王様は今君の夢を見てるんだよ。 超人委員会委員長・ハラボテマッスルは、腕組みをしてため息をついた。「とにかく、非常事態じゃ。」 委員長を前に緊張の面持ちなのは、ジェイド・クリオネマン・デッドシグナルのヘラクレスファクトリー第二期卒業生たちである。 「中国地方が完全に連絡も行き来も不可能となり、防衛担当者ナムルとの音信も途絶えた。奴が今どうなっておるかも全くわからん。 そして委員会から偵察に派遣した委員は行方不明となり、昨日・・・」 と、委員長は写真を取り出し、彼らの目の前に置いた。 映っているのは、腕―――人の右腕だった。その腕には、凝固した血の色の文字が刻みこまれている。 『 To JADE』 「この右腕が発見された。医者の見立てだと、生きたままもぎ取られた腕だそうじゃ。おそらくもう生きてはおるまいな・・・」 ジェイドは悪寒を覚えた。入れ替え戦で、自分の腕をもぎ取っていったスカーフェイスこと、悪行超人マルス。 (奴の仕業なのか・・・・)思わず、今は繋げられた右腕に手を当てる。心配そうに彼を見るクリオネマンとデッドシグナル。 中国地方全体の謎の孤立も、つい先日、魔界の力を流用した結界を作り、街を吹き飛ばそうと画策したマルスが仕出かしそうな ことではある。 しかし、ジェイドはどこかに違和感を覚えていた。 (何かが、違う。) 確かに、スカーフェイスは悪行超人だ。その気になればどんな残虐なこともできるだろう。だがこの件に関して感じるうそ寒い何かは ・・・ スカーの遣り口とは、どこか違う気がする。 「こんなことを仕出かした輩が何者で、何を狙っているかは現在全く不明じゃが、おそらく悪行超人であると見て間違いなかろう。 こやつはジェイドを名指ししておるから・・・危険ではあるが、君たち3人に偵察に行ってもらいたいんじゃ。まぁ君らは実力者揃い じゃから、滅多なことはないと思うがのぅ。」 ハラボテ委員長が言ったその時。 「委員長!」委員の一人が、部屋に飛び込んできた。 「何じゃ。」と振り向く委員長に、青褪めた顔の委員は告げる。 「は、発見されました・・・ 右足と、首です・・・!」委員長の顔が険しくなった。3人を見て言う。 「・・・君らは、どんな様子か聞いておくか? どうじゃ?」 「聞かせてください。」ジェイドが代表して答える。委員長は、委員を 促した。 「ハ、ハイ・・・ 右足には文字が、おそらく刃物で刻まれていまして、首の方は・・・左眼が抉り出され、舌が切り取られていました・・・・」 ジェイドは、一瞬眩暈を覚える。スカーが、あの時俺にしたこと。 「・・・で、右足の文字は。」 「ハイ・・・ "FROM DARKNESS WITH NIGHTMARE"です・・・!」 血塗れのメッセージの意味は。 ジェイドへ。 暗黒より、悪夢を、貴方に。 「しかし、何つぅのか・・・ 昔のSFみてぇだな。」と、デッドシグナル。 「何つったっけか? ホラ、『首都消失』みたいな感じだ。」とジェイドとクリオネマンに語りかける。 「呑気なことを言ってる場合か? デッド。しかしよく知っているな・・・」とクリオネマン。 目の前には、本来なら中国地方の風景が広がっている筈だった。だが彼らの目に映るのは、一面の暗黒の雲。禍々しい気配で 立ち込め、大地と空間を覆っている。 「・・・やはり・・・ 悪行超人の仕業だろうな。これはおそらく、スカーが作ろうとした魔界の結界と同種のもの・・・」ジェイドは言った。 「前に話してくれたな。マルスと遭遇した時のことか・・・ 結局その時は、奴は失敗したんだろう。懲りずにまた始めた、というわけか。」 クリオネマンはジェイドに言う。 「そうかもしれないが・・・、俺はどうも違う気がする。上手く言えないが、どこかがスカーとは・・・ いや、マルスとは違う気がするんだ。」 「とにかく、これがその結界とやらだとすると、ヘタしたら入れない可能性もあるワケだな? さてどうしたもんか。」 デッドシグナルが言ったその時だった。 「!!!」突如3人の視界は暗黒に閉ざされる。次の瞬間には、彼らは全く別の空間にいた。 足元に、一面の白と黒の市松模様。目の前には、一人の優雅な佇まいの超人。 「この結界はね。私が入れようと思った者なら入れるのですよ。」 右の肩には、ユニコーン型のナイト騎士の頭。左の肩にはルーク城。間には、陶器の如く滑らかな白面。 その超人は、3人の前に丁寧に頭を下げた。 「初めまして、新世代超人二期生の皆さん。私は元dMp悪魔超人軍の所属、ナイトメアズのチェック・メイトと申します。」 チェックメイトは、僅かに微笑を浮かべた。 「・・・何だ? えらく礼儀正しい悪行超人もいたもんだな。」面食らったデッドシグナルが言い、3人は一瞬目を見交わす。その時。 「・・・だ、騙されるな、君たち・・・」擦れた、喘ぐような声がした。「!」ジェイドたちは声のした方を見る。 チェックメイトの足元に。まるで襤褸切れのように転がされているのは、一期生の一人、中国地方防衛担当者のナムルだった。 「先輩・・・・!」 ナムルの顔に着けられた仮面は、無残に罅割れている。「こいつは・・・こいつは恐ろしい超人だ・・・騙されるんじゃないッ・・・・」 次の瞬間、チェックメイトは顔色一つ変えずに、ナムルの身体に足を振り下ろしていた。「ぎゃあっ!!」 絶叫が響く。見ると、ナムルの腰には彼がいつも帯びている剣が突き刺さっている。チェックメイトは、そこを集中して 踏みつけているのだった。「大人しくしていてくださいね?」絶叫を全く意に介さず、チェックメイトは穏やかに言う。 「貴方は負け犬なんですから。」 「止めろっっ!!」堪りかねたジェイドが飛び出す。「ジェイド!」叫ぶクリオネ。 チェックメイトは、市松模様のマントの影に隠れていた、左手で掴んでいた何かを、ジェイド目掛けて投げつけた。 かなりの重みのある何か。ジェイドはよろけて、顔の上についたものを拭い取る。 半分乾いた、血。 投げつけられたものは、頭と右腕と右足のない、無残な骸だった。 喉の奥で、ジェイドは出掛かった悲鳴を飲み込む。その様子を見て、チェックメイトは微笑んだ。 「そいつは、メッセージに使わせてもらいましたよ。残りはお返ししておきましょう。」 「グ・・・グギゲ・・・」デッドシグナルが擦れた声を出す。クリオネマンも絶句していた。 「貴方が、ブロッケンJrの弟子のジェイドですね? 私は貴方だけをお呼びしたつもりだったのですが、付録が付いて来て しまいましたね。これではゆっくりとお話できませんから、場所を変えましょうか。」 チェックメイトはジェイドに向って進む。「ジェイドッ!」駆け寄ろうとするクリオネとデッド。 「動くな」チェックメイトは、2人に冷たく言葉を投げかけた。途端に2人の動きは、市松模様の上で止まる。「なっ、何ィ?」 「これはっ・・・ まさかオレ様の"進行停止"タイプの足止め術か!?」 「ホホホホ・・・」チェックメイトは笑う。「まぁそんなようなものです。この結界の中にいる限り、あなた方はポーン兵士の如く 1マスずつしか進めません。あなた方の戦いは、私も見ていましたよ。実に素晴らしい能力をお持ちだ。 是非お手合わせしたいのですが、今の私の目的はジェイドと話すことですから。すむまで、ここにいてくださいね。」 チェックメイトは、ジェイドの肩に手をかける。 二人の姿は揃って消えた。途端に、クリオネとデッドは動けるようになる。「くっ! バッファローマン先生が言っていたように、 悪魔超人らしく別次元に逃げ込んだわけか!」 「どうする、クリオネ!?」 「う・・・ううぅ・・・」ナムルがうめいた。二人は彼の元に駆け寄った。 その空間は、上下左右全てが市松模様で彩られていた。ジェイドの両手と両足は、その市松模様の一つに開いた穴の中に 押し込められ、縛められいる。 「これは、窓簾と言います。私の身体でも出来るのですが、戦いでもないのに、少々失礼かと思いまして。」 チェックメイトは言った。「・・・貴様、何が目的だ・・・」ジェイドはチェックメイトを睨みつける。 「言ったでしょう? 貴方と話がしたかったんですよ。」チェックメイトは、ジェイドの顎に手をかけた。 「・・・私は、キン肉万太郎に敗れた後、サンシャイン・ヘッドに連れられて地中に潜伏しました。潜伏中、傷を癒しながらヘッドと 共に、あなた方正義超人同士の戦いである入れ替え戦も見ていましたよ。マルスが紛れ込んでいたのには・・・少し驚きましたけどね。」 チェックメイトは笑う。 「それで私は、入れ替え戦で貴方に興味を持ったんです。貴方と私は、とてもよく似た環境にあります。」 チェックメイトは、ジェイドの顔を手でなぞっていく。「・・・そして、全く正反対の心を持っています。貴方は私の持たないものを 全て持っている。 ジュンシンで・・・」唇をなぞる指。 「セイジツで、ヤサシクて・・・ 私には、さっぱり実感の湧かない言葉ばかり なのですが・・・ さらに貴方は、アイスル、ということを知っています。貴方は、貴方の師・ブロッケンJrを、アイシ、ウヤマッテ、 いるのですね?」 再び、指はジェイドの顎を捕らえる。「どうして、そんな気持ちになれるのですか?」陶器のような白面が、ジェイドを覗き込む。 「・・・悪行超人の貴様にはわかるまい・・・愛する心がどんなものだか・・・!」 「ええ、わかりません。」チェックメイトは答える。「だから、貴方にお聞きしてるんです。ブロッケンJrと貴方は・・・師弟であると 同時に親子のような関係でもある。いつも一緒に暮らしていれば、」無心に、ジェイドを見ながら問を繰り返すチェックメイト。 「アイセルように、なるものなのですか?」 ジェイドの心にじわじわと染み渡っていく、冷たい"恐れ"。 「では・・・では貴様は、自分の師をどう思っているんだ?」ジェイドは問い返した。 チェックメイトは一瞬沈黙する。そして答えた。「何とも。」 「・・・何?」 「私は、サンシャイン・ヘッドについて、特に何とも思っていません。」 ジェイドは混乱した。「どういうことだ、それは・・・」 「どういうこと・・・ そうですね。何とも思っていないから、そうとしか答えようはありません。普通なら、育ててもらったオンと いうものを感じるべきなのでしょうが・・・ 私は、そういう気持ちは持つな、と教えられました。」 「・・・悪行超人としての教育のせいなのか・・・」 「私もそう思っていましたが、どうも違うようです。おそらく私は、生まれつきそういう感情が持てないんですよ。アイスルとか・・・ カンシャするとか・・・ウヤマウとか・・・ね。」にこりとチェックメイトは笑う。 「サンシャイン・ヘッドは私を完璧な悪魔超人とするために、出会う者全てを憎め、殺せ、叩き潰せと教えました。そして、戦いに 最も邪魔なものである"オソレ"の感情を取り除くために、毎日私を拷問しました。」 「・・・・」ジェイドは、自分の心が凍り付いて いくのを感じていた。 「拷問には実に様々な型があるものなんですよ。ごく簡単な所では、指と爪の間に針を差し込むとか、舌に針を突き立てる、という のがあります。焼き鏝を押し付けられたり・・・ 鞭で全身の皮を裂かれた後に塩を擦り込まれたりもしました。ツウカクというものは、 大半が皮下に集中しているそうです。だから、斧・剣・槍その他の武器で肉や骨を痛めつけられるより、イタイという点では 勝るのかもしれませんね。」 チェックメイトの指が、ジェイドの左眼の周囲に触れる。瞼を押し上げて彼の目を覗き込んだ。 「綺麗ですね・・・・ 貴方はとても綺麗な目をしています。マルスが潰したくなったのもわかります。」 彼は指を離す。 「ああ、あらゆる拷問と言ってもマルスが貴方にしたように、目を潰すとか手足をもぎ取るというのはなかったですよ。それは そうでしょうね。そんなことをしたら戦えなくなりますから。」 ジェイドは、体の震えを止める事ができなくなっていた。 「コワイ、のですか?」小首をかしげてジェイドを見るチェック。 「貴方は、オソレテいるのですか? 私を? それとも私の話を? では、安心してもらえるような話をしましょう。 毎日拷問したと言っても、サンシャイン・ヘッドは私が拷問のおかげで発熱したり ・・・」ふっ、とチェックメイトはジェイドから離れる。 「戦いで傷ついたりした時には、つきっきりで看病してくれました。あの方にとっては、私は大事な手駒ですからそうしたんでしょうが・・・ でもね。 彼は私にそれ以外の情を持っていた。 悪魔になれと私を教育したのに、私が不調の時には私をシンパイしていたんです。 万太郎との戦いの時、それがはっきりとわかりました。あの方は、私にアタタカイ情を持っていた。そして、私にもそれを期待して いた・・・。でも私は、何とも感じなかった。ヘッドが私を、実はイツクシンデいたと知っても何も思わなかった。」 ジェイドは、冷たい汗を体中に感じていた。 「生まれつきそうなんですよ、きっと。今では殆ど覚えてないのですが、私は自分を捨てた親についても別に何の感情も持って いません。だから何も思わず殺せるでしょう。サンシャイン・ヘッドについてもそうです。あの方が、私にとって邪魔になるようなら ・・・」 チェックメイトはジェイドを見る。 「何も思わず、殺せます。」 戦慄くジェイド。心の中で何かが崩れていく。その中で、ジェイドは必死に思い起こしていた。 (レーラー師匠・・・・!) 「貴方はどうですか?」再びチェックはジェイドを覗き込んだ。「貴方は自分の師を殺せますか?」 激しい動作でジェイドは、チェックメイトから顔を逸らす。「・・・化け物! 貴様と一緒にするな!!」 「フフフ・・・ 私は、5歳の時ヘッドに拾われてから、ずっとその手駒として生きてきました。貴方も、ブロッケンJrの野望達成の道具 として育てられたでしょう?」 「貴様の狂った尺度で俺たちを図るな・・・! レーラー師匠はそんな人じゃない・・・!」 「愚かですね。結果的にはそうでしょう? 貴方を盲目にしているのは、師匠との絆なのですか? だったらそんなものはない方が いい。貴方にとっては邪魔なだけです。」 「違う・・・!」チェックに言いながら、まるで自分に言い聞かせているような表情だった。 「自分が雁字搦めにされ、スポイルされていることにも気付かないとは・・・ 哀れなものです。かつてそういう超人を見たことが あります。私やマルス同様dMpのメンバーで、奇しくもヘッドと同じ悪魔六騎士の一人だったスニゲーターの直系の孫でした。 彼・・・MAXマンは私以上に,一族の仇を討つという目的のためだけに育てられ、そしてそのことに何の疑問も感じていませんでした。」 言葉を切るチェックメイト。 「だから彼は敗れました。・・・貴方も情に縛られたがために、マルスに蹂躙され・・・敗れたのですよ?」 「違う・・・ 違う、違う、違う!」崩れかけているジェイドの心。 「落ち着いてください。そんな有様ではまともに話もできないでしょう?」チェックメイトは、ジェイドの顎を掴み挙げた。 「ちがう・・・」両目から溢れでる涙。微笑むとチェックメイトは、ジェイドの唇を自分の唇で塞いだ。 瞳を見開くジェイド。 軽い、優雅な口付けなのに、 それは冷たい剣のように、ジェイドの心を突き通した。 「少し落ち着かれましたか?」とチェックメイト。 ジェイドは呆然と、答えることもない。 ・・・スカーフェイス。 俺の精神を、そして肉体を、蹂躙し陵辱した男。 俺が初めて出会った悪行超人。冷徹で頭の回転が早く、皮肉屋で残酷な男。 だが奴には心があった。何かを感じる心、他人を思う心を、奴は確かに持っていた。 この男にはそれがない。 この男の中には、闇しか存在しない・・・・! 突如、轟音と共に、その閉ざされた空間に差し込んだ光。 「その辺にしときな。」歩み寄ってくる、一人の大柄な男。 チェックメイトは振り向いた。 「ふ・・・ プリンお姫セス様を救いに、ナイト騎士が颯爽と登場、というわけですか? お久しぶりですね、マルス。」 冷たい表情でマルスはチェックメイトを見、ジェイドを一瞥した。 「よぉ。随分といい格好だな、ジェイド。」チェックに再び視線を移す。「俺以外のヤツにされてるってのが気に食わねぇがな。」 彼を見据えながら、「勘違いするなよ鈍感野郎。俺はそいつを助けに来たわけじゃねぇ。お姫様なんぞと呼ばれるようじゃ、超人と して失格だ。そんな情けねぇ奴に用はない。ただてめぇは、この俺を差し置いて好き放題やりすぎだ。忠告しに来てやったんだよ。」 「わざわざ、魔界の流れを汲む結界を破って、ですか? 貴方も無傷ではすまなかったでしょうに。」チェックはクスリと笑った。 ジェイドはマルスを見る。「・・・!」マルスの両手が、彼自身の血で赤く染まっていた。 「貴方も変わりましたね、マルス。私は 直接貴方と手合わせする幸運には恵まれませんでしたが、話はよく聞きました。"獣(ビースト)" "正に軍神(マルス)"と dMp内でも恐れられ、かつ賞賛されていた貴方でしたのに。」 「ふざけんなよ、砂超人のお稚児さん。俺は何も変わっちゃいねぇ。」 チェックメイトの顔に、冷たい笑いが浮かんだ。「・・・変わっていない・・・ 確かに、そうかもしれませんね。」次の瞬間チェックの 姿が消える。「スワロー・テイル!」背後を狙うと読んだマルスがスワローテイルを放つ。「甘い!」チェックの姿は正面に現れる。 いつの間にか、頭は騎士のそれに変化していた。「チッ!」 「ケンタウロスの黒い嘶き!」正にケンタウロスの半馬形に変化した 下半身で、チェックはマルスを連続して蹴り上げる。そのまま、背後の壁に力一杯叩きつけた。 「があぁっっ!!」背中の古傷に打撃を受け、マルスは声をあげる。「スカー!!」ジェイドの叫び。 崩れ落ちるマルス。チェックメイトは笑った。「ホホホ・・・チェスピース・チェンジ、キング!」再び、元の顔と姿が現れる。 「その傷。訓練の時にケビンマスクを助けてついたものでしたね? その弱点をつけば、貴方を殺すなど雑作もありません。 惜しいことです。貴方は素晴らしい悪行超人なのに、どういうわけか情を捨てきれない時があるらしい。それでは私には勝てませんよ。」 「くぅ・・・ なめんじゃねぇぞ、この野郎・・・」喘ぎながら、チェックを睨みつけるマルス。 「情に囚われる。実に愚かなことです。だから、そこのジェイドはマルス、貴方に敗北し、貴方は私に敗北しなければならない。 そんなものに囚われることのない私こそ・・・」チェックメイトは笑みを浮かべた。 「史上最強の超人と呼ばれるに相応しいのです。そうでしょう?」 「チェックメイト!」 背後からの叫び声に振り向いた瞬間、「喰らえ、ベルリンの赤い雨!」ジェイドの手刀から放たれた衝撃波がチェックの頬を翳めた。 頬に傷が走り、血が飛び散る。 「・・・! 貴様、よくも私の顔を・・・!」怒りの表情でジェイドを見たチェックは、窓簾からの脱出で傷を作り血を滴らせ、 真摯な怒りの表情をしているジェイドを見てはたと動きを止める。 「貴様の・・・貴様の相手は俺だ、チェックメイト!」 不思議そうな表情でジェイドを見るチェックメイト。 「何故、そんな顔をしているのです? まさか貴方は・・・」ジェイドはチェックに突進する。 「バカが! 考えなしに突っ込むなジェイド!」マルスはジェイドに叫んだ。 チェックメイトは、ジェイドに強烈な蹴りを放って突き飛ばした。 「うあっっ!」 「貴方は・・・ 私がマルスを傷つけたことを怒っているのですか?」激痛に蹲るジェイドは、顔をあげる。 「理解できませんね・・・ マルスは貴方を傷つけた敵でしょう?」小首を傾げるチェックメイト。 「貴方は、本当に興味深い超人ですね・・・ どういうことなのか、教えてもらえませんか?」 To be continued |