エピソード9 

窓閉め棒

 正確には窓ではなく、ブラインドですが…。欧州便のほとんどは、往路は太陽を追っかけて昼間のエリアを飛び、復路は夜のエリアを突っ切って飛びます。それ故、前者の場合、ブラインドは下ろすよう機内アナウンスがあります。でも後者の場合、飛行機が飛び立って乗客が寝始める前に外が夜になってしまうのでブラインドをおろすのが徹底しないときがあります。

 作者はこの出張で2階席に乗っていました。この機では2階席は5,6列くらいしかないため満員ながら20人くらいの乗客しかいなかったのです。窓は両側合わせて20個くらいあったと思いますがほとんど開いたままの状態になっていました。そして行程も半ば過ぎた頃、おそらく作者以外の乗客はみな寝静まっていたと思いますが、飛行機が夜のエリアを抜け、機内が明るくなりはじめました。
 あるときスチュワーデスさんが前方の階段を降りていったかと思うと、しばらくして戻ってきました。手には新聞を持っています。で、それをくるくると巻いて棒状にしているではありませんか?
「何すんだろ?」
 と観察していると、それで窓をひとつひとつ閉め始めたのです。こんな感じで…


 最初は、「なるほど、ナイスアイディアだね」と単に思っていたのですが、これが結構、重労働そう。何しろ、横2列とはいえビジネスクラスのシートは幅が広い。体と腕を精一杯伸ばしてもぎりぎりで、新聞棒が窓の突起にうまく引っかかるとは限らない。そのうち、「これって、あの人のアイディア?それとも、全日空共通のテクニックなの…?」と考えながらついつい見入ってしまいました。さらに、意識しすぎなのですが、このスチュワーデスさんの姿勢が何とも悩ましいポーズに見えはじめたのです。みんな、自分の20cmくらい前でごそごそやっているにもかかわらず、なぜか気づかずに熟睡しているようでしたが…。比較的後ろに座っていた私は、いずれ順番が来た時のことを考えて、

「うわっ。俺の席、通路側じゃん!!どうしよ。どうしよ」
 とそわそわしてしまいました。でも、ふと横を見ると…、私の列だけ、窓側の人が律儀にブラインドを下ろしてくれていたのでした。

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