ああ、夢から醒めた…


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Posted by Excalibur on 1999/12/25 23:59:39:

    お久しぶりです。
    創作掲示板に書きこんでも良かったのですが、S,Dの感想はここに書くという
    妙なこだわりが出来てしまったので此方の方で…。

    『Last Christmas』読ませていただきました。
    1・2から随分間が開いてしまったので、何かあったのかと少し心配になりましたが、
    無事にUPされて安心いたしました。

    一抹の寂しさ。
    私が今作の感想を表現するとすればそんな言葉でしょう。
    どこが、ではなく全体から感じる寂しさ。
    しかしそれは決して不快な物ではなく、むしろ心地よい寂しさ。
    矛盾した言葉のようですが、心のままに表現するとどうしてもそんな感じになってしまいます。

    漠然とした不安を感じる香里に感じるのか、
    ありもしない、そしてありえもしない「もしも」に思いを馳せる北川に感じるのか、
    変化を喜ぶでもなく悲しむでもなく再確認する理恵に感じるのか、
    脇を固める名雪、栞、果ては藤井や祐一からも感じた寂しさ。
    それはクリスマスと言う行事そのものが持っている物なのかもしれません。

    多分、クリスマスとは現世(うつしよ)から一瞬だけ切り離される日なのでしょう。
    そこに見えるものが正か負かは判りません。
    香里は去年のクリスマスに負を見、そして今年のクリスマスに正を見た。
    そう思います。
    現世から切り離される事は決して幸せなだけではないけれど、それでも日本人はその日に何か、
    他の日では見る事の出来ない物を見ようとする。
    宗教的背景を持たない日本人には、そう言った意味でこの日は特別なのだろうと思います。

    そして現世から切り離されて、見える物は、ただ消えていくだけの幻。
    それすら理解しながらも、その幻に確かな物を見出す人々。
    確かな幻を求める滑稽な風景。
    私がクリスマスを寂しいと感じるのはそう言う事かも知れません。
    …自分に縁が無いと言う事実も、確かに寂しさを想起させるのですが。(苦笑)

    クリスマスの何がめでたいのかは私には判りません。
    異国の預言者(あるいは太陽神)の誕生日を我々がめでたがる謂れを感じないからです。
    ですがやはりこの日はなくてはならない、"特別な日"だと強く思います。


    あとは北川と理恵の関係性において触れられていた"変化"。
    変わる事は喜びではない事をお互い理解しながらも、必要な事として受け止める。
    生きる事は変わっていく事。"寂しいけど"そう言う事。
    それを理解した二人には、少なくとも変化が不幸をもたらす事はない。
    そう信じます。

    寂しさの極致はやはり花火にありました。
    生まれては消える光の粒。
    綺麗だけど、いや綺麗だから消えていく。
    「綺麗な物は消えて、汚い物だけ残って行く」と嘆く人がいますが、
    私は、消えるから綺麗なんだと思っています。
    消えて感じる寂しさと言う感傷が、綺麗なものを綺麗に見せているのだと思います。



    万物は流転し、諸行は無常。
    変わらない物など無いし、変わらなくなった物はすなわち終わるもの。
    人には変わり行く物の先を知る事は出来ない、それは自分自身すらそうです。
    だから人は今出来る事を精一杯やるのです。
    それは刹那的で、儚く脆い感傷ですが、それでも後悔しない為にそうすることは大事な事です。
    そうした事で生まれる後悔は、しなかった事による後悔よりは受け止めるに足るものでしょうから。

    相変わらず纏まらない…。
    それでも感じた事は全て書けたつもりです。
    理性とは、自分が何を感じたのかを理解する事だと私は信じていますから。
    寂しく、そして優しいクリスマスを有難うございました。

    それでは、また…


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