赤の王様が見た夢2   

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◆ 赤の王様が見た夢2

彼が目を醒ませば君は消えるんだ。

 「どういうことなのでしょうね・・・」チェックメイトは繰り返した。「敵を傷つけられて怒るというのは?」
 彼はジェイドを見る。「どの道、今のマルスは私と互角には戦えません。貴方にお相手してもらう他なさそうですね、ジェイド。」 
 怒りの表情でチェックを睨みつけているジェイド。一方チェックはマルスに言う。「魔界の結界を破るなどという無茶な真似を
 するからそうなるんですよ、マルス。でも大したダメージを負っていないのは流石というべきですか。並みの超人なら、結界に
 入り込む前に消し飛んでいます。」
 「フン・・・ 俺が破ったのはここの次元境界だけだ。結界そのものを破ったわけじゃねぇよ。」「・・・ということは、貴方は元から
 中国地方にいたわけですか? ホホホ・・・道理でタイミングが良過ぎると思いました。」「てめぇを見かけて気になったからさ。
 てめぇはdMpの中でも、半端じゃなかったからな。実力も、」マルスは唇の端を歪めチェックを見る。
 「頭のイカレ具合もよ。」 「それは光栄ですね、マルス。」チェックメイトは優雅な笑みを浮かべた。
 「血括りの窓!」彼がそう叫んだ途端に、マルスが凭れ掛かる次元の壁に四角い窓が開き、マルスの両腕を吸い込んで縮まった。 
 「チッ。」マルスは舌打ちする。 「いいザマですよナイト(騎士)君。力ずくで抜くのは止めておきなさい。
 手が千切れ飛びますからね。」 「あんまりナメたマネするんじゃねぇぞ、狂人の王子様よ。」マルスは吐き捨てた。チェックは
 ジェイドの方を向く。
 「待たせましたね、ジェイド。貴方のナイトに邪魔はされたくないので、大人しくしてもらいました。ゆっくりと納得がいくまで
 話し合いましょう。」 「貴様・・・」ジェイドは拳を握り締める。
 「ふふ・・・ 頭に血が上っているようですね。では、落ち着ける場所を私が提供しますよ。フン!」
 チェックメイトは右手を振り上げた。周囲の市松模様が激しく動き出す。

 「これは、"鏡の地獄"。どこかで見たことがあるでしょう? 所謂、人間の娯楽施設の一つ、ミラーハウス、です。」 ジェイドは
 辺りを見渡した。確かに、鏡が至る所に組み込まれているような印象がこの空間にはあるが、目に映るのは白と黒の市松模様だけで、
 ミラーハウスのように自分の姿が映っているわけではない。 「これも・・・・ 悪魔超人の次元操作なのかっ!?」ジェイドは、
 姿の見えないチェックメイトに叫ぶ。 「まぁ、その一種です。 私が万太郎に敗北して後、サンシャイン・ヘッドに受けた
 "悪魔超人としてのプライドを高めるための修行"の一環に、自分に有利な戦場作りというのがありましてね。 悪魔超人にとっては
 常套手段だそうです。」 「く・・・」
 「私は、貴方に3つの質問を用意しました。お約束ということで・・・ 答えてくれたら、ここから出してあげますよ。」
 チェックメイトの声。
 「先程の質問は難しかったようですから、もう少し答えやすいものにします。ではその一・・・」
 突然、目の前にチェックの姿が現れた。「貴方はマルスと戦った時、何故彼の言葉を信じたのですか?」

 ジェイドは手刀を振り下ろす。だがもう、チェックメイトの姿は消えていた。鏡が割れるような音と共に、ジェイドに無数の破片が
 降り注ぐ。 「うがぁっ!」右手が裂け血が吹き出し、ジェイドは手を押さえた。
 「ホホホ・・・ この鏡の地獄は、本物の鏡のように姿を写しはしませんが、鏡が光を反射するように時空間を反射する性質があります。
 つまり、操作者である私にとっては自在に次元を操作でき、閉じ込められた敵にとっては・・・」 ジェイドの胸に、一文字に傷が
 走った。「あうっ! ぐうぅ・・・」血が溢れ出す。
 「丁度そのように、攻撃が自らに跳ね返ってきてしまうのです。 わかったら、無駄に暴れて力を消耗するのはお止しなさい。」
 再びチェックメイトがジェイドの目の前に姿を現す。
 「あれは不思議でしたよ・・・ あのようなヨタ話を信じるなど。」彼はジェイドを覗き込んだ。
 「あの時は貴方を師匠から引き離すことに、一時的とはいえ成功したからいいようなものの、あんな穴だらけの話でねぇ・・・・ 
 実に滑稽です。 あれが真実だったとしましょう、何故マルスがそのことを知っていたのですか? それにブロッケンJrは何故、
 目論見どおり天涯孤独にした貴方を1年も泳がせていたのです? 貴方は子供でしたし、つけ込んで手懐けるのが良策でしょう。
 ・・・この点を考えただけでも、根拠がなさすぎるヨタ話ですよ。そうでしょう?」そこで、チェックメイトは微笑する。
 「・・・まぁ私の解釈を述べますと・・・ あの時貴方は、マルスによってコンクリートリングに散々頭を打ち付けられていましたから、
 冷静な判断ができなかったという可能性もあるでしょうね。フフフ・・・」
 チェックメイトは、ジェイドのヘルメットに手をかけた。 「!」ヘルメットが砕け散る。金色の髪がサラリと流れ落ちた。 
 (・・・バカな・・・ なんて力だ・・・)
 「私なら、もっと効果的な方法で貴方の心を潰せますよ。」チェックメイトは言う。
 「相手の弱点を見抜き、それを徹底的に攻める。 あらゆる戦いの基本です。さらに・・・悪魔超人なら、相手の弱点・・・殊に心に関する
 ことは見逃すな。私はヘッドにそう教わりました。特に貴方はね。いともたやすくかかってくれるでしょうから・・・ 面白そうです。」
 心なしか、楽しそうに笑みを浮かべているチェックメイトは、突如ジェイドの腹部に強烈な蹴りを入れる。 「がぁっ!!」 
 ジェイドはその場に崩れ落ちる。咳き込むと腹部の底からこみ上げてくるものがあった。ジェイドは血を吐いていた。
 「本当にどうして・・・ 貴方は師よりもマルスを信じたのでしょうね?」チェックメイトはジェイドを見下ろしつつ言った。 
 「少なくとも私は、マルスの話術が巧みだったなどとは思いません。原因は貴方の・・・」
 またもジェイドを覗き込むチェック。 「ココロの方にあるのでしょう。どうですか?」
 「う・・・ウゥ・・・」呻きながらジェイドは、思い出していた。「おじさん・・・ おばさん・・・ 僕は・・・」

 (おじさん・・・ おばさん・・・ 俺はスカーを、) あの時。 (あのゴロツキどもと思って成敗します!)
 憎かった。俺は、奴らが憎かった。殺してやりたい。 心の底でずっと、そう思っていたんだ・・・
 それは超人として、人々を守る宿命を持つ超人として、持ってはならない感情だった。
 そしておばさんも、おじさんも・・・ 俺に復讐を、復讐のための殺人を、望んではいない筈。
 そう思って。レーラァにも、そう諭されて。忘れようとした。
 と、言うよりも・・・ 二度と思い出したくはなかった。

 「本当は・・・ あの時奴らを殺したかった。貴方達を嬲り殺しにした・・・ 僕たちの幸せを叩き潰した奴らを・・・ できることなら・・・
 殺してやりたかった・・・・!」
 呻きながら呟くジェイド。 見下ろすチェックメイト。
 「成る程。 幾分か想像がつきました。マルスを信じたというより・・・ その憎しみの捌け口を差し出されて飛びついた、といった
 所のようですね。」再び、その陶器の如き滑らかな白面に、優雅で冷たい笑みが浮かぶ。 「実に愚かで滑稽です。私はそんな
 ネガティブな感情を持たない事を、嬉しく思いますよ。」
 ジェイドは顔をあげる。「・・・お、まえは・・・ 憎いという感情も持たない、のか・・・」
 「憎しみがネガティブだと言ったのではありません。むしろ私にとってはポジティブ・・・肯定的なものです。恨み、憎しみ、殺す、
 叩く、潰す、勝利、凱歌・・・ 私の意識の中に植えられたポジティブな言葉です。
 ネガティブなのは、イタイ・ツライ・クルシイ・ギブアップ・・・ そして、カナシイといった言葉です。」
 チェックメイトはジェイドに微笑んだ。 「私は目の前で誰が死のうが、カナシイなどとは思いません。」
 「・・・・」俯くジェイド。金髪が流れる。「それと・・・ 貴方は憎悪をネガティブなものと思っているようですね。私にとっては逆ですが、
 それも今は、特に必要なものではありません。私にはもう、誰を憎む必要もないんですよ。」ジェイドは僅かに顔をあげ、
 チェックメイトを見た。
 「憎むという感情がポジティブなのは、戦いにおいて相手を叩き潰す原動力となるからです。しかし私にはその必要はなかった。
 今まで戦った相手は全て、憎む必要もなく叩き潰すことができる程度の連中でした。つまり・・・ あまりに力の差がありすぎたんですよ。」 
  「では、万太郎戦はどうだったんだ・・・」「嫌なことを思い出させてくれますね? 確かに、私は万太郎に敗北しましたが・・・ 
 奴の力が私を上回ったのではない。あれは単なる偶然です。奴が一族代々受け継ぐとか言う力が、私に叩き潰される前に発動して
 しまったというだけの話です。次に戦う機会があれば、速攻で叩き潰せばいい。それで問題はないでしょう。」

 「・・・お前は・・・誰とも、本気で戦ったことがなかったんだ・・・ な・・・」ジェイドは語りかける。
 「その必要がなかっただけのことです。 では、次の質問にいきましょう。貴方が、正体を明かしたマルスに言ったことですが・・・ 
 確か、『中途半端でなく、本当に精魂尽きる戦いをした者同士には、キョウカンとシンライが生まれる』・・・でしたっけ? それは
 どういうことなのですか?」
 ジェイドは息をつく。痛みに耐える。(ひょっとすると・・・ 肋骨をやられたか・・・)
 「貴方とマルスの試合を見ている限りでは、セイコン尽きる戦いと言うよりマルスが貴方を一方的に嬲っているだけでしたがね。 
 前半は、貴方も善戦したと言えなくもなかったですが・・・ ブロッケンJrの指示がなければマルスと戦えなかったのでは、
 ただの人形ですよ。」 
 ジェイドはチェックメイトを睨んだ。
 「まぁ確かに、マルスは百戦錬磨の猛者ではありますが。それにしても情けない話ですね。貴方は本当に、私より遥に師匠の
 お人形さんです。しかもそれに気付いていない・・・」喉の奥で笑うチェックメイト。
 「黙れ・・・」
 「キョウカンとシンライ。戦う者にそんなものは必要ありません。 何故なら闘いとは、殺すか殺されるか、潰すか潰されるか。
 それだけだからです。 それがわからないなら、貴方は超人界で長くは生きられないでしょう。 仕方のないことです。弱者には
 死あるのみ・・・ それが超人の掟ですから、ね。」

 『現実の世界はファクトリーの原則(セオリー)なんて通用しないほど、恐ろしいものなんだよ!』
 スカーフェイスの言葉が脳裏に甦った。 「だが・・・ 」 ジェイドはチェックメイトを見た。
 「戦うことは殺し合いとは違う・・・ 互いに分かり合う手段でもあるんじゃないのか・・・ 超人は、ただ殺し合い、潰しあうだけの
 存在ではない筈だ・・・」
 「根拠は?」 チェックメイトは言う。
 「貴方は正義超人養成施設ヘラクレスファクトリーの、第二期卒業生でしたね? そこで特訓を受け、入れ替え戦に参加した。
 それ以前に、貴方は戦いを経験したことがあるのですか?」
 「・・・・」 「ないのでしょう? 貴方自身の経験からきた言葉でないなら、何を根拠にそんなことを言っているのです? 
 ・・・ああ失礼、質問が増えてしまいましたね。」
 「そう教わった・・・ 伝説超人時代には、悪行をもって恐れられた超人たちも、伝説超人たちとの戦いを通して共感と信頼に目覚めて
 いったと・・・ 誰の心にも、そういう気持ちはある。 君たちも、人の心の可能性を信じて、相手を叩き潰すのではなく、互いに
 高め合い分かり合うために戦えと・・・」
 「ホホホホホ!」チェックメイトは高らかに笑い出した。 「愚かな・・・ 全ての超人が持つのは、戦いたい、勝ちたい、殺したい、
 ただその気持ちだけなのに。貴方が教わったのは虚言です。私が教わったのは真実です。 そんな虚言に惑わされて生きねば
 ならないとは、正義超人とは惨めなものですね!」

 (・・・ 惨め・・・? だが俺には、お前の方こそ・・・)迷いを写していたジェイドの瞳に、強い色が少しずつ戻り始めていた。 
 チェックメイトはそれに気付かず言葉を続ける。
 「何故、貴方はマルスを信じたのか? 憎しみの捌け口を求めたため。 貴方の言う、戦う者同士にキョウカンとシンライが
 生まれるとは? それは単なる受け売り。 ・・・わかってみれば、案外つまらないものです。 では、最後の質問といきましょう。 
 私を満足させられるよう、答えてくださいね。」
 その時チェックメイトは、腰の後ろに付けている一つの装飾品・・・ 『兵士(ポーン)』に手を当て、弄んでいた。 「貴方は、
 マルスをどう思っているのですか?」

 「!?」 ジェイドは一瞬目を丸くした。 「スカー・・・を?」 「ええ。私が、今一番知りたいことです。こう言い換えても
 いいですよ。貴方にとって、マルスはどういった存在なのですか?」
 「・・・・」ジェイドは目を見開いたまま、チェックメイトを見ている。やがて戸惑いを露わにして目を逸らす。 「貴方はマルスの
 ため蹂躙された。」チェックメイトはジェイドを見ながら言う。「人形のように・・・その目を潰され、叩きつけられ、引き裂かれ、
 その腕をもがれた。 見ていて中々、小気味良かったですが・・・ 貴方の方は、たまったものではなかったでしょう? 何故自分が、
 とはおもいませんでしたか? マルスが憎くはなかったのですか?」
 ジェイドは俯いていた。 チェックメイトは続ける。 「それなのに、貴方はその憎むべき相手が私に傷つけられた時・・・ 明らかに、
 私に怒りを向けましたね? 何があったのです? 貴方とマルスの間に。」

 俯いたまま、ジェイドは思い起こす。 あの夜・・・ 自分を陵辱したスカーフェイス。逃れようとした時彼に名を呼ばれ、全身を浸す
 喜びに打ち震えた自分。
 何故・・・? 俺は、どうしてスカーを好きになったのだろう。どうして・・・ スカーを受け入れたのだろう。入れ替え戦で相対
 するまでは・・・ 同じ二期生でも、全く自分とは違うスカーの考えに反発し、互いに戦うことで・・・ その溝が少しでも埋まるものと
 思っていた。それは、俺の勝手な思い込みにすぎなかったが・・・。
 わからない。お前が、俺にとってどんな存在なのか。
 かつて仲間と信じた、冷徹で冷酷な男。 俺を痛めつけた悪行超人。 そして今・・・ 俺たちは、やはり敵同士だ。 わからない。
 敵である筈なのに、お前に対しては、何故か安心に似たものを・・・俺は感じている。
 味方であり、信頼もしているクリオネやデッドとはまた違う種類の・・・ 安心感と信頼を。
 チェックメイトは今しがた、戦う者同士に共感と信頼が芽生えるなど戯言だと嘲笑った。 だが今の俺とスカーの間に存在している
 何かは・・・ ファクトリーで伝説超人の先生方に教わったものと形は違っても、共感と信頼なのではないだろうか。
 それとも、これも俺の思い込みにしか過ぎないのか。 スカー。

 ジェイドは顔をあげた。チェックメイトを正面から見据える。
 「・・・チェックメイト。お前の最後の質問に答える前に、俺もお前に聞きたいことがある。」
 「・・・・ 何ですか。」
 「お前は、寂しいと感じた事はないのか。」 
 ジェイドのその言葉を聞いたチェックメイトの顔から、表情が消えた。
 「サビシイ?」
 「お前は、目の前で誰が死んでも悲しくはないと言った。自分を育てた師匠について、何とも思わないと言った。そんなネガティブな
 感情がないのが嬉しいと。自分こそ最強の超人だ、とそう言った。」
 チェックメイトを真っ直ぐに見据えるジェイドの瞳。
 「確かに、お前は俺のように、感情を爆発させたりすることがないのだろう。辛さも苦しみもないんだろう。だが・・・ お前には、
 喜びはあるのか? 心の底から嬉しいとか・・・ 楽しいとか、感じたことはあるのか?」
 「喜び・・・?」 「もしないと言うなら・・・ お前にとって、生きている意味とは何なんだ?」
 チェックメイトは完全な無表情だった。元から白く滑らかな顔は、そのため人形そのものに見えていた。 ジェイドは続ける。
 「俺は、お前に会いお前の身の上話を聞いて・・・ 正直、恐ろしいと思った。俺にはお前の生き方も考えも全く理解できない、だから
 恐ろしいと思った。 だが今は・・・ お前を哀れな奴だと思う。お前は苦しみを知らない。・・・同時に、何の喜びも知らないんだ。
 それを最強だと、勘違いしている。」

 「アワレ?」チェックメイトの顔に表情が戻り出す。白面は、般若の面のように歪められた。
 「貴様は」声が今までより低くなる。「私をアワレムのか! 貴様のような弱小超人が、この私を!」
 チェックメイトは明らかに逆上していた。ジェイドのダメージを受けたであろう肋骨目掛けて蹴りを放つ。ジェイドは咄嗟に
 ディフェンスしたが、チェックメイトはいきなりジェイドの顎を掴みあげる。
 「ぐふ・・・っ」 「ベラベラと・・・ 五月蝿い口ですね! 弱い犬ほどよく吠えるといいますが、なるほど貴方のような弱小超人には
 それぐらいしかないのでしょう。二度とそんな言葉を吐けないように、顎を毟りとってあげましょうか! あの委員にしたように!」
 「!」 目を見張るジェイド。チェックメイトが投げつけた無残な死体が目の裏を過る。
 「生きたままでしたから、よく動きましたしかなり五月蝿かったですが、直静かになりましたよ。」
 チェックメイトはニヤリと笑った。
 「私を哀れむなど、とんだお門違いだということを思い知らせてあげます!」顎を掴む手に力を込める。
 「ふ、ぅぐっ!」 「フフフ・・・ 折角ですから、マルスが貴方にしたことなど比較にならない目にあわせてあげましょうか? 
 その美しい顔も体も・・・ 原型を留めないくらいに!」
 しかしそこで、チェックメイトは動きを止めた。加えられた力が緩み・・・それでも振り解くことはできなかったが・・・ ジェイドは
 チェックメイトを見る。
 「ああ・・・ そうだ。私としたことがつい取り乱してしまいましたが・・・ まだ最後の、最も興味深い質問に答えてもらっていませんでした。
 貴方を殺すのはその後でもいいでしょう。」言いながらチェックメイトは、飾りの兵士(ポーン)を腰のベルトから取り外した。
 ジェイドの目の前に翳す。
 「これはポーン。チェスゲームの中で最下層であり、ピース(駒)の内にも数えられていません。進めるのは常に前に1マスのみ
 ですし、私の戦いにおいても普段は装飾品です。ですが・・・」
 ポーンをジェイドの目の前で揺するチェックメイト。「このポーンは、最終的にはどんなピースにも成り変ることができます。
 例えば、チェスボードの8段目に進めば、最強のピースであるクイーン(女王)にも、なることができるのです。最弱でありながら、
 他のどのピースにもない能力です。」
 彼はポーンを、ジェイドの頬に軽く押し当てる。「このポーンを、貴方に使ってみましょう。」
 チェックメイトは、ジェイドの顎を掴む指で、彼の口を押し開きにかかった。
 「う、ぐぁっ・・・」 「さ、どうぞ。」ポーンの頭部が開いていた。チェックメイトはそのままポーンを、ジェイドの口の中に
 押し込んだ。「・・・!」ジェイドの喉が鳴る。
 「さてと。それで準備完了、です。」ポーンを引き抜いてチェックメイトは言った。
 「マルスが、貴方にとってどんな存在なのか・・・ 貴方の体に聞いた方が、」微笑むチェックメイト。
 「答えは早いかもしれませんね?」 ジェイドは、その瞳を見開いた。

To be continued


チェックメイトがもうかっこいいです〜〜♪あの人間(超人?)離れした性格に凄みがあるし、
冷徹非情な考え方に、背筋がぞくっとくる思いです。(汗)・・でもジェイドのくったくない質問で(笑)
逆上するチェックさんもまた見目良きかな♪・・スカーに対するジェイドの心境の変化もなんだかいいです。
作品を書かれる際に、鷹覇様、チェスの本を購入されたそうです。ありがとうございます!そのおかげか
チェスの知識が充分に生かされていて、奥深いですよ〜〜。さすが!(Noriko)

あのサディスト野郎、自分でいろいろ質問しときながら、暴言を吐いたりキレたり、忙しいやつだな。
  あいつはdmpのなかでもひときわうさんくさいやつだったからな〜(自分を棚上げ)(スカー)