注)このSSは舞シナリオのネタバレを含んでいますので、未プレイの方はご遠慮下さい。
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[ ぴこぴこ、ぴこぴこ…… ]
written by Kazuki Takatori
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 夜中の学校……
 確かに怖くて寒々しいけど、慣れればなんとかなるもんだ。
 俺は牛丼弁当を片手に、いつもの場所へとやってきた。
「……祐一」
 舞は壁を背にしながら、舞は俺のほうをじろっと見た。
 ……が、うさぎ耳のバンドを付けてるせいか、緊張感ぶっ壊しだ。
 苦笑しながら、弁当の入った袋を軽く挙げる。
「舞〜、牛丼買ってきたぞー」
 ……そう言った瞬間だった。
 
 
「……いる」
 
 
 ぴくんっ
 
 
 …………
 き、気のせいだよな?
 今のうさ耳の動きは……
 舞に袋を渡しながら、もう一つの包みを取り出す。
 
「……他に、卵はいるか?」
 気を取り直して、言ったはずだった……
 だけど、だ……
 
 
「……いる」
 
 
 ぴこぴこ……
 
 
「…………」
「…………」
「…………」
「……祐一」
「…………」
「……祐一っ」
「……あ、ああ、何だ?」
「卵」
「あ、ご、ごめんな」
 俺は卵を渡しながら、さっきの出来事を頭の中でリピートしてみた。
 
 ぴくんっ
 
 ぴこぴこ……
 
 ぴくんっ
 
 ぴこぴこ……
 
 ぴくんっ
 
 ぴこぴこ……
 
「……はっ」
 ま、まさか……気のせいだよな。
「あ、あははは……」
 そう、から笑いしたときだった……
 
 
 ぱくぱくぱくぱくぱくぱく
 ぴょこぴょこぴょこぴょこ
 
 舞が牛丼を頬張る度に、
 
 ぱくぱくぱくぱくぱくぱく
 ぴょこぴょこぴょこぴょこ
 
 うさ耳はまるで嬉しそうにぴょこぴょこと踊っていた。
 
 ぱくぱくぱくぱくぱくぱく
 ぴょこぴょこぴょこぴょこ
 
 …………
 
 ぱくぱくぱくぱくぱくぱく
 ぴょこぴょこぴょこぴょこ
 
 意志を持ったみたいに。
 
 ぱくぱくぱくぱくぱくぱく
 ぴょこぴょこぴょこぴょこ
 
 それを見た瞬間、
 
 ぱくぱくぱくぱくぱくぱく
 ぴょこぴょこぴょこぴょこ
 
 俺の思考は固まった。
 
 
 ぱくぱくぱくぱくぱくぱく
 
 ぴょこぴょこぴょこぴょこ
 
 
 ぱくぱくぱくぱくぱくぱく……
 
 
 
 ぴょこぴょこぴょこぴょこ……
 
 
 
 
 
「なあ、舞」
「なに?」
 卒業式の帰り。
 俺は頃合いを見計らって、一緒に歩いてる舞にあのことを切り出してみた。
「ちょっと、やってほしいことがあるんだけど……」
「?」
 不思議そうな顔をしてる舞に、俺はあの日と同じうさ耳バンドを差し出した。
「……ちょっと、これ付けてみてくれないか?」
「……はちみつクマさん」
 舞はそう言うと、俺の手からうさ耳バンドを取って、頭につけた。
 着物、袴にうさ耳……
 付けろと言っておきながら、我ながら凄いミスマッチだと思う。
「舞、ちょっといいか?」
「……なに?」
 そう言う舞の顔を覗き込んで、俺はそのままそっと口付けをした。
「……!」
 舞は頬を赤らめながら、俺のことを見つめる。
 そして、さっきつけたうさ耳は……
 
 ぴょこぴょこ……
 
 やはり、嬉しそうに揺れている。
「舞、今の、どうだ?」
 舞に顔を近づけて、優しく話しかけてみる。
「……まったく嫌いじゃない」
 そう呟いて、もっと顔を赤くしながら俯く舞。
 
 うさ耳は、また元気にぴこぴこ揺れている。
 たぶん、舞の力がそうさせてるんだろうな……
 魔物のときと同じ、無意識に……
 あれから何度も考えた甲斐があったってもんだ。
 
「そっか」
「…………」
 こくこく頷く度に、またうさ耳が揺れる。
「じゃ……帰るか」
「……うん」
 夢の中以来の舞のこの返事に、俺も嬉しくなって笑顔になる。
 
 俺は舞の頭を撫でながら、舞と一緒に家へ歩き出した。
 ぴこぴこ揺れるうさ耳を、ときどき優しくさわってやりながら……
 
 
 
 
 
 

  
[ あとがき ]
 さあ、久々の時間制限一本勝負SS、第6弾……舞です。今回は15分で(^^;
 うさ耳と舞の力を結びつけてみましたが……こんなほのぼのした力があったっていいですよね。
 
 しかし、満面の笑顔な舞も見てみたいものです。
 いっそ書いちゃおうかなぁ、と思ったりもしますが(笑)
 
 それでは、またっ♪
 "ほのぼの配達候補生"、たかとり和樹でした。
 
- Angel Blue…… -
URL:http://www.hk.airnet.ne.jp/kazuki/
Kazuki Takatori

 【感謝の言葉】
 たかとりさん、ほのぼのなSSをありがとうございます。
 擬音の繰り返しが不思議な印象を醸し出してますよね。
 「戻って来れた」舞の”無垢さ(Innocence)”が印象的な作品です。
 HID


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