エピソード17 

…でいいんですっ!!

 20世紀最後の海外出張はヨーロッパ(っちゅうか、ヨーロッパしかいったこと無いんですけど…)。9月のある一週間。無事に終わって帰路の飛行機の中。とアナウンスが流れました。

「お客様にお知らせいたします。キャプテンより『前方向かって左側にオーロラが見えている』とのことです」

 確かに飛行しているのはフィンランドの上。いかにもって感じ…。機体の右よりの通路側に座っていた私はワクワクして迷い無く席を立ち、非常口ドアまで行って窓に頭をくっつけてみると…、ほ、本当に白いカーテンがゆらーっ、ゆらーっ、と揺らめいているではありませんか。

「うわっ、本当に見えるうっ。本当に揺れてるんだ」
 顔を紅潮させたまま、振り返るとそこにスチュワーデスが一人。

「見えますか?」
「ええ、ええ。貴重な体験しましたよぉ。本当にTVで見るみたいに揺れるんですね。それに必ずしも真上に見えるんじゃないんですね。…確かに今年は太陽が活発な年だから見える確率が高いって聞いていたんですけど…本当に見えるなんて…」

 と目をキラキラさせる少年のような私(ウソつけ!)。
 そこへ、別のスチュワーデス。
「さっき、英語でもご紹介したんですけど、オーロラって『Northern lights』で良いんですよね?」

 

 本来なら、「ええ」で済んでいるはずなんでしょうが…、私はボキャ貧なんですね。この数日前に、『オーロラって何ていうの?』ってスウェーデン人に聞いたら「auroraでええんとちゃう」というんで、それが強く頭に残っていたんです。で、スチュワーデスへの返事は、

「auroraでいいみたいですよ」

「あれ!?Northern lightsじゃなかったんですか?」

「さあ??スウェーデンの人はauroraって言ってましたけど…」

 と、その瞬間、痺れを切らしたように強く言い放つスチュワーデス。

 

「…(とにかく)、Northern lightsでいいんですっ!!」

 

 後で調べたんですが、確かに、Northern (南極ならSouthern) lightsでも良かったのです。もちろん、aurora (borealis, australis、これら後に続く語は北極光か南極光かにより使い分ける)でも良かったのですが…。でも、せっかく女神の名前がついているんだから、神秘的な方を使えばいいのに…ぶつぶつ(素直じゃない私)。でも、あの一瞬、目が三角になったスチュワーデスさんの放ったオーラ(オーロラじゃなく)、結構怖かった…。

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