SCAR FACE SITE

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◆ 小休憩

  なにもかもが上手くいくとは限らないさ

 しごく当たり前のことをもう一度頭の中で反芻する。
 傍らで、何度目かの同じセリフ。
 「スマン。俺のせいだ。」
 マルスはその言葉の主を睨み付ける。
 「てめぇ、うるさい。何度も同じことを言うな。うっとおしい。」
 それは訓練中のことだった。谷に渡された無数のトゲの突き出した丸太を、
 足に重りをつけて、腕の力だけで渡る。もちろん力つきて谷底に落ちる者も
 いる。それは、まぁ、力がなかっただけということだ。落ちて死ぬのも
 運命だろう。
 だが、あの時。自分の前を渡っていた男の手が丸太から離れた時。
 思わず手を伸ばして救っていた。その男。今、自分の傍らに座っている。
 ケビンマスク。
 レジェンドであるロビンマスクの親不孝息子。話を聞いたときには、しょせん
 ぼっちゃんがつっぱらかっているだけのことだと思った。父親の束縛から
 逃れきれていない。行動の基準が常に父親を意識したものであること。
 「ぜいたくな甘ちゃんだよ。てめぇは。」
 いつか言った時、ケビンは嫌そうな顔をしたものだ。(マスクで本当は表情は
 見えないのだが。)
 あの時、自分はケビンを助けたいと思ったわけではない、とマルスはそう思う。
 そんなことを考えて救ったわけではない。
 ただ、手が伸びた。それだけのことだ・・
 その後、ケビンを引き上げるときに丸太から出ているトゲが自分の腰に
 突き刺さったのも別にケビンのせいでなったわけではない。自分が
 不注意だっただけだ。
 格好良く助け上げるつもりだったのに、みっともないったらありゃしない。
 それから、なんとか2人とも丸太を渡りきり、今、岩場に隠れて休んでいる
 というわけだった。
 「ケビン。俺がお前を助けなきゃ良かったな〜とか思わないうちにどっか
 行きなよ」
 「マルス・・しかし傷の手当ては・・」
 「こんなもの寝てれば治るって!俺がそんなヤワだと思ってるのか?」
 「おまえを侮辱するつもりで言ったわけではない。俺はただ・・」
 「いいか?ケビン?わかんねぇようだから、ハッキリ言ってやるけどよ。
 俺は今、とっても休みたいわけだ。てめぇとくっちゃべっている
 つもりはないんだ。」
 そのセリフを聞いて、ケビンは項垂れた。
 「すまん。マルス。」
 「だから、オウムじゃあるまいし、同じことばかり、しつっこいんだよ!」
 「すまん。」
 「・・・・」 
 勝手にしろといったようにマルスはケビンに背中を向けた。腰の傷口からは
 まだ、血が流れている。それを目にしたケビンは、再度口を開きかけたが
 そのまま、再び下を向いた。
 しばらく2人とも動かなかったが、やがてケビンの方が焦れたように
 立ち上がった。
  「マルス。今日のことは一生、恩にきる。」
 「そうか。しーーーっかり恩にきてくれよな!」
 一生なんて言葉、軽軽しく使う奴なんて信用はおけない。(大体、悪行超人だし)
 覚えていてくれたらもうけものといった程度か。期待はするかもしれないが、
 アテにはしない。
 「マルス・・」
 「グーグー」
 仕方ない、とため息をひとつついてから、ケビンはその場を離れる。

 ひとり残ったマルスはケビンの足音が聞こえなくなってからボソリと
 ひとりごちた。
 「痛ェなぁ・・」
   

いいよねえ〜!前前からこれ、頂いていたんですがや〜っと掲載のお許しが出たんで
ここに載せさせて頂きました!これだけの短編の中に、しっかりスカー様(ケビン)
の考え方と性格が現れてるあたり、さすがです!私は本当はこんな、生意気で口の悪い
スカーだけどちょっとお茶目(笑)な彼が見たかったのね・・(笑) ありがとうございます!!!(Noriko)


ケビンかァ・・そんな奴もいたっけな(笑)奴が去った後に俺、「痛ェなぁ・・」
  なんつーの、ん?なんかいーと思わねーか?俺はこういう話、好きだぜ!(スカー)