エピソード13 

スマイル…0円

 今日は福岡に出張だった。無事、仕事を終え、帰りのこと。飛行機に乗る前は酒を飲まない、という主義に反して、夕方、生中(生ビール中ジョッキ)を5杯飲んで飛行機に乗った。一応、私にとってこの量は(面と向かっている人にとっては酒くさいかもしれないが…)ほろ酔い気分の量であるが…。

 スチュワーデスと向かい合わせの通路側の席に座り、窓側には年下の同僚が座った。しばらくすると、やつがにやにやして、
「Tsucchyさん。あれもらいます?」と聞く。
 前を見ると、離陸時に目の前にいたスチュワーデスがビールを2本トレイの上に乗せてこちらを見ている。さらに酔っ払うのもいいか、と思い…「それください」と頼んだ。すると、なんと、
「これ、機内サービスじゃないんですが…」

 という。要するに、コーヒーとかジュースのようにタダではないということらしい。
(それをいうなら「xxx円になりますが…」だろう!!)

 

 一瞬むっとしたが、そこはやんわりと答えた。
「もちろん知ってますよ(あたりまえだろ、そんなこと知っとるわい)。おいくらですか(おれがタダ酒を期待しているようなやつに見えるのか)?」
 と尋ねた。スチュワーデスのリアクションからは特に悪びれた様子も感じられない。スチュワーデスが去っていった後、横の同僚も「はっきり言って、今のはかなりむっと来ましたわ」と何度も言っていた。私はどちらかというと悪気のない人間には怒らない性格なので、なんとか理性的に対応することはできた。
 しかし、確かに、ちょっとしたことでも怒るような客なら、「おまえ自分の言うとることがわかっとんのかい!!」と怒鳴っているかもしれない。これはスチュワーデスのためにも早めに矯正をしてあげる必要があるかもしれない。


 しばらくして、飛行機が降下し始めてさきほどのスチュワーデスが前の席に着席した。そこで、相手にさりげなく悟らせてあげようかと、少しプレッシャーをかけてみることにした。なにせ普段、客の不条理な要求にも、「申し訳ございません。ただ今…」と下手に出る彼女達である。やんわりと皮肉を言ってみたときにどういうリアクションをとるか興味津々であった。

「機内販売のビールが無料と勘違いする客って結構いるんですか?」
 この質問に対し、あっけらかんと答える彼女。
「ええ。結構、いらっしゃいますね」
「ふ〜ん。そうなんですか」(えーっ。「先ほどは大変失礼いたしました」じゃないの?)
 かつて洗練されたイメージで、乗客の憧れでもあったスチュワーデス像はどこへ行ったのか?こうして「観察日記」をつけている間はどんなエピソードも冷静に受け止められるが、これから文句をいいたい場面が増えてくるかも…。乗客が営業スマイル、すなわち「スマイル…0円」でがんばらなければならない時代が来るのかも…。

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