封神演義入門

《《 封神演義ってなに? 》》

封神演義とは

 『封神演義《ほうしんえんぎ》』は、明《みん》代末期の中国で作られた、全100回からなる古典長編小説です。
 内容は、古代中国における殷《いん》と周《しゅう》との戦いという、『史記《しき》』や『書経《しょきょう》』にも名高い有名な歴史物語に、神仙や妖怪が活躍する、道教ファンタジーの要素を加えたもの。中国文学史上、『西遊記《さいゆうき》』に次ぐ神魔《しんま》小説として知られています。
 道教・仏教説話でも有名な仙人たちや、神話上の神々、紂王《ちゅうおう》など史書にみえる英雄と、400人を超える人物が登場し、激しい戦いを繰り広げる豪華絢爛な物語は、中国でも長く親しまれているものです。

作られた時代

 『封神演義』が作られたのは今から400年くらい前の、中国明時代の末期でした。アメリカで産出されたスペイン銀が大量に中国に流入し、中国全土、特に江南《こうなん》がバブル景気に沸いていた時代です。暗君万暦帝《ばんれきてい》の下、政治が乱脈を極めた反面、下層階級の生活が向上したため、大衆文化が栄えました。『水滸伝《すいこでん》』を初めとする通俗小説が広まったのもこの頃です。
 そんな中『封神演義』は、『武王伐紂平話《ぶおうばっちゅうへいわ》』『春秋列国志伝《しゅんじゅうれっこくしでん》』といった先行作品をもとに、道教や仏教にみられる物語や神々を取り込み、作者の書き換えを加えた上で物語として成立しました。仙人や妖怪が秘術を尽くして戦うその内容は、時代の雰囲気を色濃く残したものと言えるでしょう。

作者とエディション

 『封神演義』の作者についてはいくつかの説がありますが、明刊本に記載のある許仲琳《きょちゅうりん》を作者とする説と、明代に道士として活躍した陸西星《りくせいせい》を作者とする説が有力になっています。また近年、許仲琳と李雲翔《りうんしょう》の合作という説も提起されています。
 『封神演義』の一番古い本は、明末に刊行された『鐘伯敬《しょうはくけい》先生批評封神演義』で、日本の国立公文書館に保管されています。『鐘伯敬先生〜』は、世界で唯一現存している明時代の『封神演義』で、大変貴重なものです。ただし、後世一般に流布した『封神演義』の本は、清代にチョ人獲《ちょじんかく》が出した「四雪草堂本《しせつそうどうほん》」がベースになっています。

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