SCAR FACE SITE

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◆ FULLMOON

 この日もよく晴れていた。pipipi・・・鳴り続ける目覚し時計がうらめしい。
 「んー・・・」
 彼は布団を深くかぶり直し、二度寝を決め込もうとしていた。目覚ましの音が子守唄に変わろうとした、まさにその時だった。
 「アニキーーー、朝ですよッ!!」
 迷惑なほど、元気で大きな声の奴が彼の布団の上にヒップアタックを決めてきた。
 「!!」
 彼・・・万太郎はしぶしぶと布団の中から顔を出す。
 「何だよー、もう少し寝てたっていいだろー?・・・そこどいてよ、重いから。」
 「あッ!?ゴメンねー、でも早くしないと朝メシ食いそこねちゃいますよ?」
 奴・・・セイウチンはニコニコしながら万太郎を朝食に誘う。
 万太郎はこのヘラクレスファクトリーに入学して以来、自分のやりたいことを何一つさせてもらえず、かなり不満がたまって
 いた。自分をアニキと慕うセイウチンですら、今の万太郎には邪魔でしかなかった。とにかく早く帰りたい・・・。
 「・・・朝メシくらい一人で食べればいいだろ?ボクは昨日の疲れが抜けなくてまだ眠いんだ。もう出てってよ。」
 万太郎はセイウチンに背を向けるとそのまままた眠りに落ちていってしまった。
 「アニキ・・・またバッファローマン先生に怒られるのに・・・」
 これ以上ここにいても無駄だと思ったセイウチンはしぶしぶと部屋を出て行った。しばらくして廊下をバタバタと走る音と
 共に、聞きなれた怒鳴り声が万太郎の耳にかすかに聞こえてきたが、万太郎が布団から出ることはなかった。

 1日が過ぎるのはとても早い。結局あの後部屋に乗り込んできたバッファローマン先生に訓練場に引っ張り出されてしまった
 万太郎は、他の超人たちとは別メニューの、かなりハードな特訓をやらされた挙句、夕食を抜かれ、反省室に入れられて
 しまった。
 「ちぇっ・・・バッファローマン先生もひどいよな・・・。ちょっとゆっくり寝てただけなのに・・・。大体、ボクは地球が
 どうなろうとどーでもいーのに。あーあ・・・」
 何もない暗い部屋の中、万太郎のぼやきだけがむなしく響いていた。
 コツン・・・。コツン・・・・。
 「・・・?何の音だ?」
 鉄格子のはまった窓を見る。すると小さな石が飛び込んできて、万太郎のオデコに当たった。
 「痛っ!!誰だよ、こんなイタズラしてんのはッ!!」
 窓の外を見るとそこには・・・
 「あッアニキ!!良かった、気づいてくれたんだねッ?おナカすいてると思って、ホラッ!!」
 鉄格子の隙間から差し入れられたものは・・・オニギリだった。
 「セイウチン、お前・・・」
 受け取ったオニギリを見る。・・・とても不恰好で、所々、毛が混じっている。
 「ゴメンよアニキ・・・。あの時オイラがちゃんとアニキを起こしておけば・・・」
 「コラッ!!そこにいるのは誰だ!!」
 「あ・・・じゃあアニキ、ちゃんと食べてね、オイラ、行くから」
 セイウチンが去った後も、万太郎は外を見ていた。きれいな満月・・・満月が急ににじんで見える。・・・万太郎は顔をつたう
 液体を手でぬぐいながら、毛の混じったオニギリにかぶりついた。
 「・・・ありがとう、セイウチン・・・。」

 翌朝、反省室を出た万太郎を待っていたのは、いつもどおりの厳しい訓練だった。はじめはたくさんいた超人たちも、
 いつのまにか20人強にまで減ってしまっている。それだけ厳しいのだ。
 「よし、次、キン肉万太郎!!」
 バッファローマン先生の声が万太郎を呼ぶ。イヤイヤながら手ほどきを受ける。
 「いつまでこんなことすればいいんだ?・・・もうヤだよ・・・」
 この日の夕食時、いつものごとくキッドが万太郎にからんできた。
 「おい、お前!!やる気がないならさっさとやめたらどうだ?ハッキリ言って目障りなんだよ!!」
 目障り・・・か。ボクだって本当はこんなところにいたくない・・・。そんな事言われなくたって、ボクがこの場に
 ふさわしくない事くらい分かってるよ・・・。
 「おいキッド!!言いすぎだぞ!!万太郎のアニキに謝れ!!」
 セイウチンが万太郎をかばい、キッドの前に立ちはだかった。
 「何だと?!テメェ・・・」
 「やめろセイウチン!!やめるんだ・・・ボクは平気だから・・・」
 「フン!!腰抜けめ!!」
 キッドはなおもおさまりがつかないといった感じで万太郎に罵声を浴びせようとしていたが、万太郎は何も言わず、ただじっと
 床を見つめていた。
 「アニキ!!くやしくないんですか?!こんなに好き勝手な事を言われて・・・」
 「いいんだセイウチン・・・本当の事だから・・・」
 「アニキ・・・」
 万太郎はそのまま食堂を後にした。追いかけてくるセイウチンをふりほどき、そのまま外へ飛び出して行ってしまった。
 自分がこのヘラクレスファクトリーで訓練を続けても、きっと父上達の望む型にはなり得ない・・・。ここにいても仕方がない
 ・・・万太郎はそんな気持ちでいっぱいだった。帰りたい・・・。万太郎は空を見上げ、はるかかなたのキン肉星を思っていた。
 
 コンコン・・・・ 
 「アニキ・・・起きてるかい?」
 夜もふけた頃、セイウチンが部屋にやってきた。眠れずにいた万太郎は、セイウチンを部屋に招き入れた。
 「アニキ、さっきはゴメン。アニキにもいろいろ考えがあったんだろう?なのにオイラでしゃばっちゃって・・・」
 すまなそうに謝るセイウチン。万太郎は彼の性格がうらやましかった。
 「なァセイウチン、お前は何のためにこのヘラクレスファクトリーに入学したんだ?」
 「えっ?・・内緒ですよ。オイラ・・・おかんと約束したんです。立派な正義超人になって世の中の為になることをするって。
 ・・・今はまだ未熟だし、どんなことをするのが世の中の為になるのか、まだよく分からないケド・・・。ここで頑張って
 訓練を受けて、地球人を守るのが今、オイラのできる一番のことだから・・・。」
 セイウチンは恥ずかしそうに放した。セイウチンには立派な夢がある。そう思うと万太郎は自分が恥ずかしくなった。いつも
 訓練をサボろうとしている事、人よりラクをしようとする事、すぐに帰りたくなる事・・・。いつしか万太郎は泣いていた。
 「アニキッ!?どーしたんですか?オイラ何か悪い事でも・・・」
 「いや違うよセイウチン。違うんだ・・・。なあセイウチン、ボクにも・・・地球を守ることができると思う?」 
 「!!当たり前じゃないですか!!だから今まで頑張ってこれたんでしょう?」
 「・・・ありがとな、セイウチン。さあ明日も早いんだ。早く部屋へ帰って寝たほうがいいよ」
 「分かったよ・・・じゃあアニキ、おやすみなさい」
 「おやすみ・・・セイウチン・・・」
 一人になった部屋の中で、万太郎は考えていた。今、自分にできることをすればいい。セイウチンのような立派な夢はなくても
 逃げちゃダメなんだ。
 静かな夜のかすかな光が万太郎を心地よい眠りに誘う。久しぶりにゆっくりと・・・
 幸せな気持ちで眠りにつく万太郎の姿が、そこにあった。          

今までにない(笑)傾向とキャラの小説をどうもありがとう!屯田へい様!もしかして
一期生STORYってはじめて・・・・?新鮮でよかったです〜!やっぱねえ・・この2人は
仲いいと思うよ。セイウチンはつくす(笑)タイプだよね。何言われても疑うことを
知らないというか・・(笑)すてきな友情モノ小説を楽しませていただきました〜♪
(Noriko)

あ〜やだね、俺、友情なんて言葉、大っきらい!体がむずがゆくなってきやがるぜ!!
  なに?本当はうらやましいんじゃないかって?だ、だれが!!(スカー)