前回の勝負が終わってから一日後、万太郎から電話があった。 「やっ!チェック!」 チェックにとっては、とっても爽やかな声だった。 「おはようございます。…どうしたんですか?こんな朝早くから。」 「…どこが朝早いんだよ。もう12時回ってるじゃん。」 ちなみにチェックは最近低血圧気味である。 「ま、とにかくさ。」 ここで万太郎が話を切り出す。 「昨日の遊びをさ…勝負がつくまでしばらくの間続けない?…二人で。」 「え?」 二人? ふたり? ふ ・ た ・ り ・ ? 「二人…と言うのは…?」 「もちろん、僕とチェックさ。」 (えええええええええ!? 私と、万太郎…二人!? しかも、勝負がつくまで!?) チェックはそれはもう大喜びである。 いとしい人と、二人きりで遊びに行けるのだから、 「…どしたのチェック?…嫌なの?」 答えがなかなか返ってこないので、万太郎が心配になって言った。 「え!?…い、嫌なんかじゃありませんよ。…やりましょう、万太郎。」 「分かった。それじゃあ今日は□○▽×に集合ね。」 「分かりました。それでは…」 「うん、じゃあね。」 カチャン。 チェックは電話を置いた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (ま、万太郎と…『ふ・た・り・き・り』…で遊びにいける……) これはチャンスだ、とチェックは考えた。 この勝負が続いているうちに… 万太郎にこの想いを伝えなくては! チェックはそう考えた。 /////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// で。 「あ、チェック。来るの結構早かったね。」 こう見えて、万太郎は意外と時間は守る方だ。 今回もチェックより早くここに来ていた。 「こんにちは、万太郎。」 「それじゃ早速始めよっか。」 そう言うと万太郎は、A、B、Cとあるくじ箱3つを持ってきた。 …しかし、これは一体誰がスタンバイしているのだろう? と、いうわけで。 『ジャンケンポン!』 前回と同様、まずはジャンケンでおごる側とおごられる側を決める。 勝ったのはどっちだ…!? チェックは右手の人差し指と中指を突き立てた。 万太郎も左手で同様のことをした。 チョキ対チョキ…あいこだ。 『あいこで…!』 次は勝負がつくか!? 万太郎は左手を広げている。 チェックは右手を握り締めている。 パー対グー。 と、言うことは… 「やった!今回は僕の勝ちだね!」 「負けてしまいましたね…」 「じゃあチェック、くじ箱を選んで。」 万太郎はそう言って促した。 「えーと…では、Aの箱からくじを引きます。」 チェックは恐る恐るその右手をAと書かれた箱に入れる。 「早く早く!」 待ちきれないとばかりに万太郎は促す。 「それでは…これにしましょう。」 チェックは一枚のくじを取り出して、開いてみる。 …そこに書かれていたものとは、一体…? /////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// 「わぁ…あったかいねー。」 とある自動販売機の前。 万太郎は『もらい物』を頬に当てて温もりを感じ取っていた。 「やっぱし冬はこれがないと話になんないよ。」 「そうなのですか?」 「うん。これぞ日本の冬!!…って感じかな。」 そうして二人は缶のフタを開ける。 『おしるこ』と書かれたその缶のフタを。 とは言っても。 チェックはおしるこなど飲んだことがないので、どんな味がするのか少しだけ不安になっていた。 「う〜ん…」 でも、飲まないわけにも行かない。 {おごられた人は必ずおごったものを残さず食べる。} そのルールの前では、不安もへったくれもあったものではないのである。 だが、万太郎が横でおいしそうに飲んでいるのを見て、決心がついた。 覚悟を決めて、中の液体を喉に通してみる。 コクン。 すると、口の中に上品な甘さと香りが広がる。 「…おいしいのですね。『オシルコ』というのは。」 「あ、チェックは飲んだことないんだっけ。…おいしいでしょ。」 「ええ。とても気に入りました。」 ニコっと微笑んでチェックは言った。 /////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// あまり人気のない、帰り道。 二人は話をしながら帰路についていた。 まあ話をしながらとは言っても、万太郎が一方的に話をしているだけなのだが。 チェックはそれを嫌な顔一つせずに聞いている。 いや、これはむしろ…喜んで聞いている。 万太郎の話もネタが尽きかけて来たころ、チェックは辺りを見回してみた。 (今が…チャンスかもしれない。) チェックは心を決めた。 いまこそ告白を…と思った。 「あの…万太郎。」 チェックはついに話を切り出した。 「ん?何?」 「………」 話を切り出した、までは良かった。 だが…なかなか次のステップに進むことができない。 「どーしたの?」 「あの…その…私は…」 …うーむ。 傍目から見ているとかなりじれったく感じる。 「私は…その…あな、あなたのことが…」 万太郎がきょとんとした顔でチェックの方をじっと見つめている。 「…私は、あなたのことが……………す…」 あともう一息! と こ ろ が 、 世 の 中 そ ん な に 甘 く な い 。 「よう、二人で何してんだ?」 「ん?」 二人は声が下方向に振り返ってみる。すると… どっから沸いてきたのか、ケビンがこちらに向かって歩いてきていた。 「あ。ケビン。」 「よ、チェック。」 「あ…こんにちは。」 とりあえず、軽くアイサツをする。 「…他の奴らは、いないのか?」 ケビンは他の3人がいないのに気づく。 「うん。今日は二人だけで遊びに行ってたんだ。…でも、もう帰るとこだよ。」 「ほう、それは奇遇だな。…俺もこれから帰るところだ。」 …ゑ? 「あ、そうなんだ。それなら一緒に帰ろうよ。…ね?チェック、いいよね?」 …ゑゑゑ? …ここに来て、告白作戦は失敗…のようだ。 (…告白はしてしまいたいけど…理由もなく断るのはケビンに悪いですし…) 「ええ、いいですよ。」 チェックはそう答えた。 …まあ、仕方がないといえば仕方ないのかもしれないが。 /////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// と、言うわけで。 万太郎とチェック、そしてケビンの3人で一緒に話をしながら帰ることにした。 「ところで…ケビンは何をしていたの?」 「ん?…ああ、クロエに用事を頼まれてな。」 そんな感じで話は進んでいった。 そうこうしているうちに、分かれ道に出た。 「あ、ボクこっちだ。…じゃあ、ここでサヨナラだね。」 「そうか。…それじゃあな。」 「さよなら、万太郎。」 万太郎は去っていった。 /////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// もう少しして、再び分かれ道に出た。 「あ、私はこっちの道ですね…では、ここでお別れですね。」 「そうか。じゃあ、また会おう。」 ケビンが帰っていこうとしたその時。 「あ、ちょっと待ってください。」 チェックが引き止める。 「何だ?」 ケビンがそう言ったとき、チェックはケビンに近づいて… そして、ケビンのマスクを指でスッと触った。 「さっきからずっと気になっていました。…マスクに埃がついてましたよ。」 「あ、ああ…ありがとう。」 するとチェックは、ニコッと微笑んでこう言った。 「ダメですよ。せっかくの格好のいいマスクなんですから、大切にしないと。」 (!!) その時。 ケビンの中に、『何か』が芽生えた。 「…では、また会いましょうね。さようなら。」 そう言ってチェックは去っていってしまった。 「……………………」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 まだ、行方は分からない。 戦いの行方も。 恋の行方も。 二人の戦いは、まだまだ続く… 二人の残金 万太郎 ⇒ 9748円 チェック ⇒ 9260円 そして… 「………(赤面)」 1人たたずむケビン。 「…ちぇ、チェック…は…結構、その…可愛いな。(赤面)」 新たな波乱の予感? 続く |