかったんだ!』って会社で言われずに済む。)
「…航空機の欠航が決まっているのは、全日空11時台羽田発の鹿児島行き623便…」
得意げな表情でイヤホンをはずす私。
「スチュワーデスさん。次に乗るの623便でしょう」
「え、何でわかるんですか?」
彼女は自分のポケットから取り出したメモのようなものを見てそう聞き返しました。
「あーそれね。飛ばなくなりましたよ。NHKが言ってました。少し安心したでしょう」
「え、そうなんですか…あ、ありがとうございます」

 てな会話を時々しているうちに、飛行機が着陸態勢に入ることを示す「ポン、ポン、ポン、ポン、」という音がしたのでした。

(う〜ん、新幹線も午後の飛行機も飛ばない状況で、数少ない便で東京入りできるなんて、なんてラッキーなんじゃ。)
しみじみ思った私は、2時間かかったそのフライトも幸運なケースと、小さく拍手したのでした。

 近畿地方を通り過ぎて関東に逃げていく台風(台風、嵐といえば神風!?)に敢えて追いつき突撃していく飛行機。しかしまあ…神風に特攻していくなんて、まるで…(省)

 

……それは違いますね。

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