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◆ 肉でファンタジー聖都協奏曲編

【 前回、派手に死闘を繰り広げご苦労様なギルドの戦士達… 駄菓子菓子?(byチェック)また事件の気配が…
 いや、起こらなきゃ始まんないからゴメンなさい(笑)舞台はまたまた「名も無き国」から… 始まり、始まり〜♪ 】 
 
 
 
 
 ――此処は、名も無き国の城下町――…。
『えっと… ……何処かしら…?』
 土曜の夕方5時過ぎ。ギルドのメンバー達にとっては、ついつい寄りたくなる馴染みの店がある…。
 其処は裏通りの片隅に、隠れ家的に佇む店の一つ… 其処を探して彷徨っていると、1人の戦士に声を掛けられた。
 
「アンタ、ひょっとして……【骨休み亭】を捜してんのか…?んぁ、ナンパじゃねーよ!いや俺も今から行く所なんだって
 良かったら俺が一緒に付いて行ってやるぜ?遠慮すんな」
 ……なーんて、男に声を掛けられる。一体誰なのだろうと首を傾げる貴女。
『あの…貴方は…?』
「俺が何者かだと?そりゃおめー…大学教授なんかにゃ見えんだろ(笑) 店の常連だ。仕事は傭兵やってる」
『あ、常連さんですか… 実は私、店の事が知りたくて』
「どんな店って?そりゃ着いてのお楽しみって奴さ。そうだなぁ入ったらまず周りの話を聞く事だ。俺も其れが目的でな
 色々な職種の奴が居て飽きねーし…ま、とりあえず聞き耳を立ててみろよ…」
 そう言うと彼は貴女の手を引き、裏通りをぐんぐん進んで行く。並んで歩きながらチラと彼を見上げた…ハッキリ言って
 かなりの美丈夫。しかし優しげとは正反対の精悍な顔立ちに、戦う者が持つ独特な神経質さがある。
 肩に落ち掛かる長い緋色の髪や、黄金色の瞳は、この大陸の人にしては珍しい――…。
「おっ… 此処だ此処……」
 
 ――戦士らしく、力強い手付きで【骨休み亭】と記された扉を引くと、貴女を招き入れるように中へ。
 彼は店内に入ると慣れた手付きで素早く店員へ注文を取る。促されるまま席に座ると、アンタへの奢りだと言われて…
 慌てて断ろうとしたが、やんわりと制された… そして彼はカウンター席の方へと向かう。
 
「お、マルスじゃねーか… ゆっくりしてけ。つか、他の連中はどうしたよ?」
 声を掛けてきた主はカウンターの奥、此処のマスターなのだろうか…?浅黒い肌、短い銀髪。
 元戦士らしく傷の走る顔… と、隻眼なのだろうか?だが咥え煙草がよく似合う、これまたイイ男…。
「ああ、ボーン… ありゃ俺が一番乗りだったのか?」
 すると、奥の席から声が…。
「お先に来てるキョ…」
「んだよ、水性生物!いい御身分だな〜お姉様方に囲まれやがって!」
 ――結構素敵な雰囲気の店内。何故かカウンター席には、マルスと呼ばれた戦士以外は座っておらず、店の中央付近に
 置かれた何脚かのテーブルには男性客達が。店の奥は踊り場っぽく数段高くなっており、其処には、彼の連れらしい男が
 数名の女性客に取り囲まれていた…どうやら占いの真っ最中らしい。
「ま、いっか…とりあえず駆け付け三杯!何時ものモスコミュールな」
「オイオイ、悪ガキがイキナリ其れかい!」
「ふん…そんな説教、悪オヤジに言われたかねーよ」
 スカーの口答えに、ムッとした表情を見せるボーン。伸ばした手で彼の首元に掛かる髪を頭ごと引き寄せボソリと呟く。
「てめ、オッサンゆーな!!…ったく… (大陸一の賞金首君がよぅ…)」←小声
「イテテ(痛)……ボーン、其の話は…」 
「ん、ああ分かってるさ…悪かったよマルス。ま、俺にだってお前に言われたく無い過去がある…お互い様って奴だよなぁ
 でも知ってるか?お前に掛けられた…(怪盗赤燕)の賞金は、今でも西の大陸では生きてるらしいぞ」
「ゲッ!マジかよ?あれから何年も経ってんぜ… ……」
 
 
 誰も――… 同業みてーなボーン以外には、殆ど誰も知る奴の居ない俺の過去がある… … 聞きてぇ?
 そうだな、オープニングがてら其の事に少し触れさせてやる。長いから心して聞けよ!
 
 一番幼い頃の記憶から辿ろうか… 泣く子も黙るd.M.p.って戦士の部族と長の娘だった母親。彼女をとある国の王が
 見初め、迎え入れた。然るのち生まれた子供が俺様…… 「ゲェーーーッ!王子様?!」だと?そりゃねーぜ…凹
 そこはかとなく高貴だろ俺?(笑) とは言え、複数の奥方様達の片隅に彼女は居た訳で…。
 元々気性の激しかったオフクロは、んな場所に長居したく無かったらしいな… 結局、赤んぼの俺を連れて逃げ出たとか。
 何人か腹違いの兄弟が居たみてーだが、俺の事を世継ぎの1人として、親父だろう其の王さんが、随分目を掛けてたって
 聞いたのは大分後だ… だから彼は彼女が出て行く時、自分の子だという(証し)を彼女に持たせたんだと。
 ……ま、いわゆる御落胤の証しって奴?
 
「今でも持ってるのか… あの証しは?」
「まあな… ほらよ」
 胸元から取り出したサークレットをボーンに見せる。
 其れは、手前に置いてあった照明用の蝋燭の灯りに不思議な色合いを照り返す。
 今見えている石の色は濃い赤紫…ワインレッド。きっと日の下に晒すと新緑の葉のような碧へと色を変えるだろう…。
「うーん、何時見ても凄い石だ…超一級品のアレクサンドライトなんて滅多に見れんからなぁ」
「石もだがよ、俺にとっちゃ細工の方に意味があるらしいが… 今さら、って感じだぜ」
 
 ――其の後の話の方がもっと造話っぽいかも知れない。でもホントにあった事さ… 信じてくれるか?
 
 俺達親子が城を出て10年近くたった頃、跡目相続の争いが始まった。其の王様は俺の事をかなり推してたらしいんだが
 他の兄弟を利用して利権を狙っていた親族の手に掛かって殺されたらしい…… 良く聞く類いの争いさ…。
 追っ手は俺達親子にも迫って来た… だがよ、俺のオフクロは結構な知恵者で、知り合いだった盗賊団の所へと、密かに
 逃げ込んだのさ。表向きには「お嬢様は盗賊に攫われて、王子は殺された!」ってな。流石、俺様の母ちゃんv
 でも、疑り深い親族は諦めなかったんだと… それでもしつこくオフクロの事を探し回って…結局、其の盗賊団の頭目の
 息子って奴の手引きで、この大陸に逃げた所で消息が絶えちまって。
 俺は俺で、頭目に息子代わりに可愛がられて… 何時しか、まだガキだったが、西の大陸で名の知れた盗賊になってた。
(怪盗赤燕)ってな其の頃の俺様。義賊として悪徳野郎相手に大活躍してたんだぜ… だけど、賞金掛けられるわなんやで
 面倒な事になっちまって… 結局、12歳の頃かな?俺もこっちの大陸へと渡ってきたって訳よ。
 ああ… そういや、元気にしてっかな… キン骨の親父さん…。
 
「チッ!!親父の話は聞きたくもねーぜ!」
「まあそー言うなって。あの爺さんもアンタに去られてから丸くなったんだ。俺がこっちに来る時だって、俺のオフクロと
 アンタの事が心配だから探してくれって……泣かすじゃねーか、親心って奴?」
「…まぁ…其処ら辺は礼しとくぜマルス。ジジイの面倒みてくれたし。其れに俺は、あの人を引き止められなかった…」
「オフクロか?ボーン…今思うとアンタ、俺のオフクロに…… …」
「……っ!!馬鹿!んな訳ねーだろ。其れに、そんな事を思うのもバチ当たりな程、いい女(ひと)だった…」
「だよな〜v ま、女一匹で世渡りしてやろうって気概が、オフクロには有ったからな…アンタの世話になりたくなかった
 ってのも頷けるわ。憶えてるよ、綺麗で強くて、髪も瞳も俺と同じ…もう、会えるのは半分諦めてっけど」
「俺も情報は集めてるが、なかなか… だけど、何時か見つけ出してぇ…あの女を…」
 
「でもなボーン。俺はもう寂しくない、仲間も帰る場所もあるから…
 もし今の俺をオフクロが見たら出て来ないかも知んないな、遠慮とかして……」

――かくして俺はこの大陸へと渡って来た。そして傭兵をしながらすぐに、この強さでメキメキと頭角を表す事になる。
 其処で俺は、最初の運命の相手と出会う… 分かるだろ?
 ジェスターの王子にして、最高位司祭。両親譲りのとんでもなく綺麗なツラの持ち主。蒼の聖天使ケビン。
 俺だって一応元盗賊。お宝の値打ち位一目で分かるさ。だけど、今まで出会って来たどんな宝も敵わない位に…
 いや、こんな物みてーな言い方したらぶっ飛ばされそうだぜ!(笑)
 多分俺は、戦闘の多かったカークフレイムよりも、ジェスターでの戦歴が長い。傍に居たかったからしようがねーよな。
 知り合ってからは、色んな事をアイツに話したり教えたり… 愚痴を聞いたり、慰めたり…(あ、逆もアリで…笑)
 気が付いたら恋人に…俺のモノにしてた。 ともかく俺は、ケビンを本気で好きになってた…。
 俺の素性を教えたのはケビンだけだ。生い立ち。母親を探している事。
 あのサークレットを贈ったのは、どんな綺麗なお宝も、身に着けた途端に霞んじまうようなアイツに、唯一似合ったから。
 それと、俺が持ってるよりアイツが着けてた方が目に付くって考えもあった… まだ親を捜す気持ちが残ってたし。
 色を変える石は不吉だと抜かすケビンに、「実は、オフクロの形見なんだ。貰い物で悪ぃな…」何っつたら、驚いた顔で
 此れがイイ…って、受け取ってくれて。お前の形見を貰ったようだと、寂しそうに微笑んだ。
 
 今でも思う、――何でも手に入る筈のアイツが本当に欲しかったのは、何でもできる自由だったって……。
 
「西の大陸に其の名を馳せた怪盗赤燕様は、流逃の果て逆にハートを盗まれましたとさ… ってか」
「茶化すなよ、大マジだったんだぜ。確か其の頃は… こっちで傭兵兼盗賊稼業してたアンタを見つけた頃だよなボーン?
 それと、今ならまだしも当時の俺とケビンじゃ身分違いじゃねーかよ」
「それで余計に燃えちゃったと…それがまた何で今に至るのかねぇ」
「…ちっ……言いたくもないが、ケビンがお上品にも「くそ」を付けて御呼びになってる、あの御父上の所為さ…」
「あ〜ジェスターの聖騎士王ロビン様ね… 何かあったのか?」
 
 ――サークレットはとてもケビンに似合ってたよ… あの頃に書かれたアイツの肖像画にもバッチリ描かれてる。
(ちなみに現在其の絵は、ジェスター城内に飾ってあるらしい…)
 だが最初にサークレットの事に気付いたのはロビン国王だった。石もだが細工の方が気になったらしい。
 すっかり失念していたが、母の手掛かりと同時に、王族に連なる者への証しなのだ… 其の細工に掘り込まれていたのは
 西の大陸最大の王家の一つである王国の紋章と、片隅にだけどほんの小さく、死んだ父王の名前。
 あの情報収集に長けた王さんなら、調べ上げる事なんて造作もないよな…。
 其の頃はもう、俺とケビンは密かに周知の事実として噂になってた。
 
「バレたのか… んで、あの冷酷な知将で有名な王様はどうしたよ?」
「ああ、(ケビンが欲しいなら身分を明かして、次代の将軍としてケビンに仕えろ)だとよ…」
「ふーん、王族出身の将軍って(肩書き)が欲しかったのかねぇ…」
「ケッ、あの親父は自分の思い通りにしなきゃ気がすまないエゴ野郎さ!まあ、俺の実力を見抜いて言ったんだろーけど
 何で俺が売名の片棒担がなきゃいけねーんだ?自分トコの王朝が大事にも程があるぜ!」
「そりゃ自分の子が可愛いから、傍に置いといてやりたかったんだろ?」
「フン、頼んでねーよ!にしても口約束とは言え15かそこらのガキにまあ大胆なコト言いやがる、とは思ったけど」
「確かにそりゃ大胆だ。だが元ジェスターの将軍候補で、しかも今は名も無き国の次期将軍とは……スゲェなマルス…」
「……ん、まあ…こっちの王さんと将軍さんは嫌いじゃねぇ…寧ろ、好きだし」
 
「其れにもう1人… お前をこの土地に引き止める奴が居るだろ? あの、翡翠の瞳のお姫様が…」
 
 ――暫くは、俺とダディ様が険悪になっちまったのを隠してた。けど、結局ケビンに伝わっちまった訳で…。
 ますます親子仲は悪くなるし、俺は俺でかなりムシャクシャしてた…そんな時だ、俺が瀕死の重傷を負っちまったのは。
 俺の意識がはっきり戻るまで回復した頃、ケビンは姿を消した。目を覚ますとサークレットと置手紙があって。
 馬鹿だよ…俺がやったんだから、似合ってるんだから、持ってきゃイイのに。
 其の頃の俺は、親より何よりケビンの方が大事だった… とにかく追った…探した1年近くも。そんな時も、時々噂は
 耳に入って来てたよ。召喚士を目差してるんじゃないかって聞いた時はちょっとホッとしたぜ。復讐とかじゃなくてさ
 アイツはちゃんと、自分が思い描いてた夢へ邁進してるんだってね…でも、俺はもう一度会いたくて。
 だからギルドの噂を聞いた時、藁にも縋る気持ちでこの街に来た。でも身も心もボロボロで…
 街角の隅で、もうどうにでもなれと打たれる雨に身を任せてたら…… 其処で俺は、2人目の運命と出会ったんだ。
 
「あの… 何かお困りの様子に見えるんですけど… 差し出がましいかも知れませんが、お力になれませんか?」
 
 再び天使に出会った気がした――… 其れから2年。
 愛を与える事に夢中になってた俺に、愛を与えてくれたのは、まぎれもなく今傍に居る翡翠色の瞳の天使…。
 
「ヒュゥ〜♪言ってくれるねぇ…」
「そうだな、例えるなら…… 盆水に映った月を愛でてたら月が逃げて、嘆いてた所に朝日が映り込んだってトコさ」
「おいおいマルスの癖に、情緒たっぷりな例え方してくれるぜ!もう酔ってんだろ(笑)」
「なんだよボーン!其の言い方は。俺がバカみてーじゃねーか」
「んで、お月様とお日様…今はどっちが大事な訳よ?」
「お日様だ……って言い切りたい所だけど。確かにジェイドは命をくれてやってもイイ位可愛くてしょうがない。だけど
 どうしてもほっとけねーんだよケビンの事も…あの寂しがりが今何やってるかって考えると…」
「っーか其れLoveじゃなくて、保護者モードの方に近くねーか?」
「……うーん、まあ俺もいい加減(要領が悪ぃ美少年をほっとけない性格)は直したいとか思うんだが…凹」
「にしてもマルス。お前ってすんげぇ波乱万丈だよなぁ… お芝居か物語になりそうだ…」
「ははっ、じゃ俺様がおっ死んじまったら自伝でも出版させっか?」
 其処まで聞いた所で、ボーンは入り口に目を向けた。
 
「儲かりそうな話だな(笑) … ……だが、冗談はさて置いて… どうやらお前のお日様が、ご到着なすったようだぜ」
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