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◆ K&J ブライダル・フェア 〜前編


その日のベルリンは早朝から盛大な花火が打ち上げられて、街全体がお祭りムードであった。
その理由は・・・何を隠そう、天下の正義超人界の二大名門、イギリスのロビン家とドイツの
ブロッケン一族の新世代同士の挙式が今日ここベルリンで行われるからである。
新郎はロビン家の嫡男ケビン。名家に生まれながら8歳で家出(!!)し、一時は悪行超人にまで身を落としたが、
今はすっかり更生して立派な正義超人騎士(?)である。
そして、そのケビンの可愛い花嫁はブロッケン一族の末裔(オイ)ブロッケンJr.がそれこそ蝶よ花よ(笑)と
大切に育て上げた生粋の新世代超人ジェイド。
その名の通り、宝石のような美少年で性格もすこぶる良い・・・とあっては、あの不良(笑)のケビンといえども
惚れざるを得なかった。

この2人、結婚に至るまでには紆余曲折を経たが(その割に期間は短かったが・笑)今はお互い心底信頼して
愛し合っている。
ケビンとジェイドのロマンス(笑)は、ファンも正義超人委員会も皆が心から祝福していた。
今日行われる挙式も、世界中の祝福を受けた世界一幸せなカップルの晴れの門出になる事に疑いの余地はなかった。
・・・・・・たった一つの不安要素を除けば・・・。
それは、当の2人とその保護者であるブロッケンJr.とロビンマスクの4人だけしか知らない事だったが。

初夜を待たずして昨夜結ばれたケビンとジェイドは、今朝目覚めてからはお互い照れくささと忙しさで
ゆっくりと話す暇もないまま、式場である世界でも屈指の五星ホテル、”ハイル・ヨルトンホテル”に連れて来られていた。
一息つく間もなく、これから仕度をしなければならない。
一応(?)2人は別々の部屋で仕度するのだが・・・
「ジェイド、やっぱり一時でもお前から離れるのは不安だな。別にオレなんかタキシード(笑)着るだけだし・・・
お前についてた方がいいかもな」
ジェイドの手をギュッと握って、不安そうに言うケビン。
そんなケビンの優しさに、ジェイドは頬を染めながらも心底嬉しそうに微笑んで
「ケビン・・・オレもお前から離れたくない!一緒にいてほしいよ」
と、寝不足のせいで(笑)多少潤んだ瞳でケビンを見つめ返す。
そんな瞳で見つめられてはケビンも俄然張り切って
「よし!仕度の間もずっと一緒だ!!」
と、ジェイドの肩をグイと抱き寄せたが・・・突如ホテルの支配人が口を挟んできた。
「失礼ですが・・・ケビンマスク様?当ホテルは伝統と格式に基づいてウェデングも一切プロデュースさせて
頂いております。どんな上流階級の方であろうと王族であろうと例外はございません!それと申しますのも、
それだけ当ホテルのプロデュースはパーフェクトであるからでございます!自信があるのです!!
従って、花嫁花婿様のお仕度も各々のお部屋で私どもが完璧に仕上げさせて頂きます」
「・・・・・なんだと?テメエ・・・従業員の分際で生意気な口叩くんじゃねえよ。
テメエ等の格式よりオレ達の愛の方がパーフェクトなんだよッ!!」
悪行超人時代に取った杵柄で凄んでみせるケビン。
だが、その支配人は一歩も引かなかった。
「いいえ!先程も申し上げた通り、異例は一切認められません。支配人の私が命に賭けても当ホテルの伝統と格式を
死守させて頂きます!!」
さすが、超一流ホテルの支配人だけあって、その頑固さにも近い自信は威厳すら感じさせた。
初老ながらも背が高く、中々の男前の支配人である。
「・・・・・・・テメエ!!」
ケビンが低く呟いた瞬間
「待て、ケビン!お前の気持ちも解るが、ここは引け!」
ケビンのダディ(笑)ロビンが制止した。
「ああ!?なぜだ、ダディ!?」
「いいか?ここは1850年の創業以来、一流の文化人達に愛された世界でも一、ニを争う超高級の一流ホテルだ。
150年以上の歴史の中で一度たりとも失態のなかった名店なのだ。だからこそ、私とブロッケンも大事な
お前達の結婚式の会場にここを選んだ。支配人とホテルの自信と誇りに傷を付けるような真似は紳士らしからぬ。 
それに・・・今日の超人委員会の警備は完璧だ!選りすぐりのSP超人(?)を5千人(!!)配置している!
いかに奴といえども、この警備を潜ってジェイドを連れ去るような芸当は出来ないさ。
お前にとっても一生の晴れの舞台だ。この際しっかりとメイクアップ(オイ)してもらえ!」
「うむ。ロビンの言う通りだ。このホテルは信用できる。我がブロッケン一族もオレのファーター、
そのまたファーター・・・(以下延々と続く・笑)・・・と、代々何かのイベントの折にはここを使ってきた
由緒正しいホテルだからな」
ブロッケンも言う。
「グ・・・そこまで言われちゃ仕方ねえ。’名店’を信用するぜ?・・・・・ジェイド、そういうワケだ。
暫し離れ離れだが・・・(大げさ)大丈夫か?」
まだ心配そうなケビン。
「大丈夫さ、ケビン。また後でな」
根が明るいジェイド(笑)は、もう気にしてないようで、そう言ってニッコリと微笑んだ。
「それでは、ジェイド様。控え室の方へご案内いたします」
支配人自らジェイドの手を取って案内する。
「では、レーラァ、ロビン先生。行ってきます」
「うむ。お前の花嫁姿(爆)楽しみにしているぞ」
そうしてジェイドは支配人に手を引かれて出て行った。
「では、ケビン様もどうぞ・・・」
ケビンには、もう少し若い従業員が案内についた。
「ああ」
ぶっきらぼうに頷いてケビンも出て行った。

残された2人の伝説超人は
「さて・・・2人の仕度が出来るまで我々も一息つくか」
「そうだな」
そうして、2人もラウンジへと向かった。

ホテルの長い廊下を支配人の案内で歩くジェイドは今の幸せに酔っていて、全く気付いていなかった・・・。
自分の前を歩く支配人の顔に不気味な笑みが浮かんでいるのを・・・。
そして・・・誰も知らなかった。
本物の支配人は今、地下の倉庫でロープでグルグル巻きにされて転がされている事を・・・。

                                      
★森永 メロン


「・・・・あの・・まだ控え室に着かないのですか?随分歩いているような気がするのですが・・・」
「今しばらくで着きますので御心配なさらずに・・・ささっ、あそこに見えるドアがそうでございます」
ジェイドはさっさと仕度をして一刻も早くケビンと逢いたいのか、支配人を追い越してそのドアの前まで行くと、
もどかしそうにドアを開けた。
が、しかし・・・
「・・・???」
その部屋の中は・・・・な〜〜んにもなかった。
「・・・??あ、あの・・・ここが控え室なんでしょう?」
ジェイドは当惑して支配人を振り返る。
「はい。ここでいいのですよ。余り部屋ばかり派手に飾り立てては却って落ち着きませんから。
ささ・・・どうぞ、中へ・・。早速ドレス(オイ・・・)にお召し変え致しましょう」
「え・・・・?あなたが着付けまでやるんですか?」(笑)
「はい!」
「ふ〜ん・・・そういうものなのか・・・」(オイ)
何も知らないジェイドは露ほどの疑いも持たずに部屋へと入った。
その時支配人がニヤリと危険な笑みを浮かべたのにも気が付かずに・・・。
しかも、男の支配人が花嫁のドレスの着付けをする事にもなんの抵抗もないようだった。(笑)
まあ、ジェイドも男なのだから問題はないかもしれないが。(そういう問題じゃない)

最初部屋のドアを開けた時には何もないと思ったが、いざ部屋の中に入ってみると壁に純白のウェディングドレスが
掛かっていた。
「さあ、ジェイド様。こちらのドレスにお着替え下さい。きっと、とてもよくお似合いでしょう・・・」
そう言うなり支配人は、乱暴にジェイドが着ているシャツを脱がそうとした。
「!!?? なにをするッ!?・・・・やっぱり自分で着替えるよ!出て待っててくれ!」
さすがに支配人の無礼な態度にムカついたようで、ジェイドは支配人の手を跳ね除けた。
「・・・そういうわけにはいきませんよ。私がお着替えをお手伝い致します!」
なおもしつこくジェイドの服を脱がそうとする支配人からサッと身をかわすと
「いいって言ってるだろう!・・・こんな無礼な仕打ちを受けるなんて・・・やっぱりケビンに付いてきてもらえば
良かった・・・」
そのジェイドがボソッと呟いた「ケビン」という名前を耳にした途端、支配人の態度が急変した!
「早く脱げって言ってんだ!!それとも脱がされてえのか!?」
「な・・・!?なんだ・・・お前は誰だ〜〜ッ!?」
支配人の、余りの豹変振りにさすがにジェイドも異常事態を認識した。
「グフフフ・・・わからんか?・・・・・・・オレ様だよっっ!!」
そう言って支配人は自らの顔をガッと掴むと、なんとそのままバリバリと剥いでいくではないか!!
剥ぎ取られた顔の下から出てきた新しい顔・・・いや、これこそ彼の本当の顔は・・・
「スカー!!・・・・な、なぜ・・・??け・・警備は・・・SP超人が5千人居た筈だぞ!?」
思いがけない展開にジェイドは顔面蒼白になってしまっていた。
「ケッ!あんなのチョロイぜ。支配人になりすませばどこでも出入り自由ってもんよ」
「グッ・・・ケ、ケビン・・・・・!!」
心細さの余り、思わずケビンの名前を口にするジェイド。
「フン!!生憎だが、ここにはケビンの野郎はいねえ・・・!!」
そう言うとスカーは逃げようとするジェイドの肩をガッシと掴んで、そのままジェイドの体を壁に押し付けた。
ドキリとする程、己の顔をジェイドの顔に近づけると
「グフフ・・・や〜っぱりカワイイな、お前は。ケビンには勿体無いってもんよ」

一方ケビンの方は・・・
「・・・・オイ!もう着替えも終わったし、ここから出てもいいんだろ!?ジェイドに逢いに行きてんだよッ!!」
「いえ、なりません!まだお時間になりませんので」
と、ほぼ監禁状態で控え室から出してもらえずにいた。(笑)

ちなみにロビンとブロッケンはラウンジで呑気に茶を啜っていた。(笑)

                                     ★柊 コウ
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