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◆ ジムノぺディ第2番

{ひからびた胎児}
 T.ナマコの胎児

 「僕思うんだけどさー、ジェイド。」ホルスは、相変らずにこにこしながら言った。「人間って・・・ていうか超人もそうだけど、
 意外な一面って持っているよねぇ。例えばー、普段カッコつけてるクセにジェットコースターが怖いとか、お化け屋敷が苦手とか、
 ダンスレボリューションが下手だとかさぁ。」 「はぁ?」怪訝な表情のジェイド。「あとはジェットコースターが怖いとか、
 ジェットコースターが怖いとか、ジェットコースターが怖いとか。そーゆうのって幻滅だと思う?ジェイドは。」
 「・・・何を言ってるんだ?お前は。」ジェイドは呆れ返った表情になる。
 「あれだけ言われてわからないのでしょうか?彼は。」チャド言語でマルスに話し掛けるチェックメイトは、くすくすと笑っていた。
 「アイツが鈍くて助かったぜ・・・ って、何が判ったってんだ、この罅割れ野郎が!」
 と、チャド言語で怒鳴り返すマルス。「意外と可愛い所があるのですねぇ、軍神の名を持つ貴方でも・・・。」
 「うるせぇ!冠二重に被るってなワケのわからんマネする奴が言うんじゃねえ!」 「あれはデモンストレーションのためです。
 二重にしていたのは貴方も同じでしょう?皮膚だか服だか、タイツだかは不明ですが・・・。」今だ笑いながら言うチェックメイト。
 「何言ってんのかな、あいつら?」二人を見ながら万太郎は仲間たちに言った。「表記不能な感じの発音してるよな・・・」とキッド。
 「暗号作って会話してるのか?小学生じゃあるまいし、何の意味があるんだ?」首をかしげながら言うガゼルマン。
 その時セイウチンが、「あ、そうだ!アニキ、悪行超人にしか通じない言葉だったら、ケビンマスクさんに通訳してもらったら?」
 と万太郎に言う。
 「それがあったかぁ! じゃ、早速通訳頼むよケビン!」万太郎はケビンに走り寄ると肩を叩く。「な、なんで俺が。」 
 「わかる奴お前しかいないんだからさー!」と万太郎。「そーだな!雑音でべちゃらくちゃらやられてっと気分が悪い!
 一発頼むぜあんた!」割り込んでくるデッドシグナル。「おいジェイド!ケビンマスクが悪行超人どもの通訳をしてくれるそうだ。」
 と呼ぶクリオネマン。 「え?」ジェイドは顔を向けた。
 「・・・・」全員の期待を一心に集め、押し黙るケビンマスク。彼が何を言い出したわけでもないが、最早引っ込みはつかなくなっていた。
 「おや。ケビンマスクが通訳を買って出たようです。」チェックメイトは言う。「通訳ぅ?」ケビンを見るマルス。「奴のことだから、
 買って出たっつぅか押し付けられたんだろ。余計なことすんなよこの鉄仮面!」「アイツのことは気にせず、言っちゃいなよケビン。」
 と万太郎。
 「この野郎・・・」ずんずんとケビン達の所へ向ったマルスは、バン!とコーラの置かれた机に平手を振り下ろした。
 「引っ込んでろ有象無象どもが!!」
 あまりの迫力に、全員水を打ったように静まり返る。「なぁ、ケビン・・・」この場で初めて名前を呼ばれて、マルスを見るケビン。
 「お前は、何もしゃべれないよなぁ? 絶対に・・・」目に冷たい色を浮かべてケビンに凄むマルス。
 「・・・・」沈黙するケビンマスク。その場にいた、一期生や二期生も沈黙している。
 「おおっ! 過去、彼らの間に何があったのでしょうか!」そう言って、ホルスは楽しげに笑った。
 「良いですけれどもね。そんな凄んで止めるような内容の話でもなかったでしょうに。それとも・・・・」チェックメイトは、ジェイドを
 チラリと目の端に止めてから、マルスを見た。「要は、ジェイドに知られたくないと言うことでしょうか。面白いですね。フフフ・・・・」
 チェックメイトは含み笑いをしている。

 「お〜い、マンタマンタ。」ちょんちょん、と軽く突付く感触で万太郎が振り向くと、悪戯っぽい笑みを浮かべたホルスがいた。
 彼は、万太郎の耳元らしき所へ顔を寄せて言う。「僕ねぇ。ツバメとケビンさんと、それとチェッカー・・・メイトさんの過去に何が
 あったか知ってるよ。」「へ?」顔を向ける万太郎。「知りたい?」とにこにこするホルス。「別にどーでもいいけどさ、そんなこと。
 でも、弱味握れるようなら知っててもいいかなぁ。あとあと有利だろうし・・・・。」と腕組みする万太郎だった。「うわ〜、ヘドが
 出そうにせこいこと考えてんだね、マンタって。」ホルスは言う。「せこいのも、キン肉王家の伝統のうち! 曾おじい様の
 キン肉タツノリの残した、由緒あるキン肉王家家訓の1つさ!」万太郎は得意げだ。
 「ふぅん。それって守らなかったら、ジャイアントスイングで回されたりするわけ?」 「どうかなぁ?」
 「何となくマズイんじゃないのか、そのネタ・・・」キッドが口を挟んだ。「あそうだ、キッドさんもガゼルさんも、アシカさんも
 協力してくれる?」 「ワシ、セイウチンだけど。」 「ごめんねアザラシさん!」
 セイウチンは、顔を顰めたが怒っているよりは困っているような表情だった。「あんた、わざと間違えて面白がってないだか?」
 「―――ところで、"協力してくれ"とはどういう意味なんだ?」とガゼルマン。
 「みんなすっかり忘れてるかもしれないけど、僕のカワイイ甥っ子のシャルロのことでね。」ホルスは笑う。「あ、そう言えば
 忘れてたなぁ。」と万太郎。キッドとガゼルが、シャルロの方をちらりと見る。
 「あいつって、30年生きてるのに身体は19歳なんだけど、青春に縁遠い奴なんだよね! 何せ好きな歌手がイヴ・モンタンで、
 愛読書がプルーストとパスカルなんだから。若者の趣味じゃないでしょ?」
 「仁丹とスカトロジストとラスカル?何だそれ?」 「無理矢理間違えてるね、マンタ!」 「・・・確かに、若者の趣味じゃないな。
 既に枯れているというか・・・。」ガゼルマンが言う。「でしょ? だからぁ、そんな四角四面なあいつに、一期生の皆で遊びの楽しさを
 教えてあげてほしいわけ!一度しかない青春の過ごし方ってのをね。得意でしょ? 日本を守る使命をほったらかして、遊び呆けて
 経費をムダに使ってるんだから。」
 「一度シメてやるかコイツ。」憮然とキッドが言った。「ホントのことでしょ。ツバメにシメられた奴が、僕をシメれるわけ
 ないじゃない。」舌を出すホルス。「お前だってシメられてただろ〜が!!」万太郎が割って入った。「ま〜ま、落ち着けよキッド。
 ここは、甥っ子を心配する気持ちを汲んでやろうじゃないか。」と肩に手を回す。「なんだ?やけに判りのいいこと言うんだな万太郎?」
 と言うキッドの耳に口を寄せる万太郎。「こいつのことはほっとこうよ。相手してると疲れるし。それよか、あの少女マンガみたいな
 顔した奴の方が、からかい甲斐があって面白そうじゃないか。クソ真面目っぽいし。生意気に、可愛い女の子連れてるしさぁ。
 一発ガツンとやってやろうじゃない。」「・・・・要はやっかみか・・・・」苦笑いするキッド。
 万太郎は振り向くと、「よし、わかった!君の甥っ子に、いつでも真剣・ガチンコ勝負の遊びをしっかり教えてやろうじゃないか!
 この万太郎に任しときなさい!行くぞガゼルマン、セイウチン!」ホルスに言うなり、シャルロとジャネットの方に進んで行く。
 「頑張ってね〜!」手を振りつつホルスは、「さあて、これで五月蝿そうなシャルロと一期生のみんなは追っ払ったし・・・ 
 いよいよリベンジの始まりだね!」背後のネクベトを振り向いた。「御意。」ネクベトは畏まる。「・・・ねぇ、ネクベト。
 ジャネットを連れ出して話をしてきたら? 13年ぶりの再会なんだから・・・。」
 「・・・そうさせていただきます。」ネクベトはその場を離れた。
 「さっきから何ゴチャゴチャやってんだ、アホの先輩方と鳥小僧は。」少し離れて彼らを見ていたデッドシグナルは言った。
 「だから、私に聞くなと言うのに。」言い返すクリオネマン。「・・・・」怪訝な表情のままで、ホルスと一期生達を見ているジェイド。
 しかし、彼の内心を占めていたのはこの疑問だった。
 (スカーとジェットコースターに乗ったら、何がどうなるんだ? ケビンマスクとスカーに、何があったというんだ?)ジェイドは、
 マルスとケビン、チェックメイトの3人に目を映す。

U.甲殻類の胎児

 「でさぁ、ジェイド。どうするの?」ホルスは、次にジェイドに語りかけた。「ツバメとジェットコースターに乗ってみる?」
 屈託のない笑顔が覗き込んでいる。
 「・・・・。 何故そんなにジェットコースターに乗せたがるんだ。」ジェイドはホルスに問う。
 「深い意味はないよ? 僕はもうすぐ日本を離れるから、その前に御世話になった新世代超人のみんなにお礼をしとこうと思って。
 それともジェイドは、ジェットコースター嫌い?」
 悪戯っぽい瞳が笑う。「もしかして、ジェットコースター怖いとか?」
 「バカにするな!」思わずジェイドは怒鳴っていた。「超人レスリングに比べたら何でもない!」
 その遣り取りを見ていた3人の元dMp構成員。ケビンマスクが、小型のノートパソコンを取り出していた。起動する。
 (×月×日・・・ ××遊園地にて・・・新世代超人二期生のジェイド。"ジェットコースターが怖いか"と挑発され、"超人レスリングに
 比べれば何でもない"と発言。マルスも横浜シーパラダイスで、ジェットコースターの発進前にそんなことを言っていたことを連想。
 奴の場合は強がりだったが、ジェイドはどうか?性格からして、売り言葉に買い言葉の可能性高し。)
 「ナニをやってんだてめぇは?」その声に顔をあげると、マルスが睨みつけていた。咄嗟に・・・だが細心の注意を払って、
 『閉じる』→『保存』を選択するケビン。
 「いや、何でもない。」 「何でもないだ!? いきなり人の前でタカタカタカタカ始めやがって。何をやってたのか言ってみろ!」
 ケビンに詰め寄るマルス。その時、
 「ちょっと待ったあ!」デッドシグナルが声をかける。「あァ!?」マルスは振り向く。「コラ悪行超人!その"タカタカタカタカ"
 ってのはどーゆー表現だ! 一体いつの時代の超人だてめーは!!」
 「うるせぇぞ道路標識! どうでもいいことであげ足とってんじゃねぇ!! 大体てめぇはファクトリー時分から、いらんツッコミが
 多すぎんだよ!」と怒鳴り返すマルス。デッドシグナルも負けてはいない。
 「ほっといてもらおう!! 前々から思ってたが、てめーはいきなり珍妙な言葉遣いをすることが多い!試合の最中に"ワオ"なんて
 感嘆詞を出してきた時はひっくり返ったぞ!!(しかも2回!) てめー個人がどんないかれポンチだろーと勝手だが、仮にとは言え
 二期生の一員だったんだから自重しろ! オレたち全体が世間に誤解されるわ!!」 どことなく、引きつったかのような表情の
 マルスは、「ふざけるな信号野郎!! 誤解も何も、てめぇらは存在そのものがギャグだろうが!言えた義理かこのボケ!」
 そうデッドに怒鳴った。 「待て悪行超人!」クリオネマンが前に踏み出す。「貴様、今複数形を使ったな? まさかと思うが、
 私やジェイドを数に含めたのではあるまい?」 「フン・・・」マルスは嘲笑した。
 「お前らもギャグそのものだろうが。手足伸ばすわ膨れるわ、お笑い大道芸でなくて何だってんだ。後の1人は超絶単純頭だしよ。」
 とマルスは指を突き出した。
 「子供の喧嘩ですか。全く。」そう言うとチェックメイトは、チラリとケビンに視線を移す。
 「何だと貴様!」いきり立つクリオネマン。と、彼は隣のジェイドを見る。「ど、どうしたジェイド?」
 「ん?」マルス、デッド、ケビンとチェックメイトがジェイドを見る。
 ジェイドは肩を落とし俯いていた。その肩が震えている。「・・・・俺は、お前にそんな風に思われてたのか・・・。」 
 「う!」マルスは一瞬息を呑んだ。 「俺はお前を、悪行超人でもライバルだと思っていたのに・・・・・ お前には、ただのバカだと
 思われてたんだな・・・・」戦慄きだす体と、震える声。
 「ジ、ジェイド!」クリオネマンは慌てて、ジェイドの肩に手を回す。
 「・・・・また俺の、勝手な思い込みだったわけだ・・・・」ポツリと呟くジェイド。
 (ち・・・ちょっと待て何かが違う! 普段のジェイドだったら逆上して俺に向ってくる筈なのに、何なんだこの反応は!そんな
 乙女チックに・・・)と、内心動揺しているマルスにかけられた言葉。
 「あっ、ツバメがジェイドを泣かしたー! いーけないんだいけないんだ!」ホルスがはしゃいでいた。
 「引っ込め!折り畳むぞこのクソガキは!!」ホルスに顔を向けて、マルスが怒鳴った瞬間。
 衝撃がマルスの頬にめり込んだ。マルスはそのまま仰向けに倒れる。
 「ざけんなこの野郎!! お前の格好だってギャグそのもののクセに!!」
 怒鳴るジェイド。殴り倒されたマルスはあおりで、その怒りの表情を見た。(なんでぇ。紛らわしいマネしやがってよ、この優等生は。)
 腫れた頬で、僅かにニヤリと笑う。(――― しかし、ちょっと惜しかったかな。)
 「やはり子供の喧嘩ですね。レベルが低すぎます。」と、肩を竦めるチェックメイト。
 見ていたケビンマスクは思っていた。(・・・マルスが、試合の最中に"ワオ"という感嘆詞を使った、か・・・。興味深い事実だな。後で
 『ケビンメモ・特記事項マルス・VOL3"マルス言動チェック"』に追加しておかなくては。今のジェイドとの遣り取りはどうだろう?
 『ケビンメモ・新世代超人チェック"ジェイド"』の項に、"彼はマルスをライバルと思っているが、マルスにはバカ呼ばわりされたので
 殴り倒した"と仮に記載しておくか。)
 ケビンマスクの父ロビンマスクは、正義超人トップクラスの実力者であり、正義超人の実力向上を目的とした『ロビンメモ』なる
 文書を作成していた。それには仲間の正義超人の弱点が記載されていたという。
 "敵の弱点ならまだしも、味方の弱点を記してどうするのか"といった真っ当な疑問に対しては、ロビンマスクは次のように答えていた。
 "『ロビンメモ』は、正義超人たちの闘志を高めるためのものだ。己の弱点が明文化されている事実を常に心に留めておくことによって、
 惰性に流されるのを防ぐことが出来る。" 流石はロビンマスク、と一部で賞賛されたものだったが・・・。
 (嘘をつけ。あの親父のことだ。自分の地位が他の正義超人に脅かされたら、メモを盾にとろうとか考えていたに決まってる。
 さもなければストーカー癖でもあったか、いつかは他の正義超人たちを倒す目的のためだったに違いない。もっともらしく言い繕うな!)
 ケビンは父のことを思い出して怒りを覚えた。そんな彼が、何故『ケビンメモ』をパソコンに打ち込むようになったのか。本来は、
 一応、彼にとって打倒の対象である、キン肉万太郎の戦闘を記録し分析しようという目的で始められる筈だったのだが、ある時
 dMpで起きた事件をきっかけに、『ケビンメモ』は全く性格を変えてしまったのだった。(あの日、マルスが・・・"悪魔超人軍を
 視察してみねぇか?"と俺に持ちかけて・・・)
 「ねぇねぇケビンさん!」と声をかけられ、ケビンマスクははっと顔をあげた。
 ホルスの無邪気な表情が目の前にあった。「そのノートパソコン、どうしたの?」 「え?」
 不思議そうに、今ケビンの膝に置かれているノートパソコンを見ているホルス。「ケビンさんのなんだよね、それ?」 
 「そうだが・・・どうかしたのか?」 ホルスは、ケビンを覗き込むように顔を近付ける。
 「ケビンさん、パソコン買うお金持ってたの?」 「えっ!?」

 「だって、ケビンさんは子供の時に家出して、ずーっとロビンさんのとこには帰ってないって言ってたよね? 家出の時は、トーゼン
 お金持ってたんだろうけど、今まで残ってたの?」
 「・・・・・。」沈黙するケビンマスク。「それとも、アルバイトとかしてたのかなぁ?」
 「コラ、このクソガキ。」マルスが割って入る。「ズケズケと他人事に首突っ込んでんじゃねぇよ。てめぇはすっこんでろ。」
 さらに、ジロリとホルスを睨みつけて言った。「さもなきゃ、仕舞にヤキ入れてやるぜ。ちっとやそっとじゃ忘れられないくらい
 強烈なヤツをな・・・。」マルスは、ニヤリと笑った。
 しばしの間、息を呑んだホルスだが、「フンだ。ヤキ入れって言ったって、今の僕にはダメージないこともう忘れたの? いくら
 自称超ド級超人でも、幽体にヤキ入れられないでしょ?」と言い返す。
 「わかってねぇなあ・・・」マルスは穏やかに言う。「ダメージってのは、肉体にだけあるもんじゃねぇんだぞ、ボウズ?」 
 「まあ、脅かしはその辺にしておいてはどうです? マルス。」チェックメイトが声をかけた。
 「ほほぅ。冷血の王子サマがお優しいこと言うじゃねぇか。」マルスは振り向いた。 「そういうつもりは毛頭ありませんが。ただ、
 貴方とケビンマスクの態度を見ていて思い当たることがあったのです。サンシャイン・ヘッドがかつてdMpの二派について、
 "浅ましいマネをしよる。"と言ったことがあるのですが・・・」チェックメイトは笑みを浮かべる。「真実だったのですか?」 
 「ケッ。」舌打ちするマルス。
 「そういう爺さんも、恩恵受けてたくせによく言うぜ。自分で手を汚さないで、他人をアレコレ言うのは簡単なこった。なあ、
 ケビン?」マルスはケビンを振り向いた。ケビンマスクは俯く。
 「・・・話の内容がよく掴めんが、何をしてやがったってんだ?悪行超人どもは。」デッドシグナルが言う。クリオネマンはジェイドを
 見た。 「・・・・おそらく、dMpの運営資金の話じゃないんだろうか・・・。」ジェイドは考えながら、二人に向って言った。
 「なるほど・・・。どんな悪辣なことをしていたんだろうな。」とクリオネマン。「さぁ、謎は深まるばかりです! 真相は如何に!」
 ホルスは3人の所に跳ぶようにやって来ると、そう言って楽しげに笑った。 「・・・立ち直り早いな、この鳥小僧。」とデッドシグナル。

V.柄眼類の胎児

 「・・・皆さんは・・・叔父に何を言われたのです?」シャルロは、4人の一期生を順繰りに見ながら言う。
 「気にしない気にしない! ただ僕らは君に、遊びの楽しさを教えてあげようと思ってるだけのことさ!」万太郎はシャルロの肩を
 叩く。シャルロは静かに溜息をついて言った。「折角ですが遠慮します。叔父を連れて宿泊先のホテルに戻らなければなりませんので。」 
  「ほんとに言うこと固いんだね、君って。遊んでナンボの人生でしょ! そういうことを知らなかったら、超人が偏って禄でもない
  結果になるんだよ。誰とは言わないけど、20年も飲んだくれたりとかさぁ。君なんかも、そうなりそうなタイプだから心配してやって
  るんじゃない。」 「・・・・珍しくちょっと聞けば真っ当な台詞を吐いてるな、万太郎・・・。」キッドが言う。 「あすこのカッペの
  耳に入ったら、ひらきにされそうな例えだぜ。」少々苦々しげにガゼルマン。「経験者は語る、だねぇガゼルマン。」
  万太郎が茶々を入れる。
 「お言葉は最もですが。」シャルロが万太郎を見て言った。「だからと言って遊んでばかりもどうかと思いますよ。キン肉万太郎さん。
 聞いた話では、貴方は将来医師か学者を希望していたそうではありませんか?それを聞いた時、共感を覚えたものですが。
 私も昔そうでしたから・・・。」
 「・・・一体どこで聞いたの、そんなこと。」怪訝な顔になる万太郎。
 「次の話は、我が師父、キン肉マンマリポーサに聞いたことですが。」万太郎に答えずにシャルロは続ける。
 「貴方の父君キン肉スグルは、普段は周囲から無能呼ばわりされていたそうですが、時々思いもよらぬ博識な一面を見せていた
 そうです。宇宙超人タッグトーナメントで、"クロノスチェンジ"という必殺技の由来は"時を司る神"だと看破したり、私の父
 ホークマンと戦った時には鷹の習性を利用して試合を有利に運んだり、飛車角の迷宮突破の糸口を掴んだり、と・・・。」 
 「あのヌボ〜っとした父上がねぇ・・・。何かの間違いじゃない?」 「火事場のクソ力ってのは、脳髄にも働くもんなのかな。」
 とキッド。
 「・・・つまりですね。貴方はそれほど博識なキン肉スグルのご子息なのですから、努力すれば道は開ける筈だと私は言いたいのです。」
 「苦手だな〜、こういうお説教タイプ。」万太郎はマスクの上から頭をかいた。「おじさんがそれだけ頭いいわりにゃ、お前にその
 頭脳は受け継がれてないみたいだな?万太郎。お前の成績って一期生中ドンジリだったじゃないか。俺たち三人は、」とキッドは
 自分とガゼルマン、セイウチンを順繰りに指差した。「ファクトリーのベスト3を飾る成績で卒業したんだぜ?」
 「あのねキッド。」チロリとキッドを見る万太郎。「学校の成績いいのと、卒業してから役に立つかどうかは別問題だよ。お前ら
 殆ど勝ってないじゃない。」瞬間、凍りつく周りの空気。
 「過去の栄光を振り翳すのは止めなさい!」胸を張る万太郎。 それを見たシャルロは、再び静かに溜息をついて頭を振る。

 一方。「・・・お前達、dMpで一体何をやっていたんだ?」ジェイドは踏み出すと、3人の元dMp構成員に尋ねた。「さぁてな。
 てめぇみたいな世間知らずのお子様は、知らなくてもいいことだ。」とマルス。
 「スカー!」睨みつけるジェイド。「知りたいのですか?ジェイド。」その時、チェックメイトがジェイドに向って言い、ジェイドは
 彼を見る。チェックは、にこりと笑った。「私は、あくまでサンシャイン・ヘッドから聞いた話を伝えるだけなのですが・・・」 
 「何だ?」思わず身を乗り出すジェイドと、見ている二期生たち。「その前に。交換条件があります。」右手を前に出し、
 チェックメイトは言った。
 「交換条件?」「ええ。以前貴方とお会いした時に、中途半端で終った質問の答えをいただきたいのです。」
 「・・・・。」ジェイドはチェックメイトを見据える。 「貴方の師・ブロッケンJrについて、ですよ。」
 「レーラァの・・・?」 「そうです。彼が真に尊敬に値する超人かどうか、貴方の考えを聞かせていただきたい。」 「何だと?」
 ジェイドの瞳の色が変わった。
 (・・・全く。あの擬似ファザコン坊やがブチ切れること必定の話題を持ち出しやがったな、チェス野郎は。怒らせて楽しもうってのか?)
 「だとしたら悪趣味な野郎だぜ。」腕組をしながら呟くマルス。
 「悪趣味?ツバメに言われたくないんじゃないかなぁ。ねぇケビンさん。」ジェットコースターの券をひらひらさせながら、
 ホルスはケビンに言った。「・・・・だから、何故俺に聞くんだ?」とケビン。
 「えへへ。ところでさぁケビンさん。でーもんぷらんとでやってたことって、"あのこと"と関係あるの?」
 「!」表情はわからないが、ケビンは驚いたようだった。「図星?」 「君は・・・あの事を知っているのか?一体どうして。」
 ケビンの問に、ホルスは悪戯っぽい笑みを浮かべる。「企業秘密だよ! さて、何やら緊迫してるかもしれない状況になって
 まいりました! この後どうなるのでしょうか!次回をお楽しみに!」と楽しげに笑うホルスを見て、「チッ。」マルスは舌打ちした。

To be continued

ケビンマスクって・・・そんなコトやってたんですね・・(笑)そりゃストーカー呼ばわり
(誰に?)されてもいたしかたないことかと・・・。(爆笑)そうなのか・・二期生は全員
存在がギャグだった・・ということもメモに書く?(笑・しつこい)(Noriko)

いや、このパソコンはdMpから支給されたものだから・・(←本当か!?)(ケビン)