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◆ 理想の舌

〈毒ノ愛 蜜ノ味 真実ノ覚醒〉

 目覚めたマルスの目に飛び込んできたのは。
 全く異なる二つの景色だった。荒涼とした、岩だらけの荒地。まるで重なるように白い壁。病室の風景。
 (・・・なんだ、これは?)
 「・・・どうなっているんだ・・・」 「ダメです、機器が・・・」 「 ・・・早く連絡・・・」
 切れ切れに聞こえてくる声。どうやら病院のスタッフらしいとマルスは判断した。
 その時、病室の風景が消え失せた。マルスは、自分の足が岩を踏みしめているのを自覚する。
 「・・・・ようこそ。・・・・」その時、辺りに響いた声に、マルスは目を上げた。

 「それでは、今から超人宇宙センターに・・・」ソルジャーが、ジェイドとデッドシグナルを見て言った時。
 「ん?」扉の外に漂っている異様な気配を、その場にいた全員が感じた。「何だ?」とソルジャー。
 ジェイドが扉に近寄っていく。扉の外からは、何人かの尋常ならざる動揺を含んだ声が聞こえていた。
 「危ない! 手を触れるな!!」ニンジャが叫ぶ。途端に激しく、弾け飛ぶように扉が開く。
 「うあっ」声と同時にジェイドの姿が消失する。扉のあった付近に漂う・・・煙幕のような、異様な何か。
 「ジェイド!」Jrの声と、ベッドから身を乗り出すクリオネマン。立ち上がるソルジャーとニンジャ。
 「トラフィックサイン、侵入禁止!!」デッドシグナルがカードを翳した。異様な煙幕が病室中を満たした中、全員が扉の方向を見る。
 そこには最早何も見えなかった。

 「!」ケビンマスクは、目前の建物が突如、大量発生した黒煙に覆い尽くされたのを見て立ち上がった。
 一瞬、火事という言葉が過ったが、炎が全く上がっていない。―――これは、尋常な事態ではない。
 その時、建物の中に浮かび上がった姿。あれは、マルス。
 その向かいに・・・毛皮を纏った巨体が見える。顔らしい部分から浮かびあがっている、カーブを描く二本の巨大な牙(タスク)。
 「・・・・!」先程の夢で見た光景。祖父のコレクションだった、古代超人タスク・マンモスの剥製が脳裏に浮かぶ。(あの牙は・・・)
 『・・・ウォーズマンさん、マンモスマンって?』 『ロビンが倒した、"知性チーム"の副将だったタスク・マンモスさ。』 
 『強かったの?』 『そりゃあ、もう。ロビンが勝てたのだって、奇跡のようなものだった。』 『・・・・・。』恐れたように
 黙り込んだ俺に、ウォーズマンは続けて言った。『いや、奇跡というのは少し違うかな。ロビンは、それまで誰も探り当てられなかった
 マンモスマンの弱点を探り出したんだ。』
 『どんな?』 『さっき言った、タスク・マンモスが自ら滅びたことと関係がある・・・・』
 ケビンマスクは、黒煙に覆い尽くされた建物目掛けて走り出した。

 「・・・・わかりやすいな。」マルスの前に立つ超人の唇が、そう動いた。彼は、にやりと笑いを浮かべる。
 その超人を見据えて立つマルスは、ふと気配を感じてちらりと横に目を向けた。
 そこには、翡翠の色の衣装を纏った少年超人がいた。「・・・・!ジェイド!」ジェイドもマルスの方に顔を向け、目を丸くする。「スカー!」
 「そのボウズ、ブロッケンJrの息子だろう。」超人は続けて言う。マルスは、再び彼に目を向ける。
 「・・・・で、今この超人病院に向っている鉄仮面は・・・。」その超人を見るジェイド。「見たまま、ロビンマスクの息子なんだろうな。」
 彼はニヤリと笑みを浮かべる。
 「・・・お前は、誰の息子とか言うのが思い浮かばんが・・・」超人は、マルスを見たようだった。「悪ガキそうな面してるから、
 正義超人ってことはないだろうな。」
 「・・・・てめぇ。」目覚める前、夢で見た象に似た姿の超人。今目の前にいる超人と、間違いなく同一人物だ。"マンモスマン"。
 夢の中で、この超人はそう呼ばれていた。
 「貴様・・・・レーラァを知っているのか・・・一体何者だ・・・」ジェイドが声をかける。笑みを崩さず不動で立っている超人。
 「パワフル・ノーズ!!」 「!」次の瞬間、ジェイドの体は宙に浮いていた。瞬く間に引き寄せられ、ジェイドは目の前に
 その超人の巨体と厚い胸、肩から胸へと回されている太い鎖、浅黒く逞しい顔を見た。
 ノーズと繋がっている一体型のマスクに覆われて、目は見えない。
 ジェイドの胴体に太い縄のようなものがぎっちりと巻きついている。その超人の、象のようなノーズの部分だった。「く・・・!」
 ジェイドは体を捩って逃れようとする。縄のようなノーズが、きつく体に食い込んだ。
 「・・・う・・・っ!」顔を歪めるジェイド。男の太い腕が伸びて、ジェイドの首のカラーに着けられた、髑髏の徽章に手をかけた。

 「!! 止めろっ!!」ジェイドは男の腕に自分の腕を振り下ろした。まるで何事もなかったかのように、男の手は髑髏の徽章を
 毟り取る。「・・・貴様っ!」怒りが満ちるジェイドの目。
 男は髑髏の徽章を投げ捨てた。次の刹那、「パオォ――――ッ!!」雄叫びと共にジェイドの体が大きく揺らされ、宙に放り投げられていた。

 半ば呆然と見ていたマルス。マンモスマンがジェイドを『パワフル・ノーズ』で捉え引き寄せた動きが、まるで捉えられなかった。
 (・・・バカな・・・)次の瞬間ジェイドが投げられたのを見て、マルスは咄嗟に踏み出す。が、その前にジェイドは空中で体勢を整え
 着地した。激しい怒りが篭った目で、マンモスマンを睨みつける。ふ、と息をつきマルスは、マンモスマンに目を向けた。
 (・・・この俺が・・・全く見切れなかっただと・・・)
 「ん? 受身が取れたか。」マンモスマンはジェイドを見て言った。「人間ならそのまま叩き付けられて血袋になる筈だが・・・。
 ということは、」またも笑うマンモスマン。「ボウズ、元から超人か。じゃあ、ブロッケンJrの息子じゃないな。」 
 「貴様、よくも・・・」師匠との絆の証である髑髏の徽章に手をかけられ、ジェイドの目には憎しみが燃えていた。
 「良かったじゃないか、ボウズ。ブロッケンのような、貧弱な人間でなくて。俺様のエサになる資格は充分だ。」
 そう言うマンモスマンを睨みつけ、ジェイドの右手が炎を宿す。
 (エサだと・・・? こいつは、超人のパワーを吸い取って養分にするタイプかよ。)マルスは思い、ジェイドの後ろに回る。
 肩に手を置いた。「よせ、ジェイド。こいつは、闇雲に突っ込んでどうにかなる野郎じゃねぇ。」「離せ、スカー・・・!」
 唸るようなジェイドの声。「頭冷やせ、このバカ。」肩に置いた手に力を込めるマルス。
 「ふん。お前、少しは状況判断ができるようだな。」マンモスマンが言った。
 「そっちのボウズよりは場数を踏んでるようだ。」と、ジェイドの方に目を向けたようだった。
 「俺様が手を貸してやろう。」言葉を続ける。「ボウズの頭が冷えるようにしてやる。」
 ジェイドとマルス、二人の前に同時に、突如全く別の光景が広がった。

 『・・・許してくれ、二人とも・・・・』ジェイドの頭に響く声。ジェイドは、はっとして顔を上げる。『俺は結局、こういう不器用な
 生き方しかできないんだ・・・』 「レーラァ!?」その声は・・・あの親しい、落ち着いた声に比して瑞々しい張りと、どこか無鉄砲さを
 感じさせる調子を持ってはいたが、確かに根底に同じ響きを持っていた。
 一面の真っ赤な空。ジェイドは下に目を向ける。何故か空中に浮かんでいるリングに、様々な姿の4人の超人。「!!」目を見張る
 ジェイド。軍帽を被った若き超人の姿・・・ヘラクレスファクトリー時代、特別講義の授業で見たのと同じ、若き日のブロッケンJr。
 だが今Jrは、その胴体を太い縄のようなノーズで縛められていた。低い笑い声を漏らしながら、Jrの身体を引き寄せているのは・・・
 先程の、象のような超人。
 『パオォ―――――ッ!!』次の刹那、Jrの身体は宙高く放り上げられた。
 ジェイドが声をたてる間もなく、Jrを追って3人の超人が飛び上がる。目を見張るジェイドの前で、
 Jrの身体は3人に捕らえられ、弓形に折り曲げられた。骨の砕ける鈍い音が、辺りに響く。

 剥き出さんばかりに目を見開いたジェイド。「あ」擦れた声が喉から漏れた。「あ、ア・・・。」ジェイドは駆け出していた。
 伸ばされた腕が、3人の超人に折られた若きJrの身体をすり抜けていく。振り向いたジェイドの目に映るJrの姿。見開かれた目に、
 もう精気はない。力無く空いた口唇から、血が滝のように溢れ出す。血の赤。噴き出す度にJrの頭が、大きく痙攣していた。

 見開かれたジェイドの瞳に、どんどんと生命が抜けて行くJrの、壊される人形のような姿が、焼きつくように映っている。「うあ」
 声が再び、喉から漏れ出でる。「あああああああぁ・・・・!!・・・!!」喉を引き裂かんばかりの絶叫を、ジェイドは全身で搾り出していた。
 突進しようとする身体を抱き止める、力強い腕。
 「バカヤロウ!落ち着け、ジェイド!!」マルスはジェイドに叫ぶ。「これは幻影だ!奴の昔の記憶に過ぎん!!幻影に割り込める
 わけがねぇだろう!!」ジェイドを強く抱き止め、揺さぶるマルス。
 「武士の情け、って奴だ・・・。」二人の耳に届く声。「・・・ブロッケンJr、言い残すことがあれば聞いといてやるぜ・・・。」マルスは
 振り向く。笑いながら、腕を組んだマンモスマンが立っていた。その言葉は、かつてJrに向って彼が発したものと同じらしい。
 『あ、りがてぇ・・・・』血と共に、過去のJrは言葉を吐いた。
 『ソ・・・ルジャーキャプテン・・・・聞こえるか・・・実力者揃いの正義超人の中で・・・・何故俺をチームに・・・引き抜いた・・・』 
 『あ・・・ああ聞こえるともブロッケン・・・この争奪戦には、未知の強豪たちの参加が予想されていた・・・そういった者たちには、
 完成された実力者より未知数の実力者をぶつけるべきだと考えたんだ・・・・それがブロッケンJr、お前だったのさ・・・・そして、お前の
 最大の魅力は・・・!』その時キン肉マンソルジャーは、宙に突き出た下方のリングの鉄柱に捕まった、若き日のバッファローマンの
 手に捕まれ、ぶら下がった状態だった。『もうよかろう!とどめだ!』ブロッケンの頭を捕らえていた、キン肉族と似たマスクを
 着けた男・キン肉マンスーパーフェニックスが言った。『おお!!』残る二超人・・・マンモスマンと、プリズムで構成された身体を
 持つプリズマンの二人が、再度力を込めて、ブロッケンJrの精気の抜けた身体を折り曲げる。

 その有様を目の前で見ていたジェイド。見開かれた、放心した瞳には、最早何の色もない。一言の声もなく、ジェイドは自分を
 抱き締めて押し止めているマルスの腕の中にいた。全ての力を失くし、精神の糸を途切らせたジェイドを覗き込むマルス。
 超人たちが技を解き、完全に壊されたブロッケンJrの身体が滑り落ちる。
 (レー・・・ラァ・・・・)あらゆる思考と感情が停止した中で、ジェイドがぼんやりと思い出したのは、何故か、あの入れ替え戦での師の
 姿だった。(俺は・・・・レーラァを信じなかったから)スカーが、俺の腕をもぎ取った時。目に入った、レーラァの姿。
 (この世で一番大切な人を疑ったから)右腕を失った俺の姿に、絶叫した師・ブロッケンJr。
 (俺の腕・・・・が・・・・)あの時のレーラァも。今の俺と同じように・・・壊されて。
 「レーラァを・・・信じなかったばっかりに・・・」焦点の定まらぬ瞳のまま、呟くジェイド。
 「バチが当たっちゃった・・・ね・・・・」マルスは、腕の中のジェイドを見る。
 「・・・ジェイド!」マルスの目に怒りが宿った。「てめぇ・・・呆けてる場合か、この甘ちゃんが!!」平手が舞い、ジェイドの頬を打つ。
 何の反応も起こらない。「チッ・・・」
 その時マルスは、宙を舞う物体を見た。(・・・・髑髏の徽章だと?)殆ど同時に、キン肉マンソルジャーの声が響き渡る。
 『ブロッケン・・・お前の最大の魅力は、如何なる困難があろうと、己の仕事を絶対に遂行する責任感だ――――っ!!』その徽章は、
 自然にJrの軍帽の中央に収まっていった。

 ブロッケンJrの、ボロボロにされた身体に再び力が漲った。『なにぃ!?』過去の幻影の中で、驚きの声をあげる3人の超人たち。
 Jrはガラス張りの超人・プリズマンにしがみ付く。『レインボー・シャワー!』プリズマンの胴体の内側で、七色の光が生成される。
 『させるか!!』力強い声と共に、プリズマンの両腕を掴んだJrは、そのままリングから飛び降りた。
 『・・・・!! ブロッケン!! プリズマンと心中する気だ!!』 『・・・・あんまり冷てぇじゃねぇか・・・!ブロッケン!!
 俺たち血盟軍、死ぬ時は一緒だと誓い合ったのに・・・・!!』ソルジャーと、バッファローマンの叫び声。ブロッケンJrとプリズマンは、
 吸い込まれるように落下して行く。

 赤い空が消え失せ、ジェイドはマルスの腕に捕らわれたまま、岩だらけの荒地を踏みしめていた。
 目の前に立つ、象に似た巨体の超人。「人間ってのは脆弱な生き物・・・ブロッケンJrは、その人間から俄か超人に変化できる、
 特殊な一族の出だったらしいが。」腕を組みながら言うマンモスマン。
 「本来弱小とは言え、あの争奪戦では俺たちフェニックスチームを相手に健闘したのは確かだ。」にやりと笑みを浮かべる。
 「お前はどうだろうな、ボウズ。」その笑みは、ジェイドとマルスに向けられた。
 「多分、ブロッケンJrの養子か何かだろうが、俺に食われる前に一矢報いることのできるタマかね?」
 ジェイドの目には、光が戻っていた。マルスの腕を振り払い、立ち上がる。
 「俺は、ブロッケンJrの弟子、ジェイドだ。」 「ほう。そうか。」 「貴様が・・・元知性チームの副将マンモスマンだな。」 
 「フン・・・あの爺さん・・・おっと、キン肉アタルがそう言ったのか。」
 「そうだ。」マンモスマンを見据えるジェイド。「俺は、貴様に食われはしない。必ず貴様を倒す。」
 「無理だな。」マンモスマンは笑った。「ブロッケンの誇りにかけて、貴様は、必ず倒す。」
 「おい。俺をシカトして話を進めてんじゃねぇよ。」マルスは、ジェイドを押しのけ前に出る。
 「象モドキ。確かにこの甘ちゃん相手ならてめぇは楽勝だろうが、俺がいる以上そうはいかねぇぜ。」
 「二人がかりか? 構わんぞ。ガキ共相手ならもう二、三人いてもいいくらいだ。」
 「なめるんじゃねぇ。」鋭い光を宿すマルスの目。「てめぇの時代はとっくに終ってんだよ。」
 唇を歪めて嘲笑するマンモスマン。「そう言えば、貴様が何者か聞いてなかったな。どの道俺のエサになる奴らの素性なぞ聞いても
 仕方ねえと思ってたが・・・名前くらいは聞いておいてやる。」
 「ふざけんなよ、ケダモノ。」マルスは冷笑を浮かべた。「俺は、dMpの悪行超人マルスだ。てめぇなんぞのエサになってたまるか。」
 「悪行超人、か。いきがってる暴走族って匂いがするな。何だろうと、この空間に捕らわれた以上・・・・」
 マンモスマンは腕を解く。「俺のエサになる以外の道はない!」
 ジェイドとマルスは身構えた。 「俺が捕らえた場所は超人病院・・・生きのよくない奴ばかりが集まってるが、とりあえず最も邪魔に
 なりそうなキン肉アタルの動きを封じることはできた。あの中で一番生きの良さそうなお前達をさっさと吸収して、他の"餌場"を
 探すとするか。」

 謎の黒煙に満たされた病室内。「一体これは・・・」とブロッケンJr。
 「ジェイドは・・・どうなったんだ!?」クリオネマンはベッドから身を乗り出しつつ言う。
 「・・・タイミングが良すぎるな、ソルジャー。」ニンジャがソルジャーに語りかける。「うむ・・・。しかし、これがマンモスマンの
 仕業と決まったわけではない。」ソルジャーが言った時。「その象男の仕業みたいですよ。」顔面の標識を"侵入禁止"に変えたまま、
 部屋を黒煙から守っているデッドシグナルが言った。
 「何故わかるのかね?」ソルジャーの問いに、「このみょーな煙の向こうに・・・」デッドシグナルは指を差し、「二本の象牙が
 くっついてる、バカでかい超人の姿がチラッと見えたんです。向かいに、ジェイドと悪行超人マルスがいるのも見えました。」
 そう答える。 「マルス?」聞き返すソルジャーにJrが、「ソルジャー、言い忘れていたが、マルスは先程話したdMpの残党で
 ファクトリーに潜り込んだ、二期生・スカーフェイスの本名だ。」と説明した。「いやー、あんなでけぇ超人見たの、ファクトリーの
 伝説超人タイルマン先生以来だな。」デッドが言う。
 「なんと・・・・と言うことは、彼奴はもう肉体を復活させておるのか!」ニンジャが驚愕の表情を浮かべて言った。「自分の強度分の
 パワーを集める以前に、肉体が復活している・・・」呟くソルジャー。「そんなことがあり得るのか!?」とJr。「普通ならあり得ない
 話だ。だが、現にマンモスマンの肉体が復活しているらしい、と言うことは・・・」 「手引きした者がいるな。」ニンジャが続ける。
 「マンモスマンを操っている者がいるのか!」重ねて問うJrに、「いや、完全復活のためにパワーを吸収しているのは、間違いなく
 奴自身の意志だろう。操っている、と言うよりは・・・」ソルジャーは、Jrに顔を向ける。
 「何らかの意図を持ち、そして何らかの方法で、マンモスマンの肉体復活を行った者がいるんだ。」

 「知っているか、ボウズども。」嘲笑を浮かべながら、ジェイドとマルスに語りかけるマンモスマン。
 「・・・・お前ら程度のチンケな数値でなく、3000万以上の超人強度を持って始めて、使用可能な超人能力があることを。」構えを崩さず、
 二人はマンモスマンを睨みつけている。
 「一言で言って、完全な別空間を作る能力だ。」唇が上がり、白い歯が刃物のように映る。
 「単純に異次元間を行き来したり、他者の出入りを禁ずる結界を張る以上の高度な能力・・・・今俺様がしているように、全く別の空間二つを
 重ねて存在させることもできる。勿論、これに捕らわれた者は人間超人を問わず、侵入も脱出も不可能。だが、空間の創り手だけは
 出入りはおろか、何を取り込む事も排出する事も自在に出来る。丁度、このようにな。」
 「!」荒涼とした不毛の大地に突如出現した・・・いや、させられた訪問者。コートを羽織い、鉄の仮面から長く、少々クセのある金髪を
 靡かせている若者。
 彼を認めたマルスの目を、一瞬過っていく想い。次の瞬間には、常の冷たい光が戻る。
 「・・・・ケビンマスク。」そう呟くマルスを横目で見、ケビンに視線を移すジェイド。
 「・・・! マルス・・・。」マルスと、その隣にジェイドを認めケビンは呟いた。
 「ようこそ、我が好敵手のお坊ちゃん。」その響く声に、ケビンは顔を向ける。
 「奴の息子なら、俺にとってもいい栄養になってくれるだろうよ。」そう言って笑う巨体の超人。
 「・・・・。」ケビンの脳裏に、幼い日に見た古代超人の、重々しくも恐ろしい姿が甦った。

 To be continued