エピソード28 

1st Floor

 ヒースロー空港でのトランジット。ヨーロッパでハブの役目をしている大空港の1つで、4つのTerminal間の移動はバスで行なうという具合にとても広くいので、乗り換え時も迷いやすいと言われている空港です。従って、敷地内地図や標識を見て変に自分で判断するよりは現地係員の指示に従った方が賢い、と思っていました。

 

 最初の飛行機がTerminal3に到着したのでバスに乗り、次の飛行機が出発するトランジット用のターミナルに移動しました。手荷物検査場をぬけて次の飛行機のチェックインをしていると、係員が搭乗口までのルートを教えてくれました。

 

「あそこのエスカレーターを1st Floorまで降りて、反対側にぐるっと回りこんでいけばいいよ」

 

 軽く頷いて、エスカレーターで1階までおりると、乗客が他のターミナルに行くためのバス乗り場がありました。ぐるっと周り込むには一旦ビルを外に出て、バス通りの脇の歩道を歩かなければなりません。

「んー、何ちゅうマニアックなルートを教えてくれるんや?へんやなあ」

 バスを待っている人達を横目に外に出て、てくてく歩いていくと別のバス乗り場が…。

「ここかなあ?」


 そのときです。
「ヘーイ、あんたらどこからきた?」
 係員が私と上司を呼び止めます。

「あっちからだけど?」
「ちょっと待ってな」
(ん?なんか変だぞ?)
 とりあえず、事情を話してそばのベンチで待っていました。
「やっぱり、予感的中ですね」
「そやな」


 しばらくすると、別の係員が来て、「俺について来い」といいます。
(やっと、ちゃんとしたルートに戻れるぞ。)


 でも、着いたのはさっき通った手荷物検査場の入り口側…。(ここはさっき通ったぞ…デジャブー…?)

 …そんな訳はないんですが、狐につままれたような気持ちになりながら、とりあえずもう一回ここからスタートということになりました。その後、ついてきてくれた係員に、「Terminal2に行くのはどうしたらいいの?」と聞くと、
「あそこのエスカレーターを1st Floorまで降りて、反対側にぐるっと回りこんでいけばいいよ」と答えます。
(そやから、さっきもそうしてアンタにここまで連れてこられタンやんか…!!)

 もう一度、詳しく聞くことにしました。
「どっち方向に周り込むって?」
「あっち」
(なんか、さっきと5度くらい角度が違うかなあ…?この違いが大事なのか?)

 エスカレーターを降りていくと当然の事ながらさっき通ったバス乗り場。やっぱり、さっき我々が行った方向以外に進んでいける方向が無いぞ!?
 と、そのとき中学校の英語の時間に習ったことをやっと思い出しました。要するに、イギリスで1st floorに行けというのは2階に行けということだったんですね。Ground Floor(1階)まで降りてしまったのがまずかったのです。米では日本同様、1st=Groundなんですけどね。

 ということで、一件落着。自分が悪いんですけど、どうもイギリスは混乱するところです。以前に、こういうこともあったし、

 スイス→イギリス→日本の移動の際に、イギリス行きの飛行機が遅れたんですね。まだ着陸態勢に入ったばっかりなのに、腕時計を見ると乗り換えの時間まで10分くらいしかない。気持ちはあせるばかり。

(ここで日本行きの飛行機に置いて行かれたらどないしょ…。急げ!急げ!急いでよ!)

 着陸して、皆が降りようと立ち上がり、前に詰め始めたときが出発1分前…。近くの日本人に、この人も同じ日本行きの便に乗りかえるのだったら心強いなあと話しかけてみました。

「もう、時間ないですよね!」
「ええ、もう、1時間しかないですよね?」
「へ?1時間????…あっ!!」

 そう、イギリスはフランスやスイス等ほとんどの西欧の国々と違って1時間時計が遅いんです。それを忘れて、私は一人あせりまくり…という訳だったのでした。ただ、乗り換え1時間というのも厳しい状況だったらしく、日本行きの飛行機に乗りかえる乗客は急遽召集されて、滑走路を通って次の飛行機までバスで直行したのでした。

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