SCAR FACE SITE

前画面へ



◆ 肉でファンタジー逢魔ヶ刻編

NEXT
【 恒例行事も無事終了し、意気揚々なギルドの戦士達。しかし「拝啓、兄さん事件です!(笑)」な訳で…
 と申しますか、もう既に始まってる訳で。舞台はどうやら北の国からの様でもあり…始まり、始まり〜♪ 】




 ――海抜より遥か上方。海鳴りも聞こえず風音しかない。霧で煙る雲海の狭間から見ゆるは、深く暗い北の海。
 渡りをする獣達しか通らない。そんな空間を裂くように進む5騎の騎影があった。

「イリューヒン団長。手持ちのジャベリン(手槍)は先程ので最後かと」
「私もです…こんな消耗戦になるならランス(騎乗槍)は一番頑強なのを持参してくるべきでしたね」
「しょうがあるまい。まさか奴等が逃げに移動魔法を使いながら、足止めでガーゴイルを操って来るなどと誰が予想できたか
 悔しいがこの状態では捕らえる術が無い…」
 部下達の呟きを聞きつつ、団長と呼ばれた男は手持ちの槍を見遣った。
 彼が持っていたハルバード(鉾槍)もこれまでの戦闘により、用を成さない程に槍身が歪み、鋒先は砕けている。
「ちっ、これももう使えん!!…」
 腹ただしさに、棒キレのように其れを投げ捨てる。槍は遥か下の虚空へと吸い込まれていった。
 皆其々に武装した飛竜へ跨り、長槍を持つ騎士の一団。彼等は飛竜を駆る騎士達… ――竜騎士だ。

「もう少しで南側の雲底を抜けます!!後、10秒… 9、8…」
 気圧の変化を感じ取った飛竜達は体勢を整え、騎士達は来るべきプレッシャーに身構えた。向かうは南方。
 彼等が住む北の大地よりも暖かい気候が作り出す上昇気流は凄まじい。しかし其の気流さえ押し戻す分厚い北の積雲との
 狭間に、今まさに飛び込もうとしているのだ…。
「――…くっ!!」
 次の瞬間、襲い来た圧力に積雲へと押し戻される――!!
 が、彼等が駆る飛竜達は持ち前の飛行能力で主人達を振り落とす事無く、気流の渦を抜け… ――視界が一気に開けた。
 失速しないよう慎重に手綱を引きながら、遥か遠く先に隣の大陸が見える位置である事を改めて確認する。
 だが感慨に浸る暇は無く、騎士の一人から緊張した声が木霊した!!
「奴等が居ました!!……11時方向、距離5200、下方へ70… …さらに下降中」
「さっきから高度を下げて来てる。奴等、中央へ逃げるつもりだぞ」
「くそぅ!北大陸一を誇るバーシア帝国竜騎士団の騎竜が追い付けんとは…」
 口々に悔しがる部下達を宥めるが、自分も愚痴を溢したい気分だ。
「小物の癖に、魔法を使う奴まで居るとはな。逃げ足だけは超一流か……人攫い達め!」

 ガーゴイルだが… 相手を石化させる能力があり、自らも石化する能力を持つ魔法生物で、鋭い爪と牙、翼もあり其の姿は
 悪魔そのものだ。闇に属する者達が好んで従え、普段は石像の姿にさせ敵や侵入者が近づくと襲い掛からせる。
 非常に素早く飛び回る上に、硬く倒し難いので、よほどの手練れが居ない限り、返り討ちに遭う冒険者達も多いとか。 
 ――此処でもう少し蛇足を…。
 この世界は四つの大陸から成り、今までの舞台は「中央大陸」と呼ばれていて其処から北には「北大陸(ほくたいりく)」
 西にスカーの生まれ故郷「西欧(せいおう)」があり、東にチェックが和食話をしていた「東方(とうほう)」がある。
 ちなみに北大陸は現在バーシアと呼ばれる統一帝国が治めており、西欧は連合国家(公国)で、幾つかの国の集まりだ。

 彼等はとある敵を追い、遠く北大陸から此処までやって来た。
 前にも語ったが、竜騎士の駆る飛竜達は戦う為だけに掛け合わされ続けた優駿のようなもの――まさに「騎竜」と言える。
 其れを操る騎士達もまた、尋常ならざる五感と三半規管の持ち主で、槍術の達人。空を統べる屈強の戦士達だ。
 だが敵の飛竜は凡庸にも関わらず、追い付く事も困難な状況だった。敵は3騎程、彼等は魔法を駆使し、近づけばワープで
 姿を晦まし、引き連れたガーゴイル達を使い足止めして来る。
 さしもの竜騎士達も僅か数キロの距離を縮められず…さらに魔物との戦いを強いられていたのだ。


 追って捕らえるだけと思っていたが、これ以上の損害は…覚悟は決まった。単身、居残ろうと……。
「団長命令だ。貴公等はこれより帰頭しろ」
「では団長は…?!」
「……帰ったら陛下に、イリューは中央へ行ったと、所用が済むまで暫しお待ち下さいとお伝えしてくれ」
 そんな覚悟の言葉に、部下達はまさか単身で決着を?お1人では危険です!!などと矢付き早に繰り返す。
 しかし今さら考えを覆す気は無い。
「心配は無用だ、この状況では俺も手が出せん。しかも我々は余所者だからな、目立つ事は極力避けねばならんだろう…
 陛下は攫われた者達同様、我等の身も案じておられる。俺が残るのが確実だ…」
「そんな、心配されてるのは貴方も同じなのに……」
 黙り込む部下達の心配が分からないでもない。
 自分が無茶をするだろうと、今追う敵はそれだけの事をしたのだ。
「…討てないのが残念です」
「其れは言うな。だが中央の民を犠牲にして良い訳ではないからな。諸侯へ伝えに行くだけの事よ。其れに中央には名うての
 戦士達が多い。俺も奴等を他者に任せるのは悔しいが割り切らねばならん、其処は察してくれ…」
 彼の決意は固い。部下達は考える、この後彼に対し自分達にできる最大限の事は…?
 お互いに目配せし合った後、共通の意見に頷き合う。
「ならば、――此れをお持ち下さい団長!!」
 3人の若い騎士達は、自分達の騎竜をイリューヒンの傍に寄せると、手元に残した槍を次々と器用に投げ渡す。
 武器の受け渡しや補充は何時もの事。投げられた槍を受け取り、手前に持って確かめる。
 皆其々が大事にして来た家宝や業物の一品だ。
「こ、此れは…貴公等の愛槍ではないか?!こんなもの受けとれるか」
「ダメです!!必ず戻ると、自ら我等に返すと言って下さらなかったら、帰りたくありません!!」
「…なっ……お前達…」
 此処で今まで傍で様子を見ていた4人目の騎士が寄って来た。前の竜騎士団長から仕えている年配の騎士。
 先輩でもあり、今は自分の片腕として助言をし働いてくれている人だ。
「皆心配なのだ、察してやれイリュー、そして約せ…竜騎士団長の使命として」

 現時点に置いて一番犠牲が少なく、最良と思える行動を取らねば。彼の言葉を聞く度、まだ自分は若輩だと思い知る。
 決着を付けたかったが、団長としての使命が…そう、悪人は奴等だけでは無い――…。
 しかし、感情論も切り捨てられない。
 敵は北大陸で「人売り」を生業にしていた。見目の良い娘等や、働き手になりそうな子供達を攫う。殆どが街人だったが
 中には貴族の子息も居た。行方を探す身内も多かった。自分達もそんな奴等は許せない。

「…分かりました。では国に帰るまでの間は頼みます。残る部下達にも伝えて下さい。俺は……必ず戻る」
 部下を安心させたいのもあるが、自分にも言い聞かせて…。
「イリュー、大変かも知れないが、お前にはちゃんと団長の座を継いで欲しいんだ。それだけの信頼と期待を、国民や皇家の
 方々から受けているのを忘れるなよ。だが恐れるな。過去の失敗など先の偉業で消えるもの…」
「人の為に最善を尽くす事で報われる…か。俺には荷が重過ぎる…」

 強さだけを買われ今の地位になった気がする。自信が無い訳では無い。それなりにやってきたのだから。
 人を使う事は苦手だ。たとえ力弱くとも賢く聡明な者が適任と思う。しかし全てを付き従えさせるのには強さの方が重要視
 されても仕方が無いのが現実であり、今の現状だ。頼られるのは嬉しいが、時々思う…… ――自由に…と。
 …苦々しい顔をしていたのだろう、先輩が気遣わしげに小声で話し掛けて来た。

「すまんな、お前にばかり…たまには部下を頼ってもいいんだぞ。だが其れが出来ないのがお前らしいよ」
 先輩の言葉に恐縮するイリューヒン。そんな彼の心情を推し量りつつも、年下の部下達は元気良く、激励ならぬ冷やかしの
 言葉を投げ掛けて来た。
「そういえば団長、貴方が帰って来なかったら、竜騎士団長を慕う大勢の娘達が嘆き悲しむじゃないですか!(笑)」
「ですよね。早くお好きな方を探して下さい。貴方が独り占めするから俺達に春が巡って来ないんです!」
「う、煩いぞお前達!そんな簡単に…」
「真面目過ぎます!だから、もの凄〜い面食いとか、実は幼女趣味?!とかって噂が立つんですよ団長!」
「ぅぅぅ……悪かったな独り身で…さっさと帰れ……凹」

 まだ妻帯者ではないし、恋人も居ない自分をからかう台詞。しかしお陰で肩の荷が少し降りた気がする。
 ――ご無事の帰還を…そういい残し、部下達は次々に北へと騎首を返していった。

「暫し、さらばだ…」
 彼等を見送りながら、自分の騎竜の背を撫で付け前方を見る。
 見れば、国を出た時10匹以上居たガーゴイル達も、今は2匹にまで減ってる。これなら倒せない事も無い。
 だが今するべき事は…?其の時、此方を振り向いた竜と視線がぶつかって…。

「先代の団長より受け継いだお前に、何時も損な役回りばかりだな……すまん、アナスタシア…」

 ――いえ、我が主……次は何処(いずこ)へ?――

 乗り手と同じく「赤き死のママリオート」の名称で呼ばれる、北で最速の翼を持つ騎竜。
 全てを緋色で装飾された騎竜の思いが伝わって来た気がした。
「そうだな、このまま大陸を突っ切り南へ。伝説となった戦士達が治める国。中央へゆくならまずは其処からだろう…」

 何時に無く気分が高揚している事に気付く。予感…新たな出会いの。部下達の台詞を思い出し苦笑する。
 だが気負う事はすまい。この使命はまだ始まったばかりなのだから。



 ――なーんて感じのシリアスなオープニングから、所変わって「名も無き国」より、ちょっぴり早朝の風景にて。
 久しぶりに相変らずな2人から話は進みますが、さてさて……?

「スカー!?起きてんだろ。また寝ボケてんのか?ニヤニヤしてんじゃねーよ。起きろ!!」
 しかしジェイドの声も届いているのかいないのか?スカーはニヤ付いた顔のまま、布団をギュッと抱き締めていた。
「……うう〜ん…vv」
 の時、上半身に這わせた指先はジェイドの胸部の突起をしつこく弄り回し、仰け反らせた顎を捕らえて唇を激しく貪るよう
 …っ…はぁ……嫌だ、其処しつこいっ…んんっ…」わざと淫猥な音を立てやりつつ、既に硬く立ち上がったモノを手にとり
 な、唇の奥からくぐもった喘ぎが漏れ、そのリズミカルな腰の動きに合わせて折り曲げられた膝が揺れる。「あぁ、スカー
 ふあっ…も、ダメ」スカーは殊更耳元へ囁き掛けた。「どぅふふっジェイド〜ええんか、ええのんか〜?」もう限界と首を
(18禁妄想な夢を激しく展開中のスカーさん↑) 

「う…んぁ?…ジェイド…」
「何1人で悶えてるんだよ!(怒)今日は朝一から仕事だって昨夜言ったのに、やっぱり寝てるし…」
 最近は本気で城下に移ろうかと思っているジェイドだったが、超子煩悩な師匠が離してくれる筈もなく、気長に考えれば
 将来はスカーの方を城に引っ張り込もうとか考えてたりで…(でも舅?!(笑)と折り合いが悪そう)
 ――ガバッ!!と、突如目覚めたスカーの第一声。
「はうあっ!!…そんなぁ、マジかよ…さっきまで見てたのは夢だったってのか?」
「よっぽど楽しい夢見てたんだな」
「くぅっっ!!何て惜しい事を…ぬを〜!我慢なんねぇ〜なぁ、ジェイド頼みがある、聞いてくれ?!」
「何だよ…?」

「させてくれーーーっ!!」←痛切に

 ――ドスッ!!間髪入れず、ジャンピングエルボーが見事に炸裂(笑)
「あ、朝っぱらから何考えてんだよ、馬鹿っ!!」
「ぐはぁ…(痛)うぬぅ、せめて……さ、先っちょだけでも!」
「おのれは、先っちょだけで俺を満足させる気かー!!////」←問題は其処ではない
 しかしシバいた頭を擦ってやりつつ、今度は甘えるジェイド。
 何だかんだ言っても、好かれてるのが分かるから嬉しいのだ。しかし朝からうるうるな魔性の瞳で見上げられたらもう…。
 朝ぁ?!んなもん男が一番元気な時に決まってるじゃねーか、グッフッフ(スカー談)
「ジェイド…すまん。つまりは余す所無く全部ならイイよな?」
「……は?」
「今朝は何だか辛抱たまらん位にお前の事、欲しい…」
 いきなりスカーの下へ引き寄せられる。こんな時に冗談は!…睨み返そうとしたが、見下ろす瞳で本気って分かった。
 逃げられそうもない。だけど何か変…?少し辛そうに頭を抑えてる。
「…ぁ…どうしたスカー…?」
「いや、何時もは自制が効くのにな。俺、今ちょっと変だ……あ〜…ダメだわ、酷くしたら悪ぃ…」
 何で今なんだよとか思ってる隙に、きつく抱き締められて…あ、少し熱っぽい?
「なぁ、本気で嫌か…?」
 こんな言い方ってズルイって思う。ああ、でもやっぱり好きなんだ俺。スカーを拒める訳がない。
 頬に額にと送られる口付けと、梳くように髪を撫でる指先の感触が気持ちよくて、抱え込まれた胸元で目を閉じた。

「嫌じゃない…けど今は……えっ…?! ちょっ、や……あっ…」

 ――結局、暗転…vv(この幸せ者達め!)


 其れから暫らくの後…(先っちょでは済まなかったらしい←え?)また何時ものように、遅刻の途(笑)に着く2人。
 しかも相当怒ったのか?ジェイドはスカーの家を出るなり、黙ったままお城の近くまで来てしまった。
「怒ってる?…ってそんな訳ないよな、お前(自主規制)v」
 からかうように顔を覗き込まれて…それでも本音を言おうとしてる辺り、さっきの余韻をまだ引き摺ってるかも。
「煩い!それ以上言うな馬鹿スカー!!……っ…でも、強引だったけど…その…う、嬉しかった」
「お姫さん大胆vvじゃ何でそんな膨れっ顔?やっぱ怒ったんだろ」
 ムカ付く言い方だけど、とりあえず今思ってる事、気持ちもだけど他の考え事の方も口に出してみる。
「ううん、違う…… だって気分が悪いってのにあんな事して、俺を心配させるからだよ。それに一寸引っ掛かる事が…
 もしかしたらあの噂と関連がありそうだって思えて…」
「ああ、此処何日か街中で続いたアレか…ふむ、確かになぁ。証言と一致する所もある」
 そう、スカーのこーいう所。切り替えが早くて助かる。

 実は数日前から巷を賑わす事件があった…「不思議な夢を見る」と…説明は後になるが、その事を考えてた。
 喋りつつもふと前方を見ると、開け放たれた城門前にギルドの仲間が1人。

「ジェイドちゃんおはようvvv今朝の君も、ラヴリーで、エクセレントで、綺麗だ…」
 恥かしい台詞に思わず苦笑い。
「…おはよう、クリオネ……(引)」
「って、俺には挨拶無しかい水性生物!!お前もこの時間って事は遅かったんだろ、このエセ福男!」←根に持ってる
「ギョギョ!!私はそんなルーズなのは嫌いだ、そんな訳なかろう。今朝は色々あってゴタついたんだ!」
 そういうクリオネは、かなり大きい四角い包みを小脇に抱えていた。
「あれ?何だよ其れ」
「今朝ジェスターから届いたんだキョ。ギルドで中身を確認しようと思って、同封の書簡もまだ開封してない」
「差出人はアリサ王妃?形からすると絵画か何かなぁ…」
「其れに今朝は夢見がものすごく悪くて、頭が痛いんだキョ〜」
「えっ、お前も…大丈夫?クリオネ」
 少し具合悪げなクリオネの額に手を翳す。逆に自分の手の方がひんやりして気持ちイイ…。
(…何て優しいんだ、ジェイドv)
「何だぁ?お前は悪夢だったのか、ケケッ(笑)残念だったな。俺はジェイドと(自主規制)な夢だったぞ…フフン」←自慢
「グキョッ!!き、貴様。夢の中でまでジェイドを汚すか!」
「はいはい、しょうもない喧嘩しないでくれ!!ところでクリオネはどんな夢を見てたんだ?」
 何時もの喧嘩に割って入り、クリオネの方へ向けて小首を傾げる。
(狙ってやってんな、子悪魔め…)

「(ああ〜可愛いvv)うむ、よくぞ聞いてくれましたジェイドちゃん。実は……」


 ――クリオネは夢の中、ジェスター王国での夜会の真っ最中。
 目の前には真紅のドレスに身を包んだ美女… ジャクリーン王女が、自分の事を艶っぽい瞳で熱心に見上げている。
「ひ、姫将軍さま…?」←動揺
「あら貴方、このプルプル加減が素敵。美容に良いのよ、ゼラチン質って……うふふっ。ねぇ、後で私のお部屋でゆっくりと
 お食事とお飲み物をご一緒しませんこと。シーフードはお好きかしら?ファラウェル産のは美味しくてよ」
 囁きながら、そっとクリオネの肩口に頭を寄せる彼女から、ふわりと甘い香りがした…。
(キョッカー!!……もしかして、このまま行くと私は……)

 だが一般的な想像に反し、彼の脳裏を過ぎった只一つの予感は…「部屋と食卓と私」←歌?


 ―― 喰  わ  れ  る ――!!


 と……。一瞬の間があり、次にスカーの大爆笑が辺りに木霊した!!
「あのさクリオネ……ぅぅ、俺ダメ、言えない…」
「ぎゃはははははっ!!バッカでーーー!面白過ぎる〜ひぃー腹イテェーーーッ!!ゴホ、ゴホッ(爆笑)」
「ええい!!これが悪夢じゃなくて何だと言うのだ?!」
「だからぁ!!おめー其れただ単に夜のお誘いじゃねーのか?深読みし過ぎだっちゅーの。誰がお前なんか喰うか!」
 スカーの言葉にキョトンとするクリオネは、やっと意味を理解したらしい。
「そ、そうなのか…?」
「そうだよ〜もう、クリオネったら……」
「でもま、喰うって意味じゃお誘いも同じだろーけど。食べられりゃ〜イイ思いしたのに…(笑)」
「そんな訳に行くか!あの王女?!の事だぞ、何されるか…いや、私にはジェイドが居るのだ!そんな破廉恥な事はできん」
 ――変。だけど其処が憎めないから。こんな事何時も言ってるのにね。
「…そ、そんな風に言うなよ……」
 この前ジェスターでの事があるから、余計に意識してしまう自分に気付く。
 お目当ての人(自分だけど)以外の事を、全く意に介さない所がクリオネらしいんだけど…ごめん。
「あ〜笑った笑った。さ、早いとこ仕事行こうぜ。こんなアホ連想する奴はほっとけ」
「キョーッ、失礼な!!(怒)」


 ――ひとしきり笑い続けた俺達はスカーに促され進む。今日は普段にも増して騒動の予感…。
 城門をくぐり、跳ね橋を渡……!?…ろうとした所で、また奇怪な物事に遭遇。変な光景を目にしてしまった?!
「あ、あれって…」
 跳ね橋を渡りながらお堀に目をやる。と…堀の水面に人が…っ…た、立ってる――!!

 俺達の驚きを余所に、それはもう軽やかにスイスイと(笑) 門番達も声を掛けあぐねている。
 そしてこちら側の橋のたもと、鳥のモンスターが一頭。仕草はとても愛らしい……が、やはり大きい。
 彼が何時も乗っている、薄闇色のレイヴンだ。キョトと主人の方を不思議そうに眺めて、クゥと一声鳴いた。
「…ニンジャ先生、何を…?」
 此方を見上げたのは伝説戦士の一人。不思議な術で水上に浮かんだ彼は、さも平然と話し掛けてきた。
「ああ、先程着いた所なんで御座るよ。久しぶりだなお主達。他の皆も達者でおるか?」
「っーかよ、城に来るなら橋を渡るなり屋上へ降りねーか普通…何で来て早々、堀?」
 ふむ、と考える様子の後、解釈の難しい返事。
「百聞は一見に如かず……自ら実際に体感せねば分からぬ事は多々ある。尚且つ人々の意見に耳を傾けて、自身との認識の
 違いを知る事で、さらに堅実な知識が得られよう。しかし我等は忍びの者。自らが欲する以上に他者の報を得ねばならん
 その使命果たす為となれば、堀を見らば渡り、石垣があらば登り、屋根を伝い、天井裏より窺い知る事も厭わない」

 それって、職業病…?言いたかったが黙っておいた(笑)だけど俺達の考えを察したのだろう、彼は柔かく表情を崩す。
 ――はっきり言って、見惚れてしまう人なのだvv
「まぁ、これは大げさな例だが。現在において意味が分からずとも、後になって気付くのもまた学びよ…」
「…あ〜つまりは堀に浮んでんのにも訳があるって事だろ…ふふんv」←偉そう
「ほぅ、主は賢いなスカーフェイス」
 自慢げに笑うスカーの返答に、納得と頷き微笑むニンジャ。昔、アタル大公率いる5人のパーティ(冒険者仲間)において
 ブロッケンJrと双璧と並び賞された、エキゾチックで凛々しい其の容姿は今でも損なわれていない。
「今日はギルドに用事ですかキョ、それとも授業の方へ?」
「いやブロッケン達に少々用が御座ってな。そうだ、後でお主達の所へも参ろう。ゆるりと話でもしに」

 ニンジャはカークフレイムに居残った伝説戦士の一人であり、アタル率いる、王国軍特殊遊撃小隊「アンタッチャブル」の
 指揮官としても有名な人だ。(兼、恋女房とか噂されてるがどうなのやら)其の名のまんま忍者で、超一流の忍び。
(忍術やその他特殊なスキルを持ってたりも…)忙しい合間を縫い、講師として学院に来てくれる気遣いの持ち主でもある
 それに加え、東方生まれらしい繊細な面立ちの所為で、熱狂的に盲信してる部下も少なくないとか。

NEXT