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◆ 前夜祭

あのラブホでの婚前交渉一歩手前(笑)以来、すっかりラブラブなケビンとジェイドの豪華な挙式は
既に明日に迫っていた。
正義超人委員会まで巻き込んでの大掛かりな挙式だが、当の本人達よりも張り切っている
ブロッケンとロビンの的確な采配によって何一つ問題なく順調に準備は整えられていた。
尤も、現代っ子のケビンとジェイドはそんなやたらとゴージャスな結婚式には余り興味がなく
(むしろ遠慮したいくらいだった(笑))今流行りの地味婚で充分だったのだが・・・。

さて、結婚式前夜ーーーーブロッケン邸の居間で、親子(?)として過ごす最後の夜を楽しんでいるのは、
もちろんこの家の住人ブロッケンJr.とジェイドである。
ブランデー入りの紅茶をなめながら、寛いだ様子でソファに凭れたブロッケンはこの上なく優しい表情で
ジェイドを見つめながら言った。
「お前がボロボロの服をまとって、傷ついた瞳で私の元にやってきたのがもうかれこれ8年前・・・。
  あの小さかったお前が明日結婚するなんてな・・・。まったく月日の経つのは早いものだ」
例によって、紅茶とミルクの割合が1対9のミルクティー(笑)を啜りながらジェイドが答える。
「レーラァ・・・今日まで大切に育てていただいたお礼は明日正式に言わせて頂きますけど・・・
 でも、血の繋がりのないオレを実の子のように愛してくださって本当にありがとうございました」
心なしか、感涙に潤んでいるかのように見えるその瞳。
だが、その表情には今の幸せが滲み出ていて晴れやかだった。
そんなジェイドに、ブロッケンはそのブルーの瞳に益々優しい光を灯して
「ところでお前・・・泣き虫(笑)なところは幼い頃から変わっていないが、明日もきっとその大きな瞳を
真っ赤に泣きはらすのだろうな? 頼むから私とバージンロード(爆)を歩く時くらいはこらえてくれよ?」
と、からかうように言う。
「レ、レーラァ!!そんな・・・オレは絶対に泣きませんっっ!!」
誰も信じないジェイドの宣言であった。(笑)

一方、新郎のケビンの方も挙式を明日に控えて、今夜はブロッケン邸からほど近いホテルの部屋で神妙にしていた。
窓の前に立って眼下に夜景を見下ろしながら、ぼんやり思う。
「まさか、このオレが親父の決めた縁談通りに結婚するなんてな・・・。
ちょっと前なら自殺してでも(笑)拒んだろうけど、なんとまあオレ自身があのお子チャマに心底惚れちまってる。
ダディ・・・アンタに一本取られたよ!アンタはきっと、どっかでオレの好みのタイプ(笑)を知ってたんだ。
まあ、こうなったからにはせいぜいジェイド奥様(笑)に尽くさせて頂きますか♪」(笑)
・・・・・と、このようにつまりはケビンも結婚式前夜・・・幸せだった。(笑)
そろそろ風呂に入って寝ようかと振り向いた瞬間・・・ケビンの身体が凍りついたように固まった。
目の前の小さなテーブルの上に一枚のメモが・・・・。
「いつの間に!?さっきまでこんなモンなかった!誰がいつこんな真似を・・・?」
幸せに酔いしれていた矢先だけに、さすがのケビンも動揺して震える手でそのメモを取り上げる。
そして・・・その殴り書きの文面を読んでいくうちに、ケビンの表情は驚きから怒りへと変わっていった。
その不敵なメモの内容は、以下のようなものであった。

”親愛なるクソ野郎さま

  結婚おめでとう!
  相変わらずオイシイとこ取りしてくれるぜ。あのカワイコちゃんをモノにするとはな。
  せいぜい甘い新婚生活を楽しんでくれ・・・と言いたいところだが、
  生憎あの子猫ちゃんには、最初にオレが目をつけていたんだ。
  なので、明日の悪趣味な結婚式において公衆の面前で貴様の可愛い花嫁を
  頂くつもりだ!
  キーワードは「卒業」ってとこかな?
  それでは、ごきげんよう♪ 
                                   
     〜M〜      ”

ちなみに、このメモはチャド語で書かれていた。

                                      
   ★森永 メロン


突然の挑戦状(?)には、さすがのケビンも驚いた。
「”M”って・・・・こんな真似しやがるのは奴しかいねえ・・。なめた真似しやがって・・・!
せっかく人 が結婚式の前夜を楽しんでる(笑)ってのに、気分が台無しだぜ!・・・・チキショウ〜!!
なんだか嫌な予感がする・・・・」
ケビンはそのメモをグシャッと握り潰すと、暫くその場に立ち尽くしていたが
「クソッ・・・!こんな所でゆっくりしてらんねえぜ!!」
と、大急ぎで部屋を飛び出した。
彼の行かんとする先は・・・・そう、ブロッケン邸。つまりジェイドの元である。
「まさかとは思うが・・・・ジェイド〜ッ、無事でいてくれよ!!」
嘗て経験した事ないほどの不安な気持ちを抱きながら、ただひたすらブロッケン邸へと走る。
あのメモを読んで、改めて自分の深い想いに気が付いたケビンであった。
自分はこんなにもジェイドに惚れていたのか・・・と。

そして、ついにブロッケン邸の灯りが見えた。
わき目もふらず玄関に突撃(オイ)する。

バタ〜〜ンッ★★★

「オイッ!!ジェイド!!いるか〜〜〜ッ!?」
ドアが壊れた事などお構いなしにズンズンと奥へ進み、居間のドアをも蹴破り室内に突入すると
・・・・呆然とケビンを見つめる四つの目があった。
そう、ブロッケンとジェイドである。
「な、なんだ・・・ケビン??結婚式は明日だぞ?迎えに来るのはちょっと早いんじゃないか?」
さすがのブロッケンもケビンの突然の襲撃には驚いたようだ。
「・・・・・・ケビン、イキナリなんだよ・・???」
ジェイドに至っては手にしていたティーカップを床に落としてしまっている。
相当驚いたのであろう。
とにもかくにも、ジェイドが無事だった事でケビンはホッと一息ついた。
「ジェイド・・・無事で良かった」
「???・・・・なんの話だよ、ケビン?」
「本当にどうしたんだ?お前ともあろう者が、玄関と居間のドアをブチ壊すほど慌てるなんて・・・。
何かあったんだろう?」
「あ・・ああ。それが・・・オレのホテルの部屋にメモが置いてあってな、そこには明日の結婚式で
ジェイドをオレから奪ってやる・・・って書いてありやがったんだ! それで・・・心配になって・・な」
あの不敵なメモを読んで、怒りと動揺で咄嗟にこのような行動を取ってしまったケビンであったが
・・・今こうして、ジェイドとブロッケンに状況を説明しているうちに少々恥ずかしい気分になっていた。
あんなにクールだった自分が、ジェイドの事になると我を忘れてしまう。
まあ、そんな事はいい。とにかく今は明日の結婚式が心配だった。
ケビンの話を聞いたブロッケンが表情を強張らせて
「なんだと!?ムム〜ッ・・・神聖な結婚式を得体のしれない輩に邪魔されてはかなわん!
警備を更に厳重にせねば・・・」
気味の悪い話に、ジェイドも不安げな面持ちで
「ケビン・・・・オレ、明日はお前から離れないようにするよ」
と、ケビンを見上げる。
愛するジェイドに頼られたケビンは、力強く頷いて
「ああ!オレが守ってやる!!何も心配いらねえよ」
「ところで、ケビン?その不埒な犯人の正体はわかっているのか?」
ブロッケンが問う。
「・・・・・まあ、な。オレの・・・最も荒んでいた時代(笑)の知り合いだ。アンタらもよく知ってる奴さ。
奴の行動はオレにも読めねえ・・・。抜け目ねえ奴なんだ」

「フン・・・それはオレ様の事かい?」
突然割り込んできた4人目の声!!
反射的に3人の目がその声の方へと向く!

「マルス!!」
ケビンが叫んだ。
「グフフ・・・いかにもあのメモはオレ様が書いたんだ。だが、コソコソとメモだけ置いていくのも
オレの美学に反するんでね、こうして直々に御挨拶に参上したってわけよ。 ケビン・・・明日、
そこにいるお前の可愛い花嫁を頂くからな!せいぜい今夜、別れを惜しんでおけッ!!」
それだけ言うと、マルスはスッと身を翻して、窓から暗い外へと消えていった。
「オイッ!!待てッ!!」
ケビンが窓まで走り寄ったが、既にマルスの姿は消えていた。
                                    
★柊 コウ
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