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◆予兆、そして…

 

キッドとジェイドが付き合い始めてしばらくが過ぎた。
二人は全く誰にも気づかれることなく…というわけでもなかったが、いろいろな場所でデートを重ねてきた。
以前のように遊園地で遊んだり、ゲームセンターでジェイドが意外な才能を発揮してキッドがそれに驚いたり、
レストランで一緒に食事をしたり…
そして、互いの愛は深まっていった。

そんなある日のこと。
いつも、リードをするのはキッドなのだが、今日は珍しくジェイドの方から電話をかけてきた。
しかし、キッドは少し気になるところがあった。
まあ、無理もないだろう。


rrrrrr…
キッドの家の電話が鳴る。
「…ハイ?」
もちろん、キッドは受話器を取る。
「あ…キッド先輩?」。
「おう、ジェイドか。どうした?」
「あ、あの…とにかくすぐ来てくれないか!?」
そう言うジェイドの声は、緊迫した感じがした。
まるで…何かに追い詰められているかのように。
「…?別にかまわねえが…何かあったのか?」
「と、とにかくすぐ来て欲しいんだ。早くね!」
「あ、ああ…?」
キッドがそう言うと、ジェイドは電話を切ってしまった。

こんな電話のやり取りがあったのだ。



「何だか、あいつにしては妙に焦ってたし…一体どうしたんだろう?」
少々疑問を抱えつつ、キッドはジェイドの家へと向かう。

そして、ジェイドの家に着く。
「…考えてみれば…家に行くのは初めてなんだよな。」
初めてのことなので少々緊張しながらインターホンを押す。
ドタドタドタ…
ジェイドが来たようだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?

なかなかドアが開かない。
と、その時。
ガチャ。
いきなり扉が開いた。
その突拍子のなさとあまりの時間差にキッドは少し驚いた。
「わっ!?」
「ご、ごめん…中、入ってよ。」
「い、今の時間差は一体なんだ?」
「と、とにかく、早く…」
「…???」
わけも分からぬまま部屋の中に入れさせられる。

「へえ…きれいに片付いてるんだな。お前の部屋って…」
ジェイドの部屋は、一つも汚点がなかった。
床も綺麗で、全く散らかっていない。
衣服もちゃんと洗濯してあって、しかもたたんである。(ちなみにキッドの部屋はかなり散らかっていてキタナイ。)
「うん。掃除とか洗濯については昔からレーラァに厳しくしつけられてきたから。」
「ふーん…俺はたまに掃除機掛けたりしかしたことねえなあ。」
〔1人暮らしの男の部屋〕というものに対して持っていた一定の固定観念が崩れ去った瞬間であった
「掃除はちゃんとやった方がいいよ。ノミとかダニとかがわくから。」
この会話の間は、なんとなく張り詰めた顔をしていたジェイドの顔も穏やかになる。

しかし、また元の顔に戻る。
「…で、どうしたんだ?今日は…何かあったのか?」
「う、うん。そうなんだ。実は…」
そう言うとジェイドは黙り込んだ。
「ど、どうしたんだ?ジェイド?」
少し心配になったキッドは声をかける。
その時、ジェイドの顔色が少し悪く見えた。
「どうしよう…俺…何だか…その、怖いんだ。どうしたらいいのか分からなくて…怖いんだよ。」
「お、落ち着け。落ち着いて最初から話せ…一体、何があった?」
「…これ、見てよ。」
そういうとジェイドは一枚の紙切れを差し出す。
「ん?何々…『お前は俺のものだ。他の奴らには絶対渡さない。』…何だ、これ?」
「一週間くらい前から、それと同じような内容の手紙が毎日…一日に二、三通はポストの中に入れられているんだ。
 …何だか、気味が悪くて。」
「一日に二、三通も?」
明らかに不審である。
「それだけじゃないんだ。それよりもうちょっと前くらいから、頻繁に無言電話がかかって来るんだよ。」
「無言電話?」
「うん。これも一日に五、六回位かな?」
「そ、そんなに?」
「レーラァにも、他の皆にも心配かけたくないし…今まで誰にも言わなかったけど…けど、ここまで続くと、さすがに怖くなって…」
「で、俺を呼んだわけか。」
この時、ようやくキッドの疑問が解決した。
「なあ、キッド先輩…これってやっぱり…」

そう。
不気味な文章に無言電話。
考えられることは一つ。

「…ストーカー、だな。」
それしか思い浮かぶことはない。
「ちょっと待ってろ。」
そういうとキッドは電話の方へ行く。
すると、コンセントのカバーをはずす。
「やっぱりな…」
何かあるのだろうか?
キッドはそこから何かを取り出す。
「何だ?それ…」
ジェイドはそれを不思議そうに見つめて言う。
「…おそらく、盗聴機だ。」
「と、盗聴機!?」
キッドは手に持っている黒い機械をポンポン投げながら続ける。
「ああ。…お前の今までの電話の会話は…ストーカーに筒抜けだったってわけだ。
 ストーカーってのは、大抵こういうもんを仕掛けやがるんだよ。(←それはあんたの思い込み。)
 ったく、不気味な奴だ。」
そういってキッドは、盗聴機を踏み潰す。
「そんな…誰かが、俺の事を…でも、一体誰が?」
ジェイドはますます不安になって考える。
「…大体の目星はつく。」
「え?」
「お前も知ってるはずだ。奴のことはな。」
「奴…?」


この時点で、一番怪しい人物。
それは、ジェイドに対して異常な好意を持つ人物。
かつ、その思いをジェイドに届けることができず悔やむ人物。
考えられるのは、ただ1人だけだ。


「スカーフェイス…あいつ以外にこんなことを考えそうな奴はいない。」
キッドがその名を告げる。
「スカーフェイスが…なぜ!?」
ジェイドはわけが分かなくなっていた。
スカーフェイス…
なぜ、ここでその名が出てくるのか。
それを、理解できずにいた。
「お前、確かあいつに告白されてキスを強要されかけたときに…」
「う…き、気絶させちゃったんだ。」
「そうだろう?要するにお前に対して好意を持っていたことになる。
 …しかも、生半可なものじゃあねえな。いきなりキスを強要してくるくらいなんだから…」
それを聞くとジェイドもなんとなく理解した。
「そして、極めつけはあの夜の出来事だ。」
「また俺のところに来て…レーラァに吹っ飛ばされたことか?」
ジェイドはあの夜の出来事を思い出す。
「そうだ。あの時は大方お前が俺に好意を抱く前に、お前のことを自分のものにしようと…そう思っていたんだろう。
 だが、それはかなわなかった。…動機は十分だ。」
「スカーフェイスが…」
ジェイドは黙り込む。
「…怖い、か?」
一応そう聞いてはみたが、答えは想像できた。
ジェイドの体は明らかに震えている。
キッドにもそれが分かった。
「…そうか。」
そう言うとキッドはジェイドのことを抱きしめた。
「!!」
いきなりのことでジェイドは驚く。
「俺が…」
「え…?」
「俺が…吹き飛ばしてやる。お前の不安も…恐怖も。」
そう言いながらジェイドをベッドの上に押し倒す。
そして、口付けをする。
「ん…!」
と、キッドがジェイドの衣服を脱がしていく。
「俺が、お前のことを…抱いてやるから。」
ジェイドのメットを取り外すと、キラキラと光り輝く短髪が出てくる。

『抱かれる』ということの意味はジェイドにも分かっていた。
それはつまり、SEXだ。
体を交えること。
それぐらいは、ジェイドにも分かっていた。
けれど…拒むことはしなかった。
そればかりか、それを望んでいた気さえする。

ジェイドはその体の全てを露にした。
キッドも上半身だけを脱ぐ。
「…力、抜けよ。」
強張っているジェイドの体を見てキッドは言う。
けれど、ジェイドにしてみればかなりの努力を要することである。

すると、キッドは再び抱きしめる。
「!!」
そして、先ほどよりも激しい口付けをした。
キッドはジェイドの緊張が少しほぐれたのを感じた。
と、今度はジェイド自身に触れる。
「…っ!?」
不慣れな感触に戸惑うジェイド。
それに構わずキッドはそれを刺激する。
「あっ…!」
ジェイドは耐え切れず声を出してしまう。
けれど、その快感は絶え間なく襲い掛かって来る。
「ひ…あああっ!!!」
そして…ついに達してしまう。
思わずキッドの手の中で放ってしまった。
「あ…ご、ごめんなさい…」
ジェイドが出したもので汚れたキッドの手を見て、思わず謝ってしまう。
「構やしねえよ。それに…大分力も抜けてきたみたいだしな。」
キッドは言った。
少しだけ、ジェイドは恥ずかしくなった。
「でも…俺ばっか気持ち良いなんて、俺が卑怯みたいだよ。」
「え…?」
「今度は…俺がキッド先輩のこと、気持ちよくしてやるよ。」
「ジェイド…?」
そういうとジェイドは…キッド自身を取り出す。
そしてそれを、口に含んだ。
「あっ!?…お、お前…?」
いきなりのことでキッドは驚いた。
不慣れな動作でジェイドは奉仕を始める。
そんなことをしばらく続けていた。
ジェイドも少しずつ慣れてきたのか、次第に表情が穏やかになってくる。



そうしているうちに、キッドが達した。
「うっ…!」
「…!!」
ジェイドの口から、キッドの放ったものが漏れる。
「気持ち…良かった?」
「…ああ。最高だったぜ?」
まだ多少不安がっているようであったが、大分ジェイドも打ち解けてきたようだ。
「でも…」
と、キッドはジェイドの事を押し倒す。
「え?」
「本番は…これからだぜ?」

「う…ああっ!」
キッドは自分自身をジェイドの中に進入させる。
あまりの激痛にジェイドは大声を上げてしまう。
「わ、悪ぃ…痛いか?」
キッドはジェイドの身を案じる。
が、ジェイドは続けてこういった。
「だ…大丈夫…だよ…」
それでもジェイドのことを心配して、あまり激しくは動かない。
「あっ!…んっ、はぁ…うっ!」
それでも、一突きごとに叫び声をあげるので『ヤバイかな?』とキッドは思った。
けれど、かといってやめようとすると、
「も、もう…俺はどうなってもいいから…だから、やめないでくれよ…っ!」
という感じで、ジェイドに止められてしまった。
「…じゃ、じゃあ、その…俺、お前がそういうなら…」
「も…もっと…激しく…して…」
ジェイドのその言葉を聞くと、キッドは先ほどよりも激しく腰を動かした。



そして…二人は、同時に達した。






お互いに疲れ切った二人は、しばらくは呼吸で精一杯だった。
その中で、先に口を開いたのはキッドだった。
キッドはジェイドのことを抱きしめながらこう言った。

『…これから先、お前に何が起きても…俺が…きっと俺がお前のことを守ってみせる。
 だから…そんなに怖がるな。…な?』

ジェイドはその言葉を聞くと、キッドにすがり付くようにして、涙を流して泣いた。








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ある男が、笑っていた。
とあるマンションの一室で…まるで悪魔のように笑っていた。
その笑い声は…

悲劇の予兆を、告げているかのようだった。
そして、男は言った。

『もうすぐだ…
 もうすぐお前は、俺のものになる…
 言ったよなぁ?絶対にお前を他の奴らに渡したりしない、ってなぁ。
 だから…俺のものにしてやるよ。

 例 え 、 ど ん な 手 段 を 用 い て で も 、 な 。」


                                     続く