『スロウ ソングス』
 
 
 
 
 朝〜、朝だよ〜
 朝ご飯食べて学校行くよ〜
 
いつもの朝
いつものスロウソングで眼を覚ます
 
 
開け放したままのカーテン
窓から射し込む太陽の光
朝とは思えないほどのまぶしさ
 
 
窓を開けて朝の空気を吸い込む
 
 
前の街では春の盛りの時期
この街ではまだ春の入り口
 
 
この街を基準にしている自分にふと気づいて
俺はここに慣れてきたことを知る
 
 
 さて
 
時計を見る
とぼけた雰囲気のめざまし時計
まだ真新しい二代目の時計
 
 そろそろ時間だな
 
手早く着替えて部屋を出る
 
 
隣の部屋の前に立つ
 
 
いつものようにひとつ伸びをする
 
それが合図であるかのように
 
部屋の中から声が流れ出す
 
 
 
 名雪...
 俺には奇跡は起こせないけど...
 
 
 
まるで他人の声のよう
だけど確かに俺の声
何度聞いても居心地が悪い
 
それに何より恥ずかしい
 
俺はひとつ息をついて
 
すばやくドアを開けて
初代の時計をまっすぐに目指す
 
 
朝一番の俺の仕事
新しく増えた俺の仕事
めざまし時計の大合唱からは解放されたけど
 
こっちの方が心臓に悪いな
 
ほっと一息つく間もなく
次の仕事に取りかかる
 
 
 名雪 起きろ 朝だぞ
 
いつものように返事がない
 
 名雪 起きろ 学校行くぞ
 
声をかけながらふとんをはぐ
 
ベッドには置き去りにされたぬいぐるみ
 
 
 
ひとつ強い風が吹いて
 
はじめて開いてる窓に気づく
 
風のやってきた方を見る
 
そこには名雪が立っていて
 
 
にっこり笑ってこう奏でる
やさしい声でこう奏でる
 
 
 
 おはよう 祐一
 
 
 
とても素敵なスロウソング
俺の大好きなスロウソング
 
 
 
 
 
【初出】1999/7/6  【修正】1999/7/15
【One Word】
本編は『こんな素敵な場所』へのアンサーソングです。
同じ朝、同じ時間の祐一です。
一部、修正しました、読んでニヤリとされた方もいらっしゃるかもしれませんね。
タイトルは親愛なるミュージシャン、佐野元春のアルバム名からです。
(1999/7/15)



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